ゲーマー諸氏であれば、2022年の大作のひとつであるフロム・ソフトウェアの『ELDEN RING』(エルデンリング)は楽しまれただろうか。
広がる世界、決して多くない情報から読み取る狭間の地での出来事、あまりにも強すぎる敵……。そんな『エルデンリング』の根幹たる世界観の構築に作家のジョージ・R・R・マーティン氏がかかわったことをご存じの人も多いだろう。
そんなマーティン氏の代表作のひとつに『氷と炎の歌』という小説がある。これを原作としたドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』がまたおもしろいのだ。
ぜひ『エルデンリング』でマーティン氏の構築した世界を楽しんだ皆さんに『ゲーム・オブ・スローンズ』も楽しんでほしいと思い記事執筆に至った。
『ゲーム・オブ・スローンズ 第一章:七王国戦記 4K ULTRA HD』の購入はこちら (Amazon.co.jp)そもそも『ゲーム・オブ・スローンズ』とは?
前述した通り、にジョージ・R・R・マーティン氏の小説『氷と炎の歌』を原作としたドラマシリーズ。第一章~最終章(八章)の全73話で描かれる。
舞台は架空の大陸・ウェスタロス。中世ヨーロッパの雰囲気を感じさせてくれる世界観がゲーマー心をくすぐってくれる。
本作では、そんなウェスタロスで陰謀・策略渦巻く権力争いが展開していく。数多の国や人々の思惑が絡み合いながら動いていく物語は、歴史の1ページを見ているかのようだ。
そして、この世界には人間たちだけでなく、ドラゴンや異形のものまでが存在するのが、おもしろいポイントだ。まさに骨太なファンタジーであり、ゲーマーならば興味をひかれずにはいられない。
しかし、わりと周囲からは「難しい」といった話をよく聞く。いや……たしかにそうなのだ。最初のうちは専門用語を乱発され、この国はどうで……あの国が……みたいなのを覚えられない。
それで挫折していった友人も知っている。
ただ、シーズンが進めば進むほどにそんな感情も薄れていってしまうほどの魅力が本作には秘められている。
以降で、その魅力を3つのポイントからお届けする。『ゲーム・オブ・スローンズ』に興味を持ってくれた皆さんが初見でも楽しめるように、用語などの簡単な解説も記載している。
なお、軽微なネタバレは含むが、ストーリーの核心や流れに関するものは記載しない。
鉄の玉座にまつわる壮大な物語と世界観
『ゲーム・オブ・スローンズ』は知らないという人でも鉄の玉座を見たことがある人は意外といるんじゃないだろうか。鉄の玉座とは簡単に言えば、剣がたくさん刺さった椅子である。
これは七王国――征服戦争を経て統一された領域――の王のみが身を預けられる玉座なのだ。ちなみにウェスタロスの大陸全土を七王国と呼ぶわけではないが、七王国の範囲はかなり広い。
いわば、この鉄の玉座を巡る話といえば、説明しやすくもあるが、そういうわけでもないのが本作のすごさ。『ゲーム・オブ・スローンズ』のお話には、大きく分けると3つの軸がある。
- ジョン・スノウを主軸に描かれる北の“壁”に潜む脅威
- 鉄の玉座を巡って起こるウェスタロスの動乱
- ウェスタロスから海を越えたエッソスという大陸にいるデナーリス・ターガリエンの歩み
この大きな3軸から、さらにウェスタロスに存在する名家や人々のさまざまな思惑が絡み合い、派生して物語が描かれていく。この時点で「ああ、なんか楽しそう」と思ってくれた人がいれば、いますぐ視聴することをおすすめしたい。
ウェスタロスに君臨する諸名家と知っておきたい用語
よし、なんとなく興味が出てきたから『ゲーム・オブ・スローンズ』を観てみよう! そんな感じで見始めると、ひとつの壁にぶつかることがある。それはあまりにも矢継ぎ早に出てくる〇〇家の話。
七王国を長年統治していたのがターガリエン家。いま七王国を統治しているロバートはバラシオン家でロバートの妻であるサーセイの生まれがラニスター家で……この家とあの家はこういう関係が……みたいな説明がとくになくお話はどんどん進んでいくので、たまに混乱してくるのだが、それでも観ているうちにある程度は理解できるようになっていくのだからすごい。
ただ、最初からわかっていたほうが背景を理解しやすいのは間違いないので、よく登場する諸名家を簡単に紹介したい。それぞれの家には標語もあるので、そちらもあわせて記載する。
スターク家
