2022年7月21日発売のプレイステーション4、Nintendo Switch、PC用ソフト『信長の野望・新生』(以下、『新生』)。歴史シミュレーションの金字塔『信長の野望』のシリーズ最新作にしてシブサワ・コウ40周年記念作品となる本作は、大胆なシステムの変化が加えられた意欲作だ。本記事では、同作のプレイレビューをお届けする。

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『信長の野望・新生』プレイレビュー。AIの進化や新システムがもたらした、新鮮なプレイ感覚や快適なテンポを堪能せよ!

AI=配下武将が助けてくれる、新鮮なプレイスタイル

 筆者はシリーズ第3作『信長の野望・戦国群雄伝』(1988年発売)以来のシリーズファンだが、第16作である『新生』にいたるまでにはさまざまな変遷があった。ちなみに当時収録されていた武将の数は約400と、『新生』の5分の1以下である。

 その変遷の中でも、『新生』における変化、進化はこれまでとはまったく異質のものであると言える。それが、配下武将たちがみずから考え、動くという“君臣一体”のシステムだ。まずは、AIの進化がもたらしたこのシステムに注目したい。

 『新生』はターン制ではなく、リアルタイムで全国の大名たちが行動し、3Dの1枚マップ上で内政や戦(専用の戦場へ移行する“合戦”を除く)などあらゆる行為が展開するという仕組み。ただしつねに時間が流れ続けているわけではなく、コマンドを入力するときなど任意で時間の流れを止めたりゆっくりさせたりすることもできる。

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 その中で、配下武将たちは周囲の状況やプレイヤーのプレイ内容に合わせてさまざまな“具申”をしてくる。それがまた、かゆいところに手が届くスグレモノだったりするのだ。従来は、自分でせっせと敵味方の領地や武将の状態を調べるなどして情報収集をして、「ここが足りないから、内政に力を入れよう、敵に調略を仕掛けよう、それがいい」みたいに、悲しく自問自答しながらプレイを進めてきたものである。それが、配下武将たちが何も言わずとも調べてよさげな提案をしてくれる。まずはそこに感動した。

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 さらに「いまは金がないから後回しにしておこう」としておきながら、そのことをすっかり忘れてしまっていたりすると、AIが察知して「ここ手を付けられていないみたいなのでやりませんか?」と具申してくるという仕組みにもなっている。

 これまで、AIと言えば単純に難易度や敵の行動にのみ影響のあるというイメージだったのだが、『新生』ではプレイヤーを助けるうれしい存在になってくれた。これによってゲームの難易度が劇的に変わったということはないのだが、遊びやすくなったという意味で大きな革命である。

1553年の大友家で実際にプレイ!

 さて、ここからはゲーム序盤~前半戦のプレイリポートをお届けする。

 『新生』では、5つのシナリオ(時代)が選択できる。“信長”の時代をモチーフにした作品なので、彼が活躍した1546年(元服直後)~1582年(本能寺の変で死亡する直前)までの期間の中から、転機となった時期がピックアップされているという寸法だ。

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 古い年代ほど、多くの大名が各地に割拠しており、混戦の中のし上がっていくスリルが味わえる。『新生』では、とくに序盤ではより多くの城、多くの武将を揃えた大名が有利になる。そのため、よりラクに天下統一を目指したいという人は、古い年代のシナリオで大きめの勢力を選ぶのがオススメだ。逆に、“夢幻の如く”のシナリオでは、巨大勢力だらけになってしまっていて、弱小勢力で始めると、たとえ難易度“初級”でも苦労させられる。各シナリオには“お薦め”の勢力がいくつか設定されているが、まずは素直にそれらを選ぶのが吉だろう。

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 筆者は1553年シナリオで九州の大友義鎮を選択。日本史の授業では“キリシタン大名・大友宗麟(出家後に名乗る)”として有名な九州北部の大名だが、大友家は戦国乱世を最後まで生き残れなかったために、同じ九州で明治維新でも再び歴史の表舞台で輝いた島津家ほどの知名度はない。

 しかし、まず領土が広く、武将もそれなりの数がいて、義鎮本人を始め優秀な武将も多い。とくに有名なのは、のちに立花道雪の名で知られた戸次鑑連(べっき・あきつら)と、高橋紹運の名で知られた吉弘鎮理(よしひろ・しげただ)の“風神雷神”コンビだろう。このふたりに、九州統一の過程で島津四兄弟や龍造寺家の鍋島直茂などを加えれば、人材的にはまったく不自由しなくなる。

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 ちなみに吉弘鎮理が出てくるのは1561年とやや遅めなので、それまでにガンガン九州統一を進めておきたいところである。

 先ほど“城と武将が多い勢力は有利”と書いたが、城が多いと、それだけ全兵士数が多いということになる。そして、それらを率いる指揮官の数も足りていれば、複数部隊で挟撃をくり返して、あっという間に弱小勢力の城を陥落させられるのだ。

 たとえば大友家なら、隣接する肥後の阿蘇家を開幕と同時に攻め滅ぼしてしまえる。試しにゲーム開始して内政のチュートリアルが終わった直後に“献言(軍師的な配下からの方針のアドバイス)”を聞くと「阿蘇家を攻めなされ」と言うはず。ゲーム開始直後は、城の数=戦力なので、複数の城を持っていればそれだけで強いのだ。

