スクウェア・エニックスより、2021年2月26日に発売されたNintendo Switch用ソフト『ブレイブリーデフォルトII』(以下、『BDII』)。
『ブレイブリー』シリーズの久しぶりの家庭用ゲーム機向け新作として発売された同作は、4つのクリスタルを巡る壮大な冒険や、ターンの貯蓄と前借りを行える“ブレイブ&デフォルト”システムが特徴のバトル、サウンドクリエイターRevo氏が手掛けた珠玉の楽曲などが好評を博し、発売から約半年で、全世界出荷本数は95万本を記録。そして2021年9月3日にはPC(Steam)版の配信もスタートし、ミリオンセールスも間近というところだ。
ファミ通.comでは、2021年7月21日~29日に、同作のユーザーアンケートを実施。今回はその結果をもとに、『BDII』を生み出したスクウェア・エニックスの浅野智也氏、高橋真志氏、生島直樹氏の3人にインタビューを実施。キャラクターやストーリーなど、ユーザーの気になることについて詳しくうかがった。
ちなみに、インタビューにはネタバレが満載なので、本作をクリアーしていない方は要注意! ゲームを最後までプレイしてから読み進めるようにしてほしい。
浅野智也氏(あさの ともや)
スクウェア・エニックス 企画・プロデュース
高橋真志氏(たかはし まさし)
スクウェア・エニックス プロデューサー
※高橋氏の“高”の字は、正しくは“はしごだか”です。
生島直樹氏(いくしま なおき)
スクウェア・エニックス アートディレクター
”王道のRPG“に立ち返って練りに練ったキャラクターと物語
――『BDII』の発売から約半年が経ちました。2021年9月3日にSteam版も配信となりましたが、現在の率直なお気持ちを教えてください。
高橋今年の2月に、Revoさん(サウンドクリエイター。音楽プロジェクトSound Horizon、Linked Horizonの主宰で、本作の楽曲を担当)といっしょにファミ通さんのインタビューを受けたときは、『BDII』がどのように受け入れてもらえるのか、期待もありましたが、どちらかと言うと不安な気持ちが大きかったかもしれません。それから発売を迎えて半年が経ちまして、出荷+ダウンロードが全世界で95万本を超えまして、今作も多くの方に遊んでもらえてホッとしています。
――新たに配信されたSteam版を入れると、100万本に届きそうですね!
高橋Steam版発売が先かな? 100万本到達が先かな? と見守っていました。これもひとえに、応援してくださっているファンの皆さんのおかげです。ファミ通.comさんで実施していただいた今回のアンケートも、『ブレイブリー』愛にあふれた熱いコメントが多くてうれしかったですね。
――生島さんは、『ブレイブリー』シリーズでメインキャラクターデザインを手掛けるのは今作が初でしたが、新作を送り出したいま、どのようなお気持ちでしょうか。
生島僕は『フォーザ・シークウェル』、『ブレイブリーセカンド』と携わらせていただいた後、シリーズのファンとして新作が生まれるのを待ち望んでいました。本作で憧れの『ブレイブリー』シリーズのメインアートを担当できたのが、何よりもうれしかったです。メインキャラクターだけではなく、すべてのジョブイラストや、アスタリスク所持者のイラストまで描けたので、こんなにうれしいことはありません。気は早いですが、シリーズが続く限り全力投球で担当したいと燃えています。
――そういえば、生島さんは『ブレイブリーデフォルト』がお好きで浅野チームに加わったとお聞きしたことがあります。
生島以前は別のゲームメーカーで、いろいろなテイストのRPGをたくさん作っていたのですが、ある時期から、自分は王道でデフォルメのRPGがいちばん好きなことに気づいて、「自分でも生み出していきたい」と思ったんですね。その矢先に『光の4戦士 -ファイナルファンタジー外伝-』や『ブレイブリーデフォルト』が発売されて、「まさにこういう方向性のものが作りたかった!」と悔しい思いをしたんです。それから当時勤めていた会社を辞めて、シリコンスタジオ(『ブレイブリーデフォルト』、『ブレイブリーセカンド』の開発を担当)のドアを叩きにいきました。僕に『ブレイブリー』を作らせてくださいって。
――『フォーザ・シークウェル』、『ブレイブリーセカンド』を開発したときは、シリコンスタジオに在籍されていたんですね。
生島はい。さらにその後にご縁があって、スクウェア・エニックスの浅野チームに所属することになり、『ブレイブリーデフォルトII』を開発できたので、感無量です。『光の4戦士 -ファイナルファンタジー外伝-』に衝撃を受けたときの自分に伝えてあげたいですね。
――生島さんは、並々ならぬ思いがあって浅野チームに加わったのですね。『ブレイブリー』シリーズは来年10周年ということもあり、チームには、生島さんのように過去作に影響を受けて入ったというスタッフも多いのではないでしょうか。
浅野そうですね。以前はチームの人数も少なくて、新作をリリースできるのは3~4年に1本のペースでしたが、チームの人数も多くなり、複数のラインを動かすようになりまして。生島に関しても、『ブレイブリー』の新作に全力投球させてあげることができればよかったのですが、当時はそういうわけにもいかなくて……。
高橋『ブレイブリーデフォルト』のときは、まだチームじゃなくて、浅野と僕しかいませんでしたから(苦笑)。
生島当時、シリコンスタジオの会議室に、おふたりがずっとこもっていたのが印象に残っています。これまでいろいろなプロデューサーとお仕事をしましたが、こんなにも、ものづくりの先々、枝葉の先まで見る人たちがいるんだとビックリして。それでいて紳士的だったのも印象的でした。
