2021年9月9日に発売された、プレイステーション4、Nintendo Switch、PC(Epic Games Store)用ソフト『ソニックカラーズ アルティメット』。同作は、2010年に発売された『ソニックカラーズ』をリファインしたタイトルで、キャラクターやステージなどが高画質になっているほか、BGMもリミックスされた楽曲を新規収録。ソニック生誕30周年を記念した充実のタイトルになっている。

 本記事では、同作を手掛けたセガの豊田栄太郎氏のインタビューをお届け。本作の魅力や開発秘話のほか、前日譚を描いたショートアニメ、ファンに人気のコンテンツ“SONIC PICT”、“かべがみカバーストーリー”などについても話を聞いている。

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豊田栄太郎氏(とよだ えいたろう)

ゲームプランナー
ソニック監修・ストーリー担当

ゴキゲンなコースを一瞬で駆け抜ける贅沢な快感

――まずは、『ソニック』シリーズのゲームプランナー/ソニック監修・ストーリー担当として、いつも心掛けていることを教えてください。

豊田私は『ソニック』シリーズにおいて、キャラクターや世界が適切で魅力的に描かれるためのもろもろを調整しています。開発チームから受け取った設定やストーリーのプロット、脚本や台本についての監修がおもなお仕事で、複数のソニック関連のプロジェクトに同時に携わっています。設定や世界観は、『ソニック』らしいカッコよさやおもしろさがブレないようにするため重要なものですが、それを守りだけには使わないように心掛けています。基本的には開発チームの制作意図を優先しつつ、それが『ソニック』らしく表現されるように演出やシチュエーションを提案するなど、攻めの姿勢での監修を行っています。

――豊田さんが考える『ソニックカラーズ』の魅力とは? また『ソニックカラーズ アルティメット』において、その魅力をさらに膨らませるべく、どのようなことに取り組みましたか?

豊田“ソニックxウィスプ”のカッコよさです。まずソニックが、私たち人間には行けないようなすごい場所を、あり得ない走りでカッコよく走ってくれる存在なわけですよね。だからこそ自分は『ソニック』のゲームが好きなんですが、ウィスプはそのソニックに新しい可能性を授けてくれます。地面を掘り進んだり空を飛んだり。いままで以上にすごい場所で、あり得ない走りを見せてくれる”ソニックxウィスプ”の活躍が本作の魅力だと思います。

『ソニックカラーズ アルティメット』インタビュー。いままで以上にスゴい場所で走り回るソニックxウィスプのカッコよさが見どころ

――リマスター化にあたって追加された新要素の見どころを教えていただけますか。

豊田やはり美しくリマスターされたすべてのステージですね! 『ソニック』は、その走る舞台と合わせて初めて”ソニック・ザ・ヘッジホッグ”になるのだと思います。美しく魅力的な世界を一瞬で駆け抜ける、この贅沢な快感が、今回のリマスター版ではグッと増していると思います。スタートしてすぐの”トロピカルリゾート”のAct1で早速味わえますので、ぜひプレイしていただきたいです。それとリミックスされたBGMは聴きどころ満載ですね。このアレンジがまたゲームの劇伴としても本当にカッコよくて、原曲を知っている自分も「そう来たか!」と思いながらついプレイに身が入ってしまうほどです。こちらも楽しんでいただきたいです。

『ソニックカラーズ アルティメット』インタビュー。いままで以上にスゴい場所で走り回るソニックxウィスプのカッコよさが見どころ

――ショートアニメ“Sonic Colors Rise of the Wisps”を制作した意図を教えてください。

豊田『ソニックカラーズ アルティメット』の前日譚的な話にも触れつつ、序盤の裏側でウィスプたちとソニックがどう友好を深めていったのか……という流れの部分を掘り下げて、このゲームをプレイいただく皆さんに、この世界をもっと楽しんでいただくためです。ウィスプたちが生きた存在で気のいい奴らであること、この新しい友達のウィスプたちを助けるためにソニックとテイルスは冒険のギアを上げたのだと、このアニメを見た方にお伝えできればうれしいです。もちろん、本作で追加要素として登場する、メタルソニックというクールな敵役をカッコよくご紹介したかったというのもあります!

