2022年8月23日(火)から25日(木)の3日間にわたり開催となった、“CEDEC 2022”(コンピューターエンターテインメントデベロッパーズカンファレンス2022)。こちらの記事では、その3日目に行なわれたセッション“世界の PlayStationユーザー行動履歴の検証”の内容をお届けしていく。

 本セッションの講演者は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントの秋山賢成氏(東京グローバルデベロッパーテクノロジー部 担当部長)だ。

全世界のPSユーザーの動向とプレイ状況を俯瞰して各リージョンの流行を知る。F2Pやオンラインマルチは世界でも人気なのか【CEDEC2022】
全世界のPSユーザーの動向とプレイ状況を俯瞰して各リージョンの流行を知る。F2Pやオンラインマルチは世界でも人気なのか【CEDEC2022】

 こちらの講演では、全世界のプレイステーション4(PS4)、プレイステーション5(PS5)、プレイステーションVR(PS VR)の現行ユーザーの動向やプレイ状況の膨大なデータをグラフ化し、各地域の特徴を浮き彫りにしていった。これらのデータは、グローバル視点でのゲーム制作検討のヒントなどにもなりそうだ。

 なお、重要なデータを取り扱う関係から具体的な数値は表示できないため、グラフによる傾向の紹介となっている点には留意していただきたい。

全世界のPSユーザーの動向とプレイ状況を俯瞰して各リージョンの流行を知る。F2Pやオンラインマルチは世界でも人気なのか【CEDEC2022】
全世界のPSユーザーの動向とプレイ状況を俯瞰して各リージョンの流行を知る。F2Pやオンラインマルチは世界でも人気なのか【CEDEC2022】
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Free to Play(F2P)とオンラインマルチプレイヤー(OMP)、流行のジャンルだがある地域では?

 データ収集対象となったハードについてだが、まずPS4は2013年11月15日に発売(日本では2014年2月22日に発売)され、続いてPS4 Proが2016年に発売された。PS4の発売からは、9年近くが経過しているが、いまなお多くのユーザーに愛されている。

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 そしてPS VRが、2016年10月13日に発売。VR元年と言われたこの年以来、世界中のプレイヤーにPSでの体験をさらに拡張するVR体験を届けてきた。PS5でも動作するため、いまも本機でVRを楽しんでいるユーザーは多い。

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 最新機のPS5は、2020年11月12日に発売。ローンチから約2年のあいだにも、高速ロードと直感的な操作による次世代のゲーム体験を世界中に届け続けている。本講演では、PS4とPS5のユーザーの行動差なども、データから読み解いていく。

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Active Deviceの割合について

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 まずはデータ収集の対象となる、全世界のPS4、PS VR、PS5の実機のうち、ゲームをプレイしたことがあるデバイス“Active Device”の割合と推移が提示された。

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▲調査対象となっているのは、日本、アジア、EU、USの4リージョン。PS5単体で見ると毎月アクティブの割合が増加しており、PS5への移行が進んでいることがわかるという。

F2P/OMPの割合

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 世界的にも人気となっている、F2P(Free to Play、基本プレイ料金無料)とOMP(オンラインマルチプレイヤー)のタイトル。F2Pによってユーザーとデベロッパーの選択肢は格段に増え、またオンライン接続率が非常に高いPS系ハードでは、OMPを多くのユーザーが楽しんでいる。では、その地域ごとの割合はどうだろうか。

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 PS4のF2Pプレイ率。日本のプレイヤーがやや高い割合でF2Pをプレイする反面、アジアのユーザーはF2P以外のタイトルをプレイする傾向が強い。

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 PS5のF2Pプレイ率。PS4の場合の特色が、より顕著に表れている。

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 PS4とPS5のF2Pプレイ率の比較。PS4のほうが割合が高い。ただ、割合が高いという傾向があるだけで、PS4ではF2Pタイトルがもっとも人気といった断言ができるものではない点には注意。

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 PS4のOMPプレイの割合。USとEUの割合がとても高く、日本やアジアはさほど高くない。さきのデータと合わせて、アジアリージョンではF2PとOMP以外の、シングルプレイや買い切りタイトルなどが人気という傾向が見えてくる。

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▲PS5のOMPの割合。PS4よりも差が顕著に表れている。
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▲プラットフォームで比較すると、PS5のOMPプレイ率が高い。

平均プレイ時間の推移

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 世界中では日々忙しい中、多くのプレイヤーがゲームに熱中している。ゲームの多様化によって、そうしたプレイ時間やプレイスタイルにはどのような傾向が生まれているのだろうか。

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 PS4とPS5の合算による、平均プレイ時間の推移がこちら。日本のユーザーの平均プレイ時間が長めで、またPS4とPS5の比較では、PS5のプレイ時間平均の方が長かったという。

