アート性の高いゲーム内の美麗な写真、スクリーンショットを撮影する“Virtual Photography”(バーチャルフォトグラフィー)というカルチャーが盛り上がりを見せている。フォトモードのあるゲームが中心となっているが、フォトモードがないゲームに関しては、PCでMODを導入し作品を作るユーザーもいるほどだ。
その熱量の源泉はどこにあるのかを知るべく、バーチャルフォトグラフィーの作品をつくり、自身のコミュニティ“VPCONTEXT”を運営するELI THE WALKERさんに話を伺った。
バーチャルフォトグラフィーにゲームの奥深さ、美しさを再発見する
Twitter、Instagramでハッシュタグ“#VirtualPhotography”を検索すると、現実と見紛うようなゲーム内で撮影された写真を見ることができる。ゲームのプレイ時とは異なる視点、角度でゲームを切り取った1枚に、遊んでいたゲームのさらなる奥深さや美しさ、そして新たな楽しさを再発見するきっかけにもなるだろう。
『Days Gone』Photo by ELI THE WALKER
『Assassin's Creed: Odyssey』Photo by KEMO.no.MIMI from VPCONTEXT
『Cyberpunk 2077』Photo by JUN from VPCONTEXT
日本国内では、まだそう多くは見られない動きだが、国外では数千人規模~大小さまざまなコミュニティが存在し、ゲームメーカーやメディアがフォトコンテストを主催している。SNSを中心としたユーザーアクションも徐々に広がっており、独自でフォトブックの発行、バーチャル空間で展示会を行う非常に熱量の高いクリエイターも登場した。
これほどまでにゲームユーザーを魅了するバーチャルフォトグラフィーとは一体どういったものなのか、最前線で活躍するバーチャルフォトグラファーであるELI THE WALKER(以下、ELI)さんにお話を聞いた。
ELI THE WALKER(イーライ ザ ウォーカー)
個人としてTwitterで活動するほか、自身のWebサイト、コミュニティ“VPCONTEXT”を運営。“The VP Awards”というバーチャルフォトグラフィー界隈で最大級のフォトコンテストでも審査員を務めた、第一線で活躍しているバーチャルフォトグラファー。
VPCONTEXT
ELI THE WALKERさん、KEMO.no.MIMIさん、JUNさんの3人で2020年8年に設立。独自でフォトブック、展示会、フォトコンテスト、YouTube配信などの活動を行っている。
アートとゲームを掛け合わせた新たなムーブメント
――ELIさんは、ふだんはどんなお仕事をされているのでしょうか?
ELIファッション関係の仕事、企画立案のディレクターに近い仕事をメディアの方たちとしています。ゲーム内で撮影を始めて、いまの仕事が活かせるようになったというか、実際のカメラや撮影の知識が、ゲーム内のフォトモードでの撮影とリンクしている部分がある、という感じです。
――バーチャルフォトグラファーとしては、活動されてどれぐらいなのでしょう。
ELIゲーム写真みたいなものを撮っていたのは、5年くらい前になるんですが、“バーチャルフォトグラフィー”、“バーチャルフォトグラファー”という単語を知って、自分でそう名乗ったのは、2年くらい前のことですね。
ちょうど『Days Gone』が発売されてフォトモードで遊ぶようになったのがきっかけだと思います。それ以前は、ワンボタンでスクリーンショットを撮るだけだったんですが、『ホライゾン ゼロ・ドーン』、『アサシン クリード オデッセイ』などフォトモードがあって写真を撮影できるようなタイトルをプレイするようになったんです。
それから、ふと「自分と同じように撮影している人もいるのかな?」と思い、Twitterで調べていたところ、海外の想像できないくらいきれいな写真に驚いてしまって。さらに撮影された写真をどんどん掘っていくと、ハッシュタグ“#VirtualPhotography”を付けていたことに気づいて、言葉も検索して意味のわかるところまでたどり着いた、という経緯があります。
『Horizon Zero Dawn』Photo by KEMO.no.MIMI
――もともとフォトモードを楽しんでいたところにバーチャルフォトグラフィーと出会って、さらにゲーム内での撮影にのめり込んでいったんですね。
ELIスクリーンショットを撮ってTwitterに投稿することが好きだったんですが、そのときは撮影という概念はありませんでした。フォトモードをじっくり触ってみて、実際のカメラと同じことができるとわかって、本格的にゲーム内でも撮影できるんだな、という感覚になりました。
――撮影がファッションのお仕事とリンクしてハマった、と。ゲームの中でも現実と同じような撮影ができるのは、おもしろい体験だったのではないでしょうか?
