ファミ通.comの編集者&ライターがゴールデンウイークのおすすめゲームを語る連載企画。今回紹介するゲームは、『ファイナルファンタジー』(『FF』)シリーズの外伝的作品『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』(以下、『FFオリジン』)です。
【こういう人におすすめ】
- 『FF』シリーズを愛している!
- 『仁王』シリーズなどのアクション&ハクスラが好き
- 骨太な難易度のゲームを遊びたい!
西川くんのオススメゲーム
『ストレンジャー オブ パラダイス ファイナルファンタジー オリジン』
- プラットフォーム:プレイステーション5、プレイステーション4、Xbox One、Xbox Series X|S、PC(Epic Games Store)
- 発売日:2022年3月18日
- 発売元:スクウェア・エニックス
- 価格:8800円[税込]
- パッケージ版:あり
- ダウンロード版:あり
長期休暇こそじっくり遊びたい『FFオリジン』
『FF』シリーズだと『FFV』がいちばん好きな、西川くんです(累計プレイ時間は『FFXI』や『FFXIV』が圧倒的ですが……)。2022年の前半は、大作揃いかつ遊び応えのあるゲーム過多で、まさに“カオス”でヤバかった!
2月には『エルデンリング』が発売されましたし、『FF』で言えばピクセルリマスター版『FFVI』も2月でした。3月に入るとスクウェア・エニックスさんで言えば『バビロンズフォール』、『トライアングルストラテジー』、『チョコボGP』が登場。もちろんほかにも目玉のタイトルが発売されていく中、個人的には「うおー!! 遊びきれない!! 精神と時の部屋が欲しい!」とあわあわとしている最中、発売されたのが『FFオリジン』でした。
きっと皆さんも「まだあのゲームが終わってないんだよな~」とか、いまだに抱えている人も少なくないと思います。そんなときこそ、長期休暇を利用したいところ! まだ『FFオリジン』を遊んでいない人は、ぜひこのゴールデンウィーク期間中にクリアーを目指してみてはいかがでしょうか?
本作はダークな見た目で敬遠したり、「『FF』好きだけど死にゲーって噂だから遊べないかも」と思っている人もいるかもしれません。が、実際遊んでみると“『FF』らしいファンタジーな物語”、“骨太だけど死にゲーというほどではない”と感じたので、万人にオススメしたいタイトルです!
というわけで、『FFオリジン』の魅力を語っていきましょう。なお物語は魅力を損なわない程度にネタバレを含みます。また、初代『FF』のネタバレもかなり含んでいるので、気になる人はご注意を。
アクションが苦手でも安心してほしい!
まず解説しておきたいのは、『FFオリジン』はスクウェア・エニックスとコーエーテクモゲームスのTeam NINJAとの共同開発によるアクションRPGだということ。Team NINJAといえば戦国ダークファンタジーアクションRPG『仁王』シリーズの開発を担当していることでも知られ、そのエッセンスは本作にもふんだんに盛り込まれています。
軽快なアクションもそうですし、骨太な難度ながらもリトライ性の高いステージ構成やシステム、1周目ではさほど重要ではないですが、装備選定・装備集めによるビルドの構築といったやり込み要素も踏襲されています。とはいえアクションはほとんど別モノなほか、やはり『FF』らしい敵・ジョブ・魔法などといった要素により、『FF』ならではの魅力に包まれています。
“骨太な難度を誇る”と先述しているわけですが、これはあくまで難易度“ACTION”以上を選んでいる場合のお話です。本作には“STORY”という、いわゆるイージーモードも存在し、こちらを選べば比較的サクサクとゲームを進められます。と言っても“ただボタンを連打しているだけで進められる”ような難度ではないので、手ごたえのあるバトルの末端を感じながらも、クリアーしやすい難度という塩梅です。「それでも難しい」という人向けに、さらにSTORY限定で“SAFETYモード”があり、より楽に勝てる難度に下げることもできます。
ですので、アクションが苦手な人はSTORY難度+難しければSAFETYオンで遊ぶといいでしょう。とくに装備やジョブが揃っていない序盤は苦戦しがちなので、序盤のみ使うという選択も可能です。もちろん、アクションが得意な人や、骨太な難度で遊びたい人はほかの難易度がオススメ。筆者は『仁王』シリーズに慣れていたこともあり、初回は“HARD”で遊んでちょうどよかった、という感じでした。難度が高いと恩恵もあるので、得意な人は選んで損はありません。
ストーリーがマジでよかった!
