スクウェア・エニックスより2022年4月27日に配信される、スマホ向けアクションRPG『聖剣伝説 エコーズ オブ マナ』。制作はスクウェア・エニックスとともに、『消滅都市』などで知られるWright Flyer Studiosが務めている。
本記事では配信前の、メディア向け先行体験バージョンを遊んでのレビューをお届け。なお、クローズドβ時のリポートもあるので、併せてチェックしてみてほしい。
※今回のレビューで使用したROMは開発中のもので、レベルデザイン・報酬内容などが正式サービス版とは異なる場合があります。
原作の記憶を辿るオリジナルストーリー
物語はマナの女神の導きにより、マナの樹に宿る過去の記憶を持つ“マナの実”から、さまざまな世界を巡り、マナの女神が求める“聖剣”を探すというもの。オリジナル主人公(名前、見た目変更可)の視点から語られていき、オリジナルの世界のほか、歴代『聖剣伝説』シリーズの世界を冒険する場合もある。
とくに『聖剣伝説』シリーズの世界は、原作通りのストーリーにはならないのがポイント。たとえば『聖剣伝説2』のランディが聖剣を引き抜く冒頭のシーンでは、主人公が介入したことによりまた別の展開をみせる。『聖剣伝説3』のフルメタルハガーに至るまでの道も、またひと味違った物語がくり広げられ、歴代キャラクターの意外な一面や、ifの物語を楽しむことができた。
定期的に開催されるイベントストーリーも存在し、今回体験できたイベント“最強へと続く道”では、『聖剣伝説2』のランディたちが、『聖剣伝説3』のフォルセナで開催される武闘大会に参加。『聖剣伝説3』の主人公のひとり・デュランと邂逅するクロスオーバーストーリーが味わえた。歴代キャラクターどうしの会話劇など、こちらもシリーズファンにはたまらないものとなっている。
美麗かつ滑らかなグラフィック
グラフィックは2Dスタイルを採用しており、ドット絵ではなくCGイラストが動くようなイメージ。『聖剣伝説』シリーズはゲームによって頭身がまちまちだが、全体的には『聖剣伝説3』のリメイク版である『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』に全員が揃えられたようなイメージだ。
バトル中のグラフィックはとくにWright Flyer Studiosらしいポイントで、滑らかにキビキビとアクションをくり広げる歴代キャラクターたちが、なんとも素晴らしいところ。細かな仕草やキュートなポーズなど、眺めるだけでもつい微笑んでしまう。
立ち絵やキャラクター専用のグラフィックのほか、本作には“メモリージェム(メモジェム)”というカードが存在し、こちらは歴代名シーンなどを1枚のイラストにした装備アイテム。フレーバーテキストとともに、新たな描き下ろしイラストを楽しめるのも、歴代ファンとしてとってうれしい要素だった。
歴代キャラクターが集結!
最大の魅力とも言えるのが、先述の通り歴代『聖剣伝説』キャラクターたちが登場することだろう。初代『聖剣伝説 -ファイナルファンタジー外伝-』からは主人公が“ヒーロー”というキャラクターとして登場するほか、アマンダやシャドウナイトなどが仲間になる。敵キャラクターも仲間になるのがうれしいところ。
『聖剣伝説2』はプリムやポポイも含めたランディ一行、『聖剣伝説3』はデュランやリースなどの主人公6人のほか、紅蓮の魔導師やルガーといった敵役たちも仲間になる。『聖剣伝説4』のエルディたちも、もちろん登場。
クローズドβでは触れられなかったところとして、『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』のシャイロ(男性主人公)、セラフィナ(女性主人公)が登場。名前は漫画版などと異なり、本作オリジナルのようだ。さらには『聖剣伝説DS チルドレン オブ マナ』の主人公たちであるフリック、ワンダラーも使用可能となっている。
キャラクターはそれぞれレア度のほか、サブタイトルのようなもので種類が異なっており、たとえばランディならば同じ★3レア度でも、“【偶然が導く運命】ランディ”(装備は剣)、“【熱き心と勇気と】ランディ”(装備は槍)、と性能の異なるキャラクターとして存在しているのもユニークなところだ。