最初に説明すべくはスターク家だろう。なんといっても『ゲーム・オブ・スローンズ』の始まりはスターク家から描かれていくのだから、ここがわかっていないとどうにもならない。
スターク家は北部を統治する名家だ。城主のエダード・スターク(愛称・ネッド)は、妻のキャトリンとの間にロブ、サンサ、アリア、ブラン、リコンという5人の子どもがいる。
また、スターク家の子どもたちとともに育った、落とし子(婚外子)のジョン・スノウ、グレイジョイ家からの人質であるシオン・グレイジョイは正確には“スターク”ではない。
なお、七王国を統治する王・ロバートとスターク家のエダードは古くからの友人。
スターク家の標語は“冬来たる”。じつは第一章1話のタイトルにもなっている。英語版だと“Winter Is Coming”。余談だが、『ゲーム・オブ・スローンズ』にハマってくると意味もなく「Winter Is Coming」とか言い出すこともある。
バラシオン家
諸名家の中では最も新しい家。本拠地はストームズエンドという場所だが、七王国の王であるロバート・バラシオンは七王国の首都・キングズランディングに居を構える。
妻のサーセイはラニスター家の出身で双子の弟であるジェイミー・ラニスターがいる。子どもは3人でジョフリー、ミアセラ、トメンという。
ロバートの末弟であるレンリー・バラシオンが、本来のバラシオン家の本拠地を収めている。
バラシオン家の標語は“氏神は復讐の女神”。
ラニスター家
キャスタリーロックに居を構える名門。スターク家が北部を統治していることに対して、ラニスターは西部を統治している。豊かな資源を抱え、七王国の中でもかなりの力を持っている。城主のタイウィン・ラニスターは、ラニスター家の繁栄を第一に考えて行動する。
タイウィンの子どもは、ロバート王の妻サーセイ、王の盾ジェイミー・ラニスター、小鬼ティリオン・ラニスターとバラエティ豊かである。
ラニスター家の標語は「聞け、わが咆哮を!」なのだが、作中では非公式な“ラニスターは常に借りを返す”で知られる。
ターガリエン家
長年の間、七王国を統治していた名家。作中では過去の出来事である“ロバートの反乱”で一族のほとんどが殺されている。
数少ない生き残りであるデナーリス・ターガリエンは、ウェスタロス大陸の東にあるエッソスで遊牧民ドスラクの族長の妻として生きる。『ゲーム・オブ・スローンズ』でも重要な人物のひとり。
ターガリエン家の標語は“炎と血”。
そのほかの家
上記で説明した以外にもいくつかの家々が出てくるが、これは話の流れとともに覚えていけば大丈夫。鉄(くろがね)諸島の領主であるグレイジョイ家、難航不落といわれる城を持つアリン家、ラニスターに次ぐ富を持つタイレル家、スタークに嫁いだキャトリンの生家であるタリー家、大陸最南部の最上位貴族であるマーテル家がこれにあたる。
詳しい説明は省いてしまったので、標語を記載しておく。なんとなくの雰囲気だけでも感じてもらえれば幸いだ。
- グレイジョイ家:われらは種を蒔かず
- アリン家:高きこと誉の如く
- タイレル家:われら強大たるべし
- タリー家:一族、本分、名誉
- マーテル家:折れぬ、まげぬ、まつろわぬ
気になる・知っ得用語解説
さて、専門用語が多く出てくる『ゲーム・オブ・スローンズ』の中でも知っておきたい用語をいくつかピックアップしていく。説明は最低限にとどめているつもりなので、視聴の際に役立ててくれれば幸いだ。
- ウェスタロス
『ゲーム・オブ・スローンズ』の舞台となる大陸。安定しない季節に苦しめられている。
- エッソス
ウェスタロスから海を挟んで東側にある地域。デナーリス・ターガリエンが逃げ延びた地でもある。固有の言語を使う人々もおり、言葉が通じないこともある。
- 七王国
ウェスタロスでもともと7つの国に分かれていたものが、過去の征服戦争を経て統一された。これを七王国と呼ぶ。各領域はそれぞれの名家によって統治されている。
- 落とし子
たびたび出てくるどころか、よく出てくる婚外子の呼び方。高い地位にある人物と正式な妻との間に生まれていない子が落とし子と呼ばれ、差別されている。地域ごとに特別な苗字をつけられる。ジョン・スノウの“スノウ”も落とし子につけられる特別な苗字のひとつ。
- 王の盾
文字通り、王とその家族を守る騎士たちのこと。
- 王の手
七王国における重要な役職。簡単にいえば宰相。とても権力のある人くらいに覚えておけば大丈夫。
- 冥夜の守人
冥夜の守人(ナイツウォッチ)と呼ばれる、ウェスタロスの北部にある巨大な壁を守る人々。壁の向こう側にあるとされる脅威から人々を守るために一生を捧げる。
