Cygamesが展開するデジタルカードゲーム『シャドウバース』(Shadowverse)。2022年5月14日~15日、本作を競技タイトルに据えた国内最大級のeスポーツ大会“RAGE Shadowverse 2022 SUMMER”の予選大会が開催されました。じつに2年ぶりのオフライン開催となります。

 参加者たちは2年ぶりのオフラインイベントにどのような感想を抱いたのでしょうか? また、オンラインでも十分なカードゲームの大会をわざわざオフラインで開く必要はあるのでしょうか? その是非について、本稿では来場者の声を交えて筆者の考察を掲載します。

Shadowverse 5周年オリジナルPV

RAGE Shadowverseとは何か

 まずはこの写真をご覧ください。幕張メッセのホールを埋め尽くす参加者たち、この全員が『シャドウバース』のプレイヤーです。

【シャドバ】ゲーム大会をオフライン開催する必要性はあるのか? 2年ぶりのオフ復活について参加者の生の声を取材した“RAGE Shadowverse 2022 SUMMER”

 近年、集客力のあるeスポーツイベントといえば、プロゲーマーを応援するイベントであることが多いですが、RAGE Shadowverseは“プロゲーマーのプレイを観戦するイベント”ではなく“一般人がプロゲーマーを目指すイベント”として国内最大規模といえます。

 プロゲーマーであろうとアマチュアであろうと本イベントのルールでは平等に扱われ、プレイヤーたちは優勝賞金1000万円と名誉を目指して戦います。会場の雰囲気はイベントというよりも試験会場のような緊張感があり、静寂に包まれた場内では運営アナウンスの声のみが響き渡ります。将棋や囲碁の大会に近いものを感じます。

【シャドバ】ゲーム大会をオフライン開催する必要性はあるのか? 2年ぶりのオフ復活について参加者の生の声を取材した“RAGE Shadowverse 2022 SUMMER”

 緊張感のある本戦だけでなく、飛び込みで参加できるサイドイベントも用意されており、今回からは、2022年4月にリリースされたばかりの最新アナログカードゲーム『Shadowverse EVOLE』を体験できるイベントが加わっていました。

【シャドバ】ゲーム大会をオフライン開催する必要性はあるのか? 2年ぶりのオフ復活について参加者の生の声を取材した“RAGE Shadowverse 2022 SUMMER”

 昔、『遊戯王』や『マジック:ザ・ギャザリング』をプレイしていた筆者としては、ついつい気になってしまう新作カードゲームです。初心者講習会はつねに順番待ちの大盛況。会場ではブースターパックが抽選での販売になっていました。

参加者にインタビュー!「2年ぶりのオフイベント、ぶっちゃけどうでした?」

 では2年ぶりのオフライン開催となったRAGE Shadowverseについて考えていきましょう。まずは参加者たちがどう感じたのかが気になるところです。会場にいた方々を捕まえて単刀直入に「RAGE Shadowverseのオフライン開催についてどう思うか?」と質問してみました。

僕はどちらでもいい! 私は断然オフライン派!

【シャドバ】ゲーム大会をオフライン開催する必要性はあるのか? 2年ぶりのオフ復活について参加者の生の声を取材した“RAGE Shadowverse 2022 SUMMER”

男性(左) オフラインとオンラインの両方を経験してきましたが、オフラインの欠点は会場までが遠いことです。ただ、シャドバを調整してきた仲間と会えるし、その仲間の友人たちと偶然の出会いがあるのがうれしいところです。あとすぐに負けても、周囲に仲間がいるとそのままご飯にいけるので(笑)。待ち時間については、仲間と喋っているとすぐに時間が過ぎるので、オフラインの方が待っている時間が体感的に短く感じる気がしますね。

 (オンとオフ)それぞれのよさがあって、オンラインは遠方のプレイヤーも気軽に参加できるので、オンライン開催でプレイ人口を増やして、たまにオフイベントを開催して参加してもらうのもありだと思います。

女性(右) 私はどちらかというとオフラインの方が得意なんです。対戦中に相手の表情を伺いながらプレイをしているので。相手の顔色を見ながらカードを選択するのはオフラインならではの戦いかたです。「ここは詰めようかな?」って迷ったら、ちょっとカードを出してみて、相手が動揺していたら、そのまま動き続けてみたり。

 オンラインだと盤面以外の情報がないので、いつものレート戦をやっているみたいになっておもしろみに欠けるんです。プレイヤーによってオンラインとオフラインで向き不向きがある気がします。

オンとオフどっちでもいい……けど

【シャドバ】ゲーム大会をオフライン開催する必要性はあるのか? 2年ぶりのオフ復活について参加者の生の声を取材した“RAGE Shadowverse 2022 SUMMER”

男性(右) (昔からRAGEに参加している身としては)オフラインは受付後の待ち時間があったり、開始前に毎回同じ説明があるのが難点なので、だんだんオンラインの快適さが魅力に思えてきました。ただ、もし可能だったら(オンライン or オフラインを)選ばせてほしい気もしますね。とはいえどちらの形式でRAGE Shadowverseが開催されたとしても、僕たちは必ず出場します!(笑)

男性(左) オフラインはお祭り感があるので、みんなで集まってワイワイできるのはいいことだと思います。今回は復活した初回なので2年前のような本調子ではないと思うのですが、せっかくオフラインで開催するのであれば、思い出に残るようなイベントにしてのしいと思いますね。

初めてのRAGE Shadowverse参加、会場に来て気づいたこと

【シャドバ】ゲーム大会をオフライン開催する必要性はあるのか? 2年ぶりのオフ復活について参加者の生の声を取材した“RAGE Shadowverse 2022 SUMMER”