――思い出話は尽きませんが、ここからはファミ通.comで実施した『BDII』アンケートの結果をもとに、詳しくうかがっていきたいと思います。
浅野まずは、回答者の年代を見てビックリしました。回答者の年代が若いなと。
■回答者の性別
男性……351人
女性……207人
未回答……29人
■回答者の年齢
10代以下……50人
20代……279人
30代……180人
40代……59人
50代……3人
60代以上……11人
未回答……5人
高橋そうですね。
浅野スクウェア・エニックスのメンバーズサイトなど、オフィシャルで実施したアンケ-トですと、タイトルを出すたびに年齢層が徐々に上がっていく傾向がありまして。『光の4戦士』が30歳、『ブレイブリーデフォルト』が30歳過ぎ、『ブレイブリーセカンド』が35歳、『オクトパストラベラー』が40歳弱……というように、自分たちといっしょに歳を取っていたイメージがありました。
高橋ですので本作でも、年齢層は上がるのかなと思っていたのですが、意外にも20代の方がいちばん多くて。ファミ通.comさんの読者には、若い方が多いのかもしれません。
――ファミ通.comの読者は20~30代が多いと思いますが、その中でも20代からの票がダントツで多かったので、本作は若い方にも親しまれていると思います。これまでにプレイしたことがある『ブレイブリー』シリーズ作品/浅野チーム関連作品は以下の結果になりました。シリーズファンはもちろん、『オクトパストラベラー』のファンも多いようですね。
■プレイしたことのある作品(※複数回答可)
ブレイブリーデフォルト……365票
ブレイブリーデフォルト フォーザ・シークウェル……353票
ブレイブリーセカンド……348票
ブレイブリーデフォルト プレイングブレージュ……90票
ブレイブリーアーカイブ ディーズレポート……68票
ブレイブリーデフォルト フェアリーズエフェクト……158票
オクトパストラベラー……301票
オクトパストラベラー 大陸の覇者……214票
バリアスデイライフ……18票
プロジェクト トライアングルストラテジー 体験版……137票
高橋『ブレイブリーセカンド』から年数が経ち、ハードも変わったので、初めての方々にもちゃんと遊んでいただけるよう「『BDII』は舞台や登場人物を一新した完全新作ですよ」を言い続けてはいたのですが、なかなかメッセージを正確に届けるのは難しいですね。『ドラゴンクエスト』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズなどと同じ『II』という名称のつもりでしたが、「過去作を遊んでないといけないのかな?」と考えてしまう方はやはり多く。またそれとは逆に、「リングアベルなど前作のキャラクターも出るのかな」と期待してくださる方もいたりして……うれしい反面、今回は別世界なので出ないんです……と、少し歯がゆい気持ちになりました。
――シリーズ作品ならではのジレンマがあったと。とはいえ、ふたを開けてみると、回答者の評価は高くて、とくに物語や音楽、キャラクター、ジョブチェンジが魅力的だと答えた人が多かったです。
■回答者の評価
★★★★★……324票
★★★★……186票
★★★……41票
★★……8票
★……13票
■作品の魅力的な要素(※最大3つまで複数回答可)
物語……344票
音楽……484票
キャラクター……317票
グラフィック……58票
バトル……201票
ジョブチェンジ……218票
ミニゲーム……17票
その他……18票
浅野物語や音楽、キャラクター、バトル、ジョブチェンジといった、RPGにとっていちばん大事な要素で、ユーザーの期待に応えられたのはホッとしていますし、評価していただけてうれしいです。キャラクターには317票も入っているね。
生島たくさんの方がキャラクターたちを好きになってくれてありがたいです。こんなにうれしいことはないですね!
――生島さんは、思い入れのあるシリーズでアートディレクターを担当するのは、プレッシャーも大きかったと思いますが……。
生島プレッシャーよりも、感謝の気持ちのほうが強いです! 過去の作品に対しても育ててもらった敬意と感謝があり、自分には、まだまだいたらない部分があると感じていますが、こうしてチャレンジの機会を与えていただけたうえ、大好きな『ブレイブリー』シリーズの最新作に携われたのはとても光栄なことです。
――好きなキャラクターの中では、アデルの人気が頭ひとつ抜けていました。
■好きなキャラクタートップ10
1位 アデル……136票
2位 グローリア……72票
3位 セス……64票
4位 エルヴィス……61票
5位 スローン……24票
5位 ニハル……24票
7位 マルファ……23票
8位 ロンズデイル……21票
9位 カストル……17票
10位 フォリィ……16票
生島アデルは僕も好きですよ。隣にいて元気がもらえるキャラクターなので、性別に関係なく好きになってくれた方が多かったのではないかなと思っています。
――アデルは妖精だったことや、3章での活躍も人気を後押ししたと思います。アデルが妖精であることは、最初から決めていたのですか?
高橋もちろんです。「『ブレイブリー』シリーズといえば妖精!」と期待している方が多いので、本作でも妖精の扱いをどうしようかと最初に考え始めました。これまでの作品では、じつは敵でした、味方でした……といろいろやってきたので、本作では“4人のメインキャラクターのうちのひとりが、じつは妖精だった”という設定にすることが早々に決まって。でも初期のアデルはクールなキャラクターで、男言葉でしゃべる女戦士というイメージだったんですよ。
生島初期のアデルの表情は、クールな人物としてのオーダーだったのを覚えています。
――いまのアデルは明るいお姉さんタイプですが、クールな女戦士から変更した理由は?
