携帯型液晶玩具『デジタルモンスター』のヒットに始まり、アニメ、家庭用ゲーム、トレーディングカードゲーム(TCG)などに進出、20年以上続く歴史あるコンテンツに成長した『デジモン』シリーズ。

 バンダイナムコグループ(バンダイナムコ)が、2020年度のテレビアニメ『デジモンアドベンチャー:』を皮切りに、リブートプロジェクトを開始し、2021年に入ってからはTCG“デジモンカードゲーム”の海外展開や、ユーザーの心拍数や歩数とデジモンの成長を連動させたウェアラブル端末型玩具、“バイタルブレス デジタルモンスター”の発売などで活発な展開を見せている『デジモン』ブランド。

 今秋からそんな『デジモン』の動きがさらに加速している。今年2021年10月からスタートしたテレビアニメ新シリーズ『デジモンゴーストゲーム』と密接にリンクした新しい新型ウェアラブル端末型玩具、“バイタルブレス デジヴァイス-V-”(以下、“デジヴァイス-V-”)の発売に加え、これまでさまざまなジャンルで展開してきたすべての『デジモン』をフォローするポータルサイト(デジモンウェブ)や、ファン向け交流サイト(デジモンパートナーズ)の充実など、新旧を問わないファンに向けた施策を積極的に取り組んでいる。

 今回の記事では、バンダイナムコで、『デジモン』関連の商品、ブランド展開をプロデュースする“デジモンプロジェクト”リーダーの原田真史氏(バンダイ)にインタビュー。“デジヴァイス-V-”の新機能や、2022年以降の『デジモン』シリーズの展開について語ってもらった。

『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定

原田真史氏

バンダイ “デジモンプロジェクト”リーダー

デジモンウェブ
デジモンパートナーズ

新機能+アニメとの連動で進化した“バイタルブレス デジヴァイス-V-”

――前回の取材は1年ほど前で、その際は発売前の“バイタルブレス デジタルモンスター”の話を中心に聞かせてもらいました。まずはその答え合わせというか、“バイタルブレス”発売後の感触を教えてもらえますか?

原田感触はまずまずです。“バイタルブレス”を出す前までは、去年の4月から今年9月まで放送していたアニメ『デジモンアドベンチャー:』とリンクした、従来のキーチェーン型の液晶玩具で“デジヴァイス:”を展開していたのですが、それと比べると既に10倍以上の販売実績になっていると思います。

――それはけっこうなヒット商品になったってことですよね?

原田はい。ただ、もともと24年前に始まったキーチェーン型の液晶玩具は、初代『デジタルモンスター』シリーズの機種だけで世界累計だと800万個以上売れているんです。それと比べるのは、さすがに……という感じはありますが。

 そういえば、最近改めてシリーズ販売数を集計したら、初代から今年3月に発売された“バイタルブレス デジタルモンスター”までを足すと、世界で、約1400万個の『デジモン』シリーズの液晶玩具が世に出ていることがわかりました。液晶玩具は、『デジモン』コンテンツのメインとなる商品のひとつと考えているので、引き続き、しっかりとした展開をしていきたいですね。

――長きにわたって、熱烈な支持を集めているということですね。

原田はい。その中でウェアラブル型の液晶玩具になった“バイタルブレス デジタルモンスター”は、「この時代に合った新しい『デジモン』育成商品が出た」ということでファンの方には、評価はいただいていると思います。現在は日本だけでなく、香港、台湾、タイ、フィリピン、シンガポール、マレーシア、インドネシア、北米、韓国、中国でも販売しているのですが、昔のキーチェーン型の液晶玩具時代から遊んでいた人には手に取ってもらえている感触はあります。

 ただ、これまで一度も『デジタルモンスター』で遊んだことがない層にも届いているかというと、そこはまだまだ満足はできないという現状ではあります。

――新規ユーザーの開拓が、これからの課題ということですね?