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 なお、阿蘇家には文武に超優秀な甲斐宗運(かい・そううん)という武将がいて、彼をゲットできるのは非常に大きい。九州の大名でプレイするなら、まずは彼を狙いに行くのがシリーズでも定跡化しているほどだ。そして返す刀で、南肥後の相良家や日向の伊東家などもポンポンと屠ってしまえば、あっという間に九州の半分近くを制覇してしまったことになる。

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 戦は基本的に自動で行われるので、こちらは攻撃目標を指示するだけ。それはゲーム後半になっても変わらず、プレイヤーの采配が問われるのはどの城からどれだけ兵力を出させるかを調節すること(何も指示しないと全兵力を注ぎ込もうとする)と、敵勢力の軍団とぶつかったときに“合戦(野戦)”を行うかどうかを選ぶことくらいか。ともあれ、序盤は何も考える必要はない。

 ただ、残る九州の2大勢力である肥前の龍造寺家と薩摩の島津家は、優秀な武将も多く、阿蘇家などと同様に何も考えずに攻め込むと、逆にやられてこちらが滅亡の危機に瀕してしまう。彼らを倒すには、さすがにちょっとした準備が必要となる。

 そこで内政をがんばることになるのだが、『新生』では本拠となる城以外は、城主、領主に任命した武将にその土地の内政や軍備をおまかせすることになる。ただ、ふつうにおまかせ状態だと急速な発展は見込めず、そのあいだに周囲のライバルたちが強くなってしまうので、ある程度の口出しが必要となる。それが“城下施設”と“領内諸策”である。城下施設は、建設すると収入や保有可能な兵士数を一気に上げることができるというもの。また、領内諸策は、石高や商業アップをプレイヤーみずから指示するというものとなる。

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 そこでもまださまざまな問題があるのだが、とにかくまあ『新生』ではAIのサポートでラクができるばかりではなく、ちゃんと自分で考えて限りある資金や労力を振り分けていかなければならないようになっている。そんなところで、シミュレーションゲームとしての奥深さが味わえるのだ。

 そんな奥深き内政で悩みながら兵力が充実するのを待っていたら、家臣から「西園寺家を攻めたらどう?」という具申が。西園寺家と言えば伊予、つまり四国の大名である。そんなところを攻めるとはまったく考えていなかった。それで試しにプランを立ててみると、どうも楽勝できそう。

 九州での戦いが膠着していたので、そのあいだに四国のザコ大名たちを刈り取ることにした。西園寺のほか、北伊予の河野家、西土佐の一条家と、ザ・力押しで倒していく。さすがに、阿波・讃岐にいる大大名の三好家や、土佐の長宗我部家はそこそこ強く、彼らの相手をするには兵力が足りない(九州から連れて行くと、その隙に島津家などに攻め込まれてしまう)ので、東進はこのあたりまでか。

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 史実通りの配置とはいえ、このあたりじつによくできていて、ちょっと進むとすぐ障害にぶち当たって考えさせられるのが『信長の野望』のゲームとしてのおもしろさだと言えよう。

 四国に勢力を伸ばして、収入などもだいぶ増えてきたところで、いよいよ九州統一に乗り出す。与しやすいのは北の龍造寺家で、攻め込むルートが複数あるのでとても攻めやすい。じつは『新生』ではこのルートが重要で、自勢力の城から遠いと腰兵糧がすぐ切れてしまって長いあいだ攻撃できないし(兵糧が切れると、あっというまに士気が下がって兵士が激減してしまう)、同じルートに大軍を送り込むと、味方の軍で詰まってしまってムダばかりになってしまったりする。

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 兵糧に余裕を持って、複数のルートを使って攻めることが戦の基本戦術となるのだ。

 そのため、戦にかかる時間は非常に短い。大軍どうしが野戦で激突する“合戦”を行えばだいぶ長くはなるのだが、実際地方統一戦クラスではそれほど機会は巡ってこないはず。

 このテンポのよさは、AIの活躍と並んで『新生』の新しい魅力と言えるだろう。前作『大志』などでも本格的に取り組まれていたプレイのテンポアップだが、『新生』ではとくに実感できる。

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歴史好きを魅了する圧倒的なデータ力

 歴史イベントは数、質ともに大幅に増強されている。

 桶狭間の戦いや本能寺の変など、超重要イベントについては演出も非常に豪華になっており、カッコいいナレーションなども堪能できる。

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 『新生』では、自勢力が絡まないイベントも“風聞”という形で閲覧でき(観なくてもいい)、また“イベント一覧”で発生条件や発生させるかどうかの選択も行えるようになっている。歴史イベントは、桶狭間の戦いで今川義元が死んでしまうなど強制的に有利不利な状況を作ってしまうケースがあり、それを防げるのだ。

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 また、武将数はなんと2200オーバー! もちろん列伝も完備されており、能力や特性などと合わせてチェックするのは歴史オタクのたしなみ。加えて、新たに導入された地域単位の“郡”、さらにはマップで表現される地形など、とにかく細かすぎるデータが充実しているのは喜びの極みだ。

 ゲームとしてどれだけ広がっていっても、こういった細かいところは変わらず作り込んでいるのは、さすが40年続くブランドである。

 全体的にはAIによる助言が入っての新鮮さ、さらにゲームテンポの向上もあって心地よいプレイが楽しめる作品だと言える。そこに、こういったデータや演出がゲームとしてのおもしろさにさらなる加点をもたらしている。シリーズファンはもちろん、戦国好きでまだ『信長の野望』に手を出したことがない人は、ぜひ味わって、深き沼にハマっていただきたい。

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