プレイステーション4とNintendo Switchで、2022年7月28日にMAGES.よりリリースされる『アノニマス・コード』。志倉千代丸氏が企画・原作を手掛ける科学アドベンチャーシリーズの最新作だ。

 “メタ科学アドベンチャー”と銘打たれた『アノニマス・コード』の主人公は、東京・中野を拠点に活動する若きハッカー・高岡ポロン。デジタルの恩恵を受ける近未来の2037年の世界を舞台に、ポロンが仲間たちと数々の事件やこの世界の存在意義さえも揺るがす陰謀に立ち向かう。

 本記事では、作品のストーリーをより深く楽しむために、作中に登場する用語や陰謀論、関連したワードを解説していく。本作の発売に備えて、ひと通りチェックしておこう。

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作中のテクノロジーに関連した用語

グレイパー

 二輪でありながら、ジャイロによる疑似重力制御で決して倒れず、自立走行も可能なバイク。モーターに電磁加速システムを採用しており、一般的には“グレイパー型バイク”と言われる。基本的な運転方法、および運転免許は、一般的な自動二輪車と同じ。名前の由来は、“Gravity(重力)”と“Permission(許容)”からなる造語。ジャイロにより二輪でも倒れない姿が、“重力に逆らっているように見える”ことから付けられたネーミングである。
 ガソリンバイクや電気バイクに代わる次世代の自動二輪車として注目されているものの、2037年時点でのおもな購買層はマニアが中心であり普及台数はそれほど多くはない。

 G6 GPSを搭載しており、リアルタイムで自車と他車の動きを計算し、事故が起きそうな場合はそれを回避するよう自動で動く。さらに、無人での自動走行も可能。遠隔から自動操縦で自分がいる場所まで迎えに来てもらうこともできる。

 都心ではサッドモーニングの影響で崩壊し閉鎖・放置されている首都高や一般道を舞台にした、グレイパーを使っての草レースが行われている。そのレースに出場するグレイパー乗りたちは、自身のグレイパーを走行中にハッキングして、GPSによる運転制御システムに反発するような動きを意図的にさせるという操縦技術を用いている。いわばリアルタイムプログラミングで状況に合わせたセッティングをしながら走らせているのである。操縦能力に加えて、プログラミング技術が高い者が勝つのがグレイパーの草レースの特徴である。

 主人公の高岡ポロンは、キーボードをハンドルの装着部にセットして走行中にグレイパーの制御システムのプログラムを書き換えることで走りを調整している。ポロンも草レースには出場経験があり、そこで腕を磨いた。

 ポロンやクロスは自身のグレイパーのメンテナンスを、中野にある顔なじみのチューナーショップ“田淵モータース”に頼んでいる。

『アノニマス・コード』で学ぶ世界のキーワード。ストーリーをより深く楽しむための用語をおさらいして発売に備えよう!

BMI(ブレイン・マシン・インタフェース)

 Brain Machine Interface。デジタル情報を脳の神経ネットワークに直接介入させる技術。LEDアレイ型コンタクトレンズなどの、物理的に網膜上に映像を映し出すものとは原理的に別物である。BMIの使用方法は、耳の軟骨上部にピアス状の電極を装着し、その電極に“キャリアノード”と呼ばれる端末をクリップすることが一般的である。

 視覚の中に電子情報を展開することができ、ネットワークに接続してリアルタイムに広範囲の情報との連動も可能となった。“視線操作”、“音声操作”、“キーボード等の物理端末による操作”、“AR入力端末による操作”などに対応している。また、“VRモード(フルダイブ型)”、“地形センサー機能”、“暗視機能”などの機能がある。

 ただし、この技術はシンギュラリティを後押しするものだという警鐘や、脳への悪影響、犯罪を助長する可能性が指摘されるなど、世論からの反発もいまだ多い。視界映像の録画機能もあるが、他者へのプライバシー侵害行為を考慮して、録画が開始されるとキャリアノード端末の赤いLEDランプが点灯、周囲に対し視界映像録画中であることを知らせるようになっている。

 この時代のハッカーたちにとって他人のBMI視界に侵入し情報を盗む行為(※“シナリーインターセプト”と呼ばれる)は最も効率のいい方法であるが、キャリアノード端末も含めてBMIのセキュリティは高く、他人のBMI視界への侵入にはある程度の時間がかかる。

 2037年現在、30代以下の若い世代への普及率は90%に迫る勢いだが、一方で60代以上の高齢者への普及率は50%弱に留まっている。

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地球シミュレータ

 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の横浜研究所に設置されているスーパーコンピュータ。2002年に初代の運用が始まり、地球規模のシミュレーションによって環境変動の解明や予測を行っている。