ELIとくにオープンワールド系のゲームが好きだったんですが、ふつうにゲームをするだけじゃなく、マップの隅々まで撮れるようになったり、新しい発見ができたりすることがフォトモードにハマったきっかけになりました。
ふだんプレイしているだけでは見ない部分も、フォトモードがあることで目を向けられたりします。ゲームを作った方たちでさえ、見られるか見られないかわからなくてもこだわっているところまで発見できるのが、フォトモード、バーチャルフォトグラフィーの魅力のひとつだと思います。
――活動に対する原動力、モチベーションはどこから来るのでしょうか?
ELI自分が目立ちたいというよりは、いろいろな人と関わって盛り上げるのが好きなんですよね。ファッションだったら、ブランドの人気をどう上げていこうかと考えることに似ています。
先ほどお話しをしたように、スクリーンショットを撮ることは好きだったものの、自分の中ではゲームだけの目線だったのが、海外ではそれがカルチャーになっていて、まだ知らなかったひとつ上のステージがあったことに気づいて。
そこでは、“ゲーム×アート”という独創性のあるカルチャーができていました。自分の好きなファッションのようなクリエイティブなことと、ゲームがいっしょになっていたので、その方向に進んでみたいと思ったんです。
日本ではあまりない動きであっても、これから発展していく兆候は感じているので、それを広げていきたいという思いが一番の原動力ですね。
『Ghost of Tsushima』Photo by KEMO.no.MIMI
『Marvel's Spider-Man: Miles Morales』Photo by JUN
ゆっくりだが着実に拡大しつつあるカルチャー
――おもに海外のTwitterでは“#VirtualPhotography”のタグが拡散されています。ゲームを知らない人でも写真を楽しめるのではないのかな、と思いました。
ELIゲームはゲームだけど、実際の写真と同じ立ち位置になり得ますね。ゲームをしない人でも、ゲーム内の動物の写真を見て、すごいなと感じるくらいのクオリティーのものもあるので、現実の写真、アートとクロスオーバーするような文化であると思います。
『Assassin's Creed: Odyssey』Photo by KEMO.no.MIMI
――一方で、日本ではまだ馴染みのない言葉、文化だと感じています。
ELIこのインタビューのお話を聞いたときは、活動を始めたころには想像できなかったようなことでした。ここで僕がインタビューで語るというよりは、この記事が世の中に出たときに、バーチャルフォトグラフィーに接している方や楽しんでいる方が、日本でもこうした流れが来るんだと思ってもらえれば一番うれしいですね。
――ゲームメーカーの方にもバーチャルフォトグラフィーのお話をしたことはあるのですが、反応はそれぞれに違いました。やはり、これから流れが来る文化なのでしょうか。
ELI著作権の仕組みも国によって違いますし、正直なところ、活動していくうえではグレーな部分もあると感じています。ただ、メーカーの方々にもっと興味を持っていただいて、いっしょにできるようになると、さらに可能性は広がっていくと思いますね。
――ELIさんたちが運営されているコミュニティ“VPCONTEXT”では、無料でデジタルフォトブック、展示会もされていますね。
ELI日本のゲームだとスクリーンショットにコピーライトが入ったりしますが、掲載している作品の中には二次使用に当たるかどうかわからない部分もあって、ファンブックのようにして完全無料で公開しています。
海外では法律も違ってきますし、日本よりももう少し自由にファンブックや展示会をされているのかな、という印象はあります。それでも作り手の方々は、権利関係をしっかりと意識されていますね。
――仮に収益化できるとすれば、やりたいと思いますか?
