2021年9月2日~3日の2日間にわたり開催された国内最大規模のインディーゲームの祭典“BitSummit THE 8th BIT (ビットサミット ザ エイト ビット)”。2日目となる9月3日には、サイゲームスの高木謙一郎氏とファミ通グループ代表の林克彦が対談したステージ番組が放送された。本記事ではその模様をお届け。

サイゲームスのチャレンジしてみたいこと、最新作『Project GAMM(ガム)』の開発状況は……

 2年ぶりにBit Summitの会場に運んだ高木氏。前回訪れたときもかなり楽しんでいたとのことで、今年のBit Summitの印象や雰囲気について聞かれると、「2年前に比べてゲームの方向性が変わってきている印象を受けました」と、会場を見ての感想を口にした。

 まずは、高木氏が設立したサイゲームス コンシューマー事業本部のお話に。「コンシューマー事業本部ではどういうことをしていくのか、Bit Summitやインディーゲームの関心はあるのか」を問われると、「発表しているのは大型タイトルが多いですが、僕ら自身もファミコンやプレイステーションで育ってきたメンバーが会社の中核にいることもあって、そういったゲームを作りたいです」とインディーゲームにも関心を向けているようで、「サイゲームスとしても、改めて従来のゲームにチャレンジしていこうという思いがありますし、発表していないタイトルを含めてさまざまな作品を開発しています」と話した。

 さらに、SteamなどでのPCタイトルの販売や、買い切り型のアプリゲームも開発するのかと聞かれると、「いまどきPCは絶対に欠かせないですし、いろいろなデバイスでおもしろいタイトルを積極的に出していきたい」と答え、「ひとり立ちできるような核となるIPを創出していくことを会社のミッションにしていて、変に制限されたモノづくりではないです」とコンシューマー事業本部とは言えど、家庭用ゲーム機向けだけにこだわるつもりはないことを説明した。

 林から「高木さんとしては、Bit Summitを、気になるタイトルがあったら声をかけ、逆にクリエイターたちから声をかけられる場にしたいということなんですね?」と問いかけられると、「ぜひ俺たちのゲームが最高なんだというのがあれば教えてほしいです!」と返答。このステージ番組を通じて、サイゲームスは作り手の熱量のこもったおもしろいタイトルを求めているということを知ってもらいたかったようだ。

 サイゲームスとしては、より多くの人に触れてもらえる可能性のあるジャンルと方向性は意識はするものの、ジャンルの制限はとくにないという。林から「サイゲームスが出したことのないジャンルを、小規模のインディーゲームをきっかけとしてやっていく可能性はあるのか?」と聞かれると「はい」と答え、「すごくおもしろいが売れ行き的にはきびしいといったタイトルでも、本当におもしろさが光る作品であったら、その先の可能性に向けてむしろやってみたいと思ってます。自分の経験のなかでも、それでつぶれた企画がありましたし、ゲーム業界のためにも掘り返していきたいです」と自身の思いを明かした。

サイゲームスの最新作『Project GAMM(ガム)』の開発状況などが語られた高木謙一郎氏のステージイベントをリポート【BitSummit THE 8th BIT】

 番組の途中では高木氏の代表作である『勇者30』の話題に。林から「どういったマインドで取り組んでいたか」を聞かれると、高木氏は「自分たちのゲームと呼べるものを作りたかったですし、けれども開発費や宣伝するにもお金がかかるという状況で、いかに多くの人が興味を持ってくれるように目立たせるかに注力し、取り組んでいました」と答え、自分たちでおもしろいものを多くの人に伝えるという意味では、インディースピリットを持っていたと語った。そのマインドはいまも変わらないという。

 林も、当時の高木氏はあの手、この手を使って目立とうとしていたという印象を持っていたそうだ。開発進行中の『Project GAMM(ガム)』では、「どのように目立たせたのか」と質問されると、「出せる情報が少ないなかで興味を引くには、絵の魅力が需要だと考えています。『Project GAMM(ガム)』においてもインパクトのあるイラストを作れました」とその仕上がりに満足しているようだった。

 また、高木氏はビジュアルの印象をかなり意識しているそうで、「『勇者30』シリーズを手掛けるにあたり、ゲームシステムだけで広く売っていくことの難しさを実感し、見た目のキャッチ―な分かりやすさ、広がりやすさを軽視したらいけないと思って手掛けたのが『閃乱カグラ』シリーズです」と語った。

サイゲームスの最新作『Project GAMM(ガム)』の開発状況などが語られた高木謙一郎氏のステージイベントをリポート【BitSummit THE 8th BIT】

 続いて、林が『Project GAMM(ガム)』の進行状況を聞くと、「順調には進んでます。まだまだお時間をいただくことにはなりますけど、しっかりとひとつひとつ作っている感じです」と答えた。

 また、コロナ禍において、ゲーム開発に影響があったかを聞かれると、高木氏は「テレワーク寄りでやってますが、2年くらい経って、いい意味で慣れてきた感じはあります」と回答。細かいニュアンスが伝わりづらいという問題はあるものの、企画の大事な話をするときは直接会って話し、方向性が決まっているようなミーティングはリモートで行うといった使い分けもできているという。また、日本の遠隔チームや海外のスタッフたちと気軽に繋いで話ができることにメリットを感じていると話した。

 つぎに「企画書に落とし込んでから、プロジェクトを始めるきっかけはどのようなものであるか」と林が質問。それに対して高木氏は、「直感もありますが、ひとつふたつのキャッチコピーから完成系が見えるものを意識してます。そこに一枚の絵があって、自分の中で消化しきれたときにプロジェクトを始めます」と語った。

 そして最後に、「サイゲームスはゲームを愛している会社ですし、僕自身も遊んだことがないような新しいコンテンツを作りたいので、興味を持ってくれる方がいればお声がけください。逆にいっしょにやらなくても、新しいゲームが出てくるのを楽しみにしているので、いっしょにがんばりましょう!」と若きクリエイターたちに激励のコメントを残し、番組は終了となった。

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※画面は配信番組をキャプチャーしたものです。