ゲームの楽しさと興奮と快感を高めてくれるゲーミングギア市場に、ソニーが参戦した。プレイステーション5を販売するソニー・インタラクティブエンタテインメントからではなく、オーディオやテレビモニターを作ってきた総合メーカーのソニーが、ゲーミングヘッドセットとゲーミングモニターというアイテムを送り出してきたのだ。
 
 プレイステーション5をイメージさせる、マットホワイトをキーカラーとしたソニーの新たなゲーミングギア。いったいどれほどの実力を持っているのだろうか。詳しくチェックしていこう。

高精度ノイキャン入りのハイエンド機『INZONE H9』

ソニーの高級ゲーミングギア。ノイキャンヘッドセット『INZONE H9』と4Kディスプレイ『INZONE M9』をPC、PS5で試してみた
周囲のノイズを聞こえなくすることで、ゲームサウンドに専念できる。

 ゲーミングヘッドセットの最高峰モデルが『INZONE H9』だ。価格は36300円[税込]で、かなり高価だ。しかしその実力は極めて高い。なんといってもソニーがオーディオヘッドホンの分野で培ってきた、高精度なワイヤレス・ノイズキャンセリング機能を搭載しているからだ。

 ノイズキャンセリング機能とは、自分の周囲から聞こえてくる騒音を聞こえなくしてくれる機能。ヘッドセットに組み込まれた専用マイクが外部の騒音を取り込み、その騒音(音波)の波と真逆(逆位相)の波を作ってぶつけることで、騒音のみを打ち消してくれる。

 本来は轟音が渦巻く飛行機や電車の中などで快適に音楽リスニングができるようにと開発された機能だ。『INZONE H9』はeSportsの試合で勝つために、敵のわずかな足音を聞き逃すことがないようにという目的で採用された。

ソニーの高級ゲーミングギア。ノイキャンヘッドセット『INZONE H9』と4Kディスプレイ『INZONE M9』をPC、PS5で試してみた
マイクブームの根本近くにある小さな穴が、ノイズキャンセリング用のマイク。

 実際に『INZONE H9』のノイズキャンセリング機能を使ってみると、エアコンの音やPCのファンノイズ、キータイプの音すら消えて、ゲームのBGMやSEに集中できた。足音の察知能力が高まり、まるで耳そのものがよくなったかのようだった。

 また、周囲の人の声もほとんどカットしてくれる。「ごはんできたわよー」の声も聴こえなくなってしまうほど効果が高い。そこで、外音取り込み機能を備えているので装着しながらでも会話が可能となっている。

ソニーの高級ゲーミングギア。ノイキャンヘッドセット『INZONE H9』と4Kディスプレイ『INZONE M9』をPC、PS5で試してみた
イヤーパッドには耳に優しく、そしてしっかりとフィットするソフトフィットレザーが使われている。

 長時間のプレイに専念できるよう、装着感は極めて良好だ。ヘッドバンドに余裕があり側圧は控えめ。イヤーパッドは5万円近いワイヤレスノイキャンヘッドホンの最新モデル『WH-1000XM5』と同じソフトフィットレザーで、耳あたりがよくて気持ちもいい。

 広大な音場が感じ取れる音響性能を持ち、2chステレオでも立体感の強い音楽再生が可能。PCと接続しているときは専用ソフトINZONE Hubを用いることで、立体音響技術の360 Spatial Sound for Gamingも利用可能だ。7.1chサラウンド対応のゲームであれば、音が鳴っている方角をピンポイントでつかめるようになる。

ソニーの高級ゲーミングギア。ノイキャンヘッドセット『INZONE H9』と4Kディスプレイ『INZONE M9』をPC、PS5で試してみた
無線モデルである『INZONE H9』『INZONE H7』にはPCやPS5で使えるUSBトランシーバーが付属する。挿すだけ自動で接続できる。

 また、『INZONE H9』は2.4GHz帯/Bluetoothワイヤレス同時接続が可能だ。PC、プレイステーション5とは2.4GHz帯ワイヤレス、スマートフォンとBluetoothで接続することで、ボイスチャット機能がないゲームであってもDiscordなどを用いた会話ができる。

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コストパフォーマンスに優れる『INZONE H7』

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 『INZONE H7』は、『INZONE H9』からノイズキャンセリング機能を省くなど一部の仕様を変更したモデル。価格は28600円[税込]。

 ノイズキャンセリング機能の価値は高いと感じたものの、ゲームをプレイする環境が静かである。または、FPSではなく『Roblox』や『マインクラフト』のようなサンドボックスゲームを主に楽しんでいるゲーマーであれば、『INZONE H7』でも十分に満足できる。

ソニーの高級ゲーミングギア。ノイキャンヘッドセット『INZONE H9』と4Kディスプレイ『INZONE M9』をPC、PS5で試してみた
左がINZONE H9、右がINZONE H7のイヤーパッド。

 イヤーパッドの材質がナイロンとなるものの、装着感はやはり良好。360 Spatial Sound for Gaming・Tempest 3D Audioも利用できるし、音質の高さも受け継いでいる。シンプルな造形&低遅延ワイヤレスだから、ビジネスシーンでも活用できる。

