2021年9月30日~10月3日にわたって開催されている“東京ゲームショウ 2021 オンライン”。その中でコーエーテクモゲームスが配信する映像番組“コーエーテクモLIVE! in TGS2021”にて、2022年発売予定の『信長の野望・新生』のPVや最新情報が公開された。

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 本記事では、この発表にともないゲームの詳報をうかがうべく、プロデューサーの小笠原賢一氏にインタビューを実施。“AIで躍動する武将たち”というコンセプトや具体的なゲームの流れなどを説明していただいた。

 なお、週刊ファミ通10月21日号(2021年10月7日発売)でもゲーム概要やここで触れていない内容についても言及した詳細なインタビューを掲載しているので、後日併せて確認してみてほしい。

小笠原賢一(おがさわらけんいち)

コーエーテクモゲームス『信長の野望・新生』プロデューサー

『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】

戦国のリアルな世界観を落とし込んだ新たなゲームシステム

――2021年3月のタイトル発表から約半年、待望の新情報公開となりました。まずは“新生”というタイトルの由来についてご説明いただけないでしょうか?

小笠原シリーズ16作目にあたる作品で、本作のゼネラル・プロデューサーでもあるシブサワ・コウが手掛ける作品としても、1981年の『川中島の決戦』以来40周年となる節目の年ということで、より気合を入れて制作しております。今回は、『信長の野望』作品ではほぼ全期間をコロナ禍におけるリモート、テレワーク体制で開発した初めての作品でしたが、そんな中でも「世の中の人たちを元気づけられるようなサブタイトルをつけよう」ということで、新たな気持ちで、しっかりと前向きに生きていけるイメージを込めて“新生”というサブタイトルをつけました。

『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】
『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】

――今回はどのような作品になっているのでしょうか。

小笠原40周年という節目の年だからこそ、これまでを振り返ると同時に今後のシリーズの方向性もしっかりと定めていかなければならないと検討を重ねました。まずは原点に立ち返って、織田信長はどういう生涯を送ったのかということをゲームデザインに落とし込むところから始めたのですが、一方で我々がつねに目指しているのは、戦国時代の“リアル”をエンターテインメントとしてしっかりと体験してもらえるような作品でもあります。

――戦国時代のリアルというのはどういうものなのでしょうか。

小笠原戦国時代については研究が進んでいて、第1作が発売された1983年からはもちろん、私が前回プロデューサーを務めた『信長の野望・創造』(2013年発売)からも大きく進んで、そのイメージが大きく変わっているんですよ。近年では戦国大名は従来のような“独裁者”ではなく、家臣たちとの“合議”によって運営されてきたことが明らかになっています。そういった現代の戦国時代像を踏まえて、今回は時代を動かしてきた“武将”たちの存在をクローズアップすることにしました。

――そこで、コンセプトの“AIで躍動する武将たち”が生まれてきたのですね。

小笠原そうですね。もちろん今回だけでなく、今後もシリーズを通じて戦国時代のリアリティーは追求していきますし、AIの改善にも力を入れていきます。『信長の野望・新生』は、そのはじめの一歩となる作品です。

――システム面では具体的にどのような変化になって表れているのでしょうか。

小笠原当時の武将たちは“守るべき土地”や一族の存在があって、そのうえで主家のために動いていました。ですから、本作では彼らに土地を与えるようなシステムを作りました。それが、領地の最小単位である“郡”です。国の下に城、城の下に郡という形になります。プレイヤーは大名として武将を各郡の領主に任命し、領主となった武将たちは、それぞれの裁量で領地の発展に尽くすことになります。もちろん、ある程度の方向性については、大名から城主に指示を出す形で定められます。

『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】
『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】
『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】

――ひとつの城に郡はいくつくらいあるのでしょうか?