 定期的にハードウェアが更新され、2037年では7代目を運用中である。作中ではスーパーコンピュータの一部の処理に量子コンピュータが取り入れられ、膨大な量の計算をできるようになったことで、過去から未来までの“地球上に生きる人類を含めたすべての生物の再現”、“地球上で起きるすべての事象の再現”を目指したシミュレーションシステムの開発が可能となった。

 高精度の地球シミュレータが完成すれば、事実上、国際社会での覇権を手にすると言っても過言ではなく、正確なシミュレートにより歴史上のあらゆる出来事の真実を確認することも、未来で何が起きるかを事前に知ってその対策を取ることも可能となる。さらに、現在のあらゆる情報は丸裸になり、全世界のすべてのセキュリティが無意味になるため、大国間での熾烈な開発競争へと発展した。

 世論はそうした地球シミュレータの危険性に気づき、激しく反発。やがて世界規模での反対運動へと発展していき、G26は各国で開発されているすべての地球シミュレータの開発凍結、以降の(民間も含めた)開発禁止協定に、合意した。

 だが、あらゆるセキュリティを無効化でき、未来を見ることすらできる魔法の箱の開発を、各国はそう簡単には諦めたりはしなかった。実際には多くの国が極秘裏に開発を続行している。

 日本では、防衛省・防衛大臣直下の特殊機関となった“垓機関(がいきかん)”が、秘密裏に2036年から蘇我アスマを主任研究員として迎え、2036年中に地球シミュレータ“GAIA”を完成させた。
(※実在するJAMSTECの地球シミュレータは無関係です)

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自動翻訳

 音声や文字を自動的に翻訳する機能は、2037年のOSには標準で搭載されている。翻訳された音声は、しゃべった本人の声を分析して再現されるため、翻訳後の言葉を本人が流暢に話しているかのように見える。翻訳時にタイムラグはほとんど発生しないため、ポロンたちはほかの国の人たちともコミュニケーションが取れる。

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作中の世界で起きた出来事

SA4D

 Strategic Attack for Defense(戦略的防御攻撃機構)。G26による、“核兵器を無力化することで恒久的な平和を実現する”という構想に基づいて運用されていた人工衛星群。この計画は、地上に対する攻撃機能を持った人工衛星を打ち上げることで、核兵器を無力化するというもの。全機がレールガン兵器を持つ。レールガン発射前に可視光のレーザーサイトで破壊対象を大々的に照らすため、その見た目からレーザー攻撃だと誤認されている。

 2026年にサグラダ・ファミリア完成記念式典と同時に開催されたG26サミットで公表され、わずか数年で400機以上の人工衛星が高度600~1200キロメートルの地球低軌道上に打ち上げられた。

 しかし2036年問題(NTPのエラーを起因として世界規模で発生したコンピュータ誤作動)の影響で、2036年2月6日に誤作動を起こし、G26の各首都を中心に複数回の攻撃を実行。この事故は“サッドモーニング”と呼ばれ、全世界で死者510万人以上を出す大惨事となった。サッドモーニングの際、地上に不時着した機体も存在するが、ほとんどは機能をロックされた状態で現在も地球低軌道を周回し続けており、国連およびG26の各国は、2045年までにすべての機体の廃棄を目指している。

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作中に登場する都市伝説・陰謀論

Cicada3301

 2012年1月、インターネットの画像掲示板“4chan”に謎の暗号を投稿した人物。暗号とともに、「非常に知的な人材を探している」というメッセージと“3301”という署名、そして昆虫のセミ(Cicada)の画像をアップしたことから、“Cicada3301”と呼ばれるようになった。

 投稿された暗号は難解で、ひとつを解いても、さらなる暗号がつぎつぎと現れる仕組みになっていた。さらにネット上だけでは終わらず、ワルシャワ・パリ・ソウル・シドニーなど、14の世界の主要都市にQRコードがプリントされたCicadaのポスターが貼られたこともあった。

 暗号投稿はしばらく続いたが、最初の投稿から約1ヵ月後に突然、「我々は求めていた人材をついに見つけました。これで長い旅路は終了します」というメッセージが投稿され、それ以降、姿を消してしまった。2013年1月に再び暗号が投稿されたが、すぐに途切れ、2036年5月まで新たな暗号が投稿されることはなかった。

 作中では、“Cicada3301”を名乗る人物が“クエスト”と呼ばれる大事件を引き起こしており、世界中のハッカーたちは暗号をCicada3301からの挑戦状だと認識し、事件解決に取り組んでいる。クエストはこれまでに4度発生し、世界中の名だたるハッカーたちが挑戦したが、ひとつとして解決できずに終わっている。

