2022年1月31日。2月3日放送の“State of Play”に先駆け、全世界のメディアを対象に『グランツーリスモ7』(以下、『GT7』)のデジタルメディアイベントが開催された。同作は、3月4日にソニー・インタラクティブエンタテインメントから発売されるPS5およびPS4向けの作品。世界的に注目度の高いタイトルである『GT』シリーズ最新作であり、かつシリーズ25周年を迎えた集大成的なタイトルとなる『GT7』だけに、各国から多くのメディアが同イベントにアクセスすることになった。
このイベントはふたつのセッションに分割されており、セッション1では『GT7』の魅力や新要素、PS5ならではの表現などを『GT』シリーズプロデューサーである、山内一典氏(ポリフォニー・デジタル 代表取締役 プレジデント)自身が解説したオンデマンド映像を配信。セッション2ではそんな山内氏への質疑応答がライブで行われることに。本稿では、まずセッション1で明らかになった『GT7』の内容を解説し、後半では質疑応答の内容をお届けする。
『グランツーリスモ7』(PS5)の購入はこちら (Amazon.co.jp) 『グランツーリスモ7』(PS4)の購入はこちら (Amazon.co.jp)多彩なモードに本作から加わった新要素“Cafe”!
オンデマンド映像の冒頭、山内氏が語ったのはこの時代に『GT7』をリリースする意義について。「20世紀に生まれたもっとも素敵な“クルマ”という文化の魅力を新しい世代に伝えること」を目的としているため、前提となるクルマの知識がまったくなくても楽しめる作品になっているという。
その後、『GT7』の各要素にアクセスするハブとなる“Gran Turismo World”について解説へ移行。実際のゲーム画面では、下記のようなものになる。
本作もこれまでの多くの『GT』と同様、カーライフシミュレーションという楽しみかたが中心。そのため、これまでにシリーズにあった、Licence(ライセンスモード)やカーショップ、Scapes(スケープスモード)、マルチプレイヤーなどが用意されている。
なお、カーショップは、2001年以降に発売された新車を扱うBrand Central、中古車を扱うUsed Cars、そして伝説的かつ高額なクルマを扱うLegendary Carsの3種類が用意されており、発売時点で合わせて400車種以上のクルマが収録されるという。もちろん、以降のアップデートで、車種がどんどん増えていくことは間違いないだろう。
また、World Circuitsからアクセスできるサーキットは、発売時点で34のロケーションを収録。走行できるサーキットレイアウトは97種類になっている。オンロードはもちろん、オフロードサーキットも収録。収録サーキットは、細部までリアルに作られた実在のサーキットを始め、『GT』シリーズではお馴染みのHigh Speed RingやDeep Forestなどといった架空サーキットも含まれている。
なお、それぞれのサーキットには時間や天候の変化も搭載されており、気温や路面温度の変化がクルマの物理シミュレーションとも密接に連動するようになった。この変化に応じて、ドライビング中に雨雲レーダーを確認することもできるようになっている。
また、これまでの『GT』シリーズとは異なり、サンデーカップやクラブマンカップなどといった各種レースやアクティビティが、サーキットごとに開催されるようになった。手持ちのクルマにもよるが、まずは得意なサーキットのレースで片っ端から勝っていく……といったプレイスタイルにも対応したと言えるだろう。
各コースには、ロビーをカジュアルにしたミーティングプレイスという場所も用意されており、そこでほかのプレイヤーとの交流を図ることもできる。
そして、本作から新たに追加された注目の要素がCafeモード。ここではメニューブックを受け取ることができ、そこに書かれた30種類以上のクエストをクリアーしていくことで、『GT7』のさまざまな機能を少しずつ体験し、理解していけるという。いわば、『GT7』の道標的な存在だ。メニューブックをクリアーするごとに、メニューブックに関係するクルマの文化や背景を聞くことができるうえ、クルマの開発者が登場することもあるそうだ。
なお、このメニューブックに掲載されたクエストをすべてクリアーすることで、キャンペーンモードのクリアーとなるそう。もちろん、『GT7』において、キャンペーンモードのクリアーは長いカーライフの序章でしかないのは言わずもがななのだが……!
クルマ好きにはたまらない! 奥深きカスタマイズやチューニング、さらに新要素としてMusic Rallyも!!
