ユービーアイソフトの元スタッフが中心となって立ち上げた新たなスタジオSharkmobの第一作目に当たる新作、『Vampire:The Masquerade Bloodhunt』(以下、『Bloodhunt』)の情報がいよいよ明らかになった。
『Bloodhunt』は、『ワールド・オブ・ダークネス』シリーズのテーブルトークRPG『Vampire:The Masquerade』の世界観を題材としたタイトル。
ゲームジャンルはTPSのバトルロイヤルとなっており、プラハの街を舞台にヴァンパイアたちが激戦をくり広げることになる。
今回、配信に先駆けてプレアルファ版の先行体験会に参加することができたので、本記事にて詳しいゲーム内容を紹介していこう。あわせて、体験会後に実施した開発陣へのインタビュー内容もお届けしていく。
縦横無尽に街を駆け巡る自由度の高いバトロワ
本作は、3人チームとソロ、どちらかのモードでプレイすることができるバトロワ。どちらも基本的なルールは同じで、遭遇したほかのプレイヤーを倒し、最後まで生き残れば勝利となる。
バトル時は、6体からひとりを選択して操作していく。キャラによって使用できるアビリティは、恒常的に発動するパッシブアビリティに違いがあり、これが戦術にもつながってくる。ちなみに、3人チームの場合は同キャラ選択は不可だ。
戦場の舞台になるのは、プラハの街。どの位置に出現するかは自由に決めることができ、周辺に降りたほかのチームの位置をある程度把握することも可能だ。バトロワ系ではおなじみの飛行機からの降下をする必要はなく、最初から地上に降りた状態でバトルがスタートする。
いざ戦闘がスタートしたら、まずは街の各所に配置されている武器や回復アイテムを集めていく。武器は銃器をふたつ、近接武器をひとつで、合計3つまで所持することが可能。武器にはティア(ランク)があり、ハイティアの物になると性能がアップする定番の方式だ。
本作の特徴的な要素のひとつとして、戦場になる街ではふつうの人間(NPC)が生活している。
銃声が聞こえれば逃げ惑い、悲鳴を上げて立ち去る人間たちだが、ヴァンパイアであるプレイヤーにとって彼らは非常に重要な存在。人間から血を吸うことで体力を回復できるほか、特別な血を持つ人間から吸血すれば、アビリティの性能などを上げることができるのだ。
武器などを集めつつ、良質な血を持つ人間がいたら吸血する。それが本作における、序盤の立ち回りかたになるだろう。
本作で何より魅力に感じたのは、そのアクション性の高さだ。
ヴァンパイアであるプレイヤーの機動力は非常に高く、どれだけ高い壁であっても簡単に登れるようになっている。ダッシュやジャンプ、ウォールランがハイスピードで快適に動けるため、街を縦横無尽に駆け巡りながら戦えるのが非常におもしろい。
地上はもちろん、配置されている建物の上もすべて活用できるので、戦場が立体的に広がっており多彩な戦術で戦えるのもポイント。屋根上に潜んで漁夫の利を狙ったり、上空から強襲するなど、機動力を活かして好きなように戦える。
多くのバトロワでは緊急時のサブウェポンという立ち位置にある近接武器も、本作に限っては銃を凌ぐ強さを誇っている。
ハイジャンプや姿を消しての高速移動、前方に銃弾を防ぐ衝撃波を放つなど、使用できるアビリティと組み合わせると近接武器でも十分に戦えるのだ。近接武器の威力自体も高く、とくに3人チームでの戦闘時はひとりが背後から強襲して接近戦に持ち込む戦術が大活躍した。
また、敵に倒されてダウンした後の行動も珍しい仕組みになっている。
本作の場合、一般的なバトロワとは異なり、ダウンした後にしばらく倒されずにいると、そのまま自己蘇生ができるのだ。この再生力はさすがヴァンパイアと言ったところだろうか。
倒された後も、まだまだ復活のチャンスが残っているので、最後の最後まで諦めずに戦えるのが嬉しいポイント。運よく蘇生できたら、回復アイテムを使用するか、近くにいる人間から血をもらえばすぐに戦場に戻ることが可能だ。
自己蘇生や吸血でHPが回復する仕組みは、活発に戦闘が起こるいい要素になっていると感じる。回復不足に陥り、隠れて逃げ延びるという場面がなくなるので、最初から最後までガンガン戦いたい人にはとくにありがたいシステムだ。
バトルが活発に起きる仕組みとして、街に配備されたエンティティの存在も見逃せない。
マップでも最初から表示されているエンティティは、街の特定ポイントを警備している武装集団。発見次第こちらを撃ってくる非常に強力な敵NPCなのだが、エンティティの周辺にはハイティアの装備が多く配置されている。
