2022年8月24日(水)、NCSOFTのオープンワールドRPG『リネージュ2M』にてアップデート“アンタラスの咆哮”が実装。その一環として、新武器種“チェーンソード”が登場した。
めでたい時期に恐縮ですが、私はもう助からなさそうです。
MMORPGではありがちな、“ちょっと背伸びして格上のダンジョンに行ったら敵に囲まれてどうしようもなくなった”場面である。キャラクター頭上の赤いHPバーがもうミリしか残っていない。
この状況からは、回復薬を連打してもまず助からない。もうダメだ、おしまいだ。
何と、絶体絶命のピンチから持ち直してしまった。特殊な高回復アイテムを使ったわけではなく、ただスキルをひとつ発動させただけでだ。ずるい。
これがチェーンソードの実力。レベル79というかなりの高レベル帯(2022年8月現在)環境でチェーンソードの使い心地を体験したので、この超回復力の秘密も含めて、レビューをお届けする。
なお、今回は開発環境でプレイさせていただいた。実装内容とは異なる場合もある点はご了承いただきたい。
華麗で細身なイメージとは裏腹に相当なごり押しタイプ
チェーンソードはSTR(力)依存の近接攻撃をメインとする、いわゆる前衛タイプにあたる武器種だ。黒魔術によって目覚めた、血の魔剣士が扱う武器となっている。
前衛用ではあるものの、伸縮する刀身を活かした攻撃により、中距離への攻撃や範囲攻撃も得意としている。直剣の形態と鞭のようになった形態が、攻撃ごとに自動で切り替わっていく。
見た目がカッコいいうえに、伸びる刀身はかなりの射程を誇る……ように見えるが、じつは射程についてはそこまで長くはない。同じ前衛武器種の“二刀流”が“ソニック レイジ”を使ったときのほうが、射程はいくらか長い。
また、攻撃速度は“片手剣”などの標準的な前衛武器種と同じくらい。かといって、“両手剣”のように強烈な一撃や追撃を放つ武器でもない。“槍”のようにふたつのモードを切り替えて戦うわけでもない。
そんなチェーンソードの他武器種にはない特徴が、戦っているあいだに自動で自身が強化されていく固有能力“ブラッディ フォース”だ。
ブラッディ フォースが一定数溜まるたびに、下記のような強力な効果が自動で発動する。
- 4個以下:一定確率で英雄級以下のスタン/ヘイト/沈黙/恐怖/結縛/麻痺/暗黒化防御後、ブラッディ フォースを3個消耗。
- 5~9個:上記能力に加え、スタン命中+10%、状態異常耐性+10%、スキルダメージ増幅+5%
- 10~14個:一定確率で伝説級以下のスタン/ヘイト/沈黙/恐怖/結縛/麻痺/暗黒化防御後、ブラッディ フォースを3個消耗。スタン命中+15%、状態異常耐性+15%、スキルダメージ増幅+10%
- 15個:一定確率で神話級以下のスタン/ヘイト/沈黙/恐怖/結縛/麻痺/暗黒化防御後、ブラッディ フォースを3個消耗。スタン命中+20%、状態異常耐性+20%、スキルダメージ増幅+20%
ブラッディ フォースの保有量上限は、特定のスキルを習得することで増えていく。最大の15個に達するには高レアリティーのスキルが必要になるが、スキルダメージ増幅などに大幅なボーナスが得られるので目指すだけの価値はある。比較的簡単に到達できる9個までの効果でも、その達成難度からすれば十分すぎる効果だ。
そしてこのブラッディ フォースの真骨頂は、スタン(気絶)などの致命的な状態異常を自動で、しかもけっこうな確率で防いでくれるところにある。
今回の取材では、伝説級までのスキルを習得した79レベルのチェーンソードキャラで、高難度狩場である“アデン国境地帯”や“永遠の炎”に突入した。
