2021年11月24日に配信された生放送番組“先駆け御免!! うたわれるもの20周年特別生放送”で、突如発表された『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』。アクアプラスの完全新規タイトルである本作は、後に“うたわれるもの”と呼ばれる英雄オシュトルの若き日の冒険を描いたRPGだ。

 このたび、本作の発売日が2022年9月8日予定であることと、プラットフォームがプレイステーション5、プレイステーション4、Steamであることが公開された。完全新作のRPGとして、“うたわれるもの”たちの新たなストーリーを描く本作は、どのような想いで開発が進められているのか。アクアプラスのエグゼクティブプロデューサーを務める下川直哉氏にインタビューを実施。開発状況や開発秘話などをうかがった。

下川直哉(しもかわなおや)

アクアプラスのCOOを務めるかたわら、数々のゲーム制作に参加。『うたわれるもの』シリーズでは楽曲を担当しており、新作『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』ではプロデューサーを務めている。

ユーザーサービスの一環でお得な初回生産版が誕生!

――『モノクロームメビウス』の発表後、ユーザーの反応はいかがでしたか?

下川本作は、『うたわれるもの』シリーズに登場したオシュトルたちが活躍する作品とはいえ、誰でも楽しめる新作として開発を進めています。発表したときも新作だと感じてもらえるような見せかたをしたので、驚いてくれた方が多かったのではないでしょうか。

――SNSなどを見ると発売日やプラットフォームが気になっている方も多い印象でした。

下川発売日とプラットフォームは今回発表しましたが、2022年9月8日にプレイステーション5とプレイステーション4、Steamで発売予定です。開発状況は現在90%ぐらいで、素材関係はすでにできあがっていて、バランス調整やデバッグ作業を進めている段階ですね。プラットフォームはできるだけ多くの方に遊んでもらえるように選択肢を増やしました。弊社はもともとWindowsゲームを開発していたので、往年のファンの方たちにはSteam版はなじみがあるのかなと思います。ちなみに、PS4版のパッケージ版を購入された方は、追加費用なしでPS5版へのアップグレードが可能です(※)。また、本作のダウンロード版は、PS5版とPS4版を追加料金なしでどちらも入手できるようにします。

――無料でアップグレードできるのは、まだPS5を購入できていないユーザーにはうれしい仕様ですね。通常版と同じ価格で豪華な特典付きの初回生産版が入手できるのも、ファンサービスの一環だと感じました。

下川初回生産分は、コアなファンの方が購入してくれるじゃないですか。そういった方たちに向けて、何かサービスができないか考えたのと、今回は少しでも多くの方に遊んでもらいたかったので、初回生産版には無償で特典を付けようと決めました。通常版と同じ価格とはいえ、特製パッケージに加え、キャラクターやイラストなどを収録したビジュアルブック、本作に収録された100曲以上の楽曲の中から選んだ30曲を収録したオリジナルサウンドトラックが同梱されるので、喜んでもらえるとうれしいですね。そして、店舗別の特典を公式サイトで公開していますので、ぜひチェックしてください。

※パッケージ版を購入された方は、PS5のディスクドライブがないデジタル・エディションにおいてはアップグレード不可となります。

完全新作のタイトルだからこそ誰でも楽しめるストーリーに

――今回新たに、ストーリーと主要キャラクターのオシュトルやシューニャ、ムネチカ、ミカヅチたちが正式に発表されました。

下川オシュトル、ムネチカ、ミカヅチは『うたわれるもの』シリーズの登場人物ですが、ファンだけではなく、シリーズ作品を遊んでいない方でも楽しめる内容になっていますのでご安心ください。むしろ知らないからこそ、新鮮な驚きもあって楽しんでもらえるのではないかと手応えを感じています。私たちとしては、本作を遊んだうえでその後の物語が気になれば、無料で遊べるスマートフォン版の『うたわれるもの』シリーズ三部作をプレイしてくださいというスタンスですね。