『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定

原田そこは今年10月から始まったアニメの『デジモンゴーストゲーム』と、“デジヴァイス-V-”で開拓していきたいと考えています。“デジヴァイス-V-”は『デジモンゴーストゲーム』のメインアイテムというか、番組の中で主人公たちがデジモンとコミュニケーションを取るアイテムとして登場するので、そこから新しく『デジモン』ファンとなった方々に、デジモンとつねにいっしょに生活する楽しみ、デジモンを育てる楽しみを、ウェアラブルタイプになった液晶玩具“デジヴァイス-V-”で体験していただければと思います。

――テレビアニメ『デジモンゴーストゲーム』は、これまでのシリーズとはデジタルワールドの見せかたが違いますよね。AR的というか、デジタルワールドが現実世界に侵食してくる感じですね。

原田そうですね。『デジモン』シリーズのテレビアニメは、“デジタルモンスターというモンスターが出る”、“子どもたちの冒険物語である”、“現実空間とデジタルワールドというふたつの世界が存在する”という3つの要素が守られていれば、あとはおもしろくするためにいろいろなチャレンジをしていいのかなと、プロジェクトサイドとしては思っています。とはいえ、すでにファンの皆さんになじみののある設定は踏まえていく必要はありますので、『デジモンゴーストゲーム』でも、注力していただいています。

 テレビアニメは、東映アニメーションが中心となり、企画・制作をしています。いままでは『デジモンテイマーズ』のような一部のシリーズを除くと、人間がデジタルワールド側に行ったときに起こるカルチャーギャップを含めた冒険譚だと思うのですが、『デジモンゴーストゲーム』は、「この現実世界にデジモンが来たときに、どんなことが起こるんだろう?」という視点で物語を作られています。そこからデジモンと人間の違いからそこに悪意のあるなしに関わらず、何らかの軋轢が生まれてくるみたいなところが描けると、新しさと同時に『デジモン』シリーズらしさが出てくるのかなと思っています。

『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定

――アニメのほうもバンダイ公式チャンネルで公開されている、デジモンプロジェクトのPVの世界観を想起させる感じですよね。現実世界を舞台に、プレイヤーどうしで協力して戦うみたいな。

原田そうですね。プロジェクトPVについては、商品ありきとなっているので、あんな感じで“デジヴァイス-V-”のレイドバトルを楽しんでほしいというイメージを先行して、再現した形になっています。

――“デジヴァイス-V-”は『デジモンゴーストゲーム』との連動だけでなく、“バイタルブレス デジタルモンスター”でユーザーからのフィードバックを受けて追加や改良された部分も多いと聞いています。

原田はい。すぐに対応できる部分として、育てたデジモンはスマートフォンに転送して保存できるのですが、その保存枠数を増やしました。“バイタルブレス”では、Dimカードを差すことで、保存する際に必要なカプセルが手に入るのですが、“デジヴァイス-V-”以降に発売したDimカードでは、数を増やしています。4種類ある究極体はもちろん、進化の途中のデジモンも複数体キープできるようになっていますので、いろいろなデジモン育成にチャレンジし、新しいデジモンと触れ合ってもらえればうれしいです。

『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定
『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定
“バイタルブレス デジヴァイス-V-”。価格は税込4730円(※アニメ『デジモンゴーストゲーム』放映開始記念価格)。
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原田あとは購入された方に社会人、初代『デジモンアドベンチャー』を見ていたアニメのファンの方が多かったので、デジモンの活動時間を調整できるようになりました。最初の“バイタルブレス”は、デジモンの個性にもよりますが、だいたい夜8時前後ぐらいになると眠ってしまうんですよ。

――それは社会人の方にはきびしいですね(笑)。

原田そこで睡眠をみなさんそれぞれの生活スタイルに合うように、デジモンを好きな時間に眠らせられるようにしました。あとは社会人のユーザーの方に合わせて、デジモンの成長速度を、全体的に早くしています。そうすることで、もともとの液晶玩具『デジタルモンスター』が持っていたおもしろさ、どのような環境下で、デジモンがどういう進化をたどるのかを観察するトライ&エラーを体験しやすくしています。

 液晶玩具の『デジタルモンスター』のユーザーは、デジタル生命体の観察者という視点ですので、自分に合った時間帯でよりデジモンを早く育てられて、それをちゃんと保存できるようにしました。細かいところはほかにもたくさんあるのですが、プレイバリューの向上としてはいちばん大きなポイントです。

――デジモンが活動する時間そのものは、時間帯を変えても変わらないのですか?