男性(左) 京都から来ました。オンラインのRAGE Shadowverseに当選したことがあるのですが、大会当日に寝落ちしてしまってダメでした……なのでRAGE Shadowverseは今回が初参加ですね。こんなにも多くの人が同じ空間で同じゲームをプレイしているのが感動でした。いま1敗してしまったので、あと1回負けたら観光してご飯でも食べようと思います。

女性(右) ふだんは彼がプレイしているところを隣りで見ているだけなので「このゲームをこんなに多くの人がやっているんだ」って驚いています。私も高校生のときに少しやっていたのですが、難しくて止めちゃいました(笑)。だからこの会場で皆さんがカードを自由自在にプレイされているのを見て「スゴイ!」って感じています。

私たちにとって、RAGE Shadowverseはプロ選手(推し)と会える唯一のイベント

【シャドバ】ゲーム大会をオフライン開催する必要性はあるのか? 2年ぶりのオフ復活について参加者の生の声を取材した“RAGE Shadowverse 2022 SUMMER”

女性(右) 私たちシャドバプロリーグの選手のことが大好きで、私はとくにGxG(読売新聞社が運営するeスポーツチーム。公式サイトはこちら)のフォレスト選手のファンなんです。いつも心がアツくなる試合を見せてくれます。

女性(中) GxGはとてもいいチームで、こちらの応援に必ず応えてくれるんです。試合のパフォーマンスでも応えてくれますし、オフイベントで声をかけるとサインや写真に快く笑顔で応じてくれるのもうれしい。

女性(左) 私は推しの選手が辞めちゃったのですが、GxGというチームが好きなのでいまも応援しています。

女性(右) オンラインだけだと遠くから応援することしかできませんが、こういったオフイベントがあると差し入れを渡したり、応援の言葉を直接かけられるのでありがたいですね。直接、想いを伝えられるのはRAGE Shadowverseだけです。だから、この2年間はすごく苦しかったです。

女性(中央) オフラインでこういうイベントがあると、プロ選手と近い距離で交流ができて、差し入れしても快く受け取ってくれるので。

女性(右) (オフイベントがあると)会えるし、直接言葉を届けられるのがいちばん大きいです。というか、私たちのことよりも、もっとGxGのことを取材してもらえるとうれしいです!(笑)

筆者の感想

 今回の取材を通して実感したことは“オンラインとオフライン、どちらにもよさがある”というありがちな感想ではなく、“オンラインじゃないとダメな人”と“オフラインじゃないとダメな人”という、明確なふたつのニーズが存在しているということでした。

 オフラインイベントとして長く開催されてきたRAGE Shadowverseは、すでにただのゲーム大会の予選以上の役割を担ってきており、ゲームや人への想いを伝える&共有する場として必要不可欠なものになっています。

 一方、オンラインでないと遠方のプレイヤーが参加できず、“無料で誰でも参加できるイベント”というRAGE Shadowverse最大の魅力を活かしきれません。

 これからのRAGE Shadowverseはふたつのニーズの最大公約数をうまく探りなりながら、今後ポストコロナの情勢にあった大会の形式を模索していくことになるでしょう。

【シャドバ】ゲーム大会をオフライン開催する必要性はあるのか? 2年ぶりのオフ復活について参加者の生の声を取材した“RAGE Shadowverse 2022 SUMMER”
2年ぶりにRAGE Shadowverseの会場で再開したというおふたり。

 突然ですが、デジタルカードゲームには以下の特徴があります。

  • 個人技であること(チームとして集まる必要がない)
  • ターン制ゲームであること(通信環境での優劣がつきづらい)

 このことから競技的な側面だけを見ると、デジタルカードゲームはオンラインだけでも十分に成立してしまうがゆえに、今後もオフライン開催の是非は問われ続けるでしょう。

 ただ、オンとオフのどちらにでも振れるという点において、RAGE Shadowverseは大きな可能性を秘めているという考えかたもできます。たとえば、オンラインとオフラインを混合開催し、オフラインを交流メインのイベントとして特化させ、競技面はオンラインに移行するという選択肢もあるかもしれません。RAGE Shadowverseがどのような変化を遂げていくのでしょうか。

【シャドバ】ゲーム大会をオフライン開催する必要性はあるのか? 2年ぶりのオフ復活について参加者の生の声を取材した“RAGE Shadowverse 2022 SUMMER”

 じつのところ、筆者もプレイヤーとして数回、RAGE Shadowverseに参加したことがあります。個人的には、2020年1月のオフラインRAGEにて、諸般の事情で2回戦目の開始が1時間近く遅れたことが苦い経験として記憶に残っていますが、その辺りは運営側の改善が為されたのか、今回はスムーズな進行が徹底されている様子でした。

 当時はオフラインでの参加者が6000人を超えて話題となったRAGE Shadowverseですが、今回は仕切り直しとして、参加者約5000人での再出発となりました。FPSやMOBAなど、ほかのeスポーツタイトルと比較すると盛り上がりが外部に伝わりにくい印象のあるデジタルカードゲーム。メディアの在りかたとして“すでに盛り上がっているコンテンツ”に乗っかるだけでなく、発展途上ながらも確実に育まれている灯を伝えていきたいと再認識しました。

 RAGEとは“どうやったらゲームに関わる人たちの体験を最大化できるか?”を追及し続けるゲーマーにとっての理想郷であり、国内最大級ながらも最先端な実験が行われている極めて挑戦的なゲームイベントであると、筆者は感じています。今後の挑戦にも要注目です。

イベント詳細

名称:RAGE Shadowverse 2022 SUMMER
開催日:予選大会Day1 5月14日(土)/ Day2 5月15日(日)
会場:幕張メッセ1 ホール
公式サイト:→こちら