2022年8月4日に、iOS、Androidにてスクウェア・エニックスより『鋼の錬金術師 MOBILE』(略称は『ハガモバ』)がサービス開始予定。本作は、全世界でシリーズ累計8000万部を超える人気漫画『鋼の錬金術師』のスマートフォン向けタクティカルRPGだ。
『鋼の錬金術師』はスクウェア・エニックスより発行されている月刊少年ガンガンにて2001年から2010年まで連載され、その人気ぶりからテレビアニメや映画なども展開。ゲームタイトルも数多く発売されている。
そして、原作生誕から約20年の時を経て、スマートフォンで『鋼の錬金術師』のゲームタイトルが新たに展開される。本記事では、メディア用の先行配信版を体験してのレビューをお届け。結論から言うと、スクウェア・エニックスの気合いの入れ具合に驚くほど、とてもよくできたタイトルだった。
原作+αの豪華ストーリー体験
一応知らない人に向けてストーリーを説明すると、『鋼の錬金術師』は強大な力を秘めた“賢者の石”を求めて旅するエルリック兄弟の物語。幼いころに亡くなった母の人体錬成を行うも失敗し、代償として兄・エドワード(エド)は右腕と左足を失い、弟・アルフォンス(アル)は身体を失い、鎧の姿となった。
物語は最序盤のチュートリアル時のみ原作のクライマックスシーンを題材としているが、基本的には原作に沿った物語がメインストーリーモードで展開される。東部辺境の町・リオールに訪れたエドたちが、レト教の教主・コーネロと遭遇するところから物語は始まる。
ストーリーシーンは3Dグラフィックで展開され、ほとんどのシーンはしっかりとカメラワークの付いた、まるで3Dアニメのようなビジュアルで展開。なお一部シーンは、戦闘マップを用いた俯瞰的視点となる。フルボイスでくり広げられるドラマは細かい要素は省略しつつも、しっかりと原作を沿って進んでいくのがなんとも豪華だ。
さらに一部シーンでは2D作画のアニメーションも採用しており、ストーリーシーンがここまでしっかりと楽しめるようになっているスマートフォン作品もなかなかに珍しい。なおシーンは全スキップが可能なほか、タップによるテキストやシーンの省略にも対応している。
原作に忠実なので原作を知っている人は“原作再現の確認”のようなシナリオの楽しみかたとなるが、『鋼の錬金術師』の内容を知らない人にはしっかりとシナリオが楽しめるだろう。
また、メインストーリーとは別にサイドストーリーが用意されており、こちらは原作では描かれなかった“この時あのキャラクターはどうしていた?”というような外伝が楽しめるので、原作既読者も新鮮な気持ちで楽しめるはずだ。なお、サイドストーリーはあくまでサイドという感じでシーンの味付けなどはシンプルだ。
なお、バトルではスマートフォン向けゲーム的に仕方ないのだが手に入れたユニットの状況によって「エルリック兄弟の旅になんでロゼが付いてきてんだよ!?」、「なんでこんな辺境の町にロイ・マスタング大佐が!?」などというシーンになってしまうが、そこはまあ「バトルはバトル」と、ゲームとして割り切るべきポイントだろう。
グラフィックが本当に綺麗!
ここまでのスクリーンショットでもわかると思うが、本作は基本的にトゥーンシェーダー系の3Dモデルを採用しているのだが、これがメチャクチャに豪華! いやもう驚くほどに綺麗かつダイナミックなアクションが多く、とにかく見ているだけでも楽しめる。
たとえば、この手の原作付きタイトルは、物語を描く際に2Dの立ち絵は用意しても、専用3Dモデルを制作せずに汎用モデルなどでシーンの原作再現をしがちだと筆者は思う。だが本作は最序盤のロゼに始まり、ユースウェル炭鉱のホーリング、リオールの料理店のおじさん(ラジオ壊された人)など、細かなキャラクターたちまで3Dモデル化されているのが、あまりにも豪華すぎる。
また、たとえば物語の中でエドの機械鎧(オートメイル)が破壊された、アルの身体が破壊された、などの際もいちいち3Dモデルを用意しているのも驚いた。さすがに全部が全部とまではいかないが、それにしても「そこまでやる!?」と、ゲームを進めるたびに思っていた。
3Dモデルだけでなく、2Dイラストも美麗だ。メニュー画面などイラストのほか、各ユニット(仲間)にはそれぞれ専用の2Dイラストが用意されており、こちらも見ごたえがある。メチャクチャ動くというわけではないが、少しだけアニメーションも付いている。
なお、オプションで画質設定も最高~低の4段階で設定できるほか、高FPSモードにすれば滑らかな映像でゲームも楽しめる。
バトルは骨太シミュレーション!