浅野以前、『オクトパストラベラー』のインタビューで、1年以上かけて作ったシナリオを捨てたというエピソードをお話ししたと思います。今回はそこまでではないものの、パーティーメンバーのキャラクター像は、高橋を中心にかなり時間をかけて練って、考えていきました。だからこそ、キャラクターの人気が高かったのはうれしかったですね。
――1年とは言わないまでも、半年くらいは作っては壊しての期間があったのですか?
浅野半年以上はあったよね?
高橋そうですね。ストーリーのあらすじ自体は最初から大きく変わっていないのですが、初期に考えていたキャラクター像だと、なかなか会話が噛み合わないといいますか、盛り上がらなくて。『ブレイブリーデフォルト』と比べて、パーティーメンバーが大人になったぶん、全体的に落ち着きすぎた雰囲気になっていました。それぞれのキャラクターの個性を考える中で、妖精のアデルは実年齢が高いので、「みんなをやさしく包み込んで見守るお姉さんキャラにしよう」と調整して……そういった試行錯誤に1年ぐらいかかった感じです。
浅野ストーリーの大筋はできていたけど、キャラクターが乗らない、という感じでした。
高橋ドラマとしてはいろいろ盛り込みたいのですが、RPGなので、“悪い敵を倒す”という筋を大きく変えるのは難しい。その中でプレイヤーにどう喜んでもらったり、驚いてもらったりするかは、どの作品でも難儀するところではありますね。
――4つのクリスタルを巡る大筋のストーリーも初期から考えていたのですか?
高橋各国を巡りながら4つのクリスタルを集めていくという展開は、初めから決めていました。ただ、かなり初期の段階では自由度が高くて、どの国からでも攻略できて、好きなジョブから入手できるという仕組みを考えていたことはありましたね。
浅野『オクトパストラベラー』は好きな主人公を選んで物語を進めていける、自由度の高さを喜んでもらえたので、『ブレイブリー』シリーズでも同じようなことができないかと考えてみたんですよ。
高橋できるだけ自由度が高いと楽しいよね、やってないことをやれるといいよねと、アイデアをふくらませるうちに、すごく突飛なRPGに傾きそうになってしまったんです。これでは『ブレイブリー』シリーズに期待されている、王道のRPGからは程遠いだろうと思い、すぐに軌道修正を行いました(苦笑)。ほかにも、主人公のキャラメイクができて、見た目はもちろん、各種能力のパラメータを設定できるといったアイデアもありました。
生島ありましたね~。
浅野パラメータを割り振るときに、知性にある程度振らないとウインドウの文字などが読めないんです(笑)。
一同 (笑)。
――会話ができないから、言語を覚えるために知性を上げる必要があるのですね。おもしろそうですが、文字が読めないのは困ります(苦笑)。
高橋キャラメイクのアイデアは社内では好評でしたが、『BDII』では原点回帰といいますか、王道のど真ん中にもう一度チャレンジしよう、スクウェア・エニックスのRPGならこうだよねと、ファンに感じてもらえる作品を目指すことにしました。
浅野それに前作の『セカンド』から考えても、すでに7年以上経っています。久しぶりにリリースする『ブレイブリー』シリーズ最新作は、スタンダードなものが喜ばれるだろうと判断しました。
――知性に振ると文字が読めるというアイデアはおもしろいので、ぜひ別のタイトルで実現させてほしいです!
浅野いまの浅野チームは、続編だけではなく、新作をチャレンジできる環境でもあります。シリーズ作品ではファンの方の期待にしっかりと応えながら、新作ではどんどんチャレンジしてみたいですね。
高橋アイデアが実現できるかどうかはわかりませんが……。冷静に考えると、力に全振りすると、文字が読めなくてイベントの内容がわからないまま進むゲームは、正直どうなのって思いますよね……。怖いもの見たさでやってみたい気持ちはまだありますが(苦笑)。
――さて、キャラクターの人気に話題を戻すと、アデルに続いて、グローリア、セス、エルヴィスと、メインキャラクター4人が上位に並びました。
生島仲間はずれになる子がいなくてホッとしました。
高橋ちなみに、生島さんがいちばんお気に入りのキャラクターは?
生島ランキングに入っていませんが、いちばん好きなのはダグです。
高橋生島さん、憎めないヤンキーキャラが好きですよね。
生島直情的な性格がほっとけなくて、不器用だけどまっすぐなところや、敵なんだけど憎めない立ち位置も好きでした。それにダグとパートナーのセレネは、サブクエストでアスタリスクを失った後のエピソードが描かれるのもよかったです。ダグは、老剣士のスローンをボコボコにする悪いヤツなんですが、サブクエストを進めると、彼の夢や恩師への感謝の気持ちが語られるので、印象がグッとよくなると思うんですよ。ふだんは強がっているのに、セレネに対して頭が上がらないところも、愛嬌があって好きでした。
――アスタリスク所持者の中では、ニハルやマルファ、ロンズデイルの人気も高かったです。
高橋ニハルは発表したときから人気でしたよね。とにかくかわいい。
生島ありがたいですね。それにスローンもこんなに上位に食い込むなんて。
高橋スローンは序盤のバトルで頼りになるレベルではなく頼りになりますからね。
――序盤はスローンの回復にお世話になりました。
高橋これは余談なのですが、『ブレイブリーデフォルト』のときはユルヤナの老師が主人公たちを導いてくれましたよね。老師の声は増岡弘さんが担当していて、増岡さんといえば『サザエさん』のマスオさん役で有名です。そして本作で主人公たちを導いてくれるスローンは田中秀幸さんが演じていて……。ご存知の通り、田中さんは増岡さんから現在マスオさん役を引き継いでいる方です。
生島『ブレイブリー』シリーズの序盤は、マスオさんさまさまなんです(笑)。
――もしかして、狙ってキャスティングされたんですか?