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ファティマ第3の預言

 1917年にポルトガルの小さな町ファティマに現れた、聖母マリアが残したとされる預言のひとつ。5月13日、ルシア、フランシスコ、ヤシンタの3人の子どもたちの前に最初の出現を果たした聖母は、「毎月13日の同じ時刻に同じ場所へ集まりなさい」と告げた。翌月、聖母は本当に現れた。聖母出現の噂は広まり、3度目の13日には5000人もの人々が集まる中、聖母はルシア、フランシスコ、ヤシンタの3人に3つの預言を託した。

 第1の預言は、第一次世界大戦の終わりと、つぎの教皇の時代に大きな不幸が起きることを。第2の預言は、つぎの大きな不幸の前に夜間に不思議な光が見えること、それが神の警告のしるしであることを伝えていた。そして第3の預言は、1960年に発表するよう指示された。しかし子どもたちは預言を大人たちに伝え、その内容を知った当時のローマ教皇は恐怖のあまり失神したという。

 結局、第3の預言の公開は1960年から先延ばしにされてしまい、2000年になって、ローマ教皇はようやく預言を公開。その内容は1981年に起きた教皇暗殺未遂事件に関するものだった。あまりに拍子抜けする内容だったため、この公開はフェイクで、実際はもっと恐ろしい内容なのではないかと噂されている。

 なお、作中にはバチカン教皇庁の特殊機関として、“513聖務室”が登場。その歴史は古く、1917年に結成された後、やがて極秘の特殊部隊へと形を変えて現在にいたる。513聖務室には、ダビデやロザリオ、ローニン、フェリーノといった審議官が所属している。

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ジョン・タイター

 2036年からやってきたというタイムトラベラー。2000年11月、アメリカのインターネット掲示板に現れネット上は大騒ぎになり、たちまち疑問や質問が掲示板に殺到。熱心な討論が始まった。 彼はジョン・タイターと名乗り、自分が乗ってきたタイムマシンと、その操縦マニュアルの写真やタイムマシンの原理図などを部分的に公開する。

 未来から来た彼は、近未来の出来事やタイムトラベルの物理学、歴史干渉、多元宇宙、多世界、時間線や世界線などについても明らかにした。そして登場から4ヵ月後、「予定の使命を完了したので、自分の世界に帰還する」というコメントを残し消息を絶った。

 科学アドベンチャーシリーズにおいて、ジョン・タイターは『シュタインズ・ゲート』にて初めてその名前が登場している。

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アレシボ・メッセージ

 1974年、アメリカのプエルトリコ自治連邦区にあるアレシボ電波望遠鏡の完成式典において、宇宙へ送信されたメッセージ。地球から2万5000光年離れたところにある、ヘルクレス座の球状星団M13に向けて送られた。メッセージは、1679個の2進数表現によるビットから成っている。

 1679という数は、23と73というふたつの素数の積であり、“23×73”または“73×23”の2通りにしか素因数分解できないことから選ばれた。解読者が信号の2進数を2次元の四角形に並べ替えることを意図して作られており、73行23列に並び変えると認識可能な図形になる。この図形は“人類の起源”を表している。

 近年では、NASAのジェット推進研究所チームが、新たに宇宙へのメッセージを送信する提案を行ったと言われており、宇宙人とコンタクトを取るという人類の夢はいまも継続されている。

バチカンのコンピュータ技師失踪

 2012年に発生した、バチカンの主任コンピュータ技師の失踪事件。この人物は、過去にバチカンのコンピュータ・ネットワークにセキュリティシステムを破り、侵入したことがある。騒動発覚後、彼には何らかの罰が与えられると思われたが、バチカンは彼をコンピュータ技師として雇った。

 そして彼は、バチカン宮殿の地下にあるコンピュータセンターのセキュリティシステムを作ったと言われており、このシステムはアメリカの特務機関が持つ同様のものよりもおそらくレベルが高いと、専門家らに指摘されている。

 作中にも、2012年に突如失踪した天才ハッカーとして古里久ケントが登場。ケントは2010年ごろにバチカンのコンピュータ・ネットワークにハッキングを行った後、その実力が認められ、バチカンに主任コンピュータ技師として雇われていた。

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突如失踪した天才ハッカー、古里久ケント。

作中に関連した歴史上の人物

アントニオ・ガウディ

 スペイン出身でバルセロナを中心に活動した建築家。1852年生まれ。1926年没。サグラダ・ファミリアを始め、グエル公園、カサ・ミラなどの作品は、“アントニオ・ガウディの作品群”として1984年にユネスコの文化遺産に登録された。

 サグラダ・ファミリアは、ほかの聖堂より上位の教会堂“バシリカ”であるとローマ教皇から認められているが、1882年の着工以来、140年が経ったいまも完成していない。その理由は、もともと設計が複雑だったうえ、設計図やスケッチの多くが消失しているからと言われている。

