2021年11月30日にININ Gamesから発売された、Nintendo Switch、プレイステーション4用ソフト『時計じかけのアクワリオ』。本作は『ワンダーボーイ』や『モンスターワールド』シリーズなどを生み出したウエストン ビットエンタテインメントがアーケード用タイトルとして開発していた作品なのだが、その当時のアーケードゲーム市場は3Dグラフィックのタイトルや対戦格闘ゲームが席巻していたため、“時流に合わない”との判断で開発中止になってしまった幻のタイトルだ。

 そんな日の目を見ることがなかった本作が、ビデオゲームの発掘と保護を行うドイツのパブリッシャーであるStrictly Limited Gamesの手によって、なんと復活。約30年という時を経て、新作ゲームとして今回蘇ることとなった。

 そんなドラマティックな背景を持つ本作のプレイレビューをお届けしていこう。

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世界征服を企むハンギョ博士の野望を阻止せよ!

 本作のストーリーはというと、海の底に広がる奇妙な世界“アクワリオ”を舞台に、プレイヤーキャラクターとなるハック・ロンド、エル・ムーン、ガッシュという3人の主人公と、世界征服を企むハンギョ博士とその一味との戦いがくり広げられるというもの。

『時計じかけのアクワリオ』プレイレビュー。およそ30年の時を超えて蘇った幻の横スクロールアクションは幅広いプレイヤーが楽しめる絶妙なバランスの作品に
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本作のオープニング映像。ハンギョ博士一味の悪行や、アクワリオに乗り込むハック・ロンドら3人などが描かれている。

 美しいドットグラフィックで描かれたキャラクターや背景なども魅力のひとつで、とくにダメージを受けたときや攻撃時など、主人公の3人のコロコロと変わる表情はいずれもかわいらしい。

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キャラクター選択画面。左からハック・ロンド、エル・ムーン、ガッシュだ。
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ハック・ロンドは一度ダメージを受けると見た目が満身創痍に。この状態でもう一度ダメージを受けてしまうと、残機が減ってしまう。
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ステージクリアーするとまぶしい笑顔で喜びを表現するエル・ムーン。
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ロボットのガッシュは、ダメージを受けると途端にボロボロに。
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キャラクターの攻撃時や、アイテムを取得したときなどには、画面左上のキャラクターの表情も一瞬だけ変化する。芸が細かい。

操作はシンプル!叩いて投げて敵を倒せ!

 まずは本作のアクションについて説明していこう。おもなアクションとしては、近くの敵を叩く“攻撃”、敵を踏みつけて攻撃したり下から体当たりで攻撃できる“ジャンプ”、そして敵やアイテムを投げて攻撃できる“投げ”の3つを駆使することになる。このアクションはボタンふたつでおこなうことができるため、操作性は非常にシンプルだ。

『時計じかけのアクワリオ』プレイレビュー。およそ30年の時を超えて蘇った幻の横スクロールアクションは幅広いプレイヤーが楽しめる絶妙なバランスの作品に
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敵を投げたい場合は、叩き攻撃やシャンプ攻撃で一時的に行動不能になった敵に真横から触れることで一度担ぎ、攻撃ボタンで投げることができる。連なって配置されている当てて倒せたり、接敵せずに敵を倒せるのでかなり重要なアクションとなっている。

 また、敵から出現するパワーアップアイテムを取得すると一定時間キャラクターがパワーアップ状態になり、攻撃ボタンで強力な遠距離攻撃を放てるようになる。この遠距離攻撃だけでも強力なのだが、ボス戦でパワーアップ状態になると大型のボスを投げて大ダメージを狙えたりもするので、かなり豪快に戦うことができるのも爽快だ。

『時計じかけのアクワリオ』プレイレビュー。およそ30年の時を超えて蘇った幻の横スクロールアクションは幅広いプレイヤーが楽しめる絶妙なバランスの作品に
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パワーアップ時の攻撃はどれも強力かつ、体が金色のあいだは敵に触れてもダメージを受けないので、どんどん歩みを進めよう。

