「『軍儀(ぐんぎ)』が現実に商品化される!?」

 その一報を聞いたとき、筆者は耳を疑いました。そして直後に、ある疑問が頭をよぎったのでした。「作中の描写に忠実なゲームにしたとして、ちゃんと遊べる(おもしろい)ゲームになるの?」

 恐らく商品化を知った多くの『HUNTER×HUNTER』(ハンターハンター)ファンも、同様の疑問を持ったことでしょう。本稿を読めば、その疑問の多くは解消されることと思います。

 今回は、幸運にもこの『軍儀』を発売に先駆けてプレイさせていただいた筆者が感じた、“実際のゲームとして”の特徴・魅力をご紹介。まだルールの面で詳細をお伝えできない部分もあるのですが、そのゲーム性を少しでも掴んでいただき、発売までいろいろと想像していただけたらうれしいです。

【ハンター×ハンター】メルエムとコムギの対局が現実に!? まさかの商品化決定『軍儀(ぐんぎ)』最速試遊レビュー
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『軍儀』は“通常版”と“ハイエンド版”、2種類の商品展開で発売予定。
『軍儀』特設ページ

『軍儀(ぐんぎ)』とは?

 『軍儀』とは、『HUNTER×HUNTER』の“キメラアント編”作中に登場した架空の盤上競技。作中設定としては、キメラアントの王・メルエムが乗っ取った国“東ゴルトー共和国”で生まれ、東ゴルトーの国民ならほぼ全員打つことができるという、まさに国民的ゲームです。

【ハンター×ハンター】メルエムとコムギの対局が現実に!? まさかの商品化決定『軍儀(ぐんぎ)』最速試遊レビュー
アニメ『HUNTER×HUNTER』より、『軍儀』による対局を行うメルエム(左)とコムギ(右)。

 縦横9×9マスの盤に駒を配置し、先行・後攻を決めて1対1で対局するなど、将棋との共通点多数。しかし、細部のルールには将棋とはまったく異なる、非常にユニークな特徴がいくつかあることが、作中の描写から読み取れます。作中で描かれているおもな特徴は、以下のような部分。

  • 開始時の駒の配置は、自陣地内ならば自由。
  • 駒を3枚まで重ねる(ツケる)ことが可能。
  • 盤の横の台には対局開始時から手駒がいくつか置かれており、これらの駒を盤上に打つことは“新(あらた)”と呼ばれている。
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駒を2枚以上重ねることを“ツケる”という。
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手駒を“新(あらた)”することで、戦局が一変する場合も?

 メルエムは、とある計画の実行までの暇つぶしとしてこの『軍儀』に触れ、この競技で世界大会無敗の腕前を持つ少女・コムギと出会います。『軍儀』、そしてコムギとの出会いはメルエムにとって、とても大きな意味を持つことになるのでした。

ツケを征する者が『軍儀』を征す!? “入門編”で対局してわかったこと

 ここからは、発売元であるユニバーサルミュージックの企画担当者と実際に対局してみて、わかったことをお伝えします。

 商品版『軍儀』では、対局時のレギュレーションが“入門編”、“初級編”、“中級編”、“上級編”の4種類用意されています。『HUNTER×HUNTER』の作中でメルエムとコムギが対局をしていた本来のルールに準拠したレギュレーションは“上級編”。

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アニメ『HUNTER×HUNTER』より、『軍儀』のルールブック。

 高度なレギュレーションほど覚えるべきことが増え、対局時間も延びますが、戦略の自由度もまた格段に跳ね上がるようです。「シンプルに見えて、実は非常に複雑」ーーこれは作中でメルエム直属の護衛であるシャウアプフが『軍儀』を評して使った言葉ですが、この複雑さは商品版でもしっかり再現されていました。

 まずはいちばん簡単な“入門編”でくり返し遊んでみて、慣れてきたら徐々に上のルールに挑戦するのがおすすめとのこと。今回の対局も“入門編”で行っています。

 “入門編”は、駒の初期配置が固定されているほか、いくつかの駒は不使用。作中では駒を3つまで重ねる(ツケる)ことが可能になっていましたが、この“ツケ”の上限も、2段までに制限されています。

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対局開始。筆者は黒い駒を使っているほう。

 ルールブックを参考に、お互いの駒を配置し終えたら、いざ対局。

 ちなみに筆者は、将棋のルール自体は把握しているものの、腕前はからっきし。その少ないノウハウを応用しつつ、“どんな戦いかたをすればそれぞれの駒を活かせるか?”を『軍儀』に当てはめて考え、一手一手、慎重に打っていきます。

 ルールブックで駒の動かしかたを確認しつつ対局を続けていると、このゲームの特殊性が少しずつ理解できてきました。とくに駒を重ねる“ツケ”という概念と、これにともなう攻防は、ほかのゲームにはないおもしろさ!

