2022年9月15日~18日に千葉県・幕張メッセにて東京ゲームショウ2022が開催。会期中に、PLAIONのPrime Matterレーベルから11月22日発売予定のプレイステーション5、プレイステーション4、Xbox Series X|S、Xbox One、PC用ソフト『Gungrave G.O.R.E』(ガングレイヴ ゴア)の開発陣に取材をする機会を得た。開発元であるIGGYMOBのジェネラルディレクターのキム・ケイ氏と、イメージデザイナーを担当したマンガ家の内藤泰弘氏だ。おふたりに、発売まで2ヵ月あまりに迫った『Gungrave G.O.R.E』に対する思いを改めて聞いてみた。

『Gungrave G.O.R.E』キャラ原案・内藤泰弘氏と開発元IGGYMOBキム・ケイ氏を直撃。本作でしか味わえない独特の“スカッと感”を感じてほしい【TGS2022】

キム・ケイ氏(写真左)

IGGYMOB ジェネラルディレクター

内藤泰弘氏(写真右)

マンガ家。『GUNGRAVE』ではキャラクターデザインおよび原作を担当。『Gungrave G.O.R.E』ではイメージデザイナーを務める。

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発売できたことはまさに“奇跡”。完成したのはファンの支えがあってこそ

――ようやく発売日が11月22日に決まりました。まずは、率直なご感想から聞かせてください。

内藤まさに“奇跡”だと思います。“臥薪嘗胆”と言ってしまっていいのでしょうか。ジェネラルディレクターのキムさんがあきらめずに形にした『Gungrave G.O.R.E』が、世に出るのは本当にものすごいことで、感動しています。偉業ですね。

キム本当にいろいろなことがありました。苦労もたくさんありましたね。いよいよ発売日が決まって、すっきりしたという気持ちもありますが、これからリリースを迎えるにあたり、皆さんがどのような反応を示されるのか、緊張している部分もあります。

――内藤さんが完成したのは“奇跡”だと驚いていましたが、なぜ完成できたのですか?

キム本作にかかわった仲間たちが、みんな一生懸命責任を持って取り組んだということはあると思います。

 『GUNGRAVE』は、多くの皆様の記憶に素晴らしいIPとして残っていますので、僕たちがいちばん心配したのは、「この素晴らしいIPに泥を塗るわけにはいかない」でした。しかしたくさんの皆様が応援してくださったおかげで、僕たちにとってよいエナジーとなりました。

――ファンに支えられたということですね。実際問題として、キムさんはなぜそこまで『GUNGRAVE』というIPが好きなのですか?

キム端的に言うと、ビジュアルのテイストとゲーム性です。ビジュアルに関しては、アメリカンヒーローなどは往々にしてゴツいですが、『GUNGRAVE』のキャラクターはそれとは違って、どこか物悲しさがありますよね。その雰囲気が大好きだったんです。

 ゲームプレイに関して言うと、企画を立ち上げた8年前はソウルライクなゲームが増えてきていた時期で、『GUNGRAVE』のような、それとは違った方向性のゲームに魅力を感じたんですね。私自身ソウルライクなゲームは大好きなのですが、異なる方向性のアクションゲームを作ってみたいなと。『GUNGRAVE』が私がやりたかった方向性にマッチしたIPだったというのはあります。

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――内藤さんはイメージデザイナーとして『Gungrave G.O.R.E』に参加されていますが、内藤さんが本作に参加するのは、必須だったと言えそうですね。内藤さんはイメージデザイナーとしてどのようなことを? キャラクターデザインではない?

内藤キャラクターデザインというバキッとした役職ではないですね。グレイヴのスケッチデザインぐらいで。お話をいただいたのは8年前だったのですが、僕もマンガの連載を持っていたので、そこまでは時間が割けなかったんですね。ジャケットなどフィニッシュワークも希望されましたが、ゲームの世界はすでにリアルでハイエンドな絵面を求められていたので、僕の能力ではとてもではないけれど応えるのが不可能だと判断しました。それで、キモの部分をディレクションすることで何とかできないかと相談させていただきました。

――たとえばどのようなことですか?

