Blizzard EntertainmentのアクションRPG『ディアブロ イモータル』では、iOS/Android版が2022年6月1日21時ごろからプレイ可能となり、PCでもオープンβテストを6月3日午前2時ごろから開始する。

 『ディアブロ』シリーズの最新作でありつつ、モバイル対応を念頭に置いた基本プレイ無料のゲームでもあるという位置付けの本作。果たして対人などをやらなくても十分遊べるのか、そもそもスピンオフ的な存在なのか、ちゃんと正史に属する作品なのか? 開発チームにオンラインインタビューをする機会を得たので、そのあたりの温度感を聞いた。

スコット・バージェス

『ディアブロ イモータル』シニアゲームデザイナー

ハンター・シュルツ

『ディアブロ イモータル』リードアーティスト

ローンチでのコンテンツと方針

――まずはβからのアップデートや改善された点、新しいコンテンツなどを教えてください

スコット正式リリースではさまざまな新しい要素を盛り込んでいます。たとえばストーリーはスカーンの待つ“破滅の領域”にたどり着きます。ここには新たなダンジョン“苦悶の縦坑”があり、向かってくるすべてを飲み込まんとする巨大で悪魔的なワーム(ミミズ系の虫)に対峙することになります。

 それ以外にさまざまなアップデートを予定しており、たとえば“固定チーム”(Warband)はもっとプレイヤー本位のシステムになります。ゲーム中での家族のように機能する8人グループを組めますので、“ヘリクアリ”レイドに挑む際の編成のコアとなります。

 そして“闘争の円環”はもっと個々のクランに沿った形に調整され、“ダークギルド”ではなくあなたのクランが“ダーククラン”にして進めていく形になります。それともちろん、PC版の登場ですね。(※編注:このあたりの話は公式サイトのアップデート記事も参照

『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
“苦悶の縦坑”は正式サービスで登場する新ダンジョン。

核はあくまでもキャンペーンなどのPvEコンテンツ

――以前の取材で、第一のコンテンツはソロでできるキャンペーンだと聞いたのですが、それは現在も同じでしょうか? ゲームが対人やレイドに依存しすぎないようにどうバランスを取っていますか?

スコットはい、PvE(※キャンペーンクエストなど、非対人の通常コンテンツ)が我々がまずフォーカスしている部分です。メインキャンペーンは“破滅の領域”まで行きますが、そこから先も続いていきます。数ヶ月ごとにストーリーアップデートがありますし、そこには新しいダンジョンやゾーンがあります。ゲームが続く限りストーリーを拡張し、新しい場所に行き、ディアブロの世界の物語を探索していくことになります。

 その上で“闘争の円環”がありますが、これはPvP(対人)システムではあるもののその要素の多くはPvEに紐づいたものになっています。たとえば“シャドウの策略”はシャドウのためのクエストで、こういったものを通じて(PvE要素の範疇で)チームに貢献できます。

 このように、PvP要素はありますが、それらのシステムの中にプレイヤーが一緒になって何かしたり、自分だけでやれるコンテンツも入れ込んでいるという形になります。

『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
“闘争の円環”は複数のフェーズに分かれ、実際の対人戦が行われるのはその一部となる。(※画像は以前のテスト時のもの)

自分のペースで遊んでも良し。追いつきたい人には追加ボーナスも

――プレイ内容が繰り返しになりすぎないようにどういったことをしていますか? 例えばあなたが一晩に30分とか60分しか取れないカジュアルなプレイヤーだったとして、どうプレイしますか?