 “ツケ”は、実行することで駒の移動範囲も広くなるなど、敵陣に攻め込むにも、自陣を守るにも有効な一手。少なくとも初心者どうしの対局ならば「ツケを征する者が『軍儀』を征す」といっても過言ではないテクニックと言えそうです。

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 また、手駒から盤上に打つ“新(あらた)”も、状況を変える有効な手段。空いているマスに駒を置けるだけでなく、“新(あらた)”によって直接“ツケる”ことも(自分の駒に対してならば)可能となっており、とにかく幅広い選択肢を与えられているのが、特徴的です。

 対局の序盤~中盤では“新(あらた)”に頼り、手駒をいたずらに消費してしまった筆者。油断から相手に取られてしまった駒も多く、劣勢に立たされます。なお『軍儀』では、相手から取った駒を再利用することはできず、その駒は対局から完全に除外されます。ここも将棋とは異なる点。

【ハンター×ハンター】メルエムとコムギの対局が現実に!? まさかの商品化決定『軍儀(ぐんぎ)』最速試遊レビュー
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対局の中盤までにそれぞれが取られた駒たち。筆者の劣勢具合がよくわかりますね。

 不利な状況に立たされた筆者ですが、終盤、安易な攻めでいくつかの駒を取られた反省から、盤上全体を意識し、自陣の守りと両立した攻めかたを考えることで、形勢逆転。最終的には勝利を収めることができました……!

 逆転の末の勝利だったこともあり、その喜びは極めて大きいものとなりました。担当者も手加減したわけではなかったとのことなので、その言葉を信じようと思います(笑)。

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王手となったときの状況。やはり“ツケ”の活用が決定打となった。

“孤孤狸固”や“中中将”の再現も可能? 発売が待ち遠しい!

 くり返しになりますが、対局してみてわかったのは、“ツケ”という概念こそが、『軍儀』に唯一無二の戦略性とおもしろさを付与しているということ。“入門編”はこの“ツケ”、それから“新(あらた)”というルールの把握に焦点を絞ったレギュレーションになっていると言えそうです。

 “入門編”でもかなりの奥深さの一端が感じられたので、この先、プレイヤーが増えて研究が進めば、将棋のようにさまざまな定跡(強力であることが明らかになっている打ち方)が生み出されることになりそうな予感がします。

 これが、さらに自由度の高い戦略が要求される“上級編”になると、どうなってしまうのか? また、“孤孤狸固(ココリコ)”や“中中将(ナカチュウジョウ)”といった、作中に登場した戦法の有用性も再現されているのか? 興味は尽きません。

【ハンター×ハンター】メルエムとコムギの対局が現実に!? まさかの商品化決定『軍儀(ぐんぎ)』最速試遊レビュー

 『HUNTER×HUNTER』作中の描写の説得力も凄まじいものがありましたが、そこから細部のディテールを膨らませて、ここまで本格派のゲームへと仕上げた商品版『軍儀』開発チームも本当にすごい。ちゃんと……というかめちゃめちゃおもしろいゲームになっていました!

 ちなみに、開発中のテストプレイに関するお話も少しうかがえたのですが、やはり将棋や囲碁などが強い人は、この『軍儀』でもほぼ例外なく強さを発揮できるのだそう。『HUNTER×HUNTER』ファンはもちろん、ボードゲーム・盤上競技のファンにも、大いに期待しつつ、発売を楽しみに待っていてほしいです。

 『HUNTER×HUNTER 軍儀』には通常版とハイエンド版があり、いずれも完全受注生産限定品として予約販売となります。通常版は4840円[税込]で、ハイエンド版が48400円[税込]。予約期間は2022年2月14日(月)~5月8日(日)までで、商品のお届け日は2022年9月16日(金)予定となっています。