MyDearestとイザナギゲームズが共同開発する、VR捜査ゲーム『DYSCHRONIA: Chronos Alternate(ディスクロニア クロノスオルタネイト)』(以下、『ディスクロニア: CA』)のエピソード1(Meta Quest 2版)が2022年9月23日にリリースされます。

『ディスクロニア: CA』エピソード1を先行レビュー。VRで実現した“未来の犯罪捜査”はSF好きにはたまらない至高の体験に!
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 MyDearestといえば、過去に『東京クロノス』や『ALTDEUS: Beyond Chronos(アルトデウス: ビヨンドクロノス)』といったVRの魅力をふんだんに詰め込んだアドベンチャーゲームをリリースしてきた会社。今回の『ディスクロニア: CA』は、前述の2作品に続く“クロノスユニバース”シリーズの3作目という位置づけのタイトルです。世界観は両作品と共有しているので経験者にとってはどこか懐かしく、一方でそれぞれ舞台になっている場所や年代が大きく異なるので、本作で初めて“クロノスユニバース”シリーズに触れるというユーザーでもしっかりと作品世界を楽しむことができます。

 遥か未来、犯罪発生率0.001%の海上都市“アストラム・クローズ”を舞台に、プレイヤーは特別監察官のハル・サイオンとなって、起きるはずがなかった殺人事件の謎を追うというのが『ディスクロニア: CA』の大まかなあらすじです。

 「えっ、そもそも犯罪発生率0.001%って低すぎない!? 殺人事件が起きるはずがないってどういうこと!?」と気になる方も多いと思いますが、これは都市のシステムに秘密があります。30年前からアストラム・クローズでは一部の者を除いて医療用生体ナノマシン“KaiROS”を組み込むことが義務づけられ、このナノマシンによって住民たちは睡眠時に集合的無意識を形成――夢を共有する中で、住民たちはメンタルの状態も診断されています。

 そして、メンタルに汚染が見られた場合は、監察官たちの“メンタリングシステム”によって精神の汚染を取り除かれるという、ケアもバッチリの体制が敷かれていると……。簡単に言えば、アストラム・クローズの住人は“夢の世界を共有することで完全に管理されている”状態なんです。

『ディスクロニア: CA』エピソード1を先行レビュー。VRで実現した“未来の犯罪捜査”はSF好きにはたまらない至高の体験に!

 犯罪も起こらず精神の安寧も保証されているということを考えればユートピアのように思えるアストラム・クローズですが、夢を通じて経験や記憶を共有するという時点で、住人たちは都市のAIシステムに完全に管理されているということでもあります。見かたによってはディストピア的な構造ともいえるわけですね。

 そんな徹底管理された世界で殺人事件が起こってしまうわけですから、それは謎だらけというほかありません。

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 上記のように殺人事件の捜査が本作の中心になりますが、なんとゲームを始めるとプレイヤーは“崩壊していくアストラム・クローズ”に直面することになります。「どうしてこんなことになっているのか? いや、そもそもこれは現実なのか?」とプレイしているこちらの頭の中ではさまざまな疑問が湧き上がるもの。

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移動のチュートリアルも兼ねて、崩壊していく都市を歩き回ることに。世界設定の作り込みに定評のある“クロノスユニバース”ですが、自由にフィールドを動き回れるのは本作が初めて。
『ディスクロニア: CA』エピソード1を先行レビュー。VRで実現した“未来の犯罪捜査”はSF好きにはたまらない至高の体験に!
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 やがてハル・サイオンは、アストラム・クローズの広場で目を覚まします。彼は監察官アッシュ・シェパードの立ち会いのもと、特別監察官の試験を受けている中、上の空になっていたとのこと。さっきまでのことが本当に夢だったのかという疑問は浮かびますが、アストラム・クローズが崩壊しているような兆候は見られません。ところが、試験が再開となったタイミングで、今度はアストラム・クローズの創設者であるアルバート・ラムファード博士が殺害されたというニュースが飛び込んできます。息をもつかせぬ展開の連続ですね。

 殺人事件を扱ったゲームや小説では、主人公は一介の探偵役であって、あくまで“事件の部外者”である場合がしばしばあります。しかし、本作のハル・サイオンはそうではありません。彼は探偵役でありながらも事件に関係する重要人物のひとりで、被害者であるラムファード博士とも深い関係にあります。

 『ディスクロニア: CA』はただ殺人事件の謎を解くゲームではなく、登場人物たちの人間ドラマが主軸。特別監察官として認められたばかりのハルが、そのまま殺人事件の捜査を任せられることになったのも、なんだか裏があるように感じてしまいます。

 いよいよ捜査が始まるというタイミングですが、『ディスクロニア: CA』が本領を発揮するのはここから。夢を共有できるほど技術が進歩した未来だからこそ、事件の捜査も聞き込みをするだけにはとどまりません。何がすごいかをひとつずつ見ていきましょう。