物語の舞台となるのは、混沌の闇に包まれたコーネリアの大地。その名の通り、初代『FF』の世界が舞台となっています。そこに現れたのが、主人公・ジャック。ジャックはカオスを倒すことが自分の使命だと言い、さらに同じ使命を持つジェド、アッシュと出会います。さらに冒険の中で新たにネオン、ソフィアという仲間と出会い、5人でカオス討伐の冒険がくり広げられていきます。
ゲーム序盤に主人公のジャックが、自身のフルネームは“ジャック・ガーランド”であることを明かします。ガーランドといえば、初代『FF』の最初のボスにして、因縁の相手ですよね。
つまり、本作は「カオスを倒すために冒険していたはずのジャックが、なぜセーラ姫をさらうような悪役になったのか?」という物語が語られるのです。物語の序盤はジャックたちこそが光の戦士なのでは? と言われながら戦っていくのですが、その謎が解けたときは「こうきたか~!」と驚きましたし、素直におもしろかった! なにより、ガーランドがこれまで以上に好きになりました。『ディシディア ファイナルファンタジー』シリーズのガーランドとはまたひと味、重みが違います。
ぜひその深い物語を堪能してほしいわけですが、『FF』シリーズらしく丁寧かつじっくりと物語が語られるのかというと、正直そうではありません。はっきり言うと終盤までジャックたちは「カオスを倒すぞ!」という目標のみに突き進むことばかりで、謎が少しずつ散りばめられはしますが、ストーリーが進行するのはゲームのほぼ終わり際。そのため『FF』らしいストーリーテリングを期待する人には、ちょっと意外な部分かも。
というのも、本作はアクションRPGです。しかも、アクションにかなり特化しています。カットシーンや会話劇によってステージ攻略のテンポが損なわれないよう、テンポをよくする配慮が随所に見られ、細かい描写などは省略しているのでしょう。設定が垣間見える書物も任意で読めるテキストになっていますし、ワープでその場を脱出するシーンが多いのもテンポ重視だからでしょう。僕は逆にその割り切りかたが好きでした。
初代『FF』の“2000年前”や“黒水晶”といったキーワードのほか、“4体のカオス”、“ルフェイン人”の存在などなど、しっかりと設定が生かされた物語が展開されます。もしまだ初代『FF』を遊んだことがない人は、ぜひピクセルリマスター版などで遊んでから、もしくは『FFオリジン』が終わってから遊ぶと、より深い魅力を感じられるでしょう。
なお、“『FFオリジン』で語られることが正史”というわけでは、必ずしもありません。ファミ通.com内で公開されている野村哲也氏へのインタビューでは、「(つながりがあるのか、パラレルなのか)どう捉えるかはプレイヤーに委ねるところです」と語られているので、解釈はすべてプレイヤーそれぞれの考えが全部正解とも言えますね。
自由度の高いアクション性
肝心のアクション部分ですが、これがやり応えバツグンでこれまた楽しかった! ゲームはステージ攻略型で、メインクエストならボスの撃破、サブクエストなら個別の目標達成でクリアーとなります。プレイヤーは剣や槍などの武器8種に加えて、“戦士”や“白魔道士”、“侍”や“暗黒騎士”など、数多の『FF』らしいジョブが存在し、それらを選んで戦います。ジョブチェンジはかなり自由です。
いわゆるスキル攻撃のコンボアビリティでガツガツ戦えますし、魔法系ジョブならファイアやケアルなどの多彩な魔法が使用可能です。MP回復手段が乏しいので、“魔法でずっと遠距離から攻撃する”といった戦略は条件を揃えないと使えません。ある程度は近距離戦を強いられますが、“魔法で固めてそのあいだに攻撃”など、アクション初心者でも楽に戦える戦法も。
どの武器でもジョブでもクリアーできるようになっているので、基本は好きなものを選べばオーケー。幅広い戦術で戦えるのが、アクションの自由度につながっています。とはいえ“このボスにはこの武器・ジョブが有効”みたいなこともあるので、いろいろと試しながら遊ぶといいでしょう。
ブレイクゲージの駆け引き