原田逆転の発想といいますか、プレイヤーがお世話、育成できない時間帯は、寝かせることができるようになっています。また、寝ているあいだも、進化タイマーは進むようになっています。そういう意味でも、圧倒的に“デジヴァイス-V-”のほうが遊びやすくなっています。ただ、“バイタルブレス デジタルモンスター”にもいいところはあって、成長が遅いぶん、デジモンのパラメーターをコントロールしやすいんですよ。あとはデジモンが死んでしまう条件がきびしいところが逆にストイックでいいというコアファンの方もいるところが、デジモンIPならではで、ありがたいと思っています。

――新しいデジモンが育てられるようになる、Dimカードの販売はどれぐらいのペースを考えていますか? 『デジモンゴーストゲーム』のストーリー展開に合わせての追加になるとは思いますが。

『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定
“デジヴァイス-V-”で使用するDimカード。画像のDimカードを“デジヴァイス-V-”に挿入すると、『デジモンゴーストゲーム』に登場する主人公(天ノ河宙/アマノカワヒロ)のパートナーであるガンマモンと進化先デジモンの育成が楽しめる。
“Dimカード-V1- ガンマモン”の購入はこちら (Amazon.co.jp)

原田そうですね。Dimカードに関しては1枚につき、だいたい究極体が4体か5体入っていて、2ヵ月ぐらい遊んでもらえればコンプリートできると想定しています。ですので、2ヵ月に1枚程度、新しいDimカードをご提供できるのが理想だと思っています。直近だと12月11日に『デジモンゴーストゲーム』の女の子(月夜野瑠璃/ツキヨノルリ)のパートナーのアンゴラモンと、寮長(東御手洗清司郎/ヒガシミタライキヨシロウ)のパートナーのジェリーモンのDimカードがセット発売されたばかりです。いずれも現在放送中の新アニメシリーズの人気デジモンたちです。

『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定
12月11日に、発売されたDimカードセット。アニメ『デジモンゴーストゲーム』に先駆けて、いち早く、その進化を見られるかもしれない。
“Dimカード-V2- アンゴラモン&ジェリーモン”の購入はこちら (Amazon.co.jp)
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――発売中のガンマモンたちのDimカードに関しては、公式サイトにいくと進化するパターンがすべて公開されていますよね。4ルートぐらいに分岐していますが、アニメにも全部の進化パターンが登場するのでしょうか?

原田いくつかの進化体は登場する予定です。すでに放送中のテレビアニメのオープニングカットにも一部ちょっと映り込んでいたりしますしね。ただ、『デジモン』はどのメディア、商品から入っても楽しめるコンテンツというのが特徴と考えていますので、すべての進化体が必ずテレビアニメで登場するみたいなことは、そこまで意識していないです。メディアによってデジモンの設定自体にもある程度の幅を持たせていますので。

 たとえば、これまで発売した液晶玩具の『デジタルモンスター』で育てるデジモンって、基本的には1回進化したら元には戻らないんです。大きくなった(進化した)デジモンが小さくなる(退化する)のは、アニメの『デジモンアドベンチャー』からの設定なんですよ。お話し的に、でかいデジモンは連れて歩きにくいじゃないですか(笑)。ですので、そのあたりをカチっと決めすぎないようにして、『デジモン』の世界に、ある程度の広がりを持たせたいと思っています。

――バイタルブレスという商品自体を見ると、『仮面ライダー』や『ウルトラマン』などでの商品展開もあるのですね。そういう意味では、バイタルブレスに関するポテンシャルはかなり感じらっしゃるのですね?