ELIそうですね……。チャンスがあればやってみたいですが、収益を得たいと思って始めたことではありません。許諾が得られれば有料として考えていく方向性もあると思いますが、そこが目的ではないですね。
ただ、私だけでなく、バーチャルフォトグラフィーを撮影されている方からすると、個々の仕事に繋がったり、バーチャルフォトグラフィーそのものが仕事になるとすれば、夢があると感じてくれるのではないかとも思います。
――NFT(※)がより身近になって写真を販売できたりすると、ゲームメーカーの反応も変わるのではないでしょうか。
ELIバーチャルフォトグラファーの間でもNFTはよく議論されていますが、賛否両論あります。
そこを進めたいという人もいれば、ブロックチェーンのように証明はできるけど元の写真はゲームなので、ほかの人から盗用したものだったらどうするのか、著作権も含めて、まだまだ形になるのは遠いんじゃないかという人もいて、いろんな議論がされていますね。
ですので、みんなが可能性を感じているものは、すでに事例があるんですが、フォトモードをゲームに組み込むときのアドバイザリーとして開発を手伝うことです。あとは、メーカー主催のフォトコンテストがある際に、審査員として呼んでいただくといったお仕事をしたこともあります。
ほかにも、ゲーム音楽のアートワーク、サウンドトラックのジャケットにバーチャルフォトグラファーが撮影した写真が採用された前例もあります。
こういった事例など、メーカーさんといっしょにやる仕事に可能性があると思っていますし、希望している人は多いですね。
※NFT:Non-fungible Tokenの略称。ブロックチェーンの技術を用いて、デジタルデータなどに唯一無二であることの鑑定、所有の証明をすること、またはそれらに関連する技術を意味する。
『The Last of Us Part II』コンテスト ファイナリスト入賞作品 Photo by ELI THE WALKER
――将来的にスクリーンショットから新しい経済圏ができたり、ユーザーの声を取り入れてフォトモードを作るといった流れができるととてもいいですね。
ELI国外にはプロのバーチャルフォトグラファーもいますし、プロではないけどフォトモードの開発に携わってゲームのクレジットに名前が載るという事例もあります。
PS5が発売されてグラフィック性能も上がっているので、フォトモードをやっている人たち、コンソール(家庭用ゲーム機)をメインにしている人たちは、とくに喜んでいると思います。PS5で最近発売された『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』、『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』にもフォトモードが実装されていますし。
ただ、中にはあまりデキが良くなく、機能的に使いにくいものもあります。ですので、海外では、フォトモードのクオリティーを上げてほしいという理由から、ユーザーのリクエストとして「フォトモードの開発時にはバーチャルフォトグラファーに声をかけてほしい」と訴えている人もいますね。
――機能的に使いにくい、というのは具体的にどういうことでしょうか。
ELIシステムの制約があるのかもしれませんが、角度が一定以上変えられなかったり、ボカせなかったり、実際のカメラに備わっているはずの機能がないことですね。
――フォトモードが優秀なタイトルはありますか?
ELI企業とも仕事をしているバーチャルフォトグラフィーのコミュニティが、昨年(2020年)末に“The VP Awardsという世界的なフォトコンテストを開催しまして。自分たちも審査員として参加したんですが、その中にどのゲームがフォトモードのお手本になるか、ライティングならどれがいいかなどを、デベロッパーが投票する部門があったんですね。
そこで、お手本になるゲーム1位が『ホライゾン ゼロ・ドーン』で、2位は『スパイダーマン:マイルズ・モラレス』でした。基本的な機能が備わっているのはもちろん、『ホライゾン』は時間をコントロールして朝にしたり、夜にしたりできますし、『スパイダーマン:マイルズ・モラレス』ではライティングを変更できるので、このふたつが評価されていました。
でも、トップレベルで活躍しているバーチャルフォトグラファーたちは、そういった機能よりもカメラの自由度、制限のない動きができることを何よりも優先してほしいと言っています。遠くまでいけなかったり、人を中心に撮れないこともあるので、とにかく自由にカメラを動かせることが重要ですね。