『GT7』では、クルマのカスタマイズやチューニングといった要素が復活。購入したさまざまなチューニングパーツやエアロパーツを装着することで、羊の皮を被った狼とも言えるクルマを作り出すこともできるようになった。
当然、チューニングパーツが増えたことで、クルマのセッティングは複雑化することになる。しかし、本作では以前にもあった“パフォーマンスポイント”が大幅にパワーアップ。付けたチューニングパーツやセッティングの内容を物理演算し、クルマがどの程度の性能を有しているかを数値で見ることができるようになる。このパフォーマンスポイントがシミュレーションベースで計算されるようになるのは本作が初めてだ
また、『GT7』にはShowcaseというモードも。このShowcaseは『GT7』におけるクリエイティブスイート的な存在で、レースのカスタマイズやリプレイの保存、レースやScapesの撮影、クルマのビジュアル面でのカスタマイズなど保存し、ほかのプレイヤーに配信したり、受け取ったりできる。クルマの性能に直結するものは中心になってはいないが、「ビジュアル面でクルマを楽しむ」という要素が、このShowcaseに内包されていると言っていいだろう。
このShowcaseにも関わってくるのが、Music Replayという本作ならではの新要素だ。『GT7』では、過去最高となる75以上のアーティストの手で、300曲の楽曲を収録。そのジャンルもクラシック、ジャズ、ヒップホップ、エレクトロ、ラウンジミュージックなど多岐にわたり、さまざまなシーンでプレイヤーの気分を盛り上げてくれる。Music Replayは、その音楽にマッチした形でリプレイシーンを自動的に生成してくれるというものになる。
さらに『GT7』の大きな新要素として挙げられるのがMusic Rallyだ。このモードは「音楽を楽しみながら、リラックスしてドライブする」というニーズに対する開発スタッフからの答えとなっている。
Music Rallyでゲームを始めると“ビート数”というものが画面に表示される。クルマを運転すると、音楽のリズムに合わせて初期ビート数からビートが減算されていくので、ゼロになる前につぎのエクステンドゲートまで走ってビート数を加算し、最後までその曲を聴くというのがMusic Rallyのクリアー条件。「速く走る」というこれまでの『GT』シリーズの目的とは異なるカタチでドライブが楽しめる要素と言えそうだ。
『GT7』の真価を味わうには、PS5版で遊ぶのが最適!
PS4版も発売される『GT7』だが、PS5版ではより多くの魅力を味わえることになる。それだけ、ハードスペックに依存した要素が本作に導入されているのだ。以下では、その代表的な要素を解説しよう。
PS5版の『GT7』ではふたつのグラフィックモードが用意されている。フレームレートモードは、レース中やリプレイ中を問わず、秒間60フレームで描画されることになる。一方のレイトレーシングモードでは、高精細なCGを楽しめるモード。リプレイやフォトモードなど、素早いレスポンスが必要のないモードでの使用がお勧めだそう。
サウンドに関しては、3Dオーディオに対応。3次アンビソニックスという手段を用いることで、周囲のクルマが発生させる音の発生方法がハッキリわかるようになるそう。さらに、雨がフロントガラスを叩く音、上空を飛ぶヘリコプターの音、タイヤが縁石を踏んだときの音、さらにはそれらの反射音なども再現されるという。
また、PS5のコントローラであるデュアルセンスで体験できるハプティクス(触覚提示技術)についても言及。『GT7』では、路面の凹凸から受け取る来るかすかなフィードバックや、縁石に乗り上げたときの大きなフィードバック、フロントタイヤが滑ってアンダーステアが出る際の感覚までも再現。さらに、アダプティブトリガーでは、クルマごとにブレーキの重さを変えたり、ABS作動時の断続的なブレーキロックの振動も表現している。
このように、PS5版であればゲーム体験がさらに奥深いものになることは間違いない。クルマの挙動を感じやすくなるということは、タイムアップにも繋がるので、可能な方はPS5版に触れてみることをお勧めする。
『GT』シリーズプロデューサー、山内一典氏Q&Aセッションの模様をお届け
最後に、世界各国のメディアを集めて行われた、『GT』シリーズの生みの親である山内一典氏への質疑応答の模様をまとめてお届けする。
山内一典氏
『GT』シリーズプロデューサー/ポリフォニー・デジタル 代表取締役 プレジデント
――シリーズ当初から没入感へのコダワリを見せている『GT』シリーズですが、『GT7』において没入感を得るために注力したことは?
