2022年9月15日~2022年9月18日に開催された東京ゲームショウ2022(TGS2022)。PLAYISMブースで試遊版が出展されたNintendo Switch版シューティングゲーム『DRAINUS(ドレイナス)』の開発者・Team Ladybug氏に制作エピソードを伺った。

 なお、Nintendo Switch版『DRAINUS(ドレイナス)』は今冬発売予定となっている。

『DRAINUS(ドレイナス)』の開発者・Team Ladybug氏に聞く。「誰でもクリアーできるシューティングを目指して【TGS2022】

Team Ladybug氏

インディーゲーム開発者。『Touhou Luna Nights』、『Fate stay night RUN! RUN! ランサー』、『真・女神転生 SYNCHRONICITY PROLOGUE』、『この素晴らしい世界に祝福を! 復活のベルディア』、『ロードス島戦記 -ディードリット・イン・ワンダーラビリンス-』などを手掛ける。

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Steam版の“完成形”がそのままNintendo Switchに

――Nintendo Switch版発売は今冬とのことですが、開発状況はいかかでしょうか。

Ladybug9割できています。残りの1割……Nintendo Switchの処理速度が追いつかないシーンを軽い内部処理に変える作業が終われば、いつでも出せる状態になります。そこがなかなか苦戦していますね。

――5月にリリースされたSteam版との違いは?

Ladybug新しいステージが増えるみたいなことは、現時点ではないです。Steam版はリリースしてから何度もアップデートを重ねていて、スコアアタックモードが追加されたりしていますが、現在(※インタビューを行ったの9月17日)公開しているものが『ドレイナス』の完成形と考えています。Nintendo Switch版はそれをそのまま同じ感覚で遊べることを追求した作りになっています。

――今回、PLAYISMブースで試遊の様子をご覧になって、何か気づいた点などありましたか?

Ladybug後ろから覗いた限りでは、皆様途中でプレイを止めてちゃんとパワーアップしていたので、システムがおおむね理解されているとの印象でした。テストプレイはこれまでチームメンバーや友だちにしかプレイしてもらっていなかったので、いろいろなプレイヤーがどう理解して実行するかを直で見られてよかったです。

『DRAINUS(ドレイナス)』の開発者・Team Ladybug氏に聞く。「誰でもクリアーできるシューティングを目指して【TGS2022】

――チュートリアルがしっかりしていた、ということですね。

Ladybug最初はチュートリアルがなかったんです。言葉だけの説明だったのですが、さすがにそれはきびしいだろうということで、そこから流れるように本編に入るように後づけしました。

――物語世界に一気に引き込むあの演出(※敵パイロットの訓練の様子を主人公が傍受している……というもの)が後づけだったとは意外です。てっきり“こういうシーンを見せたいがため“だったのかと。

Ladybugそういう意味では、ゲームスタート時は“(自機が)飛び立つシーン”から始めようと決めていました。インパクトを大事にしようと決めていたので。

『DRAINUS(ドレイナス)』の開発者・Team Ladybug氏に聞く。「誰でもクリアーできるシューティングを目指して【TGS2022】

“誰でもクリアーできるシューティングゲーム”の追求

――改めて、本作がどのような経緯で作られたかについて教えてください。

Ladybug 子どものころから『グラディウス』などのシューティングゲームをよく遊んでいました。とくに好きだったのは初代プレイステーションの『グラディウス外伝』。何度も遊んで、こういうゲームをいつか作りたいなと思っていました。シューティングゲームは後に一部のコアなユーザーにとって深く刺さるものに先鋭化されていったのですが、それによってライトに遊びたい人にはとっつきづらいものになってしまったなという感覚がありました。

――そこを変えたいという思いが『DRAINUS(ドレイナス)』の出発点に?

Ladybugマニアックな路線を否定するつもりはありませんし、実際、好きでやりこんだタイトルもたくさんあります。ただ、自分が作る場合は“誰でもクリアーできること”を大事にするつもりでいたし、これまで作ってきたゲームの中でもとくに簡単にしようという意識は当初からありました。

――シューティングゲームとしてのベースは、やはり『グラディウス』でしょうか?

