スマートフォンでプレイステーション(R)4(PS4)やプレイステーション(R)5(PS5)のゲームをプレイできる“PS Remote Play”というアプリをご存じだろうか。このアプリを使用すれば、外出先からPS4やPS5をリモートプレイできるというゲームをする人にとってはうれしいサービスだ。

 しかし、時間帯や場所など、通信状況によっては画面がカクついたり、遅延したりといった問題点も。安定した通信環境が確保できないと使用しづらい部分があった。

 ひとり用のRPGなどはまだいいが、アクション要素のあるゲームだと遅延による影響を大きく受けてしまう。リモートでプレイをする際は、影響が少ないゲームにしていた人もいるだろう。

 そんな問題を解決するためには安定した通信環境が必要だ。ということで、ソニーとKDDIによる安定した通信環境を実現する技術“5G SA ゲームストリーミング”の検証が、2022年3月23日に公開された。技術の説明とともに、実際どれほど快適にプレイできるかを見学できたので、その模様をリポートする。

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※本記事はKDDIの提供でお届けします。

通常スライスだとかなりカクつく……。ゲームストリーミング専用スライスでは?

 いろいろな説明は後述するとして、まずは実際に見学した感想をお伝えしよう。

 今回の技術検証では、5G SAのネットワークスライシングで分けられた“ゲームストリーミング専用スライス”を使用して、自宅にプレイステーションがある状態で、外出先でXperia(TM)のスマートフォンでプレイすることを想定。

 比較のため、カスタマイズをしていない通常スライスでもプレイし、両方とも通信状況が混雑しているという状況の中で実験が行われた。

こんなにも違うのか! 最新の5G回線とスマホを使って屋外で遠隔プレイする“5G SA ゲームストリーミング技術検証”をリポート

 動画の左側が通常スライス、右側が“ゲームストリーミング専用スライス”を使用しているスマートフォン。今回は、NPCとの対戦が行われた。どちらもそれぞれがNPCと対戦している。

 通常スライスでプレイしているスマートフォンを見ると、やはり通信状況が混雑しているためか、かなりの頻度で画面が固まったりして思い通りに操作できていないように見える。スムーズにプレイできている状態のときもあるが、どうしても快適なプレイとはいかないようだ。

 また、コマンドを入力して技を出すのもタイミングがとりづらくてやりにくそう。さらに、コマンドを入力しても画面が止まり、動き出したときには技の発動が終わって演出が見れないなんてことも。演出もゲームにとって大事な要素なので、見られないのは悲しい。

こんなにも違うのか! 最新の5G回線とスマホを使って屋外で遠隔プレイする“5G SA ゲームストリーミング技術検証”をリポート

 一方、“ゲームストリーミング専用スライス”を使用しているスマートフォンは、見学中は画面が一度も固まらなかった。見ている限りでは、自宅と同じような感じでプレイができており、回線の混雑による影響は受けていないようだ。

 画面がカクついたりしなかったので、技の発動も最後まできれいに見られた。

 なお、今回の実験では、低遅延よりも“安定した通信環境”を焦点に当てているとのことで、どれほどの遅延が発生していたかはわからない。しかし、見ている感じでは通常スライスに比べて、“ゲームストリーミング専用スライス”のスマートフォンの方がプレイしやすそうなのはたしかだった。

こんなにも違うのか! 最新の5G回線とスマホを使って屋外で遠隔プレイする“5G SA ゲームストリーミング技術検証”をリポート

“5G SA ゲームストリーミング”とは?