ハンターこれは私が答えられますね。自分はカジュアルプレイヤーだと思っていますから(笑)。それで、私はデーモンたちを倒してストーリーを進めていく部分が好きで、それだけでもやることはたくさんあります。ストーリーは大きく、これは大きなゲームです。

 なのであなたがカジュアルプレイヤーで、装備を追求しまくるとかそういう部分までやり込むほどじゃなくても、やることはいっぱいあるので大丈夫です。ある種万人向けと言えるほど大きいですから。

スコットそれと最初の数週間をひたすらやり倒さなくても済むようなシステムで設計しています。ワールドパラゴンレベルがそれで、(サーバー側で設定された基準に到達するまでは追加ボーナスが得られるので)基本的にみんなにあまり置いてけぼりにされずに追いついていけるようになっています。そこで燃え尽きるようなことは私達も望んでいませんので。

『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
ワールドパラゴンレベルはサーバーごとに毎日上がっていき、自分のパラゴンレベルがそれより低い場合ボーナスを得られる。

PC版はモバイル版とのクロスプレイ&クロスプログレッション(進捗引き継ぎ)対応

――以前「Windows 11でAndroid版を出せるのでは」と質問しましたが、まさかフルのPC版が出てくるとは思いませんでした。

スコット発表時点から(PC版への)要望は多くもらっていたんですが、開発しているうちに「うーん、これPCでもイケるんじゃないか?」となってきて、同じ結論に至ったというわけです。

 それとまぁ、PCでやろうとする人はAndroidエミュレーターか何かを使ってどっちみちやるだろうと。それだったらちゃんとリリースするものを遊んで欲しいですし、PC版を提供しようということになったんですよね。

――でも単にPC版を出すだけでなく、フルにクロスプレイかつクロスプログレッション対応というのは結構思い切った決定だと思うんですけども。

スコットそれはそうですね。自分はゲームデザイナーでハンターはアーティストですけども、技術側の人たちが実際かなり印象的なことをやって実現してくれました。

 それとゲームデザイン面から言いますと、シューター(FPS/TPS)だとクロスプレイを実現するのはかなり厳しいと思いますが、ディアブロの場合ならコントローラーやマウス&キーボード操作がすでに確立されていて、今回タッチ操作でもちゃんと設計できたので、クロスプレイの繋ぎ込みの技術的な部分さえ解決すれば、どちらかがものすごい不利になったりせずにイケるだろうという考えがありました。

ハンターBattle.netにつながっていて進捗などもちゃんと記録されるし、Battle.netのセキュリティ保護なども得られるのがいいですね。

――PC版はグラフィック素材が高解像度になったりするんでしょうか?

ハンターグラフィック面ではモバイルのために作られたゲームとなっていて、PCでも基本的には同じです。高解像度用モデルなどはありませんが、PCでも綺麗にはまっていると思います。ただPCのプレイ環境に合わせてUIの変更などは行っています。

『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
PC版(左)ではモバイル版(右)よりも画面に対してUI表示が占める比率が下がっている。

WASDキー操作のほか、オートナビ機能なども対応

――PC版でWASDキーでの移動操作を入れたのも、シリーズの過去を考えるとなかなか興味深い部分です。公式ブログ記事でもちょっと書かれていましたが、あれの背景を教えてください。

スコットあまり詳細に説明できるかちょっと怪しいのでブログ記事を見て欲しいのですが、社内でPC版のテストをしていてタッチ操作ベースで設計していたスキルなどとマッチするのがわかったというのが大きいですね。

 そもそもWASDを移動に使うゲームは多いですし、それを入れたほうがすんなり行って楽しくプレイできたので「これを外す理由あるか?」という感じでした。

 自分はコントローラーを持っているんですが、使う必要を感じない時はタッチパッドでも問題なくプレイできましたし、同じようにマウス指定でもWASD操作でもスムーズに行って、いずれも選択肢としてちゃんと機能するようにできました。

――本作のモバイル版ではアイテムなどを拾ってくれるオートピックや、一度クリアーしたエリアなら目的地を指定すると自動で移動してくれるオートナビなどの機能がついていますが、これはPC版でも同様でしょうか?

スコットはい、モバイル版とPC版は基本的に同じです。違いはキーボードやPCモニターのサイズに合わせたユーザーインターフェース表示といった部分ですね。

『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
PC版ではWASDキーによる移動操作が可能。(※従来はマウスクリックでの移動)
PC版とモバイル版の双方でコントローラー操作に対応している。

“モバイルのディアブロ新作”としての特色

――シリーズの古参プレイヤーは「ディアブロ」という名前を聞いたら大体こういうものだとあたりをつけると思いますが、一方でこのゲームは過去のディアブロと意図的にちょっと異なるものではありますよね。その違いを説明するとしたらどうしますか?