とくに“永遠の炎”は、その辺をうろついている小柄な敵からしてスタン攻撃を連発してくるという、地獄のような場所だ。ふつうはスタン対策として、装備や“覚醒”による耐性強化など、さまざまな準備と育成が必要なのだが……。
想像以上に状態異常防止効果が発動。減ったブラッディ フォースもあっという間に回復し、強化効果がほぼ途切れない。難しいリソース管理なども一切なく、かなり快適だ。
ただ、それでもスタンにかかってしまうことはある。スタン中は攻撃や移動はもちろん、回復アイテムさえ使用できないので、さすがにピンチとなる。
こんな状況をひっくり返してくれるのが、伝説級スキル(紫色のスキル)のひとつである“ヴァンパイアリック ゾーン”。記事冒頭でも紹介した、自分の周囲にいる敵からHPを吸収する大技だ。
このヴァンパイアリック ゾーンの回復量がとにかくすさまじく、回復アイテムの比ではない。スキルのクールタイムこそ長めだが、装備などで短縮すれば解決しそうなので、文字通りの“回復薬いらず”状態になることも可能に思えた。
伝説級ということで入手はたいへんだが、そもそもこの技が必要なほどの上級狩り場に行く頃には入手までの道のりも見えてきているはず。超回復には高火力によるせん滅やケタ外れの最大ダメージを達成したときとはまた違う、それでいて同じくらい突き抜けた気持ちよさがあった。チェーンソードでプレイするなら、ぜひ獲得をモチベーションにしてほしい。
育成難度と基本性能はどちらもかなり優秀
ブラッディ フォースとヴァンパイアリック ゾーンのインパクトが大きいチェーンソードだが、そのほかの基本的な能力も前衛武器種としてはかなり充実している。低レアリティーの高級スキル(緑色のスキル)と希少級スキルだけでも基本的な能力が揃い、クリティカル率や自然回復能力の上昇といった底上げしたい能力も得られる。
また、希少級の攻撃スキル“ブラッディ スラッシュI”はなかなか便利。ノックバック効果があるので、狩り場で多少は囲まれるのを防いでくれる。同じく希少級のスキル“リリース”を習得すれば、攻撃命中時に一定確率で範囲ダメージやHP回復効果が発動するようになるのもおもしろい。
希少級の1ランク上、ある程度プレイを続ければ入手が見えてくる英雄級スキル(赤色のスキル)にもおもしろいものが揃っている。さらなるパッシブ強化スキルの数々に加え、独自の動きができるようになるのだ。
そのひとつが“チェーン チェイシング”。4~5キャラ分くらいの離れた位置にいる敵をターゲットして、その敵の位置まで一瞬で移動するスキルだ。対象の周辺にダメージを与えてくれる。敵が移動に反応してこちらに向かってくるまでの時間は体感ではけっこう長めで、敵に囲まれたときなどに使うと、なかなかいい時間稼ぎになってくれる。
今回は、先日リニューアルされてより高難度かつ実入りが大きい狩り場を体験させてもらった。“ドラゴン バレーのダンジョン”地下4階の支配区域と呼ばれる危険地帯(マップで赤く表示されている場所とその周辺)や、“クルマの塔”6階の統制区域である。英雄級までのスキルだけでも案外なんとかなりそうな感触だった。
ドラゴン バレーのダンジョンの場合、覚醒などで強化していないぶん“命中”のステータスが足りない状態だったのだが、それでもスキル主体でなら問題なく戦えた。また、分裂してくるクルマの塔6階の敵には範囲攻撃スキルが多い点が非常に有効だった。
あまり制限もなく長時間こもれるという、日常的な狩り場であるこのふたつのダンジョン。ここで快適に狩れるというのは、筆者としては最上級狩場に行けることより重要な点に思えた。
対人戦では相手が得意とするスキルを“盗む”
伝説級のスキルには、さらにおもしろい性能を持ったふたつの対人戦用スキルがある。ひとつが、武器種オーブの強烈な持続ダメージスキル“ペイン オブ カルマ”の完全なメタスキル“ヴァンパイアリック シールド”だ