山内没入感を得るには、ふだん僕たちが感じている“リアル”にどれだけ近づけるかです。『GT7』ではレイトレーシングを始めとしたグラフィックスのクオリティーを、リアリティーを高める方向で使っています。また、サウンドに関しても、愚直により良いサウンドをレコーディングすることに注力しました。さらにPS5のデバイスを利用して、“音と振動のあいだの領域”をキチンとシミュレーションベースで表現しています。そういった小さなことの積み上げが、『GT7』の没入感に寄与していると思います。
――400台以上収録されたクルマのサウンドは、どのように収録されているのでしょうか。
山内我々は『グランツ-リスモSPORT』の開発時から北米やドイツ、イギリスにサウンドレコーディングスタジオ(無響室)を持っているのですが、そこで1台ずつ収録を行いました。すべてのクルマを運び込んで行うため、相当手間のかかる作業でしたね。
――中古車ディーラーのシステムですが、これまでのシリーズ作のようにランダムでクルマが登場し、その中からプレイヤーがクルマを選べるようになるのでしょうか?
山内中古車ディーラーのラインナップは、毎日少しずつ入れ替わっていきます。
――これまでの『GT』シリーズにも時間や天候変化のシステムは限定的に導入されていましたが、『GT7』ではどういう形で導入されているのでしょう?
山内まず時間変化ですが、朝から夜までの変化というのはすべてのコースにあります。ただし、夜から朝にかけての変化に関しては、一部のコースだけに採用されています。たとえば、ニュルブルクリンクなどの24時間レースが行われるような場所ですね。また、天候の変化ですが、晴れから曇りまでの変化はすべてのコースで体験できますが、雨が降るコースに関しては限定されています。今回の時間や天候変化に関するいちばんのチャレンジは、それをビジュアルの変化だけに留めず、デジタルな物理シミュレーションで行っていることです。さらに、その時間や天候変化がコースを走行しているクルマに相互作用することになります。たとえば、路面温度が下がる、雨が降る、風が吹くといった要素が物理演算され、ドライビングに関わってきます。
――『GT7』は星空にもコダワリを持ち、コースのある場所から見える星空をも忠実に再現しているということですが、そのデータはどのように集め、どのように再現しているのでしょうか?
山内基本的には、NASAが公開しているデータを利用し、天文学に基づいたアカデミックなシミュレーションを行って星や太陽の位置をレンダリングしています。通常の夜間レースでは明るい星だけですが、フォトモードでシャッタースピードを遅くすれば、暗い星や天の川まで撮影することができます。
――『GT7』は一般的なクルマも多数収録されているのでしょうか?
山内これまでも幅広いラインナップのクルマを用意してきましたが、充分だとは思っていません。たとえば、エントリーモデルのクルマたちをもっと増やすことは必要だと思っています。また、『GT7』では本格的チューニングが可能になっています。メディアの皆さんに観ていただいた動画ではフォルクスワーゲンのビートルをポルシェ911並みに速くしていますが、そういったことが可能なので、かなり幅広いクルマたちでレースができるんじゃないかと思っています。今回はシミュレーションをした結果が反映されるパフォーマンスポイントという要素を収録していますが、その仕組みは幅広いクルマたちで一斉にレースをするために入れていると言っても過言ではありません。最初から速いクルマもあれば、チューニングで速くしたクルマもある。それらがレースをするための指針として使えるわけです。
――チューニングの要素は複雑になりましたが、セッティングデータはShowcaseなどを利用して、ほかのプレイヤーと共有することはできますか?
山内Showcaseでセッティングデータそのものを共有することはできないのですが、セッティング画面で何枚かのスクリーンショットを撮影すればシェアすることはできるよう、デザインには配慮しています。セッティングデータが簡単にシェアできないようになっている理由はいくつかあるのですが、それぞれのクルマにどんなチューニングパーツが付いているのか、どんなエアロパーツが付いているのかは千差万別です。あるセッティングデータを異なるクルマに適応させたとき、いろいろな部分で不整合が生じてしまうので、今回は見送りました。
――マルチプレイヤー部分は『グランツーリスモSPORT』と同レベルと考えてよいのでしょうか?