――“RPGをおもしろくするのは、物語だ”というキャッチコピーから、とくにストーリーに対して力を入れていると感じましたが。

下川うちの作品の大きな武器はやはり物語ですし、5年、10年と遊んでくれた方の記憶に残るのは物語だと思っているので、おもしろいストーリーを書こうと、脚本を手掛ける菅(菅宗光氏。シナリオライター。『うたわれるもの』シリーズの原案やシナリオを担当)を中心に、スタッフ一丸となって開発を進めています。おもしろい物語をしっかりと作ったうえで、物語を最大限に盛り上げるキャラクターやサウンド、戦闘システムなどを用意しました。具体的な数字は言えませんが(苦笑)、これまで手掛けてきた作品の中で、いちばん開発費をかけています。

――アクアプラスの威信を懸けた作品になっているのですね。ストーリーの見どころは?

下川本作は、のちに英雄となるオシュトルが謎の少女シューニャと出会い、彼女から死んだはずの父親が生きていると知らされたうえで、父親の足跡をたどる旅の中で体験する壮大なストーリーが描かれます。ボイスを飛ばさずにしっかり聞いてプレイすると、おそらく50時間以上はかかると思います。スマートフォンで手軽に遊べるゲームが多い時代だからこそ、腰を据えてじっくり遊んでもらいたいですね。先ほどお話ししましたが、物語の脚本は菅が担当しています。ご存知の通り、菅はいままでの作品の実績もありますし、彼のシナリオのファンは非常に多い。うちにとってこれまでにない規模で作品を作るなら、物語は菅に任せるのがベストですし、ユーザーの皆さんも菅が書くシナリオが読みたいだろうと考えました。

――菅さんは、『うたわれるもの』シリーズのシナリオを手掛けているので適任だと思います。一方で、キャラクターデザイナーには甘露樹さんやみつみ美里さんではなく、新たにmiさんを起用していますがこの意図は?

下川『モノクロームメビウス』というタイトルやRPGというジャンルだけではなく、キャラクターデザインからも完全新作なのだと感じてもらえるようにするためです。ただ、本作には若い姿で登場するとはいえ、オシュトルやムネチカ、ミカヅチたちは既存のキャラクターなので、デザインを変えすぎてしまうとファンの方たちの違和感が強くなってしまう。そこで、キャラクターデザインを手掛けた甘露やみつみにしっかりと監修してもらいながら、miには従来のキャラクターのイメージを保ちつつ、新鮮さを感じてもらえるような姿に仕上げてもらいました。

―― 確かに新鮮ですし、若々しいオシュトルたちの新たな魅力が感じられる、美しいイラストになっていると思います。

下川ストーリーやキャラクターをより堪能してもらえるように、イベントシーンの演出にも力を入れています。これまでの作品は2Dのイラストと背景で進めていましたが、本作では3Dキャラクターの演技で物語が楽しめます。背景も3Dで表現していて、本作の舞台が、我々人類が暮らしていた遥か未来の世界なのだということを、少しずつ見せていけたらと考えながら作っています。

――3Dでの演出を作るうえで、とくに苦労したところがあれば教えてください。

下川わかっていたことではありますが、3Dの演出は2Dと比べてカメラワークを考えるのがたいへんでした。あと、個人的に気になったのが環境音でした。3Dになると、キャラクターの動きに対してちょっとでも環境音が抜けていると、気持ち悪いと言うか。たとえば、キャラクターが動いたときに服が擦れる音がないと違和感があるんですよ。この音がない、あの音がないと、演出がどんどんエスカレートしていったので(苦笑)、感覚をつかむまでは苦労しましたね。

――下川さんは作曲家でもあるので、これまでの作品は音楽にもこだわっていましたが、本作ではますます力を入れていると。

下川うちの特徴でもあるので、音楽へのこだわりは本作でもぶれずに一貫しています。環境音だけではなく、楽曲にもこだわっていて、今回もゲームミュージックとしてメロディーを口ずさみたくなるような楽曲を多数手掛けていますし、シーンに合わせてピッタリのサウンドを当てるようにしています。

『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』下川直哉氏インタビュー。“うたわれるもの”たちの 新たな物語の全容に迫る
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物語を堪能しやすいように構築された戦闘システム

――続いては、ゲームシステムに関していろいろお聞きしたいと思います。ゲームのジャンルはRPGとのことですが、どのようなシステムを実装しているのですか?