原田そうですね。バイタルブレスは“デジモンプロジェクト”の商品のひとつとして企画がスタートしたのですが、この“遊び”自体が新しいということで、会社として可能性を感じたということになります。ウェアラブルなキャラクター玩具ということで愛着も湧いてきますし。このウェアラブルな遊びは新しい玩具の柱のひとつにできるのではないかという判断で、“バイタルブレスキャラクターズ”というブランドを用意し、『ウルトラマン』セット(発売中)と『仮面ライダー』セット(12月18日発売予定)にて、展開を開始しています。

――――少し『デジモン』の話からは離れるのですが、“バイタルブレス”の『仮面ライダー』と『ウルトラマン』での展開として、そこで選ばれているシリーズが『仮面ライダークウガ』だったり、『ウルトラマンティガ』だったりするのは、子どもよりも大人、30代前後をメインターゲットに想定しているからですか? 最初の“バイタルブレス デジタルモンスター”を買ってくれた層や初代『デジモンアドベンチャー』のファンとも世代が近いですよね。

原田そうですね。決してその世代だけを狙っているわけではないのですが、『仮面ライダー』や『ウルトラマン』は、親子二世代で遊んでもらうことを想定していると思います。『デジモン』もあと数年、継続展開していくことで、親子二世代のキャラクターに成長しますしね。

――親子二世代を意識した商品展開というのは、最近は多くのコンテンツでも想定して作り込まれている感じがありますよね。

原田『仮面ライダー』や『ウルトラマン』は、いまは孫も含めての三世代だと言われていますよね(笑)。『デジモン』の話に戻すと、子どもに“バイタルブレス”の楽しさ、遊びを届けるには、もっといろいろなタッチポイントが必要だった。そのひとつしてアニメーション、『デジモンゴーストゲーム』が始まったので、子ども向けの玩具としてはこれからが、勝負となっていきますね。とはいえ、定着までには、相応な時間が必要だと考えています。

――今年3月の時点では、やや子どもへの訴求が足りていないというのは、ある意味既定路線ではあったということですか?

原田ある程度は規定路線です。もう少し子どもにも広がってくれるかなと思っていなかったと言えば嘘になりますが(笑)。そうはいっても、子どもにとって愛着があるキャラクターでないと、「自分の脈拍とリンクしてデジモンが進化するよ。育成が楽しいよ」とアピールしても、なかなか伝わりづらいですよね。その辺はアニメでフォローする形で、子ども~10代前半の層も狙っていく形ですね。

バイタルブレスシリーズ公式サイト
“バイタルブレス”を検索 (Amazon.co.jp)
『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定

世界展開が好調な“デジモンカードゲーム”

――以前のインタビューでは『デジモン』という大きなIPを引っ張っていく軸として、“デジモンカードゲーム”も重要だという話がありましたが、そちらはこの1年はどうでしたか?

原田国内もさることながら、海外がとても好調です。“デジモンカードゲーム”も10ヵ国ぐらいで展開しているのですが、ここ数年TCG全体に大きなブームが来ていることもあって、かなり売れています。もともと海外に熱い『デジモン』ファンがたくさんいてくれているということを最初に意識したのは、バンダイナムコエンターテインメントが発売した、家庭用ゲームで『デジモンストーリー サイバースルゥース ハッカーズメモリー』(プレイステーション4、PS Vita、Nintendo Switch)がワールドワイドで累計100万本以上販売したという実績です。

 そこで“デジモンカードゲーム”は「世界には『デジモン』が好きな人がいてくださるんだ!」ということを前提条件に、プロモーションをしっかり行い、北米や欧州で販売してみたところ、予想以上にたくさんの『デジモン』ファンの方に支持していただけて。結果、“デジモンカードゲーム”はいまや日本の4倍ぐらい北米と欧州で売れています。

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2020年春にリブートした“デジモンカードゲーム”。今年10月28日に発売された構築済みデッキ9弾“究極の古代竜”(写真左)と10弾“異世界の軍師”(写真右)。

――国内だけでも好調という話は聞いていたのですが、その4倍売れているというのはすごいですね。

原田じつは『デジモン』ってバンダイの売上比率的にも、海外に強いIPなんです。海外比率が高いゲームカテゴリ(バンダイナムコエンターテインメント)に対して、バンダイの売上は国内比率がまだまだ高いんです。ですので、バンダイのトイホビーとしては、海外展開に注力しているなかで、非常に有望なIPと捉えています。“デジヴァイス-V-”、“デジモンカードゲーム”の2軸と、グループとしては、“ビデオゲーム”を加えた3軸で、世界展開していきたいです。

――『デジモン』商品が海外で受けている要因はどこにあると分析していますか?