エンティティと序盤に戦うのはきびしいが、後半になればエリアが狭まりほかのプレイヤーが密集する危険性も増えていく。どのタイミングで攻撃を仕掛け、装備を奪取するのか。リスクは高いがそれに見合った装備が手に入るので、何とかして入手を狙いたいところだ。
もちろん、ほかのプレイヤーが交戦中にこっそり装備だけいただいたり、エンティティを倒したところで漁夫狙いに行くなど、作戦を練っておいしい部分だけいただくというのも戦略のひとつになる。
アクション性の高さ、戦闘が活発に起きる仕組みなど、戦闘を重視したバトロワのおもしろさが満載の『Bloodhunt』。
操作性も快適で、何度戦闘をしてもストレスなく楽しめる非常に作り込まれたタイトルになっていた。燃え盛る教会、ネオン煌めく裏路地など、プラハの街も非常に美しく、ビジュアル面のクオリティや雰囲気もバッチリ。
バトロワ好きはもちろん、アクションゲームやTPSが好きな人も間違いなく楽しめる一作になるだろう。
配信時期やプラットフォームなど気になる情報を開発陣にインタビュー
ここからは、先行体験後に実施したインタビュー内容をお届けしていこう。
インタビューに応じてくれたのは、SharkmobのCEOやプロデューサーを務める4名。本作が開発された経緯や、バトロワゲームとしてこだわったポイントなどについて詳しく聞かせてくれた。
■Fredrik Rundqvist氏(フレデリック・ルンドクヴィスト)
Sharkmob CEO Fredrik Rundqvist
(文中はフレデリック)
■Martin Hultberg(マーティン・フルトバーグ)
Sharkmob IP・コミュニケーション・ディレクター
(文中はマーティン)
■David Sirland氏(デイビッド・サーランド)
Sharkmob プロデューサー
(文中はデイビッド)
■Craig Hubbard氏(クレイグ・ハバート)
Sharkmob ゲーム・ディレクター
(文中はクレイグ)
――まずは、日本のゲームファンにSharkmobさんがどのような会社なのか、教えてください。会社の方針は?
フレデリックSharkmobは新しいゲーム会社で、4年前にスタートしたばかりです。我々は最初から何がやりたいのか、その明確なアイデアを持っていました。それはハードコア・ゲームをAAAクオリティにすることです。
――Sharkmobを設立する以前は、皆さんは何をしていたのですか?
フレデリック私はユービーアイソフトで仕事をしていて、最後の肩書きは『ディビジョン』のエクゼキュティブ・プロデューサーです。この会社は『ディビジョン』のコアチームの一部によって創立されたと言えます。ゲーム・ディレクター、IPディレクター、テクニカル・ディレクター、アート・ディレクターは全員『ディビジョン』のプロジェクトに関わっていました。
もちろん、その後多くの人を雇用し、現在社員は200人います。『Blood Hunt』のチームを率いるデイビッドとクレイグは異なるバックグラウンドを持っています。デイビッドはエレクトロニック・アーツで『バトルフィールド』の仕事を長くやっていましたし、クレイグも20年ほどほかのスタジオにいました。
クレイグ私はシアトルのMonolith Productionsで『F.E.A.R』や、『No One Lives Forever』などのタイトルを担当していました。
――名だたるタイトルに携わってきたスタッフが多いですね、ゲームのクオリティーにも納得がいきました。さて、今回『Bloodhunt』を開発するにいたった経緯についてもお聞かせください。
マーティン『ディビジョン』を離れた5人で会社を立ち上げ、独自のIPを開発したいと思いつつも、最初のゲームはIPにしようと決めました。興味のあるライセンスを色々検討し、新たな命を吹き込み、何か新しいものを作り出すことはできないかと。そして『Vampire:The Masquerade』(Paradox)と話をしたところ、私たちと同じようにアクション志向のゲームを求めていることがわかり、開発を決めました。
――このIPのどんなところに可能性を感じたのですか?
フレデリック私たちは1990年代からこのIPのファンで、本を読んだり、テーブルトークRPGをプレイしていたことが大きいです。このIPは大きな可能性があるにもかかわらず10~15年ほど、大きなプロダクトは開発されていませんでした。『ディビジョン』と似た形で、ビジュアルやストーリーテリング、ゲームメカニックスをモダンにして新しいユーザーに届けることで、IPのよさを理解してもらえるのではないかと思ったんです。
――ジャンルをバトロワにするというのは、最初から決めていたのですか?