『Horizon Zero Dawn』 Photo by KEMO.no.MIMI
『Marvel's Spider-Man: Miles Morales』Photo by JUN
――1位、2位どちらも、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から発売されているタイトルですね。
ELIバーチャルフォトグラフィー自体が、SIEさんとともに発展してきた側面があります。海外で先駆者とされているダンカン・ハリス氏は、2006年あたりにゲーム雑誌を作っていて、その当時は『グランツーリスモ4』やSIEさんのゲームにフォトモードがあったんですね。
そのころ、ハリス氏は自分が関わるゲーム雑誌に載っている写真に満足がいっていなかったようで、ゲームメーカーの人の中にも同様の不満を持っていた方がいたみたいなんです。当時からPCだとMODを使って写真を撮ったりできてもっといい写真が撮れる状況がありましたし、そこで同氏や同じ想いを持ったメーカーがいっしょに仕事をして、より美麗なゲームの写真を撮影したものを集めた自身のサイトも立ち上げました。
コミュニティが誕生していくと同時に、PS4などにShare機能が追加され、ゲームテクノロジーとSNSの発展、フォトモード搭載のゲームが増えたことで、いまのバーチャルフォトグラフィーの形になっていったんです。
『Cyberpunk 2077』Photo by JUN
――写真もゲームが魅力的に見える要素ですし、とてもきれいな写真があるだけでゲームがおもしろそうに感じることもありますよね。
ELIいまはネットがありますけど、僕らは雑誌とか、地元のおもちゃ屋さんのチラシ、ジャケットだけでおもしろいかどうかを判断していた世代です。だからこそ、余計に制限されたもの、その範囲でより良く表現することが好きなんだと思います。
一方で、もともとはMODから発展して、ゲームを分解することから生まれている流れでもあるので、アート的な側面としてはよくとも、パブリッシャーやデベロッパーからはどう思われているのかはわかりません。もちろん、ゲームに実装されているフォトモードはいいんですが……。
――確かに、フォトモードのカメラの自由度が高すぎたり、MODを導入すると、本来ユーザーが見えない場所まで見えてしまうこともありますし、メーカーとしての判断はとても微妙な線引きになってしまうのかと。
ELIゲームの側面からだと、フォトモードの自由が高すぎることで見られたくないものもあれば、ムービーシーンも止められてしまったりと、熱量をさえぎってしまうこともあります。でも、バーチャルフォトグラフィーは、ゲームよりもアートに寄っているので、フォトモードだけを用いることもあれば、デジタルアートにするためにMODやツールを使ったりして、ひとつの作品を完成させることも要素になっています。アート的には自由があった方がいいですから、難しいところではありますね。
ただ、前述の通り、フォトモードを実装するゲームはより増えていますし、写真とゲームは、切っても切れない要素になっていますね。
たとえば、『The Last of Us』、『アンチャーテッド』シリーズを作っているNaughty Dogさんは、近年の作品では必ずフォトモードを実装しているんです。ふつうであればならアクションやストーリーを楽しむのがメインと言えるタイプのゲームなのに、毎回フォトモードを実装しているというのは、マーケティングにもなるという実感をしているのではないかと。
プレイした人がスクリーンショットを投稿して、それを見た人がゲームを買うという流れは、いいマーケティング手法ですよね。もちろんマーケティングだけじゃなく、ゲーム自体の芸術性を強調してくれるので、そういった期待も込めてフォトモードが高機能になっていると考えています。
『Detroit: Become Human』Photo by ELI THE WALKER
――なるほど。ただ、バーチャルフォトグラファーとしてアート性の高い写真を撮るためには、実際のカメラと同じ機能が付いていることはもちろん、ゲームならではの行きたいところまでたどり着けるようにしてほしい―だからこそ、一部ユーザーから要望があったように、フォトモードの開発にバーチャルフォトグラファーが協力することで、開発側とユーザー側の理想のいいバランスを実現できる可能性があるというわけですね。ちなみに、このタイトルにフォトモードがあったらよかったなと思うものはありますか?