90年代ふうのアニメチックなかわいらしいビジュアルに騙された

 最初にゲームを始めると、イージー、ノーマル、ハードの3つの難易度から選んで遊ぶことができる。難易度による違いはコンテニューできる回数の違いのみで、イージーでは9回、ノーマルでは5回、ハードでは3回までという回数制限がつけられていた。ステージ数は全5ステージで、手軽に遊べる。

 筆者は決してゲームがうまいわけではないが、横スクロールアクションは好きで自信があったので、難易度はノーマルでゲームをスタート。90年代のアニメを思わせるポップでキュートなビジュアルの印象もあり、正直、「操作も簡単そうだし、ノーコンティニューでけっこういいとこまで行けるでしょ」とおっとりかまえていたが、さすがはアーケード用に作られていた作品。序盤のステージはある程度軽快にクリアーできたが、中盤ぐらいから敵の動きや配置もだんだんいやらしくなりはじめ、気がつけば5回もあったコンテニュー回数も底を尽き、ゲームオーバー。

 悔しい……。なにが悔しいって、「コツさえつかめればクリアーできそう」と感じていたからだ。ステージが進んでいくごとに当然難易度は上がっていくのだが、横スクロールアクションゲームではよくある“ステージの足場が少なくなる”だとか、“敵が硬くなる”とか、そういった難しさの上がりかたではなく、敵の動きかたや絶妙な配置などで難度のバランス設定がされているような印象だった。操作もシンプルだからこそ、どうして失敗してしまったのかがわかりやすく、「つぎはもっとこうすればうまくいくな」と何度も挑戦したくなるようなリプレイ性も感じられた。

『時計じかけのアクワリオ』プレイレビュー。およそ30年の時を超えて蘇った幻の横スクロールアクションは幅広いプレイヤーが楽しめる絶妙なバランスの作品に
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ステージ終盤は、大きく上下に跳ねながら近づいてくる敵や、だた真横に直進する敵と動く床など、配置や動きがいやらしい敵が出てくる。しかし、序盤のステージと同じく、一度攻撃を当てるだけで倒せるので、対処の仕方はいくらでもあるはず。

 そんなアーケード向けならではの歯応えのあるアクションと、多くのプレイヤーが「クリアーできるかもしれない」と思わせる絶妙なゲームバランスが本作の大きな魅力なのだと思う。

 筆者はこの原稿の〆切というタイムリミットもあったため(言い訳)、大見得を切っておいてお恥ずかしい限りだが、初回クリアーはイージーで達成した。個人的にハードでのクリアーはなかなか至難の業だと感じたので、腕に自信のあるプレイヤーはぜひ挑戦してみてほしい。

 そして、いずれかの難易度でクリアーをすると何度でもコンティニュー可能な“アーケードモード”が解放。ゆくゆくはアーケードモードでしっかり練習をして、ハードや、ゆくゆくはワンコインクリアーを目指す所存だ。

 本作は、ひとりでも十分楽しめるのはもちろんのこと、ふたり同時プレイも搭載されている。ふたり同時プレイならではの要素として、敵やアイテムと同じように、片方のプレイヤーを投げることができたり、ふたりプレイ専用ミニゲームが遊べたりといった要素が追加されるため、ひとりで遊ぶときとは違った楽しさが味わえる。

『時計じかけのアクワリオ』プレイレビュー。およそ30年の時を超えて蘇った幻の横スクロールアクションは幅広いプレイヤーが楽しめる絶妙なバランスの作品に
ミニゲームは本来、ふたりプレイ時にステージ3と4のあいだで遊べるが、モード選択でミニゲームだけ遊ぶことも可能だ。

 ここまで作り込まれた作品が日の目を見なかったことに驚きを感じたとともに、こうして時代の波に埋もれた作品が新作ゲームとして遊べるありがたみも感じることができる『時計じかけのアクワリオ』。レトロな横スクロールアクション好きはもちろん、幅広い世代のプレイヤーに触れてみてもらいたいタイトルだ。

時計じかけのアクワリオ

  • 発売日:2021年11月30日発売
  • 発売元:ININ Games
  • 開発元:Strictly Limited Games
  • プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション4
  • 価格:パッケージ版:各4378円[税込]、ダウンロード版:各3828円[税込]
  • ジャンル:アクション
  • CERO:全年齢対象
  • 備考:Nintendo Switch版『スペシャルパック』は8446円[税込]