シリーズ人気タイトルから、ほぼほぼ主要キャラクターがサービス開始時点で揃ってしまっているので、今後どのようなキャラクターが登場するのかも楽しみなところ。ニキータやシエラが登場しているので『聖剣伝説 レジェンド オブ マナ』に登場したほかの仲間たちや、『聖剣伝説3』のクラスチェンジ姿などが今後登場するのでは? というのは筆者の勝手な予想。求む瑠璃。
アクション性の高いバトル
バトルは2Dスクロール型で進む、いわゆるベルトスクロールアクション。バーチャルパッドでの移動と、タッチボタンによる通常攻撃・スキル・必殺技などをくり出しながら進んでいく。アクションRPGなことが多い『聖剣伝説』シリーズらしいシステムだ。
パーティは最大6人で出撃することができ、メインメンバーに紐づいたサブメンバーを交代することができるほか、操作キャラクターも変更可能。操作していないキャラクターは、AIが戦ってくれる。
育成具合にもよるが、通常のバトルはかなりテンポよくバトルを進められ、とくに必殺技で敵を一網打尽にしたときはかなり爽快。ボス戦はギミックが存在したりとやり応えの高い戦闘となっている。敵の攻撃をうまく回避しつつ、隙を突いて攻撃しないとなかなか倒せないなど、基本的には歯応えのある難度なのが魅力だ。
スマホでアクション操作、というところで難しそうに感じるかもしれないが、そもそもの操作感の手触りが良いほか、“回避”がタッチボタンではなくスライド操作でも発動するなど、直感的な操作にも対応している。また、攻撃での移動を自動で行ってくれる“セミオート”、完全にバトルを自動で行ってくれる“フルオート”機能もある。遊んでいて戦いにくいとは感じなかった。
フルオート、または操作していない仲間のAIをある程度制御できる“作戦”も変更でき、自分好みの戦いかたで戦ってくれるのも頼もしい。とはいえ、敵の攻撃を完全に回避してくれるわけではないほか、いわゆる超必殺技に値する“特大精霊魔法”は発動してくれない。完全放置するよりは操作したほうが強い、というバランスになっている。
アクションバトルゆえにある程度操作がうまければ突破できる部分もあるが、やはりRPGらしく成長要素は非常に大事。育成要素は豊富に用意されており、自分の好きなキャラクターをコツコツと育てていくのが、本作の醍醐味となっている。
豊富な育成要素
キャラクターの育成はおおまかに、レベル・マナボード・限界突破などの強化系の3つに分けられている。レベルはバトルをくり返すことで得る経験値でアップ。この手のスマホ向けゲームは大量の経験値アイテムを使用してレベリングする作品が多いが、本作は経験値アイテムを得る手段が乏しく、クエスト周回などでレベリングするのがメインとなっている。
マナボードは素材を消費してキャラクターのパラメータを上げていくもので、システムは少し違うが『聖剣伝説3 トライアルズ オブ マナ』の育成に近いイメージだ。レベルを上げていくと項目が開放され、各属性に分かれた素材を消費して強化できる。
スマホ向けRPGらしい要素として、同じレア度のキャラクターを素材にすることでレベル上限が上がる“進化”、同じキャラクターを素材にしてスキルレベルを上げる“限界突破”、アイテムを使ってレアリティ最大値★6になる“覚醒”が存在する。覚醒については現状狙える育成の上限、という感じでかなり上級者向けのものとなっている。
また、このほかにも装備アイテムの取得・強化のほか、メモリージェムの強化も存在。豊富な育成要素で、キャラクターをどんどん強くしていくことこそが、本作でとくに楽しめる要素だと感じた。
レア度の低いキャラクターでも、進化することでレア度が上昇。性能的には少しだけ初期★4のキャラクターよりも劣るが、それでも十分使っていける性能になるので、好きなキャラクターを自由に育てて遊べるのもポイントだ。
やり応えのあるクエスト群
クエストはおおまかにストーリー進行を担う“メインクエスト”、『聖剣伝説』シリーズのようなマップ探索が楽しめる“探索クエスト”、ボスと戦う“ボスバトル”の3種類がメイン。そのほかに育成アイテムを手に入れる“素材ダンジョン”、特定の装備ドロップが狙える“装備ダンジョン”もある。