ELI『Detroit: Become Human』ですね。フォトモードがデフォルトでは実装されていないので、MODで撮影しています。グラフィックがすごく良くてフォトモードを付けてほしいという人が多かったですし、もしいま追加されたら、それをきっかけに買う人もいるのかなと思います。
これから発売されるゲームで言えば、『ホライゾン』の続編『ホライゾン Forbidden West』にはフォトモードがあると予想していますし、『エルデンリング』といったグラフィックが進化しているゲームには実装されてほしいです。同じくフロム・ソフトウェアだと、『SEKIRO』にはフォトモードがなかったんですが、MODで撮影した作品を開発の方々が評価されていた覚えがあります。
『Detroit: Become Human』Photo by ELI THE WALKER
――どちらのタイトルも美麗なグラフィックが堪能できそうですし、ぜひフォトモードがほしいところですね。
ELIただ、いわゆる“死にゲー”だったりすると、緊張感を止めてしまうのを開発側がどう考えるのか気になりますね。1周目をクリアーした後、追加コンテンツとして用意したりしてもいいと思います。
PS5のリメイク版『デモンズソウル』にはフォトモードがありましたが、リメイクだからこそ付けられたのかなと思いました。
楽しむことからアートに昇華することで認知拡大を狙っていく
――フォトモードがあるタイトルが増えれば、ユーザーのタッチポイントや楽しみかたも増えますし、バーチャルフォトグラフィーを知らなくても投稿をする人は増えるのではないでしょうか。
ELIゲームの写真、スクリーンショットを撮ること自体に楽しさを感じている人は確実に増えています。
ただ、アートは誰しもが通るところではないので、そこを意識するしないはあると思いますが、撮影を楽しむことからもっと良く撮りたいという動機に変わっていけば、いずれはバーチャルフォトグラフィーにたどり着くと思います。そういう流れを作りたいと考えていますし、まずは楽しんでもらうのも大事な要素です。
――先日、ファミ通.comで『モンスターハンターライズ』を題材にしたフォトコンテストを開催しまして、とてもこだわりのある写真を撮影してくださった方々もたくさんいらっしゃいました。こうしたところからアートの階段を上っていくのかなと思いました。
ELIプロとしてやっている方も最初はアマチュアでしたし、楽しむところからアートに昇華するきっかけとなる、コンテスト、記事などが増えていけばいいなと思います。一方で、あまりアートばかりに推し進めてしまうと、海外と日本ではアートに対する意識、文化が違ったりするので、日本は日本独自のやりかたをしないとな、とも考えていますね。
これは、eスポーツとも似ている部分があるのかなと思います。ゲームに“スポーツ”が付いているのはなぜか、と感じる人がいるのと同じく、国々でゲームに対しても、アートに対しても考えかたに違いがあるので、敷居を低くすること、間口を広げることが必要になります。
ですので、“VPCONTEXT”とは別で、“PLAY BY CONTEXT”というコミュニティを立ち上げました。ここでは、バーチャルフォトグラフィーとは言わずに、あえてゲーム写真ということでカジュアルな路線にしています。
PLAY BY CONTEXTからのメッセージ(VPCONTEXTサイトより)
――PLAY BY CONTEXTを立ち上げ、バーチャルフォトグラフィーと別視点から見てもゲーム写真を撮るユーザーは増えていますか?
ELI増えていますね。
とくに小島監督(小島秀夫氏)はファンが多く、影響力があります。『デス・ストランディング』にフォトモードが追加されて、それをきっかけにTwitterで繋がった人もいますし、日本でもフォトモードで遊ぶ人が増えたと思います。
いまでは、いろいろなところからPLAY BY CONTEXTに参加してくれる人が多くいます。まだまだ少ないかもしれませんが、写真を撮るユーザーは増えていると感じます。
――ちなみに、バーチャルフォトグラフィーを楽しむユーザー、コミュニティの規模はどれぐらいなのでしょうか?
ELITwitter、Instagramがメインの活動の場になっています。海外のコミュニティでは、大きなところだと4000人くらいの規模感ですが、すべての人がバーチャルフォトグラファーではなく、見るのが好きな人、ゲーマーの人も含んでいます。
VPCONTEXTは約1000人くらいの規模ですが、英語を用いていることもあって、日本のユーザーは1割程度だと思います。
『DEATH STRANDING』Photo by ELI THE WALKER
――日本国内ではまだまだ知名度は低いものの、これから大きな流れになることを感じていらっしゃるんですね。
ELIバーチャルフォトグラフィーの流れが来る、ということは確信しています。
海外では、今年(2021年)2月~5月にかけて、RedbullがSIEと組んでフォトコンテストを開催していました。
開発の目線だと、長く遊んでもらいたいという気持ちがあると思います。フォトモードがあることで、ひとつのゲームを何周もして遊ぶ期間がより長くなりますし、結果的にゲームにとって非常にいい作用をもたらすのではないかと。『ホライゾン ゼロ・ドーン』も3年前のゲームですが、いまでも撮影されている方は多いですし、何年も遊び続けられるというのは、フォトモードがいい機能を果たしていると思いますね。
――ダウンロードコンテンツで新しい衣装が登場したりすると、それが撮影のモチベーションになったりしそうですね。
ELIまさしくそうで、プロのバーチャルフォトグラファーは、キャラクターのカスタマイズの多さを望んでいます。被写体をカスタマイズできることで、撮影の幅も広がってフォトモードもよくなると言っていますね。
『DEATH STRANDING』Photo by ELI THE WALKER
――これまでのバーチャルフォトグラフィーの活動を通じて、メーカーとのコミュニケーションをされたことはあるのでしょうか?
