2022年10月21日に『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』リマスター版が発売となったことを記念し、シリーズを手掛けるアトラスの開発者たちにインタビューを実施。先日開催された大型ライブイベント“PERSONA SUPER LIVE P-SOUND WISH 2022 〜交差する旅路〜”(以下、“PSW2022”)を終えたいま、これからの『ペルソナ』シリーズの展望と、リマスター版の見どころなどについてお話をうかがった。
※このインタビューは週刊ファミ通2022年10月27日号(2022年10月13日発売)に掲載されたものです。
和田和久氏(わだかずひさ)
ペルソナチームを率いる、クリエイティブ・プロデューサー&チーフディレクター。『ペルソナダンシング』シリーズなどを歴任し、2019年に『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』をリリース。開発の全体を指揮している。
山本眞司氏(やまもとしんじ)
『デビルサマナー 葛葉ライドウ』シリーズや『真・女神転生IV』などに携わり、『ペルソナ5』と『ザ・ロイヤル』ではシナリオプランナーを担当。リマスター版ではビジネスプロデューサーを務めている。
副島成記氏(そえじましげのり)
アトラス・アートワークチーム所属。『ペルソナ3』以降のさまざまなシリーズ作品でメインのキャラクターデザイナーを務めたほか、『キャサリン』などでも手腕を発揮してきた。
ペルソナライブを終えて……
――このインタビューはPSW2022の開催を間近に控えた時期に行わせていただきましたが、記事はその開催後に読まれることになります。まずは、このイベントに込めた思いからお聞かせください。
和田約3年ぶりの大型ライブにして、幕張メッセで初めての開催、なおかつ土・日の2日間開催も初めてということで、最大規模での実現になりました。世の中の動向も注視しながらの準備など、とてもたいへんな部分はありましたが、スタッフ一同が全力でがんばって、今日にいたっています。我々にとって、ライブは最高の回復魔法みたいなものなんですよね。皆さんの温かい応援を直接受け取れる場所なので、そこで背中を押していただいて改めてゲームの開発に励むことができて、いつも心からありがたく思っています。
副島開発スタッフがこれほどの熱気を感じられる機会はなかなかないので、ライブが開催されないと自分たちも寂しくなってしまうんです。まさに、回復魔法ですね。
和田毎回たくさんのスタッフが会場に赴くのですが、本当に効果てきめんで。
――開発者とファンの両方が待ち望んでいたわけですね。そして、山本さんは本誌にご登場いただくのは初めてでしょうか。
山本はい、よろしくお願いします。自分は『ペルソナ5』からペルソナチームに入りまして、『ペルソナ5 ザ・ロイヤル』(以下、『P5R』)では3学期など追加シナリオのリードプランナーを務めました。同作のリマスター版ではビジネスプロデュースを担当しています。
――ライブ会場では、『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』(以下、『P4G』)と『ペルソナ3 ポータブル』(以下、『P3P』)のリマスター版も来年1月19日にリリースされることが発表されました。これらの展開は、察するに、2020年6月に配信されたSteam版『P4G』のヒットがひとつのきっかけになったのでしょうか?
和田そうですね。おかげさまで非常に好評だったことに加えて、『P5R』も海外で高い評価をいただいていたので、対応機種を広げていく方向に舵を切りました。販売する国や対応言語も、一気に拡大しています。
リマスター版に込めたこだわり
――まもなく発売となる『P5R』のリマスター版については、どんなところに力を入れたのでしょうか。
山本とくにこだわっているのは、ビジュアル面です。キャラクター、イベントシーン、バトルシーンなど、どの機種で見てもキレイだね、カッコいいねと感じていただけるよう、かなり細かいところまで調整しています。たとえば、イベントシーンで吹き飛ぶガレキの数なども、機種ごとに最適化したり……。
―― ガレキの数ですか!
山本ほかにも、エフェクト……たとえば光弾の数の調整ですとか、本当に細かいところです。
――“リマスター版”と聞くと、一般的には、オリジナル版の内容はそのままに、解像度を機種に合わせたもの……というイメージがありますが、それだけではないのですね。
山本はい。今回、リマスターの開発はセガが担当しており、グループ内でとてもよい関係性を構築することができまして、その点でも有意義なプロジェクトでした。
和田スピード感もすごかったです。今回のような多機種での展開は、セガとの連携がなかったら難しかったでしょうね。
―― 多機種展開は、やはり簡単ではない?