小笠原地域によって差はありますが、だいたい5~10くらい登場します。ひとりの武将が複数の郡を統治することはできないのですが、武将を置けない郡は“郡代”という形でAIが代わりに領地運営をしてくれるようになっています。敵と隣接した地域の武将は、調略なども自動でやってくれたりします。反対に敵もやってくるのですが……。

――前作からさらにAIが大活躍していますね。

小笠原これまでは“アルゴリズム”という形で、敵勢力を制御するためにAIを使ってきましたが、本作では自分たちの家臣を動かすことにも使っています。領地の運営以外にも、大名のやろうとしていることに対してサポート的に働きかけてくれるような役割も担っているんです。イメージとしてはAIスピーカーのような感じですね。

――たとえばコマンドで美濃攻めを実行しようとしたら、「ヘイ、秀吉! 美濃を攻めたいんだけど」、「デハコノルートカラセメマショウ」みたいな感じでしょうか。

小笠原それよりはもっとサポート的な役割が大きいですね。歴史シミュレーションゲームは時代とともに複雑になり過ぎてしまっているところがあって、プレイヤーがすべての状況を把握するのはなかなか難しいのですが、その中で「○○の条件を満たしたので実行できるようになりました」とか、「○○が不足気味になってきました」といった、気付きにくい情報を教えてくれるんです。それはシステムメッセージで伝えることもできるのですが、それよりも武将たちが注進してくれる方がプレイヤーにとってもおもしろく感じるでしょうし。

――行政単位は細かくなっていますが、コマンド操作自体はAIが自動で動く分それほど多くなっていないようですね。

小笠原序盤、中盤、終盤と、勢力が大きくなっていくごとにプレイ内容は少しずつ変わっていきます。全体的には細かい動きは家臣=AIに任せて、プレイヤー=大名は彼らを動けるようにするための環境整備が中心となるというイメージですね。シリーズの課題として、後半はパワープレイで押し切れるようになってしまうところがあって、後半ならではの醍醐味というか、大名の苦悩が味わえるような形にしたいと考えています。このあたりはまだ調整中のポイントです。

『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】
『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】

――ゲームの基本的な流れはどのような形になるのでしょうか? これまで、通常のフェーズはターン制、リアルタイム制とさまざまなシステムが用いられてきましたよね。

小笠原今回はターン制ではなく、完全に区切りなしのリアルタイム制を予定しています。随時時間の流れを任意に止めて内政や戦闘の指示を行ったり、問題が起きたらそれに対処していくことをくり返して進めていきます。

――なるほど。戦闘のシステムはどうなっているのでしょうか?

小笠原創造』のものに近いイメージになっていると思います。こちらでもAIががんばってくれて、大枠の作戦や方針は家臣たちが提案してくれるようになっています。それをそのまま採用することもできますし。みずから細かい指示出しも可能です。内政では家臣が行う領域が増えて物足りなくなる人もいるでしょうし、戦闘ではしっかりプレイヤーが指示を出せるようにしました。

――あえて手間を掛けるのもシミュレーションゲームの醍醐味ですよね。でも、AIが提案してくれるのはラクでいいなと思います(笑)。

小笠原ひとつの拠点をさまざまなルートから侵攻していく中で、各軍の動きかたやルート、作戦の提案などに武将の個性が現れます。武将によっては攻めが得意、守りが得意などの特徴もあるので、郡への任命だけでなく、戦闘でも家臣の個性を把握したうえで起用することが、勝利へとつながっていくはずです。

『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】
『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】
『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】
『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】

――今回の放送では、昔からの『信長の野望』ファンでもある小笠原プロデューサーの好きなタイトルについても言及されていましたね。

小笠原信長の野望・武将風雲録』ですね。私は以前から武田家びいきということを公言しているのですが(笑)、『風雲録』から武田や上杉でプレイするときにも(菅野よう子さん作曲の)オリジナル曲が流れるようになり、それが私の思い描いていたイメージとピッタリだったということもあって、とても印象的でした。あとは前作の『信長の野望・戦国群雄伝』まではファミコンでプレイしていて、『風雲録』からPCでプレイするようになったのですが、そのときのPCでのグラフィックの精細さにいたく感動したのも大きかったかもしれません。どの作品も楽しんでいたのですが、そういった事情があって印象の強さで『風雲録』になるんですよね。

――最後にファンの方々へのメッセージをお願いします。

小笠原今回は非常に新しい切り口のナンバリングタイトルになっていますが、私自身『信長の野望』のいちファンとして、皆さんと同じ目線に立ってセールスポイントの具体化に取り組んできました。シブサワ・コウ40周年記念タイトルとして会社を挙げて気合を入れて作っておりますので、期待していてください。

『信長の野望・新生』小笠原Pインタビュー。戦国時代の“最新のリアル”をゲームで味わえる! 配下武将もAIで動きプレイヤーをサポートする新システムにも注目【TGS2021】