もうひとつは“ブラッディ スティール”。スティールという名前のとおり、相手の武器種ごとに特定のスキルを盗むスキルとなっている。
この“盗む”というのは、一時的にそのスキルを使用不能の状態にしつつそのスキルがもたらしていた強化効果を取り除き、無力化したスキルの種類に応じた強化効果を自分につけることを指す。
たとえば相手の武器種が弓だった場合、詠唱速度と移動速度を強化するスキル“スタンス オブ スカウター”を盗む。このスキルを盗んだことで強化効果を自分のほうで得られるわけだ。
このブラッディ スティールには、盗み効果のほかにも相手の強化効果をすべて消して防御力と移動速度を低下させる効果もある。3つの効果はそれぞれ別々に一定確率で成否が判定されるので、必ず全部が一度に決まるわけではない。
そのぶん、3つの効果すべてが決まったときの気持ちよさや、逆に決められてしまったときの精神的なダメージは相当なものだった。
対人戦においては、先ほど触れた対オーブのほかにも、状態異常を主力とする短剣に対してブラッディ フォースが役立ったりと、優位に戦える武器種がいくつかある印象だ。そもそもノックバックや結縛により、前衛系の相手とはそれなりに戦えると思われる。
逆に射程の長さや沈黙で主力となるスキルが封じられる問題もあって、弓の相手は苦手に思えた。また、集団戦ではヴァンパイアリック ゾーンが輝くように思えるが、実際は目立ってしまったときの集中砲火に耐えきれるほど防御能力は高くないので、逆に多人数の集団戦は苦手かも知れない。あくまで中規模くらいの集団戦が主戦場になりそうだが、そうなると敵の数が少ないぶん、範囲HP吸収能力が真価を発揮しきれないのが痛いところだ。
強いというよりはおもしろいぜひ使いたくなる武器種
韓国のほうでは、外見のカッコよさから実装前から人気を集めていたというチェーンソード。攻撃面では極端な尖りかたは感じなかったものの、前衛としては全体的に高水準の能力を備え、さらに範囲攻撃も多めということで、ふだんの狩りが非常に快適になる武器種だ。
長くレベリングやレア掘りで狩り続けることになる本作では、快適さやモチベーションが維持しやすい点が非常に重要かと思う。放置狩りとの相性もよく、初心者から熟練者まで扱いやすい武器種と言える。
そして何より、ヴァンパイアリック ゾーンの超回復の様子をぜひ自身の目で見てほしい。筆者が初めて見たときには、あまりの回復ぶりに笑ったほどだった。
MMORPGの記事で“回復薬いらず”という単語を性能紹介に使うことは何度かあったが、本当の意味で不要に感じたのは今回が初めてだったかもしれない。
また、各種攻撃スキルが強力であったり、ほかの攻撃面の各性能が横並びであったりするところから、能力値の割り振りしだいでさまざまなプレイスタイルが考えられるのも魅力だ。
基本となるSTRを最大まで伸ばした後は、範囲攻撃スキルのダメージ増幅のためにWISを伸ばしたり、攻撃速度を上げるためにAGIを伸ばしたり、回復能力と併せて耐久面を強化するためにCONを伸ばしたりと、少し考えただけでもさまざまなパターンが浮かんでくる。
このようにチェーンソードには難しい要素は一切なく、それでいて超回復以外にも日常狩りでほしくなる能力が目白押しだった。『リネージュ2M』の狩りのシステム自体に愛されている、というのはさすがに大げさかも知れないが、そう言いたくなるくらい扱いやすいということだ。
見た目のカッコよさから選んだとしても、その期待に十分に応えてくれること請け合い。使っておもしろい武器種として、さまざまな層のプレイヤーにおすすめしたい。