フレデリックそのアイデアはすぐに出てきましたね。ヴァンパイアは夜間しか外出できないので、自然なセッションのサイクルができると思いました。『Vampire:The Masquerade』では多くのRPGが作られてきましたが、アクションゲームとしての新しい側面が必要だと考えていたのも理由のひとつです。
――せっかくの機会なので、『Blood Hunt』がどのようなゲームなのかを、改めてご紹介ください。
クレイグ完全に自由なムーブメントをベースとしたバトロワで、アビリティを使って簡単に障害物を乗り越えることが可能です。プレイヤーは多彩なアビリティを持つヴァンパイアを選び、近距離・遠距離武器を使って戦えます。
――配信時期やプラットフォームなどは?
デイビッド発売時期は2021年後半、FtoPモデルのタイトルになります。プラットフォームは最初はSteamでの配信となり、そのほかは検討中です。
――最大プレイ人数は45人とのことですね。
クレイグそのとおりです。テストをくり返して、45人が最適な人数だということで現在は45人に落ち着いています。
――45人が最適だと導き出されたのですね? それはマップのサイズからですか?
クレイグマップのサイズもそうですが、本作は建物の上を移動するため障害物がなく、銃声が聞こえたらすぐにでも駆けつけられます。プレイヤーが多すぎると、つねに新たな敵が登場してずっと戦うことになってしまうんですね。40人でもよかったのですが、3人部隊を組むことも考慮して45人に落ち着きました。
――バトロワタイトルとして、もっとも注力したポイントはどこですか?
クレイグ何度もテストを重ねることで、本作はワールドを動き回ることがとても特別な側面であることがわかり、この点を大きくフォーカスしました。また、これは同時にチャレンジにもなったのです。自由に動き回れるため、敵がどこまでも攻撃してくるので、予測が難しくなりました。そこからより、アビリティベースのゲームになっていったので、この調整作業も必要でしたね。
――キャラクターのカスタマイズでは、どのようなところにこだわっていますか?
デイビッドアーリーアクセスのタイミングでは、ヴァンパイアの雰囲気を重視したテーマにしました。今回プレイしていただいたバージョンでは限定されていましたが、さまざまな衣装を用意しています。
――プラハの街を再現するにあたり、こだわったポイントを教えてください。
マーティンひとつは、プラハの街にいる感覚や街のエッセンスを取り入れることでした。プラハは世界的によく知られた都市です。新旧ヨーロッパの興味深いスタイルを持ち、大広場、カテドラル、天文時計などアイコニックなロケーションがあります。このようなツーリストスポットをマップに入れることを重視しました。マップサイズが限られていますが、よりプラハの街を感じてもらえるものを配置しています。
クレイグゲームプレイの面では、夜の都市であり、屋根の上にいることが多いので迷いやすくなります。そこで、自分が街のどこにいるのか、どこへ行きたいのかを確認できるような工夫をしました。閉じ込められることなく、屋根から屋根へ楽しく、簡単に動き回れるのもポイントです。
――実際にプレイをした所感として、リコイル制御が簡単で、どの距離でも銃を当てやすい印象を受けました。上級者どうしで戦う場合、キャラの機動力を活かして当てにくくなることを想定しての精度でしょうか?
クレイグリコイル制御は、開発当初はいまよりずっと難しかったです。相手が飛び回ると弾が時間の経過で落ちてしまい、当てるのが難しく、初心者には難しすぎました。そこで、当てやすくするテストで調整をくり返して現状の精度にしています。現状は初心者から上級者までプレイしやすい環境になっていますが、これまらも調整は続ける予定です。
――今回はプレアルファ版でしたが、現状考えている変更点はありますか?
クレイグすでにいくつか変更しており、つぎのバージョンに入ります。武器などの変更をはじめ、まだ開発中なのでやりたいことはありますね。
デイビッド本作はつねにアップデートをしています。まずしっかり基本を作り、そこから改善を重ねていく予定です。プレイテストからのフィードバックには多くの情報が含まれていますので、それらの意見も反映していきたいですね。
――現状、武器のダメージがかなり高いと思うのですが、調整予定はありますか?