内藤たとえば、クレイヴが銃を構えて下を向いているポーズのCGが上がってきたとしますよね。それに対して、「もっと腰を落として、体を捻って、アゴを引いて……」みたいな修正を入れるという作業を何度もやり取りしながら、ポーズを煮詰めていったりとかですね。

 あとは、「“デモリッションショット”の演出のアイデアを出してほしい」とリクエストされたこともありましたね。それで、バカみたいに大きなミサイルが出てきたり、棺桶が異常な変形したり……というさまざまなアイデアを提出しました。

『Gungrave G.O.R.E』キャラ原案・内藤泰弘氏と開発元IGGYMOBキム・ケイ氏を直撃。本作でしか味わえない独特の“スカッと感”を感じてほしい【TGS2022】
東京ゲームショウ2022の最終日には『Gungrave G.O.R.E』のイベントが実施され、内藤氏が生でイラストを書くというデモンストレーションが実施。できあがったイラストは追ってプレゼントのビジュアルとして活用されるとのこと。

キム『Gungrave G.O.R.E』のキャラクターに関しては、内藤さんのスケッチをもとに、IGGYMOBのデザイナーがブラッシュアップしていって、それに対して内藤さんにディレクションしてもらうという形で進めていきました。内藤さんは僕たちの期待以上にたくさん助けてくださいました。LINEを通して昼夜関係なく数多くコミュニケーションを取り合いました。

内藤というか、最初からこちらの意を汲んでくれて、完成度の高いものが上がってきていたんですよね。「これは根本的に違うんだよな」というのは、あまりなかった覚えがあります。

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――ちなみに、ステージイベントでは、キャラクターデザインを担当された『GUNGRAVE』では、「背中から描いた」という興味深いことをおっしゃっていましたね。

内藤プレイ画面を妄想した時に、まず背中がずっと画面に出ていることに気が付いたんですよね。だから大きな十字架を背負っていて、棺桶がジャラジャラとついてきて……と特徴的なインパクトを背面から盛り込みました。棺桶もあまり高くすると銃が見えなくなってしまうので、低めにずらしたり……そんなことを考えながら作業しましたね。

――最初に背中を描いて、そのあとその背中のシルエットに見合った感じで、前のほうを描いていったのですね?

内藤そうですね。ぐるっと回してこうだなと(笑)。

――顔のほうはそこまで苦労はなかった感じですか?

内藤そうですね。なんとなくほぼ……あまり覚えていませんが(笑)。ただ、僕の場合キャラクターができあがるときって、あまり試行錯誤しないで、すっと出て来ちゃうことが多いです。あまり記憶になくて。

――降りてくるというか?

内藤降りてきます。必要な条件が決められていたりしますよね。そういう条件をぼんやり反芻していると、すっと出て来るということが多いです。だからだいたい一発ですね。

――イベントでは、文治は松田優作がモチーフだとお話されていて、さもありなんという感じなのですが、グレイヴは?

内藤グレイヴはシューティングゲームの自機なので、それに近い感覚ですね。

――シューティングゲームの自機とはおもしろいですね。

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『Gungrave G.O.R.E』に不可欠なのは内藤成分!?

キムスキルの名前にしても演出にしてもそうですが、とにかく内藤さんには本当に助けていただきました。

内藤別件で韓国に行ったときに、「いま韓国にいるんだけど、会社に遊びに行っていい?」みたいな感じでふらりと立ち寄って、実機でプレイさせてもらって、悩んでいるところとかを聞かれたら、出来る範囲で答えるくらいの感じですね。

――IGGYMOBの皆さんが、進むべき方向性に迷ったときに、適宜助言するみたいな感じかしら。

内藤方向性というよりも……なんだろう、成分がほしいときががあるようなんですよ。「内藤成分がほかの人には出せない」と言われて。僕自身は「そうなんかな……」と思いつつ(笑)、「こうしたほうがいいだろう」というのは見えるので、そこをお手伝いしている感じですね。

キム言葉だけではなくて、実際にいっしょに悩んでいただいたりしています。私たちも積極的に内藤さんに説明や報告をしたりして、適宜アドバイスをいただいていますね。

――内藤さんは、「キムさんは内藤成分がほしくなるんじゃないか」と言っていましたが、内藤成分はそんなにほしいのですか?

キム必要です! 身体の割合、たとえば足が長くて背中はちょっと曲がっていて……とか、内藤さんしか出せない味があるんです。ポーズひとつとってもそうですね。まさに内藤成分です。それでずっと内藤さんに相談するんです。

――内藤成分というのはおもしろいですね。内藤成分ってなんでしょうね?

キムうーん……。ひねっている? ねじれている?

――(笑)。ご自身はいかがですか?