 それでは、“5G SA ゲームストリーミング”とはどのようなものか、簡潔に説明しよう。

 そもそも、5G SA(スタンドアローン)というのは、5Gでの通信を実現させるためにすべての設備を5G用の設備にして提供することだ。5Gは、従来の4Gに比べて圧倒的に通信速度が速くなっており、大勢が同じネットワークに同時に接続しても遅延などが発生しづらいといった特徴を持つ。KDDIは、できるだけ早く5Gを提供するために、現時点では4Gの設備を活用する5G NSA(ノンスタンドアローン)という形をとっているそうだ。

 5G SAにすることで、同一ネットワーク内にゲーム専用スライス(ネットワーク)やライブ配信専用スライス、動画ストリーミング専用スライスを作り、それぞれ分けて仮想技術のネットワークスライシングが使用できるようになる。

 簡単に説明すると、いままではさまざまなサービスが同じネットワークを使っていたが、ゲームをするときにはゲーム専用スライス、ライブ配信をみるときにはライブ配信専用スライスを使うということ。

こんなにも違うのか! 最新の5G回線とスマホを使って屋外で遠隔プレイする“5G SA ゲームストリーミング技術検証”をリポート
こんなにも違うのか! 最新の5G回線とスマホを使って屋外で遠隔プレイする“5G SA ゲームストリーミング技術検証”をリポート

 これで何が変わるかというと、いままでは回線が混雑しているとゲームやライブ配信の視聴などにラグや遅延が発生したりしたが、ネットワークスライシングを使用していると、仮にライブ配信専用スライスがカクついていたりしても、ほかのスライスは独立しているので、ゲーム専用スライスでは快適にプレイできるということになる。

 そして、ゲームストリーミングは、簡単に言うとネットワークを利用して家庭用ゲーム機を遠隔操作する仕組み。この機能を使用すれば、ゲーム本体がない外出先でもゲームをプレイすることが可能になる。

 5G SAのネットワークスライシングを使用した状況下で、ゲームストリーミングをプレイするのが“5G SA ゲームストリーミング”だ。

PS4やPS5を“外でプレイする”のが当たり前になるかも

 実証実験のほか、技術についての説明会も行われた。

 説明会では、ソニー株式会社モバイルコミュニケーションズ事業本部 第1ビジネス部 統括部長の木山陽介氏、KDDI株式会社 事業創造本部 次世代基盤整備室長の泉川晴紀氏、KDDI株式会社 技術統括本部 モバイル技術本部 次世代ネットワーク開発部長の渡里雅史氏による説明が行われた。

 泉川氏からは、将来的に実現したいことについて。コロナ禍になる前は、仕事は会社、コンサートはホールなどの会場、ゲームは自宅というように、“体験”と“場所”が密接に関係していたが、今後はデジタルを用いて“場所”に縛られずに“体験”ができるようにネットワークの整備を進めているとのことだ。

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泉川晴紀氏
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 木山氏からは、今回の技術検証を行うに至った経緯が語られた。ゲームに関して、現状は回線が混雑しているとゲームストリーミングが不安定になってしまうが、“ゲームストリーミング専用スライス”を使用して、回線が混雑時でも外出先で安定したプレイができることを理想として技術検証を進めているとのこと。

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木山陽介氏
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 技術的なことについては、渡里氏から。5G SAの最大の特徴はネットワークスライシングであること、今後の5G SAへの移行体制について説明された。5Gの提供は2020年3月に開始されたが、5G SAによるネットワークスライスの本格展開は2024年度に開始予定とのこと。

こんなにも違うのか! 最新の5G回線とスマホを使って屋外で遠隔プレイする“5G SA ゲームストリーミング技術検証”をリポート
渡里雅史氏
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 5G SAの具体的なサービス内容については検討中だが、冒頭でも説明したように、ゲームを始めライブ配信専用などのスライスの用意を考えているそう。また、今回の実験では、遅延よりも安定した通信ができるように焦点を当てて調整したが、今後は低遅延のことも視野に入れて展開していきたいとのこと。

 『ストリートファイター V』のような対戦格闘ゲームだと、攻撃されたら即座にボタンを押して防御するといった反応が必要だ。それには、画面に映像が遅延なく表示されるなど双方向性の通信がシビアに求められる。今回の技術検証を実現するにあたって、安定した双方向の通信を実現させることに注力。

 外出先でも遅延が発生せず、安定したプレイが可能になれば、プレイスタイルが大きく変わるかもしれない。いままでは主に通信環境面の問題で除外していた人も多いだろう、“外でプレイする”選択肢が自然と増えてくるわけだ。

 これからの5G SAの展開に期待していきたい。

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