高橋狙っていないとは言わないです(笑)。
――おもしろいですね(笑)。アスタリスク所持者の中では、ほかに、カストルやフォリィなど、残酷なキャラクターにも票が集まりました。『BDII』は大人向けのストーリーを意識したということですから、それもあって悪役の個性を際立たせたのでしょうか。
高橋世界には残酷なこともあるということを表現したいという考えもありました。悪いヤツにもいろいろいて、改心する者もいればそうでない者もいる。本作では純粋な悪者をきちんと描きたかったので、フォリィやヴィジヌのようなキャラクターが生まれたように感じます。とくにフォリィに関しては、生島と「人気が出るといいね」と話していたので、話題になってよかったです。生島がラフで描いたフォリィの表情集を見たときに、本当にヤバいキャラクターが生まれたなと思ったので。
生島ありがとうございます。恍惚とした表情や、淡々と話すときの表情は、こんな顔じゃないかな……とイメージをふくらませて描きました。
――続いて、印象に残っているエピソードに関して伺いたいと思います。自由記述式で回答してもらったところ、3章“羽ばたく炎”のエピソードを選んだ方が圧倒的に多い印象でした。アデルの正体が妖精であることが判明するイベントや、妖精狩りのシリアスなエピソードがプレイヤーの心をつかんだようです。
高橋アデルが妖精であることは、できるだけバレないようにはしていたので、驚いてもらえたのはとてもうれしいです。
――それまでに、“アデルが靴をはくのに慣れていない”という描写などはありましたが、正体が妖精であることまでは思いいたらないですよね。
高橋初期の段階で、妖精に関する設定はかなり細かいところまで詰めました。シリーズを通して“妖精族はそばにいる人間を導く力がある”という大きな設定があるので、本作ではアスタリスクを集めるエルヴィスを導くキャラクターにしました。表向きはエルヴィスの傭兵を務めつつ、妖精族のものだったアスタリスクを回収し、お姉さん(=エドゥナ)を止めるという自分の目的のために行動しているという感じですね。
――つぎに多かったのは、2章“大智は愚の如し”に関する意見でした。やはりフォリィ関連のイベントが強く印象に残っている様子ですが、そもそも各章のストーリーは、どのようにして作っていったのですか?
高橋4つのクリスタルを登場させるにあたって、クリスタルが各国でどのような影響を与えるかを考えて、ストーリーの軸を作りました。たとえば、砂漠に囲まれたサヴァロンでは水のクリスタルの影響で水没していたり、雪に閉ざされていたライムダールでは火のクリスタルの影響で雪が溶けていたり……。そこから、オラクルというジョブを置こう、そのためにライムダールは宗教国家で、その宗教が悪用されて妖精狩りを行い恐怖で支配する形にしよう、などと詰めていきました。
浅野あとは、章ごとにスポットを当てるキャラクターを決めてストーリーを考えていったよね。
高橋そうでしたね。1章のサヴァロンでは、グローリアが水のクリスタルの啓示を受けるので、彼女の人となりを深堀りしました。つぎの2章の舞台ウィズワルドはエルヴィスの故郷で、彼にスポットを当てることを決めていたので、彼をいかにかっこよく見せるかを考えたといった感じです。
――それで3章ではアデルにスポットが当たり、彼女の正体で妖精であることが明らかになったと。本作では必殺技の解禁がクリスタルの啓示と連動していたので、アデルの必殺技はいつ使えるようになるのかと、楽しみにしながら3章を進めたのを覚えています。
高橋前作では必殺技が解禁された段階で、全員しれっと使えるようになっていましたが、本作ではクリスタルの啓示が終わったキャラクターから解禁するようにしました。喜んでもらえたのであればうれしいですね。
――ほかにはスローン関係のイベントや、7章“ふたつのページ”の先の読めない展開、セーブデータやブレイブを使ったメタ的な仕掛けを挙げる人も少なくなかったです。メタ的な仕掛けは『ブレイブリー』シリーズではおなじみですが、本作ではどのように考えて実装したのですか?