バトルはターンごとにユニットに指示を出して戦うシミュレーションバトル。ユニットごとに用意された技を使いわけたり敵ユニットとの相性を見ながら行動していく、なかなかに本格的な戦略が楽しめる。そのぶん難度はそこそこ高めだが、慣れればとっつきやすい。
命中率や回避などはないほか、行動前にある程度敵へ与えられる予測ダメージが表示されるのでじっくりと考えながら立ち回れるのがうれしいところ。ゲームオーバーになるとそのバトル中1度だけターンを巻き戻せるコンティニュー機能もユニークだ。
バトルアニメーションも非常に豪華で、とくにいわゆる必殺技の“奥義”は、各ユニットごとに個性的なアニメーションが用意されており、こちらも見どころとなっている。
戦闘はただ敵を倒すだけでなく、ときには防衛ミッションになっていたりとバラエティ豊か。たとえば少女・ニーナ&犬・アレキサンダーのステージでは、ボールを集めて遊んであげるという勝利条件となっており、バトルシステムをうまくストーリー展開に落としこんでいるように思う。
オートバトルもあり、オンにしているあいだ自動でユニットの行動をしてくれる。勝利条件を無視して敵に突っ込んでいくだけなので、余裕のあるステージなら使いやすいといった性能。
戦闘アニメーションはたしかに素晴らしいが、そうなるとテンポ的にどうか気になるだろう。本作には戦闘シーン自体を簡略化する機能もあるほか、1.5倍速での進行もあるので、それらをオンにすればサクサクとバトルを進められる。こだわりのアニメーションをオフにできるというのも、なんともプレイヤー想いの大胆な仕様だ。
育成要素も盛りだくさん!
ユニットは基本的にガチャで手に入れていく。ロイ・マスタングやリザ・ホークアイなどの主要キャラクターのほか、エンヴィーなどの敵キャラクター、ウィンリィなどといった本来は戦闘キャラクターではない者までユニットとして使用可能。このあたりはゲームだからこその活躍が見られるだろう。
レア度はSSR>SR>Rといった具合だが、本作はSSRとSRの差がそこまでないというか、ゲームバランス的に「とりあえず高い性能のSSRユニットを育てて無双する」というようなことがやりにくいように感じた。ちなみに、主人公であるエルリック兄弟もSRで、師匠のイズミや強敵・グリードなどがSSRといった感じ(もしかしたらバージョン違いエルリック兄弟なども今後出ると思うが)。
ユニットにはそれぞれレベルがあり、こちらは戦闘のほか経験値アイテムで上昇する。基本は経験値アイテムでレベル上げしていく仕組み。レベル上限が10レベルごとにあり、それらの解放には素材アイテムを使用する。素材自体がステージ進行に紐づいているので、「とりあえずレベルMAXにしてからチャレンジ」みたいなことができず、一定の難度を保ちながらゲームを進められるのは、ゲームとしていい塩梅のように感じた。
“覚醒ランク”は同一キャラクターを消費して覚醒させる、いわゆるキャラクターの重ね要素。最大☆6まで覚醒させることができ、同一キャラクターの指定がない場合は同じ☆ランクのほかのキャラクターを重ねてもオーケー。下位レア度のキャラクターを育成してから素材にもできるというわけだ。そのため、SR以下のキャラクターのほうが育てやすい。
ほかにも素材消費でステータスなどを上げる“潜在能力”と、絵柄付きのカードを装備して能力を上げる“記憶印影”などもあり、育成要素は非常に豊富だ。
そのほかのコンテンツ
上記の育成はサイドストーリーの周回(最高ランクでクリアーすると1ボタンで周回できる“掃討”がある)や、いわゆるデイリー系などの“クエスト”などで入手していく。メインストーリー開放はプレイヤーレベルに紐づいているため、サイドなどを遊んで育成しながら、メインストーリーを進めていくのが、本作のサイクルだ。
ほかにも放置時間によって素材を入手できる“大陸遊歴”や、バトルの戦略がじっくりと学べる“国家資格試験”など、サブコンテンツも非常に多い。非同期型の対人戦“軍部演習”もあり、こちらは一般的なスマホ系RPGでいう闘技場、アリーナのような存在だ。
遊びやすさをとにかく意識した作りに感心した
最初にお伝えした通り、もうとにかくその気合いの入れ具合に驚いた。スマートフォン向けタイトルとしても想像以上のクオリティーで、スクウェア・エニックスとしても『鋼の錬金術師』を、より長く続くIPにしていきたいのだろう。
それらは見てすぐわかるハイクオリティーのビジュアルや、お伝えしているゲーム性の面でも伝われば幸いだが、なにより本作は、操作周りがとても遊びやすい。ロードはかなり短いし、メニュー画面やバトルの操作レスポンスも非常によく、サクサクバトルしながらスムーズにコツコツ育成できるのが、なんとも触り心地がよかった(システムは多少複雑だが)。
原作ファンはひさしぶりに“ハガレン”の世界に飛び込めるほか、まだ知らない人にもオススメしたいタイトルとなっていた。もちろん基本無料タイトルなので、まずはとりあえずダウンロードしてみよう。