ファミ通.comの編集者&ライターがゴールデンウィークのおすすめゲームを語る連載企画。今回紹介するゲームは、全国のゲームセンターで稼動しているセガのアーケードゲーム、『英傑大戦 三千世界の波動』(以下、『英傑大戦』)です。

【こういう人におすすめ】

  • 自宅では体験できないゲームが遊びたい
  • 歴史もののエンタメ作品が好き
  • 1対1の対戦ゲームに飢えている

マンモス丸谷のおすすめゲーム

『英傑大戦 三千世界の波動』

  • プラットフォーム:アーケード
  • 稼動日:2022年3月10日
  • 発売元:セガ
  • 価格:1プレイ100円~
  • 公式サイト

三国志、戦国時代、幕末の”英傑”が集うオールスターバトル

 『英傑大戦』は、2022年3月から稼動がスタートした対戦型カードアクションゲーム。筐体の盤面に置いた武将カードとゲーム画面が連動する独自性の高い操作とゲームシステムをベースに、2005年稼動の『三国志大戦』から扱う題材(時代)を変えつつ17年に渡って続いてきた、『大戦』シリーズの最新作だ。

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17年間ほぼ途切れなく続いてきたシリーズなため忘れがちだが、筐体中央の盤面(フラットリーダー)に置いたカードの動きがゲームと連動するシステムは、いまだに斬新で画期的。
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武将カードを操作して画面手前の自城を防衛しつつ、奥側の敵城を攻めて相手の城ゲージを目指すのが基本ルール。アクション性の高いリアルタイムストラテジーゲームをイメージして遊ぶと入りやすいはず。

 『英傑大戦』のウリとしてまず挙げられるのが、ゲーム内で扱う時代が一気に拡大した点だろう。過去の『大戦』シリーズで取り上げてきた三国志、日本の戦国時代の武将たちに加えて、幕末を生きた維新志士や新選組の隊士といった面々が参戦。その結果、歴史好きからとくに人気の高い時代の人物が幅広くカード化される、歴史ものオールスターバトルにパワーアップしている。

 オールスターバトルっぽさを出すための工夫や演出が意識して施されているのも特徴のひとつ。いちばん大きいのはふつうにデッキを組むと多くの時代の武将で構成されるようにカードの色(勢力)が分けられていること。たとえば勢力“碧”には、三国志の蜀、戦国時代の徳川家、新選組の隊士たちが属しているため、劉備や徳川家康、沖田総司といった時代の異なる面々を自然に同じデッキに組み込める。

 一方で、ゲーム上での性能、いわゆる“シナジー”から時代や勢力を越えた意外な組み合わせが流行するケースがあるのもおもしろいところ。「呂布を使うならパートナーとしてまつ(前田利家の妻)は入れておきたいよね」、「吉田松陰の計略(ゲージを消費して発動する必殺技的な要素)は新選組と相性がいい」といった話題がプレイヤー間で共有されるのは、歴史を題材にしたゲームの中でも『英傑大戦』ぐらいだろう。これも独自の魅力と言えるはずだ。

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3つの時代の武将カードを無理なくデッキに組み込める勢力分けがなされている。
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曹操と武田信玄、近藤勇と関羽など、特定の武将カードをセットで出撃させたり計略を発動することで、通常時とは違ったセリフを発するような隠れた演出も数多く盛り込まれている。

カード印刷から感じる技術の進歩

 アーケードゲームならではの驚きを感じられるポイントとして、武将カードまわりの仕様も紹介しておきたい。『英傑大戦』のカードは、ここ5年ほどでセガのアーケードカードゲームでは標準仕様になった、オンデマンド印刷形式(筐体内のプリンターでゲームプレイ中にカードを印刷、排出する形式)が採用されているのだが、同形式の最新タイトルということもあって、【1】カードの装丁の質(ホロ加工)、【2】料金体系、【3】ほしいカードが手に入らない際の救済措置、などがかなり洗練されている。

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ERはゲーム内での演出も豪華。計略を発動するとカードイラストを忠実に再現した3Dモデルが現れ、見栄を切ってくれる。