高橋これもシリーズを作るうえでのジレンマなのですが、1作目からこれでもかというぐらいネタを詰め込んでしまったので、すぐに予想されてしまうんですよね(苦笑)。それでも、本作でも驚く仕掛けは期待されるだろうとは自覚していました。ただ、そのネタに比重を置きすぎてもいけないので、バランスを考えるのも苦労しましたね。マルチエンディングを考えていた時期もありましたが、エンターテインメントのコンテンツが増えている昨今は何周もプレイしてもらうよりも、1周ですべてのストーリーを把握できたほうがいいだろうと考えて、セーブデータの仕掛けを思いついたりしています。
――なるほど。
高橋さすがにプレイ中にセーブをしない人はいないと思いますし。プレイヤーの記録(セーブデータ)をも溜めてきた魔導書に、じつはヤミノヒトミの記憶が最初から宿っていて、この記憶を消すことで最終章に進める、というゲームならではの仕掛けですね。また、ラストダンジョンである虚無の孤島についても、ただの便利システムかと思っていた“探索モード”の延長線上にラストダンジョンがあったんだ、ということに驚きを感じてもらえたらうれしいなと思いました。
――エンディングに関して言うと、ベストエンディングはもちろんですが、2回目のエンディングも切なくて好きでした。イベントシーンは泣けますし、『希望を残した譚詩曲』のアウトロに、『希望を遺した譚詩曲』とは違ってアデルのメロディーを取り入れているのも、とても細かくてすばらしいなと。
高橋ありがとうございます、ステキでしたよね。(それぞれのエンディングの)最後のイベントシーンの楽曲は、もともと個別にはRevoさんにお願いしていなかったのですが、「尺を合わせて作ります」とおっしゃっていただいた、こだわりのシーンでした。
――では、楽曲に関してお聞きしたいと思います。好きな楽曲を挙げてもらったところ、トップ10は以下の結果になりました。やはりバトル曲とエンディング曲が人気ですね。
■好きな楽曲トップ10
1位 暗闇に星を集めし者達……48票
2位 暗闇を見つめし瞳~暗闇に星を集めし者達……38票
2位 喪失と忘却を越え希望へ向う譚詩曲……38票
4位 焦がれ飛び出し濡れ堕ちて、その暗闇に舞い上がるもの……36票
5位 失意に濡れども花開く王女の矜持……27票
6位 勇気ある者への試練……25票
7位 対峙すべき者達との戦い……19票
7位 再び希望へ向う序曲……19票
9位 覇道の影で閃く審判……16票
9位 邪なる者達との戦い……16票
高橋やっとラスボス曲の話ができますね(笑)。
――以前、高橋さんとRevoさんにインタビューをしたとき、Revoさんは「ラスボス関連曲は(『ブレイブリーデフォルト』と比べて)さらに力が入ったものになっている」と答えていましたが、『暗闇を見つめし瞳~暗闇に星を集めし者達』を聴いて、その意味がよくわかりました。
高橋Revoさんと本作のラスボス曲の打ち合わせをしたときから、「ブレイブリーデフォルトでのラスボス曲がとても喜ばれていたので、本作でも期待に応えたい」とおっしゃっていました。そこからはすべてRevoさんのアイデアで、味方と敵の楽曲のメロディーを取り入れた『暗闇を見つめし瞳~暗闇に星を集めし者達』が生まれたんです。この曲は1曲としてカウントしていいのか? と思うくらいすごい構成ですし、とんでもない熱量がこもっている曲だと思います。
――ラスボス曲は、RPG好きのプレイヤーの気持ちをわかっている構成だなとしみじみ思いました。
高橋さすが、でした。僕も曲を聴いたときに泣いちゃいました。
――それと、『焦がれ飛び出し濡れ堕ちて、その暗闇に舞い上がるもの』で、エアリー戦(『ブレイブリーデフォルト』)のメロディーがでてきたのもうれしかったです。
高橋これも泣いちゃいましたね。いちばん盛り上がるところで「こうきたか!」って。やっぱり、知っているメロディーが入っているのはグッときます。
――エンディング曲の『喪失と忘却を越え希望へ向う譚詩曲』は歌詞も印象的でした。この歌詞はすべてRevoさんが考えたのですか?
高橋Revoさんですね。歌入りの曲になったのも、Revoさんからのご提案でした。サブシナリオのちょっとしたエピソードも歌詞に取り入れてくれていたので、こんなところまで細かく目を通してくれていたんだと、感動したのを覚えています。エンディング曲もこれまた1曲としてカウントできないほどのボリュームで、エンディングの数に合わせてバージョンが増えていきました。(Revoさん、すみません)。
――もうさすがという言葉しか出てきません(笑)。
高橋ローカライズチームも力が入ったようで、英語、フランス語、ドイツ語など、複数の言語でローカライズを行っていますが、ちゃんとメロディーに合わせて歌えるように、と楽譜やメロディーをもとに各国の言語に翻訳を行ってくれました。
ブレイブの衣装にすっぴんの姿が取り入れられた理由が明らかに!
――続いて、ジョブについてです。お気に入りのジョブのトップ10は、下記のランキングになりました。
■好きなジョブトップ10
1位 ブレイブ……62票
2位 シーフ……60票
3位 すっぴん……48票
4位 ファントム……45票
5位 シールドマスター……36票
5位 魔獣使い……36票
7位 モンク……28票
8位 ベルセルク……25票
9位 竜騎士……24票
10位 導師……23票
高橋僅差で隠しジョブのブレイブが1位に輝いていますね。
生島ブレイブのデザインのオーダーを受けたのは、開発の後半でした。とても強いジョブだと知って、やりたいと思ったのが、すっぴんの姿にブレイブのコートをまとわせること。つまり、原点に戻った形で最強の姿を描きたいと考えました。
高橋すべてのジョブの最終形であるブレイブの衣装が、すっぴんに由来するというのは、『ブレイブリー』シリーズっぽくてステキだねという話をしましたよね。すっぴんの人気も高いので、生島のアイデアはとてもよかったと思います。
――生島さんのアイデアで、コートの下がすっぴんの衣装になったのですね。
生島ただ、すっぴんの衣装の色味をそのまま使ったのでは、ブレイブの白いコートが目立ちません。そこですっぴんの衣装の色を落として、デザインを調整しました。あと、ポシェットにも強いこだわりがあるんです。高橋とデザインを考える際に、このポシェットには旅の思い出とちょっとの勇気が入っているという設定を考えました。商品化されるといいなとひそかに期待していたのですが、メタルの部分が重すぎて、機能的にも費用的にも現実的ではないなと諦めています(苦笑)。
――(笑)。すっぴんと言えば、エルヴィスだけ初期のジョブが黒魔道士でしたが、エルヴィスのすっぴんの衣装は後から考えたのですか?