山本それはもう……。機種ごとにスペックや特徴が異なりますので、まずはそれらを把握したうえで最適解の模索、そしてその実現にいたる検証から、実装後のチェックなど……。自分は移植プロジェクトに参加するのは初めてでしたが、こんなにたいへんなものなのかと。
――そんなリマスター版『P5R』で要注目のポイントがありましたら教えてください。
山本やはり大きいのは、オリジナル版で配信した40以上のダウンロードコンテンツを収録していることですね。すでに『P5R』を体験してくださった方も、衣装を変えると戦闘中のBGMも衣装に紐づいたものに変わりますので、そこも楽しんでいただければと思います。また、初めて遊ぶ方も、最初からいろんな楽しみかたができますから、この機会にぜひ。自分も開発中に衣装をあれこれ試しながらテストプレイしていました(笑)。
和田リマスターとしての仕上がりは完璧だと自負しています。ファンの方はもちろん、未体験の方も初めて触れるきっかけになってくれればと、強く思います。
――和田さんは、今回リマスターされる3作品にはオリジナル版の開発から携わっておられるので、積年の思い入れがあるのでは。
和田そうですね。『ペルソナ3』と『ペルソナ4』ではチーフデザイナーとしてグラフィックの方向性などを決めたのですが、とくに『3』はシリーズの刷新を図った作品でしたので、副島ともかなりの議論を重ねた思い出があります。『P5R』も、もともとの『ペルソナ5』が高い完成度でしたので、それをさらにゴージャスな作品へ昇華させることには相当こだわりました。どれも、やりたいことをやれたという思いがあるタイトルなので、そういう意味でも大切にしている作品です。
――この3作品でキャラクターデザイナーを務めた副島さんは、いかがでしょうか。
副島正直、『ペルソナ3』など、だいぶ前に描いたイラストを皆さんにまた見ていただくのは少し恥ずかしいかもしれない、と思っていました。でも、こうしてリマスター版のプロモーションが始まって、あちこちで実際に見ていただける機会が増えていくと、意外と嫌ではなかったと言いますか……(笑)。オリジナル版のときの熱量を思い出しましたし、発売した時代ごとの良さみたいなものを改めて感じることもできまして。
――オリジナル版を遊んでいない世代の人たちが、リマスター版をいま体験してどのように感じるか、反応が楽しみですね。
副島発売したその時代に楽しんでいただいた作品が、そのまま過去のものになるのではなく、最新の機種でいまの皆さんにも触れてもらえるようになったのは、やはりうれしいです。当時の私たちが作品に注ぎ込んだ熱量を感じ取ってもらえたら幸いです。
【#P3P #P4G 発売日決定!】
『ペルソナ3 ポータブル』『ペルソナ4 ザ・ゴールデン』のリマスター版は、1月19日発売だ!