 このサグラダ・ファミリアには、4×4のマス目に刻まれた数字を、縦・横・斜め・四隅・中央などに足すと33になる“33魔法陣”が刻まれている。これは大きな秘密を隠すための暗号(コード)“ガウディコード”であるという説も存在するが、その真偽は謎のままである。

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ニコラ・テスラ

 オーストリア帝国(現在のクロアチア)生まれの電気技師で発明家。1856年生まれ。1943年没。学生時代に交流電流の原理を発見し、その後、アメリカに渡ってエジソンの会社で働く。だが、エジソンとは直流電流と交流電流という送電方式の違いで対立し、わずか1年ほどで退社。1888年に交流発電機、交流電動機を発明した。

 交流電流による送電方法は、直流電流よりもコストがかからないうえ、利用者の扱いやすい電圧に変圧できることから、21世紀現在において、交流方式が世界の送電方式の主流となっている。また、磁場の強さを表す国際単位には、彼の名である“テスラ”が採用されている。

作中に登場し、ひけらかすとドヤ顔できそうな用語

モンティ・ホール問題

 アメリカのテレビ番組で、司会者モンティ・ホールが行っていたゲームをもとにした確率論の問題。確率論で導き出された回答に納得できない人が続出し、“直感的に正しいと思う答えと、理論的に正しい答えが異なる問題”として有名。“モンティ・ホール・ジレンマ”、“モンティ・ホール・パラドックス”とも言われる。

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ニュースなどでよく耳にするワード

暗号資産

 “仮想通貨”の改称。仮想通貨とは、デジタルデータのみでやり取りされる通貨で、通常の法定通貨とは異なり、管理するための国家や中央銀行のような組織が存在しない場合が多い。おもにインターネット上での取引に用いられる。法定通貨と区別するために使用されていた仮想通貨という名称は、2020年の改正資金決済法の施行に伴い、“暗号資産”へ変更された。

ブロックチェーン

 データ改竄に対して強い耐性を持つ記録システム。セキュリティが高いほか、システムダウンしにくい、システムにかかるコストが少ないといったメリットがある。ブロックチェーンは、2008年にサトシ・ナカモトと名乗る人物が暗号資産ビットコイン開発のために考案した。

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IoT

 Internet of Things。モノのインターネットと訳され、モノがインターネットに接続すること。また、それを利用したサービスのこと。近年では、モノに搭載されたセンサーを通じてさまざまな情報を集め、クラウド上に蓄積し、AIで分析。その結果に応じてモノから最適なフィードバックをする、という仕組みが増えている。具体的には、人の体温や設定温度の傾向からエアコン温度を自動調整したり、冷蔵庫の使用状況から追加で購入するべきものを通知したりする。

そのほかの用語

世界線

 無数の可能性世界を示す用語。ただし、並行世界として同時に存在しているわけではなく、世界線はつねにひとつしか存在しない。その世界線上では、過去から未来まですべての出来事が決定しているため、同一世界線でどれだけ過去を変えても、同じ結果へと収束してしまう。

 なお、『シュタインズ・ゲート』では“世界線”という横の広がりを持つ概念が使われているのに対して、『アノニマス・コード』では“世界層”という縦の広がりを持つ概念が使われている。世界線理論においては、世界はひとつの世界線の上に収束しており、並列世界が同時に存在することはない。世界層理論においては、世界がいくつもの層になっており、上下に無限に世界が存在しているという考えかたになる。

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2038年問題

 西暦2038年に、UNIX環境で運用されているシステムが誤作動を起こす可能性があるとされている問題。UNIXおよびUNIXから派生したOSは、協定世界時(UTC)1970年1月1日午前0時を起点として経過秒数から現在時刻を計算している。

 この値は、符号付き32ビット整数で管理されているため、2の31乗――およそ21億秒を超えると値がオーバーフローして負の値として扱われてしまう。オーバーフローするタイミングは、協定世界時(UTC)の2038年1月19日3時14分7秒(日本時間12時14分7秒)であるため、“2038年問題”と呼ばれている。

 これによってさまざまなシステムが誤作動を引き起こす可能性があると言われており、問題の対策としては、変数の型を32ビットからより値の範囲の広い型に変更することが挙げられている。たとえば、32ビット整数から64ビット整数に変更することで、問題を回避できるという。

テセウスの船

 同一性に関するパラドックスで、ギリシア神話に登場する伝説的人物“テレウス”の名前が由来となっている。ある物体を構成する部品すべてを別のものに置き換えたとき、「その物体は同じものと言えるのか」という問題。また、置き換えられた古い部品を集めて別のものを組み立てたとき、「どちらがもともとの物体といえるのか」という派生問題も存在する。