1.ハル・サイオンが使う特殊能力“メモリーダイブ”

 ハルは“変異体”と呼ばれる量子干渉能力者です。過去に大災害を引き起こしたとされ、本作の世界では迫害の対象となっている変異体ですが、彼らが持っている能力はいわば超能力のようなもの。

 ずばりハルが持っているのは“過去干渉”の能力で、これを特定の物質に使うことで、その持ち主の過去の記憶をトレースすることができます。しかも、文字どおり過去に干渉して持ち主の行動を変化させて“現在”をも変えてしまうというとてつもない力を秘めています。さすがに過去に干渉できる範囲も限られており、犯罪自体を止めるようなことはできませんが、犯罪捜査という点で考えればチートのような能力です。

『ディスクロニア: CA』エピソード1を先行レビュー。VRで実現した“未来の犯罪捜査”はSF好きにはたまらない至高の体験に!
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 しかも、左手でオブジェクトをつかみながらトリガーを引くという操作がまた“能力を直感的に使っている”感じがして堪らないんですよ。とてつもない能力者が指先を動かすように自然に能力を行使するというのが、トリガーを引くという簡易な動作で見事に再現されているのはVRゲームならではのよさだと感じます。

2.捜査パートナーの“リリィ”

 物語を進めていくと、ナビゲーターロボットのリリィが捜査に同行してくれるようになります。事件に関する報告などは彼女が担ってくれるので、プレイヤーが手を煩わされることはありません。また、彼女は事件の重要人物たちと昔から接点があり、決して事件の部外者ではありません。ハルに対しても友好的で、話しかけると“なでなで”を要求したり、ちょっとしたゲーム(かくれんぼ)で息抜きをさせてくれたりします。

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 総合プロデューサーの岸上健人氏(MyDearest)と、同じく総合プロデューサーを務める梅田慎介氏(イザナギゲームズ)のインタビューでは、開発チームの中でも人気が高く、“知らないあいだに彼女のアニメーションが増えていた”という逸話もありましたが、それも納得できるぐらい魅力に溢れているんですよね……。

 本作は物語も終始シリアスに進んでいくので、プレイヤーの精神面の負荷を軽減するうえでも、“癒し系”であるリリィの存在は大きいように感じました。

3.拡張夢の世界での住人の“メンタル汚染解消”

 本作では、殺人事件が起こった“現実の世界”と並行する形で、住人たちの意識を統合した“拡張夢の世界”が存在します。そして、ハルは徽章を使うことでこれらの世界の行き来が自由に可能。

『ディスクロニア: CA』エピソード1を先行レビュー。VRで実現した“未来の犯罪捜査”はSF好きにはたまらない至高の体験に!
まるで水中にいるかのような拡張夢の世界は幻想的で、至近距離を魚やクラゲが泳いでいく光景にはついつい見惚れてしまいます。「これぞVR!」というか、正直、この世界を体験できるだけでも本作を遊ぶ価値があるのではないかと筆者は感じました。

 拡張夢の世界では住人たちの本音を聞き出せるので、基本的には事件の聞き込み調査もこちらの世界で行います。ただ、一部の住人は事件の影響でメンタル汚染が進んでいるので(画面上では赤く表示)、メンタリングシステムでこれを解消してあげなければいけません。

『ディスクロニア: CA』エピソード1を先行レビュー。VRで実現した“未来の犯罪捜査”はSF好きにはたまらない至高の体験に!
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 メンタル汚染の解消は“パネルが光った順番を記憶して、タッチでそれを再現する”という一種のミニゲーム。パネルの数も現状では5個程度と少なく、また失敗の猶予が4回もあるので難しいというイメージはありません。仮に5回失敗しても再チャレンジできるので、気負うことなくチャレンジできるインタラクティブ要素と捉えればしっくり来るでしょう。

 メンタル汚染を解消することで、閲覧が制限されていたアーカイブが解放されていきます。筆者も気がつけば“メンタル汚染”で苦しんでいる人を探してひたすら拡張夢の世界を歩き回っていましたし、むしろそれを楽しみに散策していた節も……。必ずしもすべての住人の“メンタル汚染”を解消せずともエピソード1をクリアーすることはできるので、ある種のやり込み要素として考えてよさそうです。

4.充実の“捜査ログ”と“アーカイブ”

 事件のデータをまとめた捜査ログやアーカイブも細かくまとめられており、事件の進展に合わせて少しずつ情報が解放されていくようになっています。閲覧もボタンひとつで直感的に行えるので、これもまた“未来の捜査”という感覚がピッタリ。こちらはエピソード1のクライマックスに行われる“審問”においても大きな手掛かりとなります。

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5.“フローチャート機能”がストーリーと関連?