ELI『ホライゾン ゼロ・ドーン』のGuerrilla Games、『Days Gone』のBend Studioには、バーチャルフォトグラフィーに理解のある開発者が多く、コミュニケーションも取っていて、VPCONTEXTで展示会をやったときも、「見たよ」と声をかけてくれました。国内では、“コジマプロダクション”がコミュニケーションを頻繁にしてくれています。
『デス・ストランディング』の写真を上げていたんですが、途中からはMODを使ったりしていたので、どう思われるのか心配でした(笑)。よくTwitterでユーザーの投稿をリツイートされていたりしますし、ここで見られて、何か言われたらどうしようと。でも、コジマプロダクションは、ユーザーの投稿に一定の評価をされているのかな? とは感じています。
海外のエレクトロニック・アーツ、ユービーアイソフトは、バーチャルフォトグラフィーに関連するような発言をされていました。ですので、日本のゲームメーカーがどう思っているのか気になりますね。著作権の問題があるので難しいですが、メーカーの方と接する機会が増えていけば、バーチャルフォトグラフィーの展望も明るくなると思います。
――確かにそこは気になりますね。また、バーチャルフォトグラフィーの界隈が今後どんな展開をしていくのかも気になります。
ELIバーチャルフォトグラフィーそのものの記事はよく見かけるんですが、実際に活動している人の声が載ってなかったりするので、今回のインタビューはうれしかったです。個人的には、この記事が開発の方の目に留まって、これをきっかけにバーチャルフォトグラファーの考えを知ってくれるといいな、とも思っています。
そこから、何かいっしょに取り組みやお話ができる機会に発展してくれることも願っています。
――我々も『モンスターハンターライズ』のフォトコンテストを開催していますし、バーチャルフォトグラフィーなど、ゲームのスクリーンショットを使った楽しみかたが増えるといいですね。
ELI日本でバーチャルフォトグラフィーが発展していくことを一番に願っていますので、こうしてお話ができることも増えていくといいなぁと思います。
『Assassin's Creed: Valhalla』Photo by ELI THE WALKER
バーチャルフォトグラフィーの可能性
- フォトモードは、ゲームの可能性を広げ、奥深さや美しさを知る機会になる
- 海外を中心にTwitter、Instagramでユーザー間の文化になっている
- すでに大小さまざまなコミュニティが形成され、プロとして活動している人もいる
- “アートとゲーム”という組み合わせが今後大きなムーブメントになる
今回のインタビューでELI THE WALKERさんからお聞きしたものをまとめると、上記のようになる。こうしたバーチャルフォトグラフィーは、ふだんとは違った角度でゲームを捉えられるだけでなく、1シーンに込められているゲームクリエイターの思い、こだわりを再発見し、幅広いユーザーに届ける可能性を生むのではないだろうか。
インタビューの合間に掲載したバーチャルフォトグラフィーを見れば感じてもらえるように、芸術性が高く、まさしく“アート×ゲーム”といった新しい文化として、今後大きなユーザームーブメントになる動きを感じ取ることができる。
ファミ通.comでは今回のインタビューに留まらず、バーチャルフォトグラフィー界の動きを追いかけていきたい。
最後に、今回インタビューしたELI THE WALKERさんをはじめ、VPCONTEXTのメンバーであるKEMO.no.MIMIさん、JUNさんからお借りしたバーチャルフォトグラフィーの作品を掲載する。ゲームの新たな魅力のひとつとして、ぜひじっくり堪能してほしい。
フォトギャラリー
『Assassin's Creed: Valhalla』
『Horizon Zero Dawn』フォトコンテスト ファイナリスト入賞作品
『Star Wars Jedi: Fallen Order』