原田“デジモンカードゲーム”に関しては、海外でTCGを遊ぶ層と、アニメ『デジモンアドベンチャー』を放送当時に観て『デジモン』のファンになった年齢層が一致していることが大きいです。

 また、日本だとTCGタイトルがたくさんありますが、海外となると日本のコンテンツを取り扱ったTCGはなかなか展開されていない。ただ、日本発のコンテンツが好きという方は海外にも一定数いらっしゃるので、日本のアニメとTCGという組み合わせも好評な要因だと思っています。あとは、もともとの『デジモン』のキャラクター観、世界観と、TCGというジャンルの相性がいいというのもあります。大前提として、デジモンに詳しいブレーンと組んでの、クォリティーが高いイラストと運営が評価をいただいています。

――確かにデジモンが進化していくという設定はTCGに向いていますね。

原田そうです。あとこれはちょっと適切な表現ではないかもしれないですが、いまの時代はTCGを子どものころから実際に遊んで“おもしろさ”をわかっている世代の社員たちが、ある程度、責任ある企画・開発承認ポジションまで上がってきたというのも大きいと思っています。

 “デジモンカードゲーム”も、TCGで育った世代が開発をしています。たとえばTCGは、圧倒的な主役キャラは作らないほういいんですね。TCGというのは、自分のデッキで自分の好きなクリーチャー(カード)を使って、それを強化して戦うというのが楽しみなんだと。その点でもいろいろな個性あるキャラクターが並列して人気がある『デジモン』は、TCGに向いているIPかなと思っています。また、キーチェーン型の『デジタルモンスター』から続いている、“どのデジモンをどの究極体にまで育てるのか、それはキミ次第だよ”という文脈に、非常にマッチしたゲームルールをしっかりと構築できたのも、ポイントかと思います。

――いまはコロナ禍の影響で日本でもオンラインでTCGを遊ぶ環境が整備されてきましたが、海外も同じような感じなのでしょうか?

原田海外、とくに北米などはユーザーどうしの距離的な問題でもともとオンラインでの対戦も多かったと思うのですが、そうは言ってもTCGは、リアルに会って対戦するオフラインがキモだとは思います。そのオフライン対戦(リアル対戦)という最大の武器を使えない状況でも、“デジモンカードゲーム”はこちらの想定以上の販売実績となっているので、ここからコロナが収まってオフラインの大会も実施できるとなれば、もっと大きなプレイヤーの広がりを期待できると思っています。

――日本国内でも10月下旬ぐらいからは店舗での大会も始まっていますよね。11月からは大会に参加するともらえるカードの種類も増えていますし。

原田やはり、TCGは、コミュニケーションツールという側面でも、店舗に行って遊んでほしいとは思っています。平日は“ TCG ONLINE LOBBY”でオンラインでの対戦を楽しんでもらって、土日は近くの店舗の大会に参加してもらえると嬉しいですね。

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『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定

さまざまなジャンルの『デジモン』ファンを繋ぐ試み

――現状だと海外の『デジモン』市場は北米が突出しているのでしょうか? ほかの地域でも印象的な動きはありましたか?

原田海外にも大勢いらっしゃるファンに向けて、『デジモン』の最新情報をしっかり、お伝えしていきたいと思い、力を入れているのが、多言語対応を行った『デジモン』の公式総合サイト、“デジモンウェブ”ですね。ただ、バンダイナムコでも、地域によって、売っているものや、その時期、楽しめるサービスが違っています。ですが、いずれ一元化の商品やサービスが増え、国を越えて各エリアのデジモンファンがお互いに、コミュニケーションをとり盛り上がれるようになるのが、理想です。