本作は通常のガードのほか、無敵時間の付いたステップでの回避、さらにブレイクゲージを使ったガード手段“ソウルシールド”があります。ブレイクゲージは、ようはガードに使うスタミナのようなものです。ガード&ソウルシールドで攻撃を防ぐと減りますが、一定時間経てば回復する感じ。
敵の攻撃はうまく回避すればノーダメージで切り抜けられるほか、ソウルシールドはガード成功でMPが回復&最大値が増加、敵の攻撃手段を吸い取って自分で使えるなど、さまざまな恩恵があります。基本的には回避とソウルシールドで攻撃をいなし、その隙に攻撃を叩き込むのが本作の基本です。
ソウルシールドは構えると瞬時にブレイクゲージが減るので、ジャストガード的な使いかたが理想的(ジャストガードはまた別のシステムとして存在します)。これが成功するたびに“キンッ! キンッ!”となって気持ちがいい! 構えるだけでガード不能攻撃以外は無効化できるので、これも便利でアクション初心者にも上級者にも使い心地のいいシステムです。
なお敵にもブレイクゲージは存在し、通常の敵ならばどんなにHPが残っていてもトドメを刺せるフィニッシュ技“ソウルバースト”が狙えます。ソウルバーストに成功するとMPが回復したり、周囲の敵を吹き飛ばすなど、こちらも多彩な恩恵が。敵キャラクターごとにソウルバーストのモーションが異なり、これが豪快かつ爽快で気持ちがイイ! 一部ボスは演出が長すぎて、周回プレイに向いていない部分もあるのがちょっと難点かも。カッコイイんですけどね。
ボス戦はトライ&エラー!
ソウルバーストはボス戦でも使用できます。ボスはだいたい2形態に分かれており、2回ソウルバーストを決めるか、2回HPをゼロにすれば倒せます。HPを減らせなくとも、ブレイクゲージさえ短時間で削り切ってしまえば倒せるため、けっこうゴリ押しが効く部分もあるのが、絶妙な難度と言えるでしょう。
通常の敵は各個撃破していけば、さほど苦労する場面はないと思います(大勢の敵に囲まれたりすると、ピンチになりやすいですが)。やはりボス戦は攻撃をしっかり見極めて挑まないと、なかなか倒しにくい難度です。と言いつつも、やはりブレイクゲージの存在があるため、“タメ攻撃でブレイクゲージが減り、さらに怯んだところにタメ攻撃”をくり返したら攻撃しているだけで倒せた、なんてことも。そこは戦略や立ち回りによるところも大きいですね。
仲間たちが心強い!
そうそう、バトルはパーティ制で、プレイヤーキャラクターであるジャックと、ふたりの仲間を選んで使用します(ちなみに本作はマルチプレイ対応。マルチプレイだと仲間も使用できます)。仲間のふたりは火力はそこまで出せないのですが、敵を惹きつけたり回復魔法でサポートしてくれたりと、かなり万能。
回復薬であるポーションが切れ、ピンチになっても逃げ回りながら仲間に任せていたら倒せた……なんて場面もありました。仲間の存在のおかげで、全体的な難度がグッと抑えられているように思います。
装備集めが楽しいハクスラ要素!
本作には武器と防具が数多に存在し、それらを装備しながら攻略していきます。1ステージクリアーするだけでも装備が10~30個くらいはカンタンに手に入るほどに、装備集めは本作の魅力のひとつです。主人公だけでなく仲間の装備も吟味しているとゲームがぜんぜん進まないのですが、最強装備ボタン(いわゆる“さいきょう”)を押せば自動である程度強い状態になれるので、基本は最強装備ボタンで済ませてオーケーです。
装備には装備レベルがあり、装備することで装備レベルの平均値が割り出されます。クエストには適正レベルがあり、この装備レベル平均値が適正レベルを下回っているほどに、敵の攻撃威力が大幅に増し、こちらの攻撃が効きにくい状態になってしまうため、かなり重要な要素となっています。
また、装備の強化要素もありますが、要素としてはかなり薄めで、装備は拾った際に付与されているランダム効果を吟味していくのがメインとなります。そのため、大量の装備を集めることこそが強さにつながるようになっています。発売後のアップデートで自動装備解体が実装され、比較的集めやすくなったのもポイント!