また、先述した期間限定のストーリークエスト“イベント”と、さらにはやり込み要素である高難易度ダンジョン“ギャバジンの塔”が存在。ギャバジンの塔は、塔の階層を駆けあがって進めていくコンテンツで、階層が進むほどに交換用アイテムが手に入る。クリアーしていけば、“★4キャラ確定ガチャチケット”などの豪華報酬が手に入る。
本作にはキャラクターの総合的な能力を数値で表した“戦闘力”がある。クエストにはそれぞれ推奨戦闘力が存在し、上回ればサクサクに進められるほか、下回るほどに苦戦が強いられることがわかる。クエストに挑む前にクリアーできそうかわかるのは、うれしいところだった。ゲーム的にも、この戦闘力をどんどん上げていくのが目標になっている。
クエストはオート周回システムに対応しており、1度クリアーしたクエストならば自動周回が可能。フルオート操作により、放置しているだけでレベリングやアイテム稼ぎができるのは、かなりお手軽。もちろん放置しても勝てる戦力が必要になるので、オートで回せることを目標に育成するのも、やりがいのひとつと言えるだろう。
なお本作は、スタミナ式のシステム。ストーリークエストに使用するスタミナ(AP)と、育成・イベントクエストに使用するスタミナ(SP)はそれぞれ分かれており、APが尽きたらSPを消費して遊ぶ、またその反対も可能だ。
一部イベントクエスト、または装備クエストはマルチプレイにも対応している。こちらは今回体験できなかったが、クローズドβでプレイした限りでは、ほかのプレイヤーが育てたキャラクターと共闘できる要素。ひとりより効率よく敵を倒せたので、おそらく正式リリース時も同じ仕様だろう。
ガチャはそれなりに回せそう
スマホ向けRPG的な要素についても触れていこう。仲間となるキャラクターはクエストでも手に入るが、基本的にはガチャを回して手に入れる。ガチャで現状手に入る最大レア度は★4で、ガチャからはメモジェムも排出される。メモジェムはキャラクターよりも排出率が低いので「ガチャを回したのにキャラクターじゃなくて装備アイテムばかり!」みたいなことにはなりにくい。200連回すとピックアップキャラクターと交換できる、いわゆる“天井”システムもある。
ガチャを回すには、ゲーム内通貨“精霊石”が必要だ。やはりプレイヤーたちが気になるのは「精霊石がどれくらい無償で手に入る?」というところだろう。結論から言うと「体感的にはそこそこ手に入るよ」という感じ。普通にゲームを進めていれば、気づいたら10連回せるまで溜まっているようなイメージ。もちろん、難易度が上がるにつれて手に入りにくくなるのだが。
ガチャ10連に必要な精霊石は2700個だが、ストーリークエストの章をクリアーするごとに1000個手に入るほか、デイリーや恒常ミッションの達成でもけっこう手に入る。ほかにもクエスト報酬、絆レベルの上昇など、手に入れる手段がたくさん用意されているので、いわゆる無課金プレイヤーでも結構遊べるだろう。ゲーム開始直後に引き直しが可能な★3キャラクター確定ガチャが引けるので、ある程度は好きなキャラクターで始められるのもうれしいところだ。
『聖剣伝説』を知らない人にも遊んでほしい!
クローズドβから改善されたポイントもいくつか存在する。たとえばクローズドβレビューでは「ミッション報酬を受け取っても全部1度プレゼントボックスに送られてから、ボックス内で再度受け取るのは前時代的な仕様」と正直に書いたわけだが、今回試遊したバージョンではミッション報酬はそのままプレイヤーの持ち物になるので、バッチリ改善。ほかにも細かな改善があり、より遊びやすくなっている。
現状強いて言うならば、筆者としてはキャラクターの強化画面で“戦闘力”の表示がほしいと感じた。パーティー編成画面では確認できるが、「推奨戦闘力5000のクエストへ挑むのに、どれだけ強化すればいいんだろう」という際に、数値をキャラクター画面から確認できないのが、ちょっと面倒に思う。とはいえ、気になるポイントは今後のアップデートでどんどん改善されていくだろう(戦闘力表示がされるかは別として)。
アクションゲームとしてガツガツ遊ぶのもいいし、RPGライクに放置メインで育成するのもアリ。プレイスタイルや状況に応じて遊びかたの幅があるのが、非常にユーザーフレンドリーだと感じた本作。『聖剣伝説』シリーズの新たな1歩として、ぜひヒットしてほしいといちファンとして願っている。気になる人がいたら、ぜひまずはダウンロードしてみてほしい。