フリューが豪華クリエイターと手掛ける『Caligula -カリギュラ-』は、見てはいけないものほど見たくなるという心理現象“カリギュラ効果”をタイトルの由来とし、“アイドル殺し”がキーワードの刺激的なシナリオと、“現代病理”を抱えたキャラクターたちをテーマに扱った異色の学園ジュブナイルRPG。2016年にプレイステーション Vita向けに発売され、のちにストーリーやキャラクターを追加し、ゲームシステムとユーザーインターフェースを大幅に改修した『Caligula Overdose/カリギュラ オーバードーズ』がPS4やNintendo Switch、PCでリリースされた。
『2』の名を冠した本作は、2021年6月24日にPS4とNintendo Switchで発売されたタイトル。前作から数年後を舞台に、“リドゥ”と呼ばれる仮想世界に閉じ込められた“二代目帰宅部”が、現実世界に戻るために奔走する姿が描かれる。敵として立ちはだかるのは、リドゥを創造した新世代のバーチャドール“リグレット”と、彼女を守護する“オブリガードの楽士”たち。帰宅部は敵に対抗するために、試作品のバーチャドールであるキィの力を借りて戦いをくり広げていく。
今回は、記事担当ライター・ジャイアント黒田による本作のプレイレビューを公開。ネタバレを避けつつ、ストーリーやキャラクター、バトルシステムなど、本作の魅力を紹介していこう。
仲間たちの知られざる内面を見る覚悟はあるか?
「あのとき、ああしていれば……」。
人生は選択の連続である。生きていれば、誰もが大なり小なり何らかの後悔を抱えているはずだ。痩せてはリバウンドをくり返し、なかなかふた桁台へ戻らない体重に、「あのときご飯を大盛りでお替りをしなければ……」、「半チャーハンセットに餃子をつけなければ……」と、同じ過ちをくり返す筆者とは異なり、リドゥに閉じ込められた人々は、人に言えないような激しい後悔の念を抱えている。
それは、リグレットが後悔を抱えた人々の信奉を集め創り出した理想の仮想世界、リドゥを必死で守ろうとするオブリガードの楽士たちだけではない。主人公が率いる二代目帰宅部のメンバーたちも何らかの秘密を抱えており、リドゥに囚われているのだ。彼らはどのような後悔の念に苦しんでいるのか。メインストーリーや個別に用意されたキャラクターエピソードで徐々に明らかになっていくのだが、本作をプレイして、生半可な覚悟で踏み込んではいけないことを思い出した。
リドゥでの姿は、現実世界で選ばなかった選択肢を選んでいた“if”の世界の姿であって、現実世界の姿がそのまま再現されているわけではない。だから生半可な気持ちで惹かれてはいけないのだ。リドゥでの姿に惹かれれば惹かれるほど、真実を知ったときに、ショックを受ける可能性が高いから……。
1作目と『オーバードーズ』で散々こりたはずなのに、人の性とは罪深いもの。「見てはいけないものほど見たくなる」という、心理現象の“カリギュラ効果”には勝つことができず、本作でも仲間たちの内面に踏み込んでしまった。そして、キャラクターによっては後悔もした。知らないままのほうが、よかったかもしれないと。
悶々とする中で、一服の清涼剤となったのがキィの存在だ。バーチャドールとして生まれたての彼女は、持ち前の性格の賜物か、太陽のように明るくて非常にパワフル。主人公や帰宅部のメンバーたちとのやり取りを見ていると、自然と笑みがこぼれてきた。
本作は、前作を遊んでなくても楽しめる作りになっているものの、シリーズファンならより堪能できる仕掛けも用意されている。キィも仕掛けのひとつだが、主人公のクラスメイトで生徒会長を務める天吹茉莉絵もわかりやすい。
すでにお気づきのファンの方も多いと思うが、前作には彼女と名前のよく似た水口茉莉絵いうキャラクターが登場した。水口茉莉絵は前作の主人公の同級生で、物腰が柔らかく模範的な優等生タイプと、名前だけではなく性格も天吹茉莉絵にそっくり。しかも、どちらのキャラクターも声優の渕上舞さんが演じている。
ふたりの“茉莉絵”にどのような秘密が隠されているのか。もちろん、ここでネタバレのような無粋なことはしないので、興味のある方は、ぜひその目で真相を確認してほしい。
イマジナリィチェインが進化してますます快適で爽快に!