クレイグ武器ダメージについても、調整を試みています。敵を倒すのが難しくイライラしたこともありましたし、簡単すぎて不満なこともありました。現状はちょうどいいバランスが見つけられたと思っています。今後新しいモードやフィーチャーを加えていきますが、そこでは敵が倒しにくいバージョン、倒しやすいバージョンを使うことも可能ですので、プレイヤーの嗜好を探っていきます。
アクションゲームを作っていて気づきましたが、プレイヤーは自分が早く死にすぎる、敵を倒すのに時間がかかりすぎると感じることが多いので、最適なバランスを見つけるのは難しいですね。
――これは要望なのですが、チャンピオンを取ったときの演出がほしいです。現状だと、戦闘終了後にすぐ終わってしまい、勝利の喜びに浸る時間が少ないなと。
クレイグその通りだと思います。私たちもやりたいと思っていることのひとつでした。まだ検討段階ではありますが、勝利が特別だと感じてもらえるようなプランを練っています。
――使用できる6体のキャラの中で、特徴的なキャラ、おもしろい性能を持っているキャラはいますか?
クレイグプレイヤー次第ではありますが、私はPROWLERというコウモリを使って敵と戦えるキャラが好きですね。
デイビッドテレポートして相手の目を怯ませるセイレーンがお気に入りです。私の好きな近接武器も使いやすいキャラです。
――今回選べたのは6キャラでしたが、リリース時までに増やす予定はありますか?
クレイグリリース時には6キャラですが、将来的に増やしていく予定です。
――『Vampire:The Masquerade』のファンに注目してほしいポイントはありますか?
マーティンとてもいい質問ですね。このゲームは伝統的な『Vampire:The Masquerade』タイプのゲームではありませんし、それは最初から意図してはいません。しかし、ユニバース全体はしっかりと統合されており、各所で伝承に根付いたストーリーを語っています。
『Vampire:The Masquerade』の昔からのファンはもちろん、新しいファンもこのゲームで追加されたコンテンツの中から、これまで愛してきた『Vampire:The Masquerade』のユニバースをさらに広げるものを見つけてもらえたらうれしいです。
――ほかの『Vampire:The Masquerade』シリーズのゲームとの関連性はありますか?
マーティンありません。まったく別のものになります。
――制作にあたり、インスピレーションを受けた作品などはありますか?
マーティンこのゲームのインスピレーションになったものはたくさんあります。『Vampire:The Masquerade』のライセンスを使っていることのメリットは、シリーズ自体が大きなインスピレーションになったことです。このIPは、これまで多くの作品を生み出してきました。モダン・ヴァンパイア伝承は『Vampire:The Masquerade』から来ていますので、これは大きなソースです。
開発を始めた2017年は、ちょうどサバイバルジャンル全体の移行期でした。バトロワというジャンルが登場し、このジャンルが進化する可能性を私たちは感じていました。そういった意味では、バトロワの多くのタイトルも我々にインスピレーションを与えてくれています。
フレデリック多くのバトロワは、若い人たちや子どもをプレイ対象としていますが、私たちはより大人向けの外見を持ったゲームを作りたいと思いました。ゲーム経験の豊富な人たちも興味を持ってくれるものですね。
豪華な衣装に包まれ、美しくリアルなキャラクターが登場する幻想的なワールドに入っていけるゲームです。そういった点は、これまでのバトロワとは大きく異なる点ではないでしょうか。
――今後、ベータテストやストリーマーなどへの先行体験会など、発売前にユーザーが目に触れる機会はありますか?
デイビッド最初のクローズドアルファテストを、7月2日~4日に実施します。その後、アーリーアクセスとなるのですが、そちらはまだ時期が決定していません。
――最後に、日本のゲームファンに向けてメッセージをお願いします。
マーティン本作について、皆さんのご意見をお聞きできることを楽しみにしています。私は長くゲーム開発に関わっていますが、ほとんどが欧米のゲームでした。アジア市場で早期にリリースしてフィードバックをいただけるので、コミュニティからどんな意見が出てくるのかとても楽しみです。
デイビッド私は『バトルフィールド』の仕事をしていましたが、このゲームは日本でとても人気がありましたね。本作についても、日本の皆さんの感想がとても楽しみです。また『バトルフィールド』の時のように、自由でおもしろい遊びかたを見つけてくれるのではないかと期待しています。
クレイグ日本の皆さん、このゲームにとってパートナーのような気持ちです。私たちがいかにフィードバックを大事にして、コミュニティといっしょにゲームを成長させていきたいかを理解していただければうれしいです。皆さんのご意見をうかがえることにワクワクしています。
フレデリック日本は私が訪問した中で大好きな場所のひとつです。ちなみに私の妻は、建築家になる勉強をしている時に奨学生として日本に滞在していたので、私たちは東京以外の場所に行く機会もありました。日本の文化、建築、食べ物は大好きです。日本で新しいゲームを出すことができれば、訪問の機会がまた増えるのではないかといつも思っていました。本作を日本で届けられる日を私も楽しみにしています。
[2021年7月1日18時30分修正]記事中に一部誤字があり修正いたしました。