ファミ通.comの編集者&ライターが年末年始のおすすめゲームをひたすら紹介する連載企画。堅田ヒカルがおすすめするタイトルは、Nintendo Switch『レッツプレイ! オインクゲームズ』です。

【こういう人におすすめ】

  • 年末年始に友達や親戚と集まる
  • ボードゲームが好き
  • 集まれなくて寂しい(人でもオンライン対戦可能なので安心!)

堅田ヒカルのおすすめゲーム

『レッツプレイ! オインクゲームズ』

  • プラットフォーム:Nintendo Switch
  • 発売日:2021年12月16日
  • 発売元:オインクゲームズ
  • 価格:2500円[税込]
Switch『レッツプレイ!オインクゲームズ』(マイニンテンドーストア)

冬はボドゲの季節だね

『レッツプレイ! オインクゲームズ』

 たまにボードゲームやるとめちゃくちゃ楽しい。

 のっけからものすごくふつうのことを言ってしまった。

 いや、つい最近、改めてそう感じる機会があったのだ。先日、ファミ通チャンネルの配信で、ファミ通編集者のででお、藤川Q、ヘイ昇平と4人でこの『レッツプレイ! オインクゲームズ』を遊んだ。

『レッツプレイ! オインクゲームズ』

 このゲームは、ボードゲームメーカーのオインクゲームズの人気ボドゲをSwitch上で遊べるというもの。現在収録されているのは、

  • 海底探検
  • エセ芸術家ニューヨークへ行く
  • スタータップス
  • 月面探険

 の4作品。配信では『エセ芸術家ニューヨークへ行く』と『海底探検』をプレイしたのだが、その有様が、これがまあひどかった。最初は和気あいあいとプレイしていたはずが、ゲームが進むにつれて編集者たちの人間性があらわになっていく……。

 そこでくり広げられた会話はおおよそ、

「もう引き返すの? マジでチキンだな」
「みんな行ってるのにもう帰るとかクラスの集まりとかどうしてたんだよ」
「その線の意味がわからない」
「薄汚い欲に目がくらんだ現代人の成れの果てだ、あなたたちは!」

 社会人が社会人に対して使っていい言葉ではない。そしてその応酬である。各人のプレイになんくせを付け言葉で殴り合っている(本人の名誉と職場のムードのためにどれが誰の発言かは伏せます)。

 こうして書くと、なんだなんだ、ファミ通編集部はそんなに殺伐としているのか、このゲームはケンカを誘発する危険なゲームなのかと思われてしまうかもしれないけれど、決してそうではない(明るくアットホームな職場です)。

 めちゃくちゃおもしろいのだ。

 べらぼうに楽しかった。こんな暴言が飛び交うくらい白熱してしまう。大のオトナがヒートアップして我を忘れ、口角泡を飛ばしてやり合ってしまうほどだ。もとのゲームがよくできているのは折り紙付きなうえ、電子ゲーム化のクオリティーがすばらしい。

 その際にプレイした2作品を中心に、そのおもしろさを簡単に説明しよう。

『エセ芸術家ニューヨークへ行く』

『レッツプレイ! オインクゲームズ』
お題“ケーキ”

 このゲームは、実物では実際にペンと紙を使ってプレイするので「Nintendo Switchで絵を描くのはどうするんだろう?」と思っていたら、コントローラで描くほかに、タッチパネルにそのまま指で描けたりもする。よくできてる。

 これは“お絵かき人狼”とでも言うようなルール。参加者は、最初に決まるテーマに沿ってひとつの紙に協力しながら絵を描いていく。ひとり1本ずつ線を引き完成を目指すのだが、じつは参加者のなかに最初のテーマを知らされていない者、エセ芸術家がいる。

 テーマを知っている者は自分がエセ芸術家だと思われないように、しかしエセ芸術家には本来のテーマを知られないように、あんばいを見ながら線を付け加えていく。最後に“エセ芸術家は誰か?”という投票を行い、正解できれば芸術家の勝利。正解できなければ、あるいは正解されても絵のテーマを当てることができればエセの勝利となる。

