2022年8月6日、7日、日本最大規模のインディーゲームの祭典BitSummit X-Roads(ビットサミット クロスロード)が京都市勧業館 みやこめっせにて開催。8月6日のDay1ではて、ゲームデザインについてのコンテンツを発信するYouTubeチャンネル“Extra Credits”の制作者・James Portnow氏(以下、James氏)によるステージイベントが行われた。

 James氏は、『Call of Duty』(『COD』)シリーズや『League of Legends』などに携わってきたゲームデザイナー。また、250万人以上のチャンネル登録者を誇るYouTubeチャンネル“Extra Credits”を立ち上げ、映像を通じてゲームの作り方はもちろん、これまでの経験から得た教訓をどのように活用できるかなどをクリエイターたちに向けて発信している。

YouTubeチャンネル“Extra Credits”
【ビットサミット クロスロード】ステージリポート:ゲームデザイナーJames Portnow氏が語る“最初の5分の重要性”。キーワードは掴み・チュートリアル・ご褒美

 今回のプログラムのテーマは“ゲームの最初の5分の重要性”について。これを紐解くキーワードとして、掴み(Hook)、チュートリアル(tutorial)、ご褒美(Reward)の3つを挙げると、より多くのプレイヤーに遊んでもらう、ゲームを評価してもらう上で大切なことを丁寧に説明していた。

 まずは掴みの部分、いわゆるファーストインプレッション。ゲームにおいての掴みはシステム、ストーリー部分、ビジュアルの3つがキモになるようで、「『悪魔城ドラキュラ』のような、すばらしい戦闘やストーリーをゲーム序盤から体験できることは参考にしてほしい」とのこと。加えて、ストーリー面では、なにをインパクトとして見せるかをはっきりさせ、どこまでユーザーを引き込むめるか、ビジュアル面では、『エルデンリング』のように、ゲームをスタートして広大な世界を見た瞬間、「これをプレイしたい」とプレイヤーに思い起こさせるようなことが大切であると語った。

 つづいてはチュートリアルのお話に。チュートリアルは、“最初にすべてを説明しないといけない”というわけではなく、楽しくプレイできるかつ、内容に沿ったものではないといけないという。また、プレイヤーなにかを理解したら、つぎの段階でよりチャレンジングなチュートリアルを用意するといった段階が繰り返し続くよう設計していくことが、ゲームの内容を覚えてもらうために必要とのことだ。

 さらに言えば、ただ単にゲームを説明するのではなく、ストーリーにも踏み込んだものではならないとのことで、「『COD』の試作品を作る際にチュートリアルだけで1ステージを作ったとき、ゲームをプレイする楽しさを入れ込みながら、メカニックが学べるものが作れた」と自身の経験談を明かした。

 そして掴みが上手くいったあと、ユーザーにプレイし続けてもらうための要素となるご褒美。James氏いわく、ご褒美には“瞬間的でその場で与えるもの”、“長期的に与え続けるもの”とふたつあるようで、瞬間的なものは、クリアー画面などのド派手なエフェクト、アイテムや武器を与えるというものが該当する。長期的なご褒美は、「ここまでプレイすれば、これが手に入る」といったプレイヤーとの約束のようなもので、『ファイナルファンタジーX』のスフィア盤のように、キャラクターを育てていくことで新しいアビリティを習得できるというワクワク感などを例に挙げて説明していた。

【ビットサミット クロスロード】ステージリポート:ゲームデザイナーJames Portnow氏が語る“最初の5分の重要性”。キーワードは掴み・チュートリアル・ご褒美

 プログラムの後半では、ステージを訪れた人の質問にJames氏がお答え。「“Extra Credits”で得られたものは?」と質問されると、James氏自身もクリエイターへ向けた活動をしながら、ゲームデザイン以外の音楽といったコンテンツの経験が得られた様子。

 「インディーゲームを作る際、モチベーションを保ちながらリリースするのは、どのようなことが大事か」の質問には、「これからの開発で辛いときが出てきたときに、なぜ開発をはじめたのか、このプロジェクトをやっているのか、最初の経験を思い起こしてゲームに対する愛を呼び起こすのが大事です」と回答。また、息詰ったときは、ゲームの内容を一度そぎ落とすことで、デザイン観点からゲームをよりよくしていくことも、ひとつの手段とアドバイスを送った。

 3つ目の「いいゲームと悪いゲームは?」の質問については、いろいろな見方や答えがあると頭を悩ませつつも、「理想のゲームを作るわけではなく、いま作る中で最高のゲームを作ることが大事です。ゲームを作っているときに、理想を詰め込んでしまってまとまっていないと、ユーザーはそれを感じ取ってしまいます」とデザインの観点で答えていた。

 最後に「間違うことは悪くないです、間違い続けることが悪いんです。一度間違えてそれに気付き、また違った間違いをしても正解に近づいているのでいいんです。しかし、ずっと間違えて固執してしまうと結果的に悪いものになってしまいます」とクリエイターたちにメッセージを伝え、イベントが締めくくられた。

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