――“デジモンウェブ“では、商品の情報だけでなく、デジモン図鑑や、デジモンプロファイルなどの読み物が充実してきていますよね。

『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定
『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定
デジモンウェブ内の“図鑑/FUNコンテンツ”は読みごたえ十分。デジモンの詳細な設定がチェックできるほか、“ガンマモン絵描き歌”のような肩の力を抜いて楽しめるバラエティー系の記事も用意されている。

原田いままでは液晶玩具、アニメ、カードゲーム……どこから『デジモン』の世界に入ってきてくれたかによって、少しファン層が分かれている感じがあったんです。デジモン図鑑や、新たに始めた“デジモンプロファイル”の企画は、それを解消するためのアプローチのひとつの役割として考えています。どの媒体の『デジモン』にも共通している情報を知ることができるデータベースがあれば、アニメから携帯液晶、カードゲームからアニメへ……みたいな感じで、興味を持ってもらいやすいと思うんです。ちなみに、安定的にアクセス数が多いのがデジモン図鑑なのは、デジモンウェブ運営チームとしては嬉しいところです。

 そういう意味でも、デジモン図鑑やデジモンプロファイルは、海外のファンの方にも、楽しんでいただきたいという気持ちも含めて、英語と繁体字と簡体字に翻訳をしています。ぜひ、ご覧になってください。

――デジモン図鑑のテキストだけでかなりのボリュームがありますが、どれぐらいの人数で更新しているのですか?

原田専門チームを組んで定期的な更新ができるようにデータベースを構築中です。実際のところ、デジモン1体をとっても、各国や、その登場媒体で、さまざまな理由で、名称が異なったりしています。過去の歴史をさかのぼり、通称みたいな名前も調べて把握していくのは、なかなかの労力ではありますが、がんばりどころだと言い聞かせて、作業をしています。

 基本的なことではあるのですが、しっかりIPとしてデジモンを育てていこうという決意のスタートラインだと思って、デジモン図鑑の元となるデータベースを作っています。

――デジモン図鑑の説明テキストの内容は、言語によって書いてあることが微妙に変わっていたりもするのでしょうか。

原田基本的には変わっていないはずです。ただ、翻訳には注意が必要です。たとえば、体自体が、たくさんの目で構成されている“セフィロトモン”というデジモンがいるのですが、“セフィロト”の語源を理解していないと、訳しかたが違ってきてしまう可能性がありますから、そのあたりも翻訳前に把握が必要です。

『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定
インタビューで話題に挙がったセフィロトモン。デジモン図鑑には、2021年12月現在、約1200体のデジモンのデータが登録されており閲覧・検索が可能。

――ウェブサービスだと、今年から始まった“デジモンパートナーズ”もトピックのひとつかなと思うのですが。

原田そうですね。そもそもバンダイは、コンテンツをお届けする立場としてサービスを提供するというよりは、メーカーとしておもちゃ、商品を売ってきたという歴史があります。そのため、どうしても新しい商品を新しい人にどんどん買っていただこうというベクトルが強いんです。ただ、『デジモン』というコンテンツを長く楽しんでもらいたいと思ったら、メーカーから「この新しい商品どうですか!? ここがおもしろいんですよ!」とアピールして回っても、なかなか理解していただけない。そこでファンにフォーカスしたサービスを提供し、よりIPを好きになっていただいて、新たなファンを呼んできていただければ、と考えていました。

 ファンがファンを呼んでいただければ、一気にファンは2倍になるわけですし、『デジモン』にはもともと濃いファンがいてくださるので、その人たちに「私たちが好きな『デジモン』は、やはりよいものだ!」と発信していただければ、新しいファンに出会えることになります。そういったファンの皆さんが、作る流れが、コンテンツの維持・拡大には欠かせない時代になってきています。“デジモンパートナーズ”自体は、同じ想いをお持ちだった東映アニメーションが運営されるコンテンツサービスとして誕生しましたが、アニメの『デジモン』ファンと接点をお持ちの東映アニメーション、トイホビーゲームの『デジモン』ファンとの接点を持つ、バンダイナムコと協力して、よいサービスを展開できればと思います。会員制ですが、無料ですので、未登録の方は、ぜひ参加してみてください。

デジモンパートナーズ

――軽く“デジモンパートナーズ”を覗いて見た感じだと、日本の人の投稿はテキストや商品の写真がメインで、海外の人だと思われる投稿はイラストが多いかなという印象を受けました。国や地域によって使いかたに差は感じられますか?