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PC FPSゲーマーに推したい『INZONE H3』

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唯一の有線接続モデル。もっとも安価な1万円台。

 INZONEヘッドセットシリーズの末弟となるのが『INZONE H3』だ。価格は12100円[税込]もっとも安い。

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やや側圧が強い。しっかりと支えられているとは感じる。

 有線接続専用なので、H9、H7とは音を鳴らすパーツであるドライバーユニットもヘッドバンド構造も異なる。装着感はやや固め。長時間のプレイで使うとやや疲れやすいかもしれない。サウンドは効果音の輪郭を明瞭に聴かせてくれるよう高域を強めており、純粋なゲーミングヘッドセットとして開発されたものだと感じる。FPSゲームとの相性が抜群だ。

 立体音響技術はPCゲームでのみ利用可能。またUSBオーディオボックスが付属しており、PCとの接続を重視したパッケージだ。

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各モデルごとの機能、性能の違い。

4K144Hzで画質を極める『INZONE M9』

ソニーの高級ゲーミングギア。ノイキャンヘッドセット『INZONE H9』と4Kディスプレイ『INZONE M9』をPC、PS5で試してみた
高解像&高リフレッシュレートを求める大人ゲーマーに向けたモニター。

 ソニー初のゲーミングモニター『INZONE M9』の価格は15万4000円[税込]。4Kでも144Hzという高リフレッシュレート性能を持ち、滑らかな描写が可能だ。応答速度1msも誇れるポイントとなる。

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緻密で繊細な描写が可能。ゲームがもつアート性をフルに引き出してくれる。

 10bit・10.7億色表示のHDR 10bit RGBに対応。暗い部分から明るい描写部分にいたるまでのグラデーション表現が自然だし、映し出されているオブジェクトの質感表現力が極めて高い。CGなのに、リアリティが強いと感じさせてくれる。

 直下型LEDバックライトを分割駆動することで、黒を引き締めながらも暗部のニュアンスが残っている。黒つぶれや白飛びが控えめだから、ゲーム内の世界を隅々まで描いてくれる。

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様々なゲームアシスト機能も搭載している。

 FPSゲームのキルレートを高める効果がある、画面中央にクロスヘア(照準点)を表示するなどのゲームアシスト機能も備えている。

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キーボードを収納しやすい独特なスタンド形状を採用。

 『INZONE M9』のスタンドは、前1脚、後ろ2脚の三脚構造となっている。前1脚はモニター表面部より前に飛び出ている。ただし、キーボードを置いたときに邪魔とはならず、むしろ下部にキーボードを収納しやすい構造だった。

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プレイステーション5との連携は?

ソニーの高級ゲーミングギア。ノイキャンヘッドセット『INZONE H9』と4Kディスプレイ『INZONE M9』をPC、PS5で試してみた

 プレイステーション5とINZONEの連携についても紹介しよう。まずはヘッドセットから。『INZONE H9』、『INZONE H7』は電源を付けた状態でUSBトランシーバーをプレイステーション5に挿すことで認識され、自動で接続される。

ソニーの高級ゲーミングギア。ノイキャンヘッドセット『INZONE H9』と4Kディスプレイ『INZONE M9』をPC、PS5で試してみた

 連携機能として、ゲーム音やボイスチャットのヘッドセットのステータスがゲーム画面上に表示される。また、プレイステーション5のTempest 3D Audioにも対応している。

ソニーの高級ゲーミングギア。ノイキャンヘッドセット『INZONE H9』と4Kディスプレイ『INZONE M9』をPC、PS5で試してみた
メニュー画面で“メディア”を選択すると、“シネマモード”に自動で切り替わる。

 ディスプレイ『INZONE M9』は、“オートHDRトーンマッピング”を搭載しており本体のHDR調整を自動で最適化する。また、接続するだけでゲームに最適な“ゲーム1モード”に、映画を観る際には“シネマモード”に自動で切り替わる機能を備えている。

 Tempest 3D AudioTechに対応した『Marvel's Spider-Man: Miles Morales』でしばらくプレイしてみた。ノイズキャンセリングと、Tempest 3D AudioTechによる立体音響、DualSenseコントローラーのハプティックフィードバックの組み合わせにより、効果音や雑踏、音楽がとてもリアルで非常に没入感のあるゲーム体験になった。

※この項は別途取材した編集部によるものです。

よりよいゲーム環境を追求していくINZONE

ソニーの高級ゲーミングギア。ノイキャンヘッドセット『INZONE H9』と4Kディスプレイ『INZONE M9』をPC、PS5で試してみた
高価だが、価値のあるゲーミングギアシリーズとして注目したい。

 INZONEシリーズ全体を見ると、機能を高めた上でさまざまな付加価値をつけたことで高価な値付けとなっていることがわかる。

 『INZONE M9』は、27インチ、4K 144Hzのスペックを実現している10万円以下のライバル製品がすでに存在しているため、割高感が目立っている。とはいえ黒の締りがよく、立体感のある映像表現が可能な直下型LEDバックライト分割駆動モニターであることの価値を見極められる人にとっては、注目に値するモデルだ。まさにハイエンドゲーミングモニターと言える。

 ゲーミングヘッドセットの『INZONE H9』は、効果が如実に表れるノイズキャンセリング機能を搭載しており、一度体験すれば、3万円代の価格でも納得がいくものだ。また『INZONE H7』はゲーミングヘッドセットとは思えないほどの高音質ワイヤレスを実現しているし、シンプルな有線接続モデルの『INZONE H3』も、ヘッドホンメーカーであるソニーの実力を確かめられるものだった。

 ゲーミングモニターは今後、フルHD 240Hzの『INZONE M3』のリリースが予告されている(発売時期・価格は不明)。ラインアップが拡充することで、シリーズ全体の魅力が高まっていくはず。今後の展開にも期待したい。

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