2022年8月24日~28日(現地時間)に、ドイツ・ケルンのケルンメッセにて開催のヨーロッパ最大規模のゲームイベントgamescom 2022。会場にて、先日発表されたばかりの『アローン・イン・ザ・ダーク』の開発元であるPieces Interactiveのクリエイティブ・ディレクター/シナリオ担当、ミハイル・ヘドベルク氏にインタビューする機会を得たので、その模様をお届けしよう。
先日行われた“THQ Nordicデジタルショーケース2022”で発表された『アローン・イン・ザ・ダーク』は、言うまでもなく1992年にフランスのInfogramesより発売されるや大人気を博した古典的なサバイバルホラー。後の3Dアドベンチャーに絶大な影響を与えたと言われるタイトルだ。
2018年にTHQ Nordicでは、『アローン・イン・ザ・ダーク』の権利を、そのときの権利元だったAtariから取得。今回満を持してという形で“リ・イマジネーション版”を発表したことになる。
本作の舞台となるのは1920年代のアメリカ南部。ある日、芸術家のジェレミー・ハートウッドが行方不明になってしまう。プレイヤーは私立探偵のエドワード・カーンビーとして謎を解明するか、ジェレミー・ハートウッドの姪であるエミリー・ハートウッドとして、何かが潜んでいる施設に潜り込んでいくことになる。行く手に待っているのは、奇妙な住人や悪夢のような世界、危険なモンスターなど……。ラヴクラフトのクトゥルフ神話などもモチーフにされた、独特な世界観が特徴のタイトルとなっている。
開発にあたっては、オリジナルの持つ“サスペンスフルな体験”や“パズル要素”、“シネマティックストーリー”といった魅力を分析し、まさに、『アローン・イン・ザ・ダーク』を“リ・イマジネーション”しているという。
『アローン・イン・ザ・ダーク』は、プレイステーション5、Xbox Series X|S、PC向けに発売予定だ。
軽快で楽しいところがありながら、とても恐ろしい。これが『アローン・イン・ザ・ダーク』の魅力
ミハイル・ヘドベルク氏(Michael Hedberg)
Pieces Interactive クリエイティブ・ディレクター
『Amnesia: the Dark Descent』や『SOMA』などのシナリオを手がけ、本作で初のクリエイティブ・ディレクターを担当。
――『アローン・イン・ザ・ダーク』を蘇らせることになった経緯を教えてください。
ミハイルTHQ Nordicが、IPの権利を所有していることは知っていたのですが、ある日、「『アローン・イン・ザ・ダーク』の権利を持っているので何か考えてみないか?」と提案を受けたときはたいへん光栄に思いました。そこで真剣に考えたんです。私にとって、『アローン・イン・ザ・ダーク』はとても重要なIPであり、このジャンルにおける最初のゲームの1本であることは間違いありません。そこで、新しい年代の方たちに『アローン・イン・ザ・ダーク』を知ってもらうためにベストを尽くそうと思いました。
――オリジナル版をどのように捉えて、どう新しくしようと思ったのですか?
ミハイル私にとっては『アローン・イン・ザ・ダーク』はとても怖いゲームでしたが、とても魅力がありました。怖いだけではなく、それ以上の何かがあり、挑戦的ではなく、一方的でもなく、感情のスペクトルの幅が広いと感じました。その一部を維持し、楽しさ、魅力を引き継ぐことはとても重要でした。軽快で楽しいところがありながら、とても恐ろしい。これが『アローン・イン・ザ・ダーク』の魅力ですね。
――軽快で楽しいところと怖いところという、相反する要素をうまく再現できるようにと?
ミハイルふたつの要素をミックスしたところがおもしろいと思います。軽快な部分は楽しくすると、キャラクターへの愛情にもつながります。それで、そのキャラクターに何かが起きると、プレイヤーは嫌な気持ちになりますし。
――開発していて、チャレンジだと感じた取り組みは?
ミハイルオリジナルに敬意を表しているので、あまり離れたくはありませんでした。オリジナルを知る人たちにもしっかりと認識してもらえるようにしたい。そして、私のゲームにしすぎてはいけないと思いました。
――ストーリーはアレンジしているのですか?
ミハイルストーリーは大きく違いますが、テーマやキャラクターなどは、すべてのオリジナルの要素を維持しています。「オリジナルのクリエイターは、この作品を承認してくれるだろうか」とつねに考えながら進めるようにしました。
――アルノさんはシナリオも担当されているようですが、シナリオを書く上でいちばん気をつけたことは?
ミハイルいろいろありますが、メンタルヘルス、クラシックホラーの要素、コズミックホラー、心理ホラーなどを考えました。個人的には、「自分にはほかの人が考えた素材でリメイクする権利があるのだろうか?」と俯瞰の視点で見ているところもありました。
――オリジナルを大事にしつつ、新しいテーマを盛り込んでいるということですか?
ミハイルそうですね。メンタルヘルスは新しい要素です。オリジナルは使われすぎて文化遺物にようになっているところがありますが、真剣に受け止めるようにしました。軽快でありながら真剣さも取り入れるということです。オリジナルの小さなストーリーは、このジャンルではありがちで予測しやすいのです。
――いまのプレイヤーには、どのように楽しんでほしいですか?
ミハイルあまりいろいろ考えずに、自由にプレイしてほしいです。まずは楽しんでみると、いろいろなものが落ち着いてきて、何か思うかもしれません。怖いと感じながら楽しんでいるかも。
――最後に、日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
ミハイル私は日本が大好きです。東京と埼玉の西川口で3ヵ月滞在したことがあるんですよ。
――あら!なぜですか?
ミハイルスウェーデンでオンライン授業を受けていて、そこには全世界からクラスメートが参加しているのですが、とあるクラスメートから「なぜスウェーデンにいるの?」と言われ、日本に行くことにしました。2005年でしたね。日本語も少し勉強しました。日本のアニメやホラーはスウェーデンでも人気があり、私も大好きです。日本のゲームもたくさんプレイしました。
このゲームを皆さんが気に入ってくださるとうれしいです! また日本に行きたいです。
――『アローン・イン・ザ・ダーク』が完成したらぜひ!
ミハイルそれは楽しそうですね(笑)。
※[2022年9月17日]お名前の記載に誤りがありました。お詫びして訂正します。