スコット私がこのゲームに興奮している理由のひとつは、これがモバイルでの体験だということです。

 モバイルゲームでありながら、かつてのプレイヤーが好んだ往年のディアブロの体験が本当にできる。山のようなデーモンを倒して大量の報酬を得たり、そこから自分のスキルを向上させるレジェンダリーを探したり……といったことのすべてがあります。

 でもそれだけでなく、これはモバイルゲームですからモバイル向きのシステムやコンテンツに寄ってもいます。たとえばゲームに飛び込んでサクッと10分やれるコンテンツですとか、一方ではソファーに寝っ転がりながら数時間やるようなものもある。ハンターが先程言いましたように、幅広いコンテンツを用意していますから。

 それと同時に、ソーシャルな要素にもフォーカスしています。これはMMOアクションRPGですから、クランとかさっき話した固定チームとかPvP要素があって、本物のソーシャルなMMOゲームです。ですのでディアブロとして新しいものもたくさん見つけられると思います。

ハンターディアブロという偉大なゲームを前に「ヘイ、これ使ってもうぜんぜん違うことやろうぜ」と扱おうとしているわけではないですからね。これまでのディアブロに対して間違いがないものにしようというのが我々の目標でしたから。

 だからスマートフォンを手にとって遊ぶというスタイルは異なるかもしれませんが、そこに流れるアートや世界やストーリーの雰囲気は変わりません。これは本当にディアブロなんだと考えています。ディアブロという“車輪の再発明”をする気はないわけです。

 もちろんゲームプレイの要素や新システムで過去になかったものもありますが、ファンの皆さんが好んだディアブロからそれないよう意識してやっています。人によっては違う意見を持つ人もいるかもしれませんが、開発チーム側での意識としてはそんな感じですね。

『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
ボスの攻撃判定が図形状になってたり、いい意味で「普段よりも遊んでる」感じがあるのも個人的に好き。

大作モバイルアクションRPGとしての特色

――では逆に、モバイルゲーマーに本作のモバイルのアクションRPGとしての違いを説明するとすれば?

スコット「最高のモバイルゲームを期待してください」と言うでしょうね。それは大胆すぎる発言かもしれませんが、このゲームはすごくいいですし、とても楽しめると思います。コンテンツもすごく多いですし。

 それに基本無料のゲームで、ストーリーのある部分まで行ったら課金をやっていかないと厳しいということもありません。ストーリーは全部無料で遊べますし、ダンジョンも同様です。ゲームのすべての要素が無料で、アップデートコンテンツも同様です。(※編注: 有料のバトルパスやコスメティックアイテム、一部リソースアイテムを入手する手段の手っ取り早いオプションとして課金が用意されていたりはする)

 またクイックに遊べるコンテンツとじっくり遊べるコンテンツの双方を用意しています。そしてスマートフォンの電池がなくなったら、PCに移ってプレイすることができる。クロスプレイ・クロスプログレッションにフル対応しています。サーバーの違いなどもありません。ずっと楽しむことができます。

ハンターつけくわえるなら、世間にはAAA(超大作の)モバイルゲームがありますが、これはその中でも大きなモノだと思います。私達からしてもAAAのクオリティがありますし、時間と労力を注ぎ込んで万全なものとなるようやってきました。

 細かなディテールやサイズや目標とするところ、そしてゲームの中に組み込まれているシステムに至るまで、モバイルにはかつてないものだとお気づきいただけるのではないかと思います。少なくとも私はそう見ていますね。

『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
ハクスラアクションRPGの代表的シリーズ、それがディアブロ。戦闘を繰り返し、報酬で装備を極めていく。

シリーズの正史に属する正規の物語

――ところで本作の物語はディアブロ世界の正史と考えていいんでしょうか?