※ダウンロード版のみの販売です
『ペルソナ』シリーズ3作のリマスター記念、新ビジュアルも初公開!… https://t.co/HN0khHNnQ3
— モルガナ_ペルソナ広報 (@p_kouhou)
2022-10-08 19:36:51
それぞれの描き下ろしに込めている思い
――この3作品の主人公たちが並んだ新規ビジュアルは、初めて見た瞬間に「これは……!」と思いました。2006年に『ペルソナ3』のオリジナル版が発表されたときの、最初期のキービジュアルのオマージュですよね。ここにはどんな意図を込めたのでしょうか。
副島オリジナルの『ペルソナ3』は、『ペルソナ』というシリーズをどのように刷新させるか、開発チームでたくさんの議論を経て生まれた作品でした。そのときにひとつの軸となったのが、「こうじゃないと『ペルソナ』じゃない」みたいな条件はあまり付けずに考えていこう、というスタンスだったんです。条件をあれこれ言い始めると、それが足かせになって変化を模索しにくくなりますから。むしろ、もっとシンプルに、「学生たちがペルソナを召喚すれば、それは『ペルソナ』だ!」というくらいの気概で、新しいことに挑戦したのが『ペルソナ3』だったわけですね。
――『3』で、『ペルソナ』シリーズらしさというものを改めて見つめ直した、と。
副島どこまでを変えず、どこから先は変えていくかを話し合って、それにもとづいて描いたのが、あの最初期のビジュアルなんです。教室があって、学生たちがいて、ペルソナがいる。“ジュブナイル”の物語であることが、シリーズらしさの根本のひとつではないかと。だからこそ、そこに『ペルソナ4』や『ペルソナ5』の主人公たちを当てはめても違和感なく成立すると思ったんです。
―― そして、PSW2022のキービジュアルも副島さんが描かれたものですね。こういう爽やかさ全開の雰囲気は、『ペルソナ』シリーズでは珍しい気がします。
副島イベントの名称に“WISH”という言葉が入っている通り、ファンの皆さんといっしょに希望をもって進んでいきたいという思いを、キービジュアルにも込めました。作品のプロモーション用に描くイラストなどは、内容を伝えるためのものなので、「見てください!」という気持ちを込める力が強くなるのですが、今回のイベントに関しては、シリーズに寄り添ってくださっているファンの皆さんの温かいお気持ちに、我々からもお応えするイメージを伝えられたらいいなと。
――さらに、週刊ファミ通(2022年10月27日号)の表紙にも描き下ろしてくださり、ありがとうございます……! こちらもまた、“らしさ”が前面に感じられます。
副島教室のビジュアルとは別のアプローチで、『ペルソナ』シリーズらしいものを描いてみようと思いました。主人公たちがペルソナの仮面を手にした、“仮面と少年少女”という組み合わせは、これまでに描く機会があまりなかったんですよね。
10/13(木)発売の週刊ファミ通(10/27号 No.1767)は【#ペルソナ25周年】を特集!
表紙は、副島成記氏による描き下ろしです!!
30ページ特集では、アトラススタッフの特別インタビューや、イラストギャラリーなどを… https://t.co/ntlpxRwb1J
— 週刊ファミ通@毎週木曜発売 (@WeeklyFamitsu)
2022-10-11 12:00:01
これからの『ペルソナ』シリーズにも力が入る
――この1年間は、ところざわサクラタウンで“ペルソナ25周年フェス”を開催するなど、ほかにもさまざまな記念施策が行われました。このアニバーサリーイヤーも、PSW2022の開催をもって、ひと区切りでしょうか。
和田名残り惜しいですが、そうですね……。ペルソナ25周年フェスでは、KADOKAWAさんが擁するサクラタウンを活用しての大型イベントを提案していただき、たくさんの方にお越しいただくことができて、とてもうれしかったです。我々としても、現地まで足を運んでいただく価値のある展示ができるよう、開発スタッフに号令をかけて開発資料の蔵出しをしたり、等身大のペルソナ立像を初披露したりと、全面協力させてもらいました。
――おかげさまで、サクラタウン史上最高レベルの盛り上がりだったと聞いています。
和田本当に、ありがたいです……!
――これからの展開にも、期待しています。まずは、『P5R』を始めとする3作品のリマスター版で、さらに広がってほしいですね。
山本アトラスの作品は、まだ触れたことがない方からすると、悪魔が出てきたり、難度も高そうなイメージがあったりするかもしれませんが、今回お届けする『P5R』を筆頭に、どのタイトルもユーザーの皆さんからのご意見を受け止めながら真摯に作らせていただいております。これからも、この姿勢を大切にしながら作り続けていきたいです。リマスター版もたくさんの方に楽しんでいただけたらうれしいです!
副島『ペルソナ』シリーズは、時代に合わせてそのテーマが変化してきた面がありますから、これから先、いかに印象深い作品をお届けしていくかが課題だと思っています。それが形になるのを私たちも楽しみにしているので、その前にぜひ、リマスター版でシリーズに触れていただけたら幸いです。
和田最新のナンバリング作である『P5R』は、我々の集大成と言える作品です。JRPGとして最上の体験をしていただけると思いますので、すべてのゲームファンに遊んでいただきたいです。そして、今後の展望について、本当はもっとお伝えしたいことがたくさんあるのですが……。それはまた、しかるべきタイミングでお披露目できるように全力を尽くします。これからの『ペルソナ』シリーズに、よりいっそうのご期待をお願いいたします!