俗世とのかかわりをほとんど断ち、脱走した場合は死罪になる厳しい誓いのもと生きる。本来、参加できることは名誉なのだが、最近は犯罪者などが送られる場所になってしまっている。黒い衣服を着るのが特徴。転じて鴉という蔑称がある。
- 野人
北部にある壁の向こう側に住む人たちの呼び方。
- メイスター
ときに医者であり、よきアドバイザーであり、学者でもある。ある場所で修行を終えた後、家の名を捨て城や砦に身を置くが、政治や争いごとにはかかわらない。
- ロバートの反乱
レイガー・ターガリエン(デナーリスの兄)がスターク家のリアナと失踪したことに端を発する。
レイガーの父である狂王エイリス・ターガリエンは、リアナが誘拐されたと訴えに来たリアナの父と兄を処刑してしまう。これを機にリアナの婚約者であったロバート・バラシオン、その兄のひとりであるエダード・スタークが反旗を翻し勃発した反乱のこと。
作中ではあまり語られないため、少し詳細に説明している。
- 王殺し(キングスレイヤー)
ジェイミー・ラニスターの蔑称。ロバートの反乱のときに王の盾でありながら、狂王を殺したことからこう呼ばれる。しかし、実際は父と王都キングズランディングを焼き払おうとした狂王を止めるためであった。
これも作中ではあまり詳細に語られない。
『ゲーム・オブ・スローンズ』を観ていくほどに好きになる登場人物たち
さあ、なんとなく用語も知ったことでもう観たくて仕方がなくなっているころだろうか。それともうんざりしてきたころだろうか……。
でも、最後に個性豊かな登場人物たちについてもふれていきたい……ところなのだが、『ゲーム・オブ・スローンズ』には膨大な登場人物たちが姿を見せる。
誰を紹介しようかだいぶ迷ったが、やはりここは筆者が考える主要な人物たちを少しだけ紹介しよう。
ジョン・スノウ
エダード・スタークの落とし子。本作における主要人物のひとりである。叔父にあたるベンジェン(超かっこいい)から冥夜の守人(ナイツウォッチ)を紹介され、加入することを決意した。
ジョン・スノウの視点では、作中でもぼんやりと脅威だと伝えられているウェスタロスの北部にある壁に関することが描かれていく。
デナーリス・ターガリエン
ターガリエン家の数少ない生き残り。デナーリスの視点では、ウェスタロス大陸とは異なるエッソス地方での物語が描かれることになる。そして、もちろん彼女も本作における主要な人物のひとりである。
最初はおっかなびっくりといった雰囲気をまとった女性なのだが、シリーズを通して成長していく姿は尊敬を通り越して若干の恐れを生んだ(筆者の主観)。
ジョフリー・バラシオン
序盤に視聴者からあり得ないくらのいヘイトを集めまくった(であろう)王子。演じているジャック・グリーソン氏の演技に感服である。とはいえ、彼も重要な人物のひとり。その名演をぜひ、その目で確かめてほしい。
ティリオン・ラニスター
みんな大好きティリオンの兄貴。ラニスターでは末弟だけど……。小人であるために小鬼(インプ)などと馬鹿にされながらも、人間臭く生きるティリオンの姿には兄貴と呼びたくなる何かがある。
あとはラニスターという名家の生まれでありながら、鼻につくようなところがまったくないのも気に入っている。
作中では頭の回転の速さと毒舌でも視聴者を楽しませてくれる。傭兵のブロンとみせるおじさん同士のやり取りは1周回って癒し。
ダヴォス・シーワース
玉葱の騎士であり、元・悪徳密輸業者。英語にするとオニオンナイトと、ゲーマー的には若干ざわつく異名がついている。第二章で初登場。じつは筆者のいちばん好きな登場人物である。画像はないが、おじさんである。
冬来たる。夏だけど……
少し駆け足で『ゲーム・オブ・スローンズ』を紹介してきたが、いかがだっただろうか。ちょっとでも気になってきたという人がいれば幸いだ。
8月19日には4K ULTRA HDの映像商品が発売されるし、わりと見始めるタイミングとしては悪くないのではと思う。
なんとなく『エルデンリング』につられて見に来たら、ちょっと興味が出てしまった人も、ぜひ第一章だけで諦めず、どっぷりと『ゲーム・オブ・スローンズ』の世界に入り込んでもらいたいものだ。
それでは、筆者も久しぶりに見直したくなってきたので第一章からがっつり視聴しようと思う。
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