スコットはい、もちろんです。これはディアブロフランチャイズの正規の作品です。なのでディアブロらしいダークで荒々しい物語のトーンを維持するよう意識してやっています。自分としても今後の展開が楽しみです。

――モンスター図鑑のようになっていて敵それぞれのアートを見られる“怪物にまつわる書物”が個人的にスゴい好きなんですが、あれはどうして入れることにしたんですか?

スコットクルッと振り返って「ではあなたはなぜ好きなんですか?」と言うところですね。私達が作った理由も同じですよ。

 たくさんのコンセプトアートがあったのでそれを見せたかったですし、そもそもモンスターの数も多いですからこういうのは合うと思いましたし、彼らについて背景を読めたりしたらいいじゃないですか。私もああいうの全部読み尽くすタイプなので。

 なのでああいったシステムに取り掛かるのはしっくり来ました。少しずつページをアンロックしていくのが楽しいシステムになっていますしね。これはいいじゃないか、やろうとなったんです。

ハンター私が好きなのと同じ理由で皆さんが好きになってくれると思ってましたよ。ディテールに富んだゲームをプレイしていて、でも上からの視点で見ているわけじゃないですか。

 それで“怪物にまつわる書物”のページをアンロックすると、そのクリーチャーや悪役の姿をペンシル画なりフルカラーのイラストなりで見ることができて、その敵を新たな角度からより間近に詳細に見られる。

 アート素材やコンセプトアートなどが好きなら、次に物語を読めるのはなんなのか楽しくなってくる。なので気に入ってくれたのはすごくわかります。自分としてもあれを進めていくのは、自分たちが描いたくせに楽しみにしています(笑)。

――アートブックなどを出したりはしないんですか?

ハンター現時点で公式に言えることはないですが、アート担当の人間としてはもちろん、そうやって人にまとまった形でお見せできるならいいですね。望む声が増えればなにか動けるかもしれませんし、様子を見てみましょうという感じですね。

『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
怪物にまつわる書物では各モンスターのアートや物語を読める。

――では最後に、このゲームの“あなたにとって”一番の部分を教えてください。広報のことは忘れて! 個人的なやつを聞きたいんです。

ハンターたくさんあるのですが、私はコンセプトアーティストとしてキャリアを積んできましたから、やっぱりデザインが好きなんですね。だからたとえばコスメティック(外見だけを変えるカスタマイズ)などもこれまでより自由にやれたので、本当に面白いデザインをいくつも手掛けることができました。

 アーマーセットなどは普通はそのゲームの世界のいくつかのルールに沿ったものにしなければいけないわけですが、コスメティックアイテムだとそうではない。解剖学的に変えてしまったり、死霊にだってなれる。RPG的な要素もあります。

 こうした自由を与えられるとアーティストとしてはフレッシュな領域を模索できます。自分の作業の方向性としてだけじゃなく、個人のプレイヤーとしても気に入っています。先程話した“怪物にまつわる書物”も好きで、新しいページとともにストーリーがアンロックされるのも楽しい。

 またあるゾーンでの冒険に区切りがついて新たなゾーンに入っていくのもワクワクします。新たなカラーがあって新たな倒すべき敵がいる。これはそもそも私がゲームを遊ぶ上で好きなことでもありますね。

『ディアブロ イモータル』の特色やPC版の仕様を聞く。6月1日夜にモバイル版、3日にPC版オープンβを控えた本作の開発インタビュー
死霊系のコスメティックアイテム(アッシュウォルドの幽霊)の例。

スコット自分はもうちょっと抽象的なことになりますが、これがモバイルゲームであり、ディアブロとしてもっとも意欲に溢れた作品だという部分に誇りを持っています。

 とにかく大きなゲームですから。8つのゾーンがあってそれぞれにダンジョンがあり、フルなストーリーとキャラクターたちの物語がある。彼らを愛することもあるでしょうし、まぁ死んだり救ったりもある。いろんな感情が描かれます。

 そして巨大な敵に挑むヘリクエリレイドなんかもありますし、自分たちでもどうやったのか信じられないぐらい本当にいろいろある。そしてその上でPC版もある。いや、広報が言わせているように聞こえるかもしれませんが、本当に全体的に誇りを持てるものになっています(笑)。