 まず【1】だが、↓の画像を見てもらうとわかってもらえると思うのだが、『英傑大戦』のカードは下から2番目のレアリティ、Rからカードの四隅が輝く。そしてSR、ERとレアリティが上がるにつれ、ゴージャスな加工が施されていく。

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『英傑大戦』のカード。左からR、SR、ER(英傑レア)。もっともレアリティの高いERには、オンデマンド印刷ながらかなり複雑なホロ加工が施されている。

 継続的にこのゲームをプレイするユーザーにとっては、【2】のカード印刷にかかる料金のしくみもありがたい。『英傑大戦』はゲーム開始時に投入したクレジットで、最初に対戦1回と武将カードを抽選する権利を買う形式で、その後に抽選の結果を確認してから、ほしいと思ったカードにだけ印刷代(1枚につき100円)を払うという流れを踏む。そのため必要な武将が出現しなかった場合や、すでに必要なカードを揃えるまで遊んだヘビーユーザーは、1プレイ100円(プレイモードによっては200円)という、一般的なビデオゲームと同じ料金で対戦を楽しめるようになる。

 さらに印刷しなかった武将カードは、縁(えにし)と呼ばれるほしいカードを指定して入手するためのポイントに自動で変換される。よってゲームプレイを続けていけば【3】の問題もいずれは解決。【3】に関しては『英傑大戦』に限った話ではないが、技術の進歩がアーケードカードゲームを遊びやすく、そして財布に優しい仕様へと変わりつつあることも、今回の記事を機に知っておいてもらいたいポイントだ。

経験の差を覆せる可能性を秘めた新要素とバランス調整

 扱う時代が増えてキャッチ―さが増し、カードも集めやすくなった『英傑大戦』だが、本作のメインコンテンツは1対1の対人戦。しかも独自性の高い操作性やシステムが採用されているがゆえに経験者ほど有利で、「誰でもすぐに勝てて楽しく遊べます!」と軽々しく言えないのは、『大戦』シリーズをおすすめしたいと思った際に、どうしても引っかかるポイントではあったりする。

 しかし『英傑大戦』は今作から追加された新要素が多く、また過去作から引き継がれたシステムやセオリーにも、シリーズ未経験者の追い風になりそうな調整も入っている。ここでは『大戦』シリーズ17年を通しての勝率は45%ぐらい、ギリギリ中級者と自己申告できるぐらいの筆者から見た、『大戦』シリーズの経験差を覆せそうな要素を語っていきたい。

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基本ルールと直感的な操作は理解しやすいゲームだが、対人戦の勝敗は過去シリーズからの経験がモノをいいやすい。一度身につけた技術や知見が生きやすいのは既存ユーザーにとっては長所だが……。

 最初に紹介したいのは“流派”。これは『英傑大戦』から増えた筐体左側のボタンを押すことで発動させられる新システムで、試合前に選んだ流派に応じて自軍がパワーアップする。流派は“部隊”、“士気”、“城塞”、“兵種”の4つが用意されており、たとえば“部隊”の流派を選べば、自分のデッキに入れた武将カードすべての兵力や武力といった基本ステータスを上げることができ、“士気”であれば1試合で使える士気の総量が増えるため、計略の発動で戦況を変えやすくなる。

 この流派というシステムが追加されたおかげで、同じデッキを使っていても選んだ流派によって戦いかたを変えたり、相手にこちらの情報を読み取らせにくくできるため、過去作よりもお互いの立ち回りに不確定要素が入りこみやすくなった。

 とくに筆者がありがたいと感じているのが“士気”。自分から計略を使って攻め込みやすくなるのはもちろん、相手にこちらの士気がいくつ溜まっているかを悟らせにくくできているっぽい点に助けられている(過去作ではお互いの士気が溜まる速度がほぼ同じだったため、試合中に“士気計算”ができるプレイヤーがかなり有利だった)。

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流派発動に必要なゲージの溜まり具合は試合展開によって変化するうえ、発動させる効果やタイミングもプレイヤーが選べる。そのため同じデッキ、同じ対戦相手であっても試合の流れが同じにはなりづらい。
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流派“城塞”や“兵種”を選ぶと、攻城の手段を増やしたり、相手の攻城力を下げられる。写真は槍兵の兵種アクションで城ゲージを削っている様子。一発の威力は低いが蓄積するとバカにならない城ダメージを与えられる。あと音が気持ちいい。