下川3Dで表現した広大なフィールドを、ある程度自由に冒険できるようにしています。戦闘はモンスターに接触すると発生するシンボルエンカウントで、メインのシステムには攻撃や戦技、道具といったコマンドを選んで戦うコマンドバトルを採用しました。

――アクアプラスは、3Dアクションゲームを手掛けているので、アクションRPGという選択肢もあったと思います。あえてオーソドックスなコマンドRPGにした理由は?

下川もちろん、アクションRPGというジャンルも考えましたが、「おもしろい物語を楽しんでほしい」という思いがいちばん強い。アクションRPGは、プレイヤー自身が操作方法に慣れる必要があるので、純粋に物語を楽しみたい人にとっては、アクション要素が足かせになってしまう可能性があります。そこで、より多くのユーザーの方が物語を堪能しやすいように、あえてとっつきやすいコマンドバトルのRPGにしました。物語を通して好きになったキャラクターを、成長させる喜びも味わえるようにしています。

――コマンドに、“ハル”という項目があるのが気になります。戦闘画面の右上には、ハルの顔のアイコンとゲージもありますが……。

下川ハルのコマンドやゲージの詳細はまだお答えできませんが、ハルはいわゆるお助けキャラクターとして戦闘に参加します。ハルをカスタマイズして強化するシステムも実装していますので、続報にご期待ください。

――戦闘画面は、左上に表示されたサークルも特徴的ですよね。キャラクターの行動順を示すようにも見えますが、こちらの詳細は?

下川左上のサークルは“連環システム”といって、ご指摘の通り、キャラクターの行動順を制御するシステムです。詳細は続報にて改めてご紹介できればと思いますが、このシステムを使うことで味方のコマンドを考えたり、罠を仕掛けたりと、戦闘を有利に進めることができるようになります。

―― 奥深いバトルが楽しめそうですね。

下川戦闘に関しては、新たに公開したPVにも収録しています。戦闘シーンの演出にもこだわっていて、3Dのキャラクターが多彩なアクションをくり出す迫力満点のバトルの一端を見られるので、ぜひご覧ください。

――せっかくなので、最新PVの戦闘シーン以外の見どころも教えてください!

下川今回のPVは、シーンや曲の勢いで作品の魅力を伝えるのではなく、「どういう物語になるのだろうか」と、視聴した方がストーリーの展開を考えたくなるような内容にしています。短い中にもいろいろな情報を詰め込んでいるので、ほかのユーザーの方とSNSなどで考察しながら、どんな物語になるのか想像をふくらませてもらえるとうれしいですね。

――本作を発表したときも考察をしているファンが多かったので、新PVの公開後は発売に向けてますます盛り上がると思います。

下川鋭い方が多いので、我々としてはちょっと怖いところもありますが(苦笑)、本作の発売をきっかけに、ますます盛り上げていきたいですね。少し気が早いのですが、じつは本作のエンディング後のストーリーの構想を考えていて。というのも、本作は『うたわれるもの』シリーズと同じく、遥か未来の世界を舞台に紡がれてきた長い歴史の中から、特定の時間や地域をピックアップした作品になります。より多くのユーザーが本作をプレイして応援していただけるようであれば、今後も『モノクロームメビウス』の新しい物語を展開していきたいと考えています。

『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』下川直哉氏インタビュー。“うたわれるもの”たちの 新たな物語の全容に迫る
『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』下川直哉氏インタビュー。“うたわれるもの”たちの 新たな物語の全容に迫る

戦闘シーンを初めて収録したPVを公開中!

 現在、本作の公式サイトにて最新PVを公開中。初公開となる戦闘シーンだけではなく、イベントシーンなども収録された最新映像となっている。ほかにもプロローグやイベントの映像などが公開されているので、新PVと併せてチェックを!

『モノクロームメビウス 刻ノ代贖』プロモーションムービー