山内オンラインマルチプレイヤーについては、『グランツーリスモSPORT』とほぼ同等です。
――『GT7』でAIはどのように進化したのでしょうか?
山内AIに関しては永遠に終わることのない進化を求められている部分だと思います。『グランツ-リスモSPORT』に比べると、よりアグレッシブで、人間の出すラップタイムに近づく走りができるようになっています。また、複雑なシチュエーションにおいて、より的確な行動ができるようになっています。プレイヤーと競り合うこと、またプレイヤーに不快な思いをさせないことなど、いろいろな要件があるのですが、そういった部分を進化させています。とはいえ、現状がパーフェクトだと思っていません。
――『GT7』はオンラインに接続しないと遊べないと聞いていますが、その理由は何なのですか?
山内ひとつは、ゲームシステム全体のなかで、たとえばShowcaseやオンラインマルチなど、オンラインでなければできない要素がたくさんあるからです。また、セーブデータのチート対策を考えたとき、オンラインにセーブデータを保存しないとチートが防げないという部分があります。大きくはそのふたつです。
――難易度設定について。初心者にも優しい設計であるということは理解できましたが、ハードコアなユーザーにはどういった部分が考慮されていますか?
山内『GT7』では、ゲームを始めるときに初級、中級、上級という3つの難易度を選べます。初期設定は中級なのですが、これまで『GT』シリーズを遊んできた方にとっては、やや物足りないかもしれません。そういった方は上級を選んでいただければと思います。
――『GT7』におけるラリーは、どれくらいの重要度になっているのでしょうか?
山内ダートコースはあらかじめ用意されています。雪道はまだ入っていないのですが、おそらくアップデートで追加されることになると思います。
――ミーティングプレイスという要素があるということですが、ここには世界のどこからでもアクセスできるのですか?
山内ミーティングプレイスというのは、各コースにサーキットカフェがあるようなイメージです。そこはつねに空いているオンラインロビーになっていて、そのときに居合わせた人とチャットをしたり、コースを走ったりできるというものです。
――デュアルセンスの使いかたについてもう少し詳しく知りたいのですが。たとえば、デュアルセンスのスピーカーからエンジン音が出たりなどするのでしょうか?
山内デュアルセンスは、音になるレベルの振動数はあまり使わないようにしていて、音ではない、音になる前の振動のところを多用しています。ですので、デュアルセンスのスピーカーから音が鳴るようなことは基本的にありません。
――PS5での『GT7』でいちばん重要だったと思うフィーチャーはどういった部分でしょう?
山内どのPS5タイトルの作り手も同じことを言うと思うのですが、やはりロードの早さです。とくにレースゲームは、ワールドの巨大なデータを一度にすべて読み込まなければレースを始められないですから。PS5で行えば数秒程度で完了するものが、PS4で行った場合は、より時間がかかるので、その差はプレイ体験としてものすごく大きいです。
――『GT』シリーズにおいて音楽は重要な要素でしたが、今回はとくに音楽に注力されていると思います。その理由は?
山内音楽という重要なピースをこれまでと違った形で『GT』に一体化させたいということは、ずっと以前から考えていたことです。この5年間くらい、ポリフォニー・デジタルのサウンドルームに何人かのスタッフで毎日のように集まり、楽器を演奏していました。そんななかで、今回のMusic Replayなどのアイデアが出てきて、それを『GT7』の中に盛り込んだのですが、それには5年という時間が必要でした。
――『GT7』のMusic Rallyモードは、ほかのゲームにあるような、チェックポイント制のレースとどう違うのでしょうか? 速く走ることが目的ではないとはいえ、できるだけ長く走るためには速く走らなければならないわけで、相反しているような気もするのですが……?