生島はい。エルヴィスだけ黒魔道士の衣装を考えた後に、すっぴんの衣装を描きました。
高橋ほかの3人はすっぴんなのに、エルヴィスだけ黒魔道士の衣装でデザインを考えるのは、チャレンジだったかもしれません。
生島エルヴィスのすっぴんの衣装を見せたときに、浅野と高橋に「エルヴィスの人となりが初めてわかった」と言われたのが印象に残っています。確かに、黒魔道士の黒いコートだと謎めいた印象だったので。
高橋すっぴんのエルヴィスは、「吾輩は貴族なのだ」って言いそう(笑)。
――確かに言いそうですね(笑)。
生島そういえば、胸の黄色いバラは貴族→庭園をイメージしてデザインしたことを思い出しました。貴族のほかにロンドンもイメージしていて、もしマフラーの巻きかたなどから気品や知性など、エルヴィスがまとう雰囲気からロンドンらしさを感じてもらえていたらうれしいです。
――ほかにはシーフが人気でしたが、これは神速瞬撃が理由だと思います。好きなアビリティで、神速瞬撃を選んだユーザーがいちばん多いようでした。
高橋神速瞬撃は効果(自身の物理攻撃力に速度を上乗せしたダメージを与え、一定時間後に同じ値のダメージを追加で与える)が強力ですよね。シーフは衣装もかっこよくて、僕はバーナードがとくに好きだったので、2位に選ばれてうれしかったです。
――高橋さんは、バーナードのどんなところがお気に入りなのですか?
高橋最初の体験版のボスとして活躍したキャラクターなので、とくに印象に残っていて。彼だけボイスを先に収録する必要があったりして、付き合いが長いぶん、いろいろなエピソードが記憶に残っています。
――ちなみに、開発チームで人気のジョブはありますか?
高橋開発チームは意見がきれいに分かれていますね。というのも、開発段階で強いジョブに人気が集まると、ほかのジョブを強くしてバランスを取るようにしていたので。強さが変わるたびにジョブの好みが分かれたので、結果的にバランスよくジョブの強さを調整できたと思います。
――バーナードは、バトルの中で印象に残っている敵としてよく名前が挙がっていましたね。カストルと併せて、多くのユーザーに取って序盤の壁になったようでした。
高橋スローンが仲間として行動し、回復をサポートしてくれる序章では、ゲームオーバーになることはほとんどないと思います。まずは序章でゲームに慣れてもらい、ジョブが増えてくる1章で試行錯誤をしてもらいたいと考えていました。そこで立ちはだかる最初の壁として考えていたのが、バーナードやカストルだったので、多くのユーザーに歯ごたえを感じていただけたのなら、開発チームとしては狙い通りでしたね。
生島でも、自分はその前に戦うニハルでけっこうきびしかったですよ(苦笑)。
パッケージの人物はグローリアではない……!? 知られざるネタを大公開
――本作の物語について、「もっと描いてほしい」、「もっと知りたい」と思っていることを挙げてもらったところ、アデルの姉であるエドゥナについてもっと知りたいと考えている人が多かったです。
高橋エドゥナに関しては、メインストーリーでは明かしていないものの、手記などを読み解くことで、彼女の過去に起こった悲しい過去を推察できるような作りにしています。回答の理由を拝見すると、手記などを見つけたうえで、エドゥナに関していろいろと考えてくれていたので、プレイヤーの皆さんの理解度がすごいなと感動しました。そのうえで、彼女についてさらに知りたいという方がたくさんいるのは、開発者冥利に尽きます。
――メインストーリーでエドゥナに関してあえて触れなかったのは、プレイヤーに想像する余地を残したかったから?
高橋過去にどういったことがあったのか、資料としてまとめてはいますが、ご指摘の通り、プレイヤーの想像の余地を残したくて手記にまとめることにしました。終盤に説明だらけになるのは好きではなくて。手記を読み進めていくと、エドゥナが人間を嫌う理由や、ヤミノヒトミの正体などが想像できるようになっています。それにしても、アンケートに回答してくれた方は、やり込んでくれている方が多いですね。すごい、イナンナの名前まで書いている人もいる。
――グローリアの先祖の妹であるイナンナも、メインストーリーでは語られないキャラクターでした。回答者の中には、イナンナの恋人が、昔のセスではないかと推測している人もいますね。
高橋確かに手記の中にはそういう描写があります。イナンナの恋人は黒髪の男性だったって。セスかもしれませんし、セスに似た別の誰かかもしれない。これに関しても断定はしていません。
――イナンナと言えば、これはそろそろ時効だと思うのでうかがいますが……パッケージに描かれているのはグローリアではなく、イナンナなんですよね。このことに気づいたユーザーもいましたね。
高橋これも気づいている方がいて、けっこうびっくりしましたね。今までも『ブレイブリー』シリーズには「パッケージに、じつはボスキャラが」という流れがあったので、今回はグローリアに見せかけておいて、じつはラスボスのヤミノヒトミ(=イナンナ)なんですというビジュアルを、生島に描いてもらいました。グローリアは、キャラクターイラストではスローンの形見の短剣を持っているのですが、パッケージでは魔導書を持っています。パッと見ただけでは違和感がないのですが、よくよく考えると、なんでグローリアが魔導書を持っているだろう? と思いますよね。そこで何かおかしいと気づいて、パッケージから深堀りをしてくれた方もいたようです。
生島短剣と魔導書のほかにも、グローリアとイナンナには違いを隠しているんですよ。わかりやすいのは、瞳の色ですね。グローリアは瞳が赤茶色なのに対して、イナンナは暗めな寒色系にしていて、ちょっと虚ろな感じに見えるようにしています。
高橋イナンナの瞳は、まさにヤミノヒトミというわけですね。
生島あと、ふたりが対になるように意識していて、向いている方向が逆なんですよね。
――これまでの作品でも、パッケージイラストにはキーパーソンが描かれていたので、次回作のパッケージイラストから、ラスボスを想像しちゃう人が出てきそうですね。
高橋パッケージイラストにラスボスに近しい存在を描くのは、おそらく本作で終わるんじゃないかなと(苦笑)。何かネタを隠すにしても、気づかれにくい別のネタで考えるようにします。
――せっかくの機会なので、ほかに気づいている人が少ない秘密のネタがあれば教えてください!