――“Sonic Colors Rise of the Wisps”でストーリーや、ソニックたちの動き、演出についてこだわったところは? また、豊田さんお気に入りのシーンがあれば教えてください。

豊田『ソニックカラーズ』本編ではストーリー監修の立場ではなかったのですが、このアニメでは日本語脚本を預けてもらえたので、英語原文から逸脱しない範囲で結構攻めて、キャラクター演出に台詞を乗せました。劇中でソニックも言ってますが「そのまま翻訳したっておもしろくない」ですからね。お気に入りのシーンは、自分の話をちょっと盛ったジェイドウィスプに対して、ソニックが「イイねぇ」と言うシーンです。英語では違ったセリフを言っているんですが、ライターの「ソニックが粋な感じでジェイドに軽くツッコむ」という意図を日本語で展開した「意図訳」としておもしろく書けたのではと思います。英語圏で日本語を解する人からも、ここを気に入ってくれた反応を多くいただけていて、うれしく思っています。

ゲーム以外の場でも、ソニックたちの魅力を伝えるために

――豊田さんはソニックチャンネルで展開中の“かべがみカバーストーリー”の執筆を担当されているそうですが、これらの企画が立ち上がった経緯について教えていただけますか?

豊田しっかりとしたストーリーのある『ソニック』のゲームは、どうしても世に出るまでに1~2年がかかってしまいます。そして、主人公がソニックであることから、やっぱりどうしても登場キャラクターは彼らと、それに近いキャラクターがメインになりがちです。ソニックの世界にはたくさんの魅力あるキャラクターがいるのに、それを長い期間お待たせしたうえに、すべては活躍させられない……というわけで、私はずっと残念に思っていました。それで、ソニックのポータルサイト”ソニックチャンネル”で続けている、毎月更新の壁紙とカレンダーイラストの配信企画に合わせて毎月、キャラクターのエピソードを書こうということになり、“かべがみカバーストーリー”は始まりました。イラスト企画自体が「2021年は2キャラ構成でいこう」という話になっていたので、それであればストーリーも「ソニックとOO」と一貫したシリーズものでおもしろく書けそうだなと。そういう流れでした。ふつう、こういう企画の原稿チェックはキャラクターや世界観の監修がとても大変なのですが、監修する人間本人が書けばその部分は問題ありません。ソニックシリーズ総合プロデューサーの飯塚隆と、星野(※)との連携をとりつつ、のびのびと毎月書かせてもらっています。

※星野一幸氏……『ソニック』クリエイティブディレクター。メタルソニックやシャドウの生みの親。

かべがみカバーストーリー - ソニックチャンネル

――“かべがみカバーストーリー”のソニックとその仲間たちの関係性を描くうえで、こだわったポイントなどありましたら、教えてください。

豊田「ソニックと○○」ということで、その○○というのが「ソニックにとってどういう存在なのか」の構成で描くように心掛けています。それによって、その逆も浮き彫りにできるようにも努力していますが、うまくいっていれば幸いです。「だからこいつはいいやつなんだ」というプレゼンの気持ちでも書いていますので、これを読んだ人がそのキャラクターを好きになってもらえるよう、そのきっかけとなれる良きエピソードを描ければと心を砕いています。

――ショートアニメ“Rise of the Wisps”のような形で、“かべがみカバーストーリー”をアニメ化する予定などはありますか?

豊田そういった話はまだないのですが、ぜひやりたいですね。書きながらも頭の中では登場人物全員が、彼らの声でしゃべっていますので、それを声付き映像にしたい気持ちはすごくあります。実現に向けましてよりご期待をいただけますよう頑張ります!