山内Music Rallyの最大の目的は、音楽そのものを楽しんでもらうことです。もうひとつは、初めて『GT』をプレイする、これまでレースゲームを一切遊んでこなかったような子どもが遊んでも楽しめるようなものにしたかったのです。そして、Music Rallyではエクステンドゲートを通過するときに加算されるのはタイムではなく、あくまでも所持ビートです。BPM(ピッチ)が速い曲であればビートの消費も速いですし、BPMが遅ければそれだけビートの消費は減ります。また、曲の途中でBPMが変わるような場合は、それに合わせてビート消費も変化します。このようにMusic Rallyはあくまでも音楽を主軸にしているのです。では、なぜこのモードで到達距離を表示するのかと言えば、技術が優れている人はMusic Rallyでも競争をしたくなるであろうことが予想されたからです。彼らが楽しめるよう、フレンドランキングで到達距離を見られるようになっています。また、上手なプレイヤーにとってはビートを余らせることになると思います。そういった場合は「ちょっとここでドリフトをしてみよう」などという遊びも楽しめる。そして、その動画をMusic Replayで再生することができます。これも、Music Rallyの楽しみかただと思っています。
――本作独自のモードのひとつであるcafeは、キャンペーンモードをどのように手助けしてくれるのでしょう?
山内『GT7』のいろいろなシステムを理解すると、プレイヤー自身が遊び方を見つけて何年でも楽しむことができると思います。ただ、『GT7』のシステムはあまりにも巨大で複雑です。そこでCafeはシステムの理解を促す道標として用意しました。Caféでメニューブックをもらうとつぎの目標が指し示されますが、それはそこまで難易度の高いものではありません。その目標を順にクリアーしていくことで、『GT7』の世界で何ができるのかを理解できるようになっています。また、プレイヤーがコレクションしたクルマについての解説をCafeのマスターから聞けます。さらに、手に入れたクルマのデザイナーやエンジニアがCafeに現れて、そのクルマについて話をしてくれることもあります。なぜこうしたかと言えば、人からクルマに関する話を聞くという体験を子どもたちにしてほしかったんです。これまでもクルマの説明を読むことはできたのですが、それを「直接誰かから話しかけられる」という雰囲気にしたかった。あるクルマに関わった人の話が聞けるということも、重要なクルマの文化の要素ですし、今後の『GT』にとっても重要だと思っています。
――『GT7』はクルマの文化において、レースと同様の重要度だと思うのですが、山内さんの中でもそういった作品なのでしょうか?
山内素敵なものは若い世代に伝えたいと思っています。僕はクルマが大好きですから。レーシングドライバーを含めてクルマ産業に関わる多くの方にお目にかかって、この歴史を引き継いでいかなければならないという責任感を強く感じています。
――若い世代からクルマの文化への興味が失われつつあります。彼らの心にどういったものを植え付けたいと感じていますか?
山内クルマが素敵な存在であるということです。クルマは人類が生みだした工業製品の中でも、とりわけある種の生命性があると感じていますし、それはいまでも変わっていないと思います。そのことを若い世代に伝えるよい機会になりたいと思っています。
――山内さんは「クルマは世界を反射しているような存在だ」というお話しをされていましたが、『GT7』は現代のクルマ文化をどのように反射していると思われますか?
山内長いあいだ『GT』シリーズを作ってきて、自動車に関わる素敵な人たちとたくさん出会いました。彼らの想いを。ゲームを通じて伝えていきたいということがひとつあります。また、クルマと人間社会はつねに密接な関係を持ち続けてきました。そんなクルマというものを扱ってきて思うのは、『GT』シリーズからクルマというものを通じて、プレイヤーによりハッピーになってほしいのです。そういう好ましい影響を社会に対して与えたいと思っています。
――25年の旅をしてきた『GT』シリーズですが、25年間のあいだでいちばん山内さんが感動した瞬間は?
山内それぞれのタイトルごとに、ある日何かが生まれて、それによってガラリと世界を変える経験がありました。そういった何かが生まれた、何かを見つけた日の夜は、いつもすごくハッピーな瞬間です。
――山内さんが思う、25年間の中でもっとも達成感を感じたときは?
山内25年前に『GT』が生まれたときは、極めて実験的なタイトルでしたし、『GT』がポピュラーなタイトルになるという感覚はまったくありませんでした。実験的なタイトルであるという感覚はいまでもあまり変わっていないのですが、それでも『GT』を支持してくださるプレイヤーの皆さん、メディアの皆さんがいて、そして何より25年間『GT』を作り続けてくれたファミリーのようなスタッフがいた。その幸運にいちばん感謝しています。