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 さきほど触れた、F2Pタイトルがプレイ時間内で占める割合がこちら。日本では人気のF2Pタイトルに対して、プレイ時間の割合もまた非常に高い。日本のユーザーは特定タイトルをプレイしてすぐにやめるのではなく、長い時間遊び続けられるということだろうか。

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 OMPの割合については、EUとUSの割合が比較的高い。日本ユーザーがOMPに割く時間が少なめというのは、少し意外か。なお集計システムの構造上、オンラインマルチ機能があっても集計対象外になっているタイトルも一部だが存在する。

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 2022年6月の平均プレイ時間を、F2P、OMP、それ以外でまとめたものがこちら。日本ユーザーのF2Pタイトルのプレイ時間が多めなほか、アジアでF2PやOMP以外のタイトルが人気という点も裏付けられた。

F2Pも増えた昨今、課金状況やいかに

 続いて講演では、ソフトの購入やDLCといった、購入・課金に関するデータにも触れていった。モバイルアプリからでもPSのソフトやDLCを購入できるようになっている昨今、どのような傾向が生まれているのだろうか。

Discメディア購入と、PS Storeからの購入の比率

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 まずはゲーム本編を物理パッケージのDiscで購入するか、あるいはPS Storeからダウンロード購入するかの比率について。デジタルオンリーの販売が増えてきつつあるなかでも、意外とDiscでの購入者も多い印象のプレイステーションだが、実態やいかに。

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▲一定期間中に両方の手段でゲームを購入したというケースはかなり多かったものの、今回は調査対象から除かれている。
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 地域別に比較すると、日本のDisc購入者の割合が多い。全地域共通でデジタル購入の比率が高いのは予想通りだが、意外とDisc購入者が各地域にまだ結構な割合でいることは、デベロッパーが覚えておくべき情報かもしれない。

ユーザーの課金・購入状況

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 続いては、PS Storeにおけるユーザーの課金や購入の状況についてだ。PS Storeへのアクセスだけでなく、ゲーム内からシームレスにDLC(ダウンロードコンテンツ)などを購入できる形式も普及してきた。

 むしろDLCでトロフィーが拡張されたりと、本編のみで完結するよりも、DLCなどで拡張を続けることを当初から視野に置いたタイトルも増えてきている。

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 Active Deviceに対して、なにかしらのPS Storeでの買い物をしたことがある筐体の割合がこちら。地域別に見ると、差はさほどない。USとEUで課金率が跳ね上がるタイミングがほぼ同一になっているのは、人気のコンテンツや購入トレンドなどが似ていることの表れだろう。

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 各地域ごとの課金総額をActive Deviceの数で割った平均課金額、つまり一台ごとの平均課金額の比率がこちら。見ての通り、日本が比較的高めだ。

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 対象月のうち、課金したユーザーが使った平均額の地域別比較。日本がまたしても高めで、これはつまり日本で一度でも課金・購入をしたことがあるユーザーは、世界水準で見ると多くのアイテムを購入しがちということになる。

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 Active Device一台につき、VC、アドオンコンテンツ、DLC、シーズンパスなどの権利(Entitlement)に対する課金率の割合がこちら。Discの購入率が高めだった日本に関しても、PS Store上でのオンライン課金率はほか地域と比べても高めであることがわかる。

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 上記のようなコンテンツへの平均課金額(地域別)の比較がこちら。やはり日本の平均課金額が多めだ。また、PS4とPS5で比べると、PS5の課金額が世界的に見ても高い。

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▲上記コンテンツの課金額全体における課金割合についても、おおむね傾向は変わらない。
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▲F2Pタイトルに対する課金率。日本の課金率がここでも高く、F2Pを多めにプレイし、さらに課金によって拡張して遊んでいくというF2Pの好循環モデルが、日本では成立しやすいようだ。

VRとトロフィー獲得率からも、おもしろい傾向が見えてきた

 続いては、PS VRのプレイ状況について。PS VRにおいてはゲームだけでなくノンゲームタイトルの分野においても、“没入を越える実在感”を実現したさまざまなハイパフォーマンスタイトルが供給され続けている。そのプレイ傾向はどうなっているのだろうか。

PS VRのプレイ状況

全世界のPSユーザーの動向とプレイ状況を俯瞰して各リージョンの流行を知る。F2Pやオンラインマルチは世界でも人気なのか【CEDEC2022】
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 PS5における、PS VRのプレイタイムの傾向がこちら。順調に増え続けているのが、PS5の普及率やPS4からの移行を示しているのかどうかは、推測の域になるだろう。グラフには含まれてはいないが当然ながら、PS4でVRコンテンツをプレイしているユーザーもまだまだ多い。

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▲2023年の発売がアナウンスされたPS VR2の存在もあり、VRコンテンツは非常にポジティブな状況にあると言える。PS5でのVRユーザーの傾向は、さらに変化していくかも知れない。
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 地域別のPS VRにおける、タイトル別の総時間の割合についても触れられた。EUとUSではオンライン上のコミュニケーションがあり、1プレイが明確に数分で区切れていて、くり返しチャレンジできるコンテンツが人気。日本ではノンゲームコンテンツのプレイ時間が長めで、たくさんのコンテンツを幅広く遊ぶ傾向が見られた。