原田 “デジモンパートナーズ”も、先日、いよいよ、ワールドワイド対応でのサービスがスタートしました。英語圏や韓国などから“デジモンパートナーズ”に投稿してくださっている方は、相当濃い『デジモン』ファンだと思っています。世界中のデジモンファンどうしが交流してくださると、嬉しいです。

――わかりました。今日お話をうかがった感じだと、これからの『デジモン』は、さまざまな層にいる『デジモン』ファンをつないでいくというのがテーマになっていきそうですね。

原田はい。コンテンツに興味を持ってもらえる入口が多いのは『デジモン』の強みですからね。そのうえで新しい世代のファンも少しずつ増やしていきたいです。濃いファンの方々に支えられて、たとえば「売り上げ計画が、達成できました!」となっても、ファンの方々の人数自体が増えていかないと、ビジネスとしても、継続できないですし、もともとのファンの方への負担が増えるばかりなので……。『デジモン』をファンにもっと楽しんでもらえるIPに育てていくことと、商品の売り上げの両方のバランスを取りながら、『デジモン』に力を入れていきたいと思っていますので、引き続きのファンの皆さまの応援を願いたします。

――そして、その決意が、本日発表の“DIGIMON CON(デジモンコン)”や、“DIGIMON ILLUSTLATION COMPETITION”というわけですね。

原田“DIGIMON CON”ですが、世界の『デジモン』ファンが“いっしょに楽しめるイベント”というコンセプトで考えています。まずは、配信イベントという形で、チャレンジしたいと思っています。日本語と英語のチャンネルを用意する方向で企画していますので、多くのエリアのファンの皆さんの参加をお待ちしています。詳細については、続報をお待ちください。

 そして、“DIGIMON ILLISTLATION CONPETITION”ですが、長年愛されてきた『デジモン』たちの魅力を表現したイラスト作品を、ファンの方々から募集する企画となります。こちらは、日・米で、同時開催となります。優秀作品は、賞金はもちろん、デジモンカードゲームのイラストとしても採用を予定しています。デジモン世代のクリエイターの皆さんも、ぜひ参加ください。

『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定
DIGIMON CONのメインビジュアル。
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“DIGIMON ILLISTLATION CONPETITION”のメインビジュアル。

DIGIMON CON

  • 日本時間:2022年2月27日(日曜日)10:00~配信開始
  • DIGIMON CON 日本語:https://digimon.net/special/event
  • DIGIMON CON 英語:https://digimon.net/special/event/en

※一部配信対象外の国があります。

DIGIMON ILLUSTLATION COMPETITION

――本日はありがとうございました。月並みですが、最後に『デジモン』ファンの方にメッセージをいただいければと思います。

原田ファンの皆様、関係各社の皆様に支えられ24年になりました。いまは新しい『デジモン』を皆さんに楽しんでもらえるよう、土壌づくりをプロジェクトメンバー一同がんばっています。ぜひ、デジモンファンの皆さんは、“DIGIMON CON”にご参加いただければと思いますので、いまからスケジュールを空けておいてくださいね。また、来年は、『デジタルモンスター』25周年となりますので、こちらも、盛り上げていければと思っています。ご期待ください。

『デジモン』はワールドワイドなコンテンツへと“究極進化”できるか!? キーパーソンに聞く。ファンイベントや日米イラストレーションコンペが開催決定

『デジモンゴーストゲーム』

  • フジテレビほかにて毎週日曜朝9時放送中! 
  • FOD TVerにて見逃し配信中!

※地域により放送時間・曜日が異なります。

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『デジモンゴーストゲーム』公式サイト

[2021年12月17日16時58分修正]
デジモン図鑑の登録数について誤りがあったため、該当の文章を修正いたしました。読者並びに関係者の皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。