高橋そうですね……。3つ目のエンディングを見た後のスタッフロールで、最後に“…and all the Players”のメッセージが表示されます。このメッセージは、なぜか“P”だけ残って消えるんですが、この違和感に気づいた人はいても、意味までわかっている方はまだいないようでした。この演出の意味、わかりますか?
――すみません、わかりません……ヒントをください!
高橋ヒントは、5章と7章のサブタイトルです。5章は“ふたつの世代”、7章は“ふたつのページ”で、“世代”と“ページ”を英語にすると、“Ages”と“Pages”(※ふたつと複数系なので“s”がつく)になりますよね。
――そうですね……。世代からページになって、“P”が増えたことはわかりましたが、これにどのような意味が隠されているのでしょうか。
高橋ふたつの“Ages”は、主人公たちと50年前の光の戦士たちの頭文字を並べた単語になっているんですよ。主人公たちがアデル、グローリア、エルヴィス、セス。50年前の光の戦士がアイリーン(妖精王)、グウェンダル(グローリアの祖父)、エマ(エルヴィスの師匠)、スローン。それぞれ頭文字を並べると、“Ages”となります。どちらの世代の光の戦士たちも、自分たちだけではヤミノヒトミを倒すことはできませんでしたが、プレイヤーが力を貸すことで倒すことができた。つまり、“Ages”に“P”を加えて“Pages”にすることで倒せたということを伝えたくて、デバック作業の後半のタイミングで、“P”だけ意味深に残してくださいとお願いしました。
――なるほど! そんなヒミツが隠されていたとは……。ということは、章タイトルやキャラクターの名前を考えるタイミングで、このネタを仕込むことを決めていたと?
高橋はい。キャラクターの名前を考えるときにはすでに決めていましたね。あと、冒険の舞台であるエクシラント大陸の名前には、6つの国という意味を込めて名付けました(※)。ふつうに考えると、ハルシオニア、サヴァロン、ウィズワルド、ライムダール、ホログラード、ミューザの6国を思い浮かべると思います。ですが、じつはハルシオニアとミューザは、もともとはひとつの国なんです。
※ギリシャ語で“6”を意味する言葉は“hexa”、ラテン語では“sex”。エクシラント大陸の“エクシ”は、これらの言葉に由来している。
――つまり、ミューザに変わる6国目が存在すると。それが、6章で訪れる妖精の郷ですか?
高橋ご指摘の通り、妖精の郷マグ・メルが6国目になります。「もともと人間と妖精は同じ世界で暮らしていた、という名残」を(気づいてもらわなくてよい範囲で)匂わせたくて、この名前に決まりました。ちなみに、5章でエンディングを迎えた後、マグ・メルという新しい国を冒険できるのも、プレイヤーに対する驚きのポイントにしたかったんです。
――新しい国が増えて驚いたのを覚えています。生島さんは、キャラクターのデザインに関して、いまだから話せるネタはありますか?
生島そうですね……。キャラクターに関するネタバレではありませんが、4人のメインキャラクターの中で、最初にデザインを考えたのはグローリアでした。ハードがニンテンドー3DSからNintendo Switchになり、表現できることが格段に増えたので、どこまでできるのか、グローリアを検証の材料にしたんです。というのも、彼女の衣装は布の質感や刺繍など、細部まで検証するのにピッタリだったので。グローリアのデザインでは、アニエスとの対比を強調したくて、当初は黒っぽいドレスにしていたのも思い出深いですね。黒いドレスに金髪が映えたのも好印象だったのですが、すぐに決めずに、10色ほどドレスのデザインを考えて、色とりどりの衣装をまとったグローリアが並んだ時期もありました。
――最終的に、グローリアのドレスが白色になった決め手は?
生島やはり清楚なお姫様にしようということで、アニエスとは違う雰囲気の白いドレスにすることになりました。離れて見たときはシンプルなモノトーンのかっこよさを、近くで見たときはリッチな雰囲気を表現できたのではと思っています。あと、シールドマスターには、手が回りきらなくて実現できなかったアイデアがあって。
――どんなアイデアだったのですか?