『ソニックカラーズ アルティメット』インタビュー。いままで以上にスゴい場所で走り回るソニックxウィスプのカッコよさが見どころ

―― 豊田さんはTwitterで展開している“SONIC PICT”も担当されているそうですが、ここで取り上げる記念日やキャラクター、アートの方向性はどのように決めているのですか?

豊田カレンダーを見ながら記念日や行事をチェックして「ここに○○がいたら…?」と想像してネタ出しをしています。キャラクターは、知名度だけでなく広く取り上げることが目的ですが、なかなか難しくて毎回悩んでいます。基本的には、私から大まかなディレクションをして、そこからは星野、私、そして烏野(※)とでブレストして形を整えていきます。烏野がすごいスピードでラフを描いて「こんな感じですか?」とやってくれるので、本当に会話のキャッチボールで出来上がっていく感じですね。ここで迷走しないように最初のディレクション時に「やりたいこと、やるべきことはこれです」と明言して、ふわっとしたブレストにしないように気を付けています。じつは、アートブック(『ソニックカラーズ アルティメット』限定版特典)のおまけページで、そのブレストの一部始終を描いたコーナーがあるんです。ブレストは、リモートでのチャットで進めることが多いんですが、そのログをほぼ丸ごと転載してます。こちらもアートブックを読む際には、楽しんでいただきたいですね。

※烏野有以氏……『ソニック』デザイナー、アート監修担当

SONIC PICT
『ソニックカラーズ アルティメット』インタビュー。いままで以上にスゴい場所で走り回るソニックxウィスプのカッコよさが見どころ
クリスマスには、サイコキネシスでこっそりプレゼントを置こうとしているシルバーの絵日記イラストが。

――『ソニックカラーズ アルティメット』限定版には、“SONIC PICT”を収録したアートブック“Life in Sonic's World Vol.1”が同梱されていますが、この特典の制作にいたった経緯を教えてください。

豊田もともと”SONIC PICT”を本にしようという話はチームの中でもあって、どのタイミングでどういう出しかたをしようかと検討中だったんです。有難いことにTwitterでご好評をいただいてますし、我々としてもイラストシリーズを本というまとまった作品にしたい気持ちがずっとありました。その中で、私と星野が、ふたりとも『ソニックカラーズ アルティメット』に関わっていて、本作の特典でいいアイデアはないかという話になったときに……「これだ!」と。ソニックたちのカラフルな日常を描いた”SONIC PICT”は『ソニックカラーズ アルティメット』に彩りを加えるのにうってつけだと思ったんです。

――今後も“SONIC PICT”は更新していく予定でしょうか。

豊田はい。ブレストは楽しいですし、できるイラストは最高ですし、ソニックファンや動物キャラクター好きの皆さんにも喜んでいただけてますし、いいことづくめなので続けていきたいですね。ただ、カレンダーネタをだいぶ使ってしまってネタ出しが大変で……。来年はどういうアイデアでいこうかと検討中です。

――ずばり、豊田さんにとって『ソニック』はどんな存在ですか?

豊田 自分の憧れです。自分にはできないことを涼しげな顔でやってのけて、さらに先へいってしまう。自分も逆境のときにソニックのことを思い浮かべたりしますが、なかなか彼のようには上手くやれませんね……。

――最後に、『ソニックカラーズ アルティメット』を楽しみにしているユーザーにひと言お願いします。

豊田『ソニックカラーズ アルティメット』では、リマスターによってさらに美麗で大迫力となったステージを駆け抜ける、カッコいいソニックをたっぷりと堪能できます。また、新しいウィスプ”ジェイド”のトリッキーなアクションや、ソニックが身に着けているグローブやシューズのカスタマイズなど、アルティメット版ならではの楽しみも、きっと気に入ってもらえると思います。初めてソニックと遊ぶ方はもちろん、『ソニックカラーズ』をすでにプレイ済みの方も存分に楽しむことができると思いますので、ぜひ手に取って遊んでみてください!