歴代『FF』ステージを巡ろう
本作のステージは歴代『FF』シリーズのダンジョンなどを模したもので、BGMなどもアレンジBGMが採用されています。覚えてはいるけれどもさほどゲーム的には印象の薄いダンジョンがモチーフになっている場合もあるので、最初は「あくまでオマケ的な要素だな」という印象でした。ただ、ステージの中には『FFVI』の魔大陸をモチーフにしたものや、『FFXI』のデルクフの塔、『FFXII』のレイスウォール王墓を彷彿とさせるものなど、一部ステージはシリーズファンなら思わず「おおっ!」と思えるものなのがよかったです。
アレンジBGMはダークファンタジーな本作であるためか、かなり個性的なアレンジとなっています。じっくり聞かないと「ああ、あの曲か!」とならない場合もありますが、それはそれでクイズ感覚で逆に楽しめた要素でした。珍しい曲のアレンジも少なくないのでファンとしても非常にうれしかったところ。
本番は本編クリアー後!
本編クリアーまでは、順番にクエストをこなしていけば装備レベルもだいたい適正で挑めることでしょう。クリアー後には“CHAOS”という超高難度が選べるようになり、クエスト選択画面が真っ赤に変化。こちらがある意味、本作の本番とも言える難度・要素となっています。
CHAOS難度ではアーティファクトという最大レア度の装備がドロップするようになるなどの恩恵があるほか、クエスト適正レベルも大幅に上昇。また、全クエストの適正レベルを専用アイテムを消費することで適正レベル上げることができ、全クエストで最大300レベルの装備をドロップするようにできるのです。
これが非常にやり込みがいのある要素で、特定の装備を集めることで何かしらのジョブやアクションに特化した“ビルド”を組めるようになります。ここに到達すると、ボスが一瞬で倒せるようになるなど、ハクスラらしい楽しみかたが待っています。
各クエストのレベル変更は正直アイテム集めが面倒ではありますが、クリアー後のやり込みとしてはかなり遊び応えのある要素ですので、ぜひともクリアー後も楽しんでほしいです。
1周目は頭装備は非表示に!
本作をこれから遊ぶ人に、ぜひお伝えしておきたいのが“1周目のストーリーは頭防具を非表示設定にしよう”ということ。本作には多彩な防具があり、防具によってキャラクターたちの見た目も変わります。それ自体は楽しい要素ですが、フルフェイスの兜やマスク姿になるものなどが存在し、キャラクターたちの表情が見えなくなってしまう場合があります。
とくに最強装備でゲームを進行していたりすると、思わぬシーンでジャックたちの表情が読み取れないことになってしまいます。そのため、設定から頭防具を非表示にしておくのがオススメです。なお、頭と鎧が一体化しているような装備もあり、こちらは残念ながら非表示にはできません。
まずは体験版を遊んでみて!
以上、本作をクリアーし、レベル300装備まで到達した筆者の大雑把な所感をお届けしました。最初にお伝えした通り、『FF』らしさ満点のストーリーが終盤から楽しめたこと。そして“死にゲー”というほどではないけど、骨太でやり応えアクションが楽しめる作品だということが伝われば幸いです。
『FFオリジン』は3ステージが遊べる無料体験版が存在し、遊んだセーブデータは製品版にも引き継げます。もし気になる人がいたら、まずは体験版を遊んでみるとアクションの手触りの良さは分かると思うので、まずは無料で体験してみてください(ちなみに配信期間は6月1日までとのこと)。そして「これはいいぞ」、「ここからああいう要素が味わえるんだな」と思っていただければ、ぜひ製品版のご購入を!!