バトルは、仲間の行動とターゲットを選択後、相手の行動を予測できるイマジナリィチェインのシステムを採用。数秒間の敵味方の行動予測が映像で映し出されるので、左上の攻撃の命中率と合わせて行動結果を確認し、ベストな行動やターゲット、行動開始タイミングが選べる。
試行錯誤をくり返して最適な行動を導き出すなど、達成感を得られる反面、行動を選んで行動予測を見る、別の行動を選ぶ……というように、時間がかかってしまう問題も。だが本作では、全員の行動を操作する“カスタム”のほかに、仲間の行動をAI(人工知能)に任せる“オート”のシステムを搭載することによって、この問題を解決していた。
レベルの高い強敵や、ボス戦以外はほぼオートの設定でバトルに挑んでみたが、仲間との連携もうまく決まるうえ、行動指針を変えることで回復などへの対応もバッチリ。とくにつまることなくサクサクとプレイできて好印象だった(※難易度はNORMALを選択)。
敵の攻撃に応じてカウンターを決める、リスクを高めて敵を一定時間無防備にする、ストレスゲージを溜めて必殺技のオーバードーズスキルを決めるといったシステムも健在。本作ではテンポのいい爽快なバトルが楽しめるようになっている。
また、キィのフロアージャックもバトルを盛り上げる新システムのひとつ。フロアージャックは、ボルテージのゲージが最大まで溜まると使用でき、発動すると瞬時に仲間全員のターンが回ってくるほか、素早く動ける、攻撃のヒット数が増えるなどの恩恵がある。
このフロアージャックは、ほかのシステムと組み合わせることで、非常に強力なコンボが可能に。敵に大ダメージを与えられるリスクブレイク中にフロアージャックを発動させ、必殺技のオーバードーズスキルを連続で叩き込めば、強敵やボスの短時間での撃破も狙えるのだ。作戦が見事ハマったときは、じつに気分爽快!
さらに、フロアージャックにはキィの歌声が聴けるメリットも。本作では、楽士を倒すと敵の楽曲を入手できるので、著名なコンポーザーが手掛けた珠玉の楽曲を、リグレットが歌うバージョンとキィが歌うバージョンで楽しめるのだ。歌い手が変われば、曲の解釈も変わるというのも。同じ曲でも印象がガラリと変化するので、じっくり聴き比べるのもおもしろい。
やり込み要素も満載でしばらくリドゥから帰れない!
本作では、クエストを通して困っているNPC(ノンプレイヤーキャラクター)の住人たちの悩みを解決できる。メインストーリーの続きが非常に気になるものの、達成すると報酬がもらえるので、ついついより道をしがち。
前作でも用意されていた個人クエストに加えて、因果関係のある人々から連続で発生するグループクエストが実装されたのも、寄り道をしてしまう要因に。単純に続きの展開が気になるのと、パッシブスキルを駆使して相手の悩みごとを聞き出す仕掛けもいいスパイスになっており、ちょっとした探偵気分が味わえた。
このパッシブスキルは、収集癖を刺激されるのもいい意味で困りもの。装備品のスティグマの中には、パッシブスキルが付与されているものも存在するのだが、装備した状態で戦闘を行うとパッシブスキルの定着度が上昇し、最大まで溜まるとそのスキルを習得できスキル単体での装備が可能となる。パッシブスキルの効果はバラエティー豊か。キャラクターの能力を強化するものはもちろん、入手経験値を増やすものなども用意されている。
パッシブスキルはとにかく種類が多いので、誰にどの順番で覚えさせるかも頭の使いどころ。たとえば、壁役にHPや防御力、回避力が上がるスキルを早めに覚えさせると、バトルで活躍できる機会を増やせるというわけだ。オートバトルで戦闘がサクサク進むのも相まって、いつの間にか敵を見つけては襲撃するのが楽しくなっていた。
キャラクターエピソードを解放するのに必要な仲間との親密度が、戦闘に参加させないと上昇していかないのも、バトル中心のプレイスタイルに拍車をかけた。リドゥの世界でこれだけ暴れ回っていたら、リグレットや楽士たちに目の敵にされても仕方ないかも。新たな後悔を胸に抱えながら、現実世界へ帰還できない日々はしばらく続きそうだ。