 「ほかの本物の芸術家にはわかるように・しかしエセにはわからないように」、「自分がエセだとばれないように」という心理で描いていく絵は、最終的にわかるようなわからないような抽象画に仕上がりがち。完成した絵を見るだけでも笑える。他人の心理を慮りながら、自分がどう引くか、この判断にぞくぞくする。

『海底探検』

『レッツプレイ! オインクゲームズ』

 これは、プレイヤーが海底に沈む財宝を拾って潜水艦まで帰還し、財宝量を競うゲーム。深みに進めば進むほどいい財宝が手に入るが、潜水艦に帰還しづらくなる。財宝を拾うほど酸素消費量が増え、しかも進みづらくなる。

 このゲームのミソは酸素量をプレイヤー全員で共有しているという点。

 自分以外の誰かが財宝を拾っても、自分の酸素がなくなっていく。「ならば、自分が財宝をたくさん拾わないと損じゃないか」と思うと、全員が財宝を拾いすぎて酸素が一気になくなり、あわれ海中で共倒れになる。

 だから、ある程度は協力的な態度を取りつつ、けれど自分がいちばん多く財宝を持って帰らなければならない。このアンビバレンス、二律背反がゲームに和やかさと緊張感を生み、途中までは残り酸素量を融通しながらバランスを取り、誰かが引き返し始めると一転して財宝と残り酸素量の奪い合いに。

 プレイヤーどうしの腹のさぐりあい、抜け駆け、大逆転。互いの人間性まで浮き彫りにするようで、げらげら笑いながらゲームは展開していく。

『スタータップス』、『月面探検』

 ほかの『スタータップス』と『月面探険』は少し複雑で、まずはルールを理解するまでに少し時間が必要になるものの、そのぶん深い読み合いとボードゲーム上級者でも満足できる奥深さが備わっている。

『レッツプレイ! オインクゲームズ』
『スタータップス』
『レッツプレイ! オインクゲームズ』
『月面探検』

そのほかの注目点

グラフィック

 グラフィックと雰囲気がいい。オインクゲームズのボードゲームは、もともとおしゃれなパッケージだったりデザインになっている。メニュー画面ではその実物の商品がそのまま再現されており、箱の裏面も見られる。

『レッツプレイ! オインクゲームズ』
『レッツプレイ! オインクゲームズ』
メニュー画面のパッケージ
その裏

ルール説明がわかりやすい

 ボードゲームを遊ぶのに障害になりがちなのが、ルール説明のわかりづらさ。本作ではルールが簡潔にまとめられているうえ、ゲームの中に説明の動画まで入っている。その心配りがすばらしいと思う。

 ボードゲーム中のUI(ユーザーインターフェース)もわかりやすく作られている。もともとテレビゲーム用に考えられたわけではないボードゲームをテレビゲームできちんと再現するのは骨が折れたろうと思うけど、プレイ中に違和感を感じることはない(メインメニューで、ゲームを選ぶ際にLとRを使うのだけはちょっと気になったかな)。

『レッツプレイ! オインクゲームズ』

 このUI開発の苦闘は、開発者による詳細なnote記事が公開されている。何気ない演出に、意図と工夫ががとても隠されていることがとてもよくわかる。このままCEDECで講演できそうな内容。UIにご興味がある方はご一読になってみてはいかがだろうか。

ボードゲームのデジタル化の工夫 - 「レッツプレイ!オインクゲームズ」のUI(オインクゲームズ公式note)

値段もお買い得

 なお、各ボードゲームは、実物ではひとつで2400円前後する。それが同価格帯で4本収録されている本作は、いわば4倍お買い得だ。ゲームの種類はさらに追加される予定もあるとのことなので楽しみに待とう。

『海底探検』ほかオインクゲームズのテーブルゲーム(実物)が購入できるAmazon公式ストア

集まっても、集まらなくても

 集まってオフラインでも遊べるし、コードを利用して友だちどうしオンラインでも遊べるほかに、いわゆる“野良”で知らないプレイヤーどうしでプレイすることもできる。

 しかしやはり、実際に顔を突き合わせてヤイヤイ言いながらプレイしたり、オンラインでつながってスマホのグループ通話などでガヤガヤしながら遊んだりするスタイルを断然おすすめしたい。

 みんなで遊ぶと、めちゃくちゃ楽しいから。

『レッツプレイ! オインクゲームズ』
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