 ストーリーを進めていくと、あるきっかけでフローチャート機能が解放されます。このフローチャート機能自体が、ストーリーに絡んでいそうな描写もあり、非常に興味を惹かれました。果たして、これが物語の真相とどうつながるのか? そこも注目ポイントになってきます。

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インタラクティブな操作と数々の挑戦的な試みが詰まったVRアドベンチャーゲーム

 上記のように、捜査を進める行為自体がワクワクするようなインタラクティブなギミックにあふれている『ディスクロニア: CA』。SF小説や映画を人並みにしか知らない筆者も、「近未来な世界観で事件を捜査するのはこんなに楽しいのか!」とすっかり夢中になってしまいました。

 フィールドを歩き回る操作感に関してもかなり快適で、スティックでの移動とテレポートによる移動(右スティックを倒すことで釣りのルアーを投げるような感覚でワープできるシステム)をハイブリッドにすると、散策もかなりスピーディーに行えます。ただ、目まぐるしく風景が変わることになるので、3D酔いをしてしまうという方はスティックでの移動を中心にしたほうがいいかもしれません。

 なお、本作では捜査が進むとハルが“敵”に襲われることがあります。プレイヤーが操作に程度慣れたであろうタイミングなので、筆者は切り抜けるのにそこまで苦労しませんでしたが、かなり緊張感のある“かくれんぼ”ができたのも本作のおもしろかったポイントのひとつ。童心に戻った感覚で夢中になってしまいました。

 ここでは敵の注意を逸らすためにフィールド内にあるアイテムを投げるのが有効なのですが、思っていた以上にアイテムが遠くまで投げられず、障害物に引っかかって“自分の目の前”で物音を立ててしまった結果、見事に筆者は過去に戻るハメに……。操作に注意が必要な部分はありますが、ハルは何度か銃撃を耐えられるぐらいタフなこともあって、慣れてくれば突破自体はそこまで難しくありません。失敗しても“直前のシーン”まで戻れるので、何度かリトライをすれば切り抜けられるのではないかと!

『ディスクロニア: CA』エピソード1を先行レビュー。VRで実現した“未来の犯罪捜査”はSF好きにはたまらない至高の体験に!

 アドベンチャーゲームとしての謎解きもかなり骨太。とりわけパズル的な要素はラムファード博士の家の捜査に詰め込まれています。

 まさに体験版ではラムファード博士の家を舞台にしたパズルパートを先取りで楽しむことができましたが、エピソード1ではパズルの内容自体が変化しています。また、新たに追加されたパズルも凝ったものばかり。メモリーダイブによる過去干渉を駆使することで初めて解けるギミックや、複数の部屋を行き来することでようやく解けるようなギミックもあり、筆者がエピソード1でいちばん詰まった部分はもしかしたらこちらのパズルパートかもしれません。いや、謎解きゲームはふだんから遊ぶことが多いんですけど、まさかここまで手強いとは……感服しました。

 プレイ中は「ラムファード博士は自分の家になんでこんなに複雑な仕掛けをしたんだ!」と思ったりもしたんですが、じつはその“意味”も物語のひとつのカギになっているんですよね。こちらはぜひとも実際にプレイしてたしかめてみてほしい部分です。

 殺人事件にまつわる“審問”パートも見どころ。都市を管理するAIユースティスに対して“殺人事件の捜査状況”を説明することになります。手がかりを選択することで殺人事件の概要を説明するだけでなく、プレイヤーは実際に殺人事件の現場を模した仮想空間に赴き、“加害者”としての行動や足取りをトレースすることで事件の流れを説明することになります。それまで事件の真相を大まかにしか捉えていなかったプレイヤーであっても必然的にここで流れを整理することになりますし、誤った行動に対しては登場人物が「それは何か違うような……」とヒントを出してくれるのですぐにわかります。かなりやさしい設計ですね!

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審問で誤った結論に辿り着いても、やはりゲームオーバーにはなりません。やり直すことができるので、もう一度推理を組み立てて挑みましょう。

 挑戦的な試みが詰まった『ディスクロニア: CA』ですが、最大の魅力はやはりシナリオでしょう。エピソード1で描かれる事件と、その謎。そして続くエピソード2やエピソード3がどんな内容になるのか……!? エピソード1では、まだまだ登場人物たちの表層的な部分しか見えていないのではないかという空気をにじませてくれていたので、ここからどんなドラマが待ち受けているのか筆者は胸が高鳴りました。

 推理が好きな人はもちろん、ディストピア(ユートピア)を描いたSFが好きという人にはぜひともオススメしたい『ディスクロニア: CA』。きっと新鮮かつ驚きに満ちた体験が味わえるのではないかと思います。

ディスクロニア: クロノスオルタネイト エピソード1

発売日:2022年9月23日発売予定
価格:2208円[税込]
機種:Meta Quest 2
※エピソード2、エピソード3は発売日未定、価格未定。
※Nintendo Switch版(Non-VR)はフルエピソード収録。発売日未定、価格未定。