 シリーズ経験者を出し抜く手段としては新兵種の“剣豪”にも可能性を感じる。剣豪はタイミングよくカードを旋回(素早く45度回転させる)させることで、自部隊の周囲360度に攻撃できる“斬撃”をくり出せる。ポテンシャルを引き出すためには細かくカードを触る必要のある兵種だが、操作量の多さに対応できそうな(ほかの対戦ゲームからやって来た)若いプレイヤーなら、槍兵や弓兵といった足の遅い兵種にコストを割きがちなおじさん大戦勢(自己紹介)相手に対しては、優位に立てる可能性は高い。

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兵種アクションを多くヒットさせると流派ゲージが早く溜まる。剣豪に限らず『英傑大戦』はカードの操作量を増やすことのリターンを感じやすい。

 過去の『大戦』シリーズを知っていてまだ『英傑大戦』に触っていない人には、“城が殴りやすくなった”ゲームバランスにも注目してもらいたい。本作は知力の高い武将ほど1回の攻城にかかる時間が短く、溜まっていく攻城ゲージを止める手段も乏しいため(弓兵での守城の効果が薄い)、互いの城ゲージが動きやすい。過去作に比べると逆転要素も高まっていると思うので、一時期引退していた『大戦』プレイヤーの復帰するタイトルとしても、『英傑大戦』は向いているはずだ。

じつは熱いシングルプレイと、家でも『英傑大戦』を楽しめる.netの存在

 長年1対1の対人戦がメインコンテンツに据えられている『大戦』シリーズだが、『英傑大戦』は稼動開始の現時点でもひとりで楽しめる要素も過去最高レベルで充実している。ひとつはシングルプレイ専用のストーリーモード、“群雄伝”。さまざまな勢力の歴史上での活躍が追える『大戦』シリーズではおなじみのゲームモードだが、『英傑大戦』では特定のカードを登録することで起こる会話イベントの発生条件が軒並みやさしくなり、条件自体もカードを登録する前にゲーム画面ですべて確認できるようになった。

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『英傑大戦』では特定武将を2枚以上登録して起こすイベントがなくなり、イベント発生に要求される武将カードの種類も減った印象。

 群雄伝の内容も、かなりおもしろく読ませる。メジャーな武将カードの活躍が見られるうえ、(スターターデッキで碧を選んでいると)会話イベントが起こしやすい新選組伝を筆頭に、エンタメ作品の主役に選ばれることは少ない印象の高杉晋作や桂小五郎にスポットをあてた長州伝、戦国時代前半の京都周辺の争乱を描きつつ、『英傑大戦』らしい時代のクロスオーバー要素も匂わせている足利義輝伝とバラエティーに富んでおり、武将カードを収集しつつストーリーも十二分に楽しめた。

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ほかの歴史ゲームではあまり取り上げられない人物の活躍が見られるのも『大戦』シリーズのストーリーモードの魅力。

 もうひとつはプレイヤーサイト“英傑大戦.NET”内の動画視聴機能、“演武場”。有料のプレミアムコースに月額課金が必要ではあるものの、登録すると自分が全国対戦で戦った数十試合ぶんの動画を始め、トッププレイヤーの対決や最近使用率が上がった武将カードの試合、自分が最近使った武将が含まれた対戦動画などが閲覧可能。しかも土日祝日以外は定期的に新しい動画と入れ替わっていくため、その気になればほぼ1日中『英傑大戦』の動画を浴び続けられる。

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『大戦』シリーズ版サブスクともいえる、英傑大戦.NET内の演武場。家にいながら友だちの様子や流行りのデッキがチェックできる。

 月並みなアドバイスになってしまうが、群雄伝でゲームの操作に慣れつつ、演武場やYouTubeで対戦動画を見て『大戦』シリーズのセオリーをなんとなく把握すれば、対人戦も楽しめる力がつくはず。一度遊びかたを覚えてしまえば数年単位で遊べるゲームなので(『戦国大戦』や現在も稼動中の新『三国志大戦』と同じペースの運営なら、2027年あたりまで定期的なカード追加やバージョンアップが続く)、稼動間もないゴールデンウィークのこの時期に、ぜひ遊んでみてほしい。

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