Trophy(トロフィー)の取得状況について

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 各ゲームで特定の実績を達成することで得られる、Trophy(トロフィー)の取得状況についても傾向が紹介された。トロフィーはゲームプレイの指針や目標となるほか、プレイヤー同士の比較からモチベーションを得たり、全トロフィー獲得時に得られる“プラチナトロフィー”を比べ合ったりといった、ゲームへの熱意にもつながる重要な要素だ。

 昨今は隠しトロフィーや超高難度のトロフィーなどもゲームによっては用意されており、ゲームデザイナーからの挑戦状や、やりこみに対する報酬としても受け入れられている。各地域のユーザーは、これらをどう受け止めているのか。

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▲トロフィーにはブロンズ、シルバー、ゴールド、プラチナの設定を、ゲームごとに用意できる。
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▲調査条件はこちらの通り。直近1年、かつある程度の人気があるタイトルに絞られている。
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 こちらの画像の左表は、ゲームプレイランキングの順に(最上段がランキング1位、以降は上から昇順)トロフィーの平均取得率をまとめたものだ。ぱっと見てわかるのは、トロフィー取得率が30%前後のタイトルが多いという点。人気タイトルには難易度が高いトロフィー設定のものが多いということだろうか。無論、トロフィー獲得が難しいから人気、ということにはならないが。

 右表は各地域ごとに、ランクインした各タイトルについてトロフィー取得率を1位~4位に書き直したものだ。これをさらにまとめてみると……。

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 この通り、日本がトロフィー取得率1位のタイトルが多く、日本のユーザーはトロフィーの取得率が高め。ほかの傾向と合わせてみると、日本のユーザーはひとつのタイトルを長く遊び、かつトロフィーを多く取得する傾向にあることが見えてくる。

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 しかし、プラチナトロフィーの取得率1位のタイトル数を比べてみると、日本ではなくアジアとEUが高めという傾向が出てきた。アジアが取得率1位のタイトルは、トロフィー獲得率自体も非常に高く、アジアで相当やりこまれていることが見て取れる。

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 全体のタイトルに対する、トロフィー取得率の分布がこちら。日本では獲得数が0~10に留まっているタイトルが少なめで、新たに触れたタイトルについてもある程度までは進めることが多い、という傾向が見えてくる。

 取得率80~90%よりも、100%のほうが全世界共通で多めになっているのも面白いところだ。「ここまできたら100%を目指そう」という気概は、世界共通ということか。

PS4/PS5ハードウェアの所有者について

 講演の最後には、さらにユーザー個々人にまつわる傾向にも参考情報として触れられた。PS4、PS5を所有しているユーザーに対し、ゲームの平均所持本数、1タイトルごとの平均プレイ時間、コントローラーのアタッチレートの3点についてだ。

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 まずは直近1年間の、ゲームプレイタイトル数の平均についてだ。USが平均10.7本で一番多く、日本は平均5.9本と一番少ない。

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 こちらは1タイトルごとの平均プレイ時間について。プレイタイトル数が一番少なかった日本のユーザーが、1タイトルに対するプレイ時間がずば抜けて長めとなっている。ふたつの傾向を照らし合わせることで、日本のユーザーには同じタイトルを長時間遊び続ける人が多いということがはっきりしてくる。

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 つぎはPS4からPS5に移行したユーザーの、6か月間のゲームプレイ時間の比較だ。PS5にアップグレードしたユーザーは、平均プレイ時間についても増加傾向にある。アップグレードによりさらに広がったゲーム体験を、より多く楽しんでいるというポジティブな連続性があるのかどうか。照らし合わせて推測するためのデータが他にもほしいところだ。

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 最後に、PS4の標準コントローラー“DUALSHOCK 4”、ならびにPS5の標準コントローラー“DualSense”のアタッチレートについて。これはつまり、PS4とPS5の本体1台あたりに、何台のコントローラーが接続されたことがあるか、という調査だ。

 いちばん多かったのは2台。ここには個人で複数のコントローラーを所有したり、買い替えたりした事例に加え、友人宅にコントローラーを持ち込んだりして二人同時プレイを楽しんだりした事例も含まれる。

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 こちらの講演では実数ではなく傾向のみの提示となったが、それでも複数を照らし合わせることではっきりと浮かび上がってくる各地域の特徴や、より詳しく傾向を知りたいデータなども浮き彫りになった。

 また、グラフには時期についても記載があるため、グラフに大きな変動があったその時期になにがあったのかを照らし合わせ、傾向に影響した要因を調べてみるのも面白いかも知れない。こうした興味深いグローバルデータは、ぜひ今後も定期的に公開していただきたいところだ。