2022年9月15日~2022年9月18日に開催される“東京ゲームショウ2022”(TGS2022)。同イベントのインディーゲームコーナー内、Maboroshi Artworksブースでは、制作中のアドベンチャーゲーム『Last Time I Saw You』がプレイアブル展示されていた。
本作は、1980年代の日本の田舎町を舞台にしたアドベンチャーゲーム。毎夜不思議な夢を見る少年“アユミ”が、大型台風の接近を機に不思議な事件に巻き込まれ……という導入部から、町に隠された謎の真相を探る冒険に乗り出すストーリーが展開する。デモ版では、平和な日常に決定的な変化が訪れるまでのプロローグパートを体験できた。
何といっても、陰影に富んだ手描きスタイルの背景グラフィックが圧巻。街並みのディティールに“昭和らしさ”をふんだんに盛り込みつつ、神社など神秘的な場所の空気感を過不足のない画面エフェクトで表現していたりと、“こういう世界”がモニター内に自律的に存在しているかのような印象を受けた。8月に開催されたインディーゲームの祭典“BitSummit X-Roads”でVISUAL EXCELLENCE AWARDを獲得したのも納得のクオリティーだ。
日本のファミリーアニメ風のデザインの登場人物たちとのマッチングも良好。このあたりの絶妙なバランス感覚は、大阪在住歴の長いスペイン人クリエイター、フアン・ファンディーニョ氏(Maboroshi Art Works代表)の審美感によるところが大きい。
シンプルなポイント&クリック操作や、スクロール2Dアクションとしての要素も内包したゲームプレイは、何かのジャンルに特化しているというよりは、場面やストーリー展開に適したシステムがその都度適応されているといった構成。友だちとの会話で急に始まるバッティングのミニゲームをこなすうちに少しずつセリフが進行……など、ナラティブな体験を重視した作りの片鱗が、デモ版からも感じられた。
フアン氏は、フリーゲーム『ゆめにっき』(2004年/ききやま氏)の大ファンであり、2018年にPLAYISMがリリースした同作のオマージュ作品『YUMENIKKI -DREAM DIARY-』の主要制作メンバーだったとのこと。現実と非現実の境界が曖昧なまま進行する本作の不思議なプレイ感覚は“筋金入り”といっていいだろう。
会場で公開されていたデモ版は、Steamのストアページでダウンロード可能。すこし不思議で、ほんのりとした初恋の気持ちも追体験できる物語を体験してみよう。