生島じつは、シールドマスターの衣装は可変するものにしたかったんですよ。シールドマスターの鎧は、城門を意識したデザインにしていたのですが、背中側から城壁を展開して味方を守るという可変構造を考えていました。時間が足りなくていまのデザインに落ち着いたのですが、結果、手にした門だけで仲間を守る姿は、シールドマスターのまっすぐさが出ていて、結果的によかったのかなと思いました。ところでシールドマスターと言えば、ガラハードの妹のグラディスには死んでほしくなかったですね。彼女も好きなキャラクターだったので。
――ソードマスターのアスタリスク所持者ですね。ただ、グラディスの死は因果応報と言いますか、避けられなかったところはあると感じました。
高橋僕としても簡単に死なせたくはなかったので、グラディスが生き残るシナリオを何通りも考えてみました。でも、何度やっても彼女が生存するルートはどうしてもピンとこなくて……。これまでの行動を考えると、「その後はマルファと仲よく暮らしました。めでたしめでたし」にはできなくて、泣く泣く最期を遂げることになりました。
――ほかに、シナリオが大きく変わる可能性があったエピソードがほかにもあれば教えてください。
高橋2章では、最初はアモナの幽霊がパーティーの同行者になる予定でした。ですが、幽霊を仲間にするのはファンタジーに寄りすぎてしまいますし、主人公たちにはアモナが見えているのに、実の両親に見えない理由を考えるのが難しくて。幽霊として誰かに接触できるなら、より絆の深い両親に直接訴えかけようとしますよね。辻褄を合わせると別のところで無理が生じそうだったので、その案はナシになりました。
『ブレイブリー』シリーズはこれからも続けていく
――ここまでは『BDII』についてうかがってきましたが、今後のシリーズ作品で、チャレンジしてみたいことなどもお聞きしたいです。
生島先ほど話題に上がったソードマスターは、本作では剣闘士っぽいデザインにしています。これまでの作品では和風のデザインだったのですが、本作には和の雰囲気の国が登場しなかったので、デザインを変えたという経緯があって。ただ、僕は和モノも好きなので、次回作のジョブには取り入れてみたいですね。侍や忍者、踊り子のほかに、飛脚ってジョブがあってもいいかもしれません。
高橋“飛脚“という言葉は、海外の人に伝わるのかな?
生島ポストマンと翻訳すれば、わかってもらえるかも?
高橋飛脚が実現するかどうかはわかりませんが(笑)、本作の世界観を考えるときに、アジアっぽい世界観でやってみたいというアイデアもありました。王道なRPGから外れてしまうので、この案はボツになりましたが、過去の作品には和風の場所も登場しているので、和風の国とジョブを登場させるのはいいかもしれませんね。
――これまでにない方向性のジョブになるかもしれませんね。では最後に、『ブレイブリー』シリーズに関してファンの方から寄せられた、「こんなことやってほしい!」、「こんなグッズを作ってほしい!」といった要望について、ひと言いただけますでしょうか。多い意見としては、据え置き機で新作や続編を望む声や、本作のダウンロードコンテンツを希望する声が目立っていました。
浅野おかげさまで『BDII』は皆さまより評価をいただけましたので、シリーズを続けねばと考えていますし、また続けられると手応えを感じています。ただ、次作はまだまだ企画段階ですし、開発するにしてもまた3、4年はかかると思うので、気長にお待ちいただけるとうれしいですね。
――キャラクターのぬいぐるみやミニゲームのB&Dのグッズ化など、いろいろなアイテムを希望する声も多く寄せられました。
高橋B&Dを担当したスタッフは、「ミニゲームを任せてほしい」といって合流してくれたほど熱意のあるスタッフだったので、グッズ化を望む声をいただいて喜んでいると思います。そして来年は『ブレイブリー』シリーズが10周年を迎えます。僕たちもグッズ制作チームに猛アピールをしているところですが、皆さんからいただいたコメントも参考にしながら、いろいろご期待に沿えるよう、がんばります。多くの方に挙げていただいているコンサートも「やりたいな……」とは話しているので、コロナが落ち着いたら、前向きに検討したいです。
――『ブレイブリー』シリーズの10周年を楽しみにしています!
浅野ありがとうございます。先日、クローズドβテストを実施した『ブレイブリーデフォルト ブリリアントライツ』は、浅野チームが直接開発しているわけではありませんが、高橋が担当チームとコミュニケーションを密に取って開発を進めています。『BDII』の開発が難航したときに、『ブリリアントライツ』の開発チームに助けてもらったこともあり、協力体制はしっかりしていますので。『ブレイブリーデフォルト』や『ブレイブリーセカンド』のキャラクターのことが気になっている方の期待にも応えられるタイトルだと思いますので、配信後はこちらをプレイしながら、『ブレイブリー』シリーズのつぎの展開を待っていただけるとうれしいです。
生島2022年には、浅野チーム新作『トライアングルストラテジー』の発売も予定されています。僕はデザインを担当していますが、大河ドラマのような壮大な展開が期待できるゲームになると手応えを感じています。チームで取り組むことで、より完成度の高いビジュアルをお届けすることができると思いますので、『トライアングルストラテジー』にもぜひご期待ください。
高橋『BDII』を遊び尽くしていただいたうえ、アンケートに答えていただき、皆さん本当にありがとうございました。よかった点、悪かった点、真摯に受け止めて、またつぎの作品へつなげていきます。9月3日にSteam版も配信しましたので、今回の記事で興味を持った方も、ぜひ遊んでみてもらえるとうれしいです。また、浅野チームでは現在、複数のタイトルの開発を並行して進めています。残念ながらまだ勝手に詳細を発表することはできませんが、来年以降にどんどん公開できる予定なので、楽しみにしていただければと思います。