内藤ポーズにクセがあるんだろうなあとは思っています。下絵が上がってきたときに、「もっとひねってギリギリこうしたほうがいい!」「この角度も関節が外れてるかというぐらい変えたほうがいい!」とぱっと思い浮かぶんですよ。ということは、「そこに何かがあるんだろうなあ……」という気はしています。

 でも、開発のかなり初期の段階で、「グレイヴを歩かせました」って、動いている動画を見せてもらったことがありまして。その時点でドンピシャでイメージ通りでした。「ここまでできるのだったら、これを続けていけば『GUNGRAVE』になりますよね」と思ったくらい。紆余曲折ありましたが、いまのバージョンはそれがそのまま完成版になった感じがします。

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『Gungrave G.O.R.E』が乗り越えなければならないゲームは『GUNGRAVE O.D.』

――とはいえ、内藤さんが冒頭で「リリースできるのは“奇跡”」とおっしゃっていた通り、開発の道のりはけっして順風満帆ではなかったと聞きます。

キム当時、韓国はコンソールゲームへの投資誘致が 難しかったため非常に 、資金を調達するのに困難がありました。そのため、正直に言ってその資金面で苦労した時期もありました。

 また、ある時期は、ゲーム性の方向性で迷走したこともありました。『Gungrave G.O.R.E』をオープンワールド方式で作りたいという意見もあったんです。

――オープンワールドですか?

キム一人称視点にしたいというアイデアもありました。ただそうすると、グレイヴの腕しか見えなくなってしまって、近接アクション時はカメラを後ろに引かないといけなくなる。そうすると、ズームイン・ズームアウトが頻繁に起こり、酔ってしまうんです。

 最終的には、『Gungrave G.O.R.E』が乗り越えなければならないゲームは、ほかの人気作ではなくて、『GUNGRAVE O.D.』だと思い定めまして、同作をベースにTPSにして開発を進めることにしました。そこに、適宜1作目『GUNGRAVE』のよさも考慮して、いまの時代にマッチしたゲーム性を追加していったんです。

 社内で『Gungrave G.O.R.E』のテストプレイをしていて、「『GUNGRAVE O.D.』よりおもしろい」という話を聞いたときは、いちばんうれしかったです。

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――本作のパブリッシャーはPLAIONですが、どのような経緯でいっしょにやることになったのですか?

キムIGGYMOBがしんどい時期を乗り越えて、ゲームの方向性も定まった段階で、テストバージョンを作って、いくつかのパブリッシャーに送ったんです。歌手が自分のデモテープをレコード会社に送るようなものでしょうか。そうしたら、5~6社くらいからお話がありました。日本の会社もあったりしたのですが、その中でいちばん「いっしょにやりたい」という気持ちになれたのがPLAIONさんでした。

 会ってお話をしたりしているうちに、野望や夢なども感じられて、コミュニケーションもスムーズに進んだんですね。さらに、PLAIONの担当者のひとりが、内藤さんの大ファンだったこともあり、PLAIONさんと……とのことになりました。

――なるほど。そんなこんなで紆余曲折の末に『Gungrave G.O.R.E』が11月22日に発売されますが、手応えはいかがですか? 冒頭では、「ユーザーの反応に緊張する」ともおっしゃっていましたが……。

キムそうですね。シューティングやアクションが好きな方が『Gungrave G.O.R.E』をプレイしたら、絶対に楽しんでいただけると思います。実際のところ、万人に満足していただけるゲームを作るのは難しいので、シューティングやアクションゲームが好きなユーザーさんに満足していただけたら、大成功だと思っています。

内藤たくさんの人に触ってほしいですね。本作には成長要素もあり、やり込み甲斐があるので、多くの方に楽しんでいただけるのではないかと期待しています。

――最後にファンの方に向けてのメッセージをお願いします。

キム何よりもファンの皆さんに感謝したいです。開発をあきらめそうになる気持ちもあったのですが、それを耐えられたのは、『GUNGRAVE』ファンの皆さんの温かい声援があればこそです。日本はもちろんのこと、アメリカ、フランス、イギリス, 韓国など……世界中のファンの皆さんの応援でようやくここまで来られました。

 少しお待たせしてしまいましたが、ファンの皆さんに満足していただけるものに仕上がっているのではないかと思います。ご期待ください。

内藤ありとあらゆる困難を乗り越えて、今回やっと『Gungrave G.O.R.E』というゲームが皆さんにプレイしてもらえることになりました。本当に、本当にとてつもなくすごいことだと思っています。

 1作目の『GUNGRAVE』や『GUNGRAVE O.D.』がリリースされたときのように、『Gungrave G.O.R.E』もひとつの“強烈ボケナスマイルストーン”になってほしいという気持ちがあります。『Gungrave G.O.R.E』がみんなの心に届いて、プレイ後は「あのゲームでしか味わえない独特のスカッと感があるんだよな~!」みたいな気持ちになってくれることを心から望みます。よろしくお願いします‼

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