Ladybug最初に決めていたのは、じつは“買い物ができる”の一点だけでした。『オーダイン』とか『ファンタジーゾーン』みたいな。そこから始まって、より誰でもクリアーできるようにするにはどうすればいいかと考えたとき、弾をよける方法を上下左右移動のほかにもうひとつ用意すればいいのではないかと思いました。

――それがエネルギー吸収ですね。

Ladybugそうです。つぎは、その吸収操作が生きるシステムにする必要があるということで、集めたお金での買い物ではなく、“吸収したエネルギーでの拡張”で自機をパワーアップすることにしました。そのほうが自然ですよね。

――たしかに。

Ladybugあとは、シューティングゲームファンの皆さんに敬意を払う意味で、1周だけでなく2周目もプレイできる内容にすることも、早い段階から決めていました。

――エンディングデモが終わると何事もなかったように2周目が始まる、昔のアーケードシューティングゲームへのリスペクトですね(笑)。

Ladybug2周目で、難易度だけでなく、BGMがちょっと変わったりする楽しさを再現できたらと思いました。ただ、現代の価値基準では、理由もなく周回プレイを強いるのはきびしいものがあるし、新規ユーザーにとっては“ストアレビュー対策のためにプレイ時間を水増ししようとしている”とも捉えられかねません。ですので、当然それ(2周目)をやるテンションに持っていけるストーリーの見せかたにはこだわりました。

――なるほど……核となる要素をブレさせることなく、実現したいアイデアを必然性によってなじませていく、堅実な制作スタイルなんですね。

『DRAINUS(ドレイナス)』の開発者・Team Ladybug氏に聞く。「誰でもクリアーできるシューティングを目指して【TGS2022】

正攻法では却下されやすい題材のオリジナル企画を通す方法

――そんな『DRAINUS(ドレイナス)』が、『ロードス島戦記 -ディードリット イン ワンダーラビリンス-』(2021年)のつぎのタイトルとして制作・リリースされた経緯についても教えてください。

Ladybugうちはマネジメント全般をワイソーシリアスさん(※ゲームプロデュース・パブリッシング)にお任せしているのですが、そういう体制で作っている以上はヒットさせないといけないと思っています。1年かけて開発してまったく売れなかったら、(共同パブリッシングを担当する)PLAYISMの方々にも迷惑がかかってしまいますし……。

――ちょっと待ってください、そのお話の流れで、なぜオリジナルシューティングゲームの企画が実現したのですか?

Ladybugそれは……僕が勝手に作り出したんです。

――その手があったか! って、そんなのアリなのですか?

LadybugSteam版『ロードス島戦記 -ディードリット イン ワンダーラビリンス-』の開発が終わって、コンシューマ版移植の期間があったのですが、その時僕は監修メインだったので、自由になる時間が比較的ありました。それを使ってステージ2まで一気に完成させて、移植内容の確認でPLAYISMさんのところまで行った時に「ところで、時間ちょっともらっていいですか?」と切り出しました。斉藤さん(※ワイソーシリアス代表の斉藤大地氏)もいらっしゃる機会だったので、「こんなの作っていたんですけど」って見せたら、「ここまでできているなら何も言えませんね……!」となって、その場で正式に次回作として開発することが決まりました。

――“奇襲”が決まったと?

Ladybug『ロードス島戦記 -ディードリット イン ワンダーラビリンス-』のつぎはオリジナルでいこうという話はすでにしていたのですが、そこでシューティングゲームを提案したら、まず反対されるだろうとは思っていました。開発期間が無駄になる可能性があるのなら、人に迷惑をかけない時間を使えばいいのではないかと。

――いろいろとスッキリしました。『DRAINUS(ドレイナス)』は、Ladybugさんの開発力の高さと用意周到さがあったからこそ実現したタイトルだったんですね。

『DRAINUS(ドレイナス)』の開発者・Team Ladybug氏に聞く。「誰でもクリアーできるシューティングを目指して【TGS2022】

“令和・シューティングゲーム新時代”の幕開け!?

――Nintendo Switch版のリリースは当初から決まっていたのでしょうか?

LadybugSteam版がある程度認知されて評価が高かったら、コンソール版も出そうという話でした。

――現時点ですでに発表されているということは、初動の段階で判断されたということでしょうか。

Ladybugそうだと思います。

――5月の“INDIE Live Expo 2022”で、ほとんど前情報なしで発表された時のインパクトがセールスを後押しした面もあると思いますが、その時点で幅広いユーザー層に届いたのは間違いありません。“誰でもクリアーできる難易度”に関しては、さまざまなとらえかたがされたと思いますが。

Ladybugまったくゼロではないでしょうが、嫌がられることはほぼなかったですね。むしろシューティングファンほどハマってくれたようで「こういう作品が増えてくれるとありがたい」という意見も多くいただきました。『DRAINUS(ドレイナス)』が、シューティングゲームのプレイヤーのすそ野がふたたび広がるきっかけのひとつになればいいなと思います。

――最後に、Nintendo Switch版を楽しみにしている読者にひと言。

Ladybugこれまでお話してきたように、間口の広いシューティングゲームであることは間違いありません。いままでシューティングゲームをやったことがない人もクリアーする喜びを味わえるくらいに遊びやすくしています。もちろん、シューティングゲームファンの皆さんにも納得していただける内容になっているので、楽しみにお待ちください!

『DRAINUS(ドレイナス)』の開発者・Team Ladybug氏に聞く。「誰でもクリアーできるシューティングを目指して【TGS2022】