『モナーク/Monark』は、フリューが手掛ける完全新作ソフト。2021年10月14日に、Nintendo Switch、プレイステーション4、5用ソフトとして発売される予定だ。

 異界とつながった学園を舞台に、4つの結末に導く運命のバディたちとともに、あなたのエゴと狂気を糧とする悪魔の力で戦うRPG。学園がどうなってしまうのか。最終的に誰の手をとるか。その運命がどこに通じているのか。それは、運命を選び進むあなたにしかわからない……。

 この狂気に満ちた世界を生み出したのは、フリューの林風肖氏とランカースの星野光弘氏が中心に、著名なクリエイターが名を連ねている特別なチームだ。伊藤龍太郎氏、鈴木一也氏、西谷史氏、増子津可燦氏と参加者を列挙すると、ゲームファンならいかに奇跡的な開発チームか実感してもらえるだろう。

 今回は、メインスタッフが一同に介したオンラインミーティングの場で、実施したインタビューを公開。企画の立ち上げや開発秘話などをうかがったので、最後までお楽しみに。

 なお、インタビューを読み進めるに当たっては、本作の概要について紹介した下記の記事を読んでいただくと理解しやすいかもしれない。未読という方はぜひチェックを。

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林 風肖(はやし ふゆき)

企画/プロデュース/ディレクション/シナリオ

星野 光弘(ほしの みつひろ)

ランカース代表取締役
企画/プロデュース/ディレクション

伊藤 龍太郎(いとう りゅうたろう)

シナリオ

鈴木 一也(すずき かずなり)

シナリオ監修&協力

西谷 史(にしたに あや)

シナリオ監修&協力

増子 津可燦(ますこ つかさ)

BGM

若手クリエイターの熱意に打たれてベテランクリエイターが続々参加!

――本作の企画はいつごろ、どのような経緯でスタートしたのか教えてください。

企画が形になったのは2019年の初夏ごろだったと思います。僕とランカースの星野さんで新作を作りたいよねと話していたとき、お互いに大好きな『真・女神転生if...』(1994年にアトラスから発売されたスーパーファミコン用ソフト。以下、『if...』)の話題で盛り上がったんです。

星野そうでしたね。僕はドンピシャ世代で、『if...』はかなりプレイしていました。もともと『女神転生』シリーズや『真・女神転生』シリーズは好きだったのですが、とくに日常的な学園生活が非日常的な場所になって、皆が徐々に変化していく『if...』の世界観にハマりました。『if...』みたいなゲームは最近ないよねと、林さんと盛り上がったのを覚えています。

もともと温めていた学園RPGの企画があったので、このとき打ち合わせで共感しあった大切にしたい世界観のエッセンスや空気感を意識しつつ、現代的な要素や本作ならではの特徴を踏まえて再構築し、『モナーク』の原型が生まれました。本格感のあるダークな世界観と、現代的なエッセンスの融合をうまく果たせたのではと考えています。

『モナーク/Monark』開発者インタビュー。豪華クリエイター陣がエゴと狂気の学園RPGの誕生秘話を語り尽くす

――いまのエピソードをお聞きして、本作の開発スタッフに伊藤さんや鈴木さんたちが名を連ねている理由がわかりました(笑)。

こうして動き出した企画だったので、リスペクトしている伊藤さん、鈴木さんに相談したいと考えてご連絡しました。

伊藤実際に林さんと星野さんにお会いして企画書を拝見する中で、ふたりとも『if...』が大好きなんだな、というのがすぐに伝わってきましたね。ものすごい熱意が感じられましたし、過去作をリスペクトしながらも新しい挑戦が感じられるタイトルでした。そのため、すごく楽しみで参加させてもらうことにしました。

鈴木いま伊藤ちゃんが話したように、ふたりとも作品への愛がすごい(苦笑)。影響を受けているなと思いましたが、今風の挑戦的で新しいエッセンスや、“眷属”のシステムを聞いてワクワクしたんです。私たちがファミコンやスーパーファミコンで作っていたときにはできなかったことがいまはできるんだ、すごいな、と思いお引き受けしました。

――協力には、西谷さんの名前もありますが、西谷さんが参加した経緯は?

「本作ならではの診断(※)をゲームに入れたい」と考えて悩んでいたときに、その相談をした鈴木さんから西谷さんをご紹介いただき、本件のお願いをさせていただきました。

※本作では欲望を肯定的にとらえて、プレイヤーはどんな欲望が強いかを知るために診断を受ける。テキストアドベンチャータイプの診断や、2枚のイラストから一方を選ぶといったグラフィックタイプの診断がある(詳細は後述)。

『モナーク/Monark』開発者インタビュー。豪華クリエイター陣がエゴと狂気の学園RPGの誕生秘話を語り尽くす

西谷僕にとってゲームを作るいちばんの楽しみは、新しいシステムを考えることでした。でも1990年代の終わりごろから、既存のシステムに合ったストーリーを考えることだけを求められるようになり、ゲームの世界から遠ざかっていたんです。ところが林さんは、僕に心理テストを使ったシステムを作りたい、という話だけをしてくれて。『モナーク』の企画を聞いたときに、このゲームの根幹はアドラー(心理学者)的な世界観だと気づいたので、「よし、やろう!」とひさしぶりに燃えましたね。

僕は哲学者のニーチェの思想に共感することが多くて、本作の根幹にも彼の思想に近しいものがあります。西谷さんに「アドラー的ですね」と言っていただいてから、アドラーがニーチェの影響を受けていたエピソードを知って、強い納得感がありました。

――最後は増子さんですが、このメンバーが参加していると、BGMをお願いするなら増子さんしか考えられないですよね。

増子さんさんならではの曲調。たとえば戦闘時のあのロックな楽曲を本作でも聴きたいという想いが強くなり、お声がけしました。

増子林さんから連絡があることは、山中さん(山中拓也氏。『カリギュラ2』のプロデューサー/企画/シナリオ)から聞いていました。それで実際に連絡があって、お会いしてみると熱い人たちが多くて(笑)。最初は自分でいいのかなと思ったのですが、林さんが「増子さんさんの作った曲がいいんです」と言ってくれたので、覚悟を決めました。人物指名までされてしまったので、これは受けないといけないなと。

“増子節”が聴きたいと無理を言いました。

増子いやいや、“増子節”しかできなくて。

鈴木けっこう何でも器用に作るくせに。

増子さすがに何でもはできないですよ。

――みなさん、林さんと星野さんの熱意を感じ取って参加を決められたのですね。

感謝しかないですね。皆様だけでなく、ほかのクリエイターさんとのおもしろい化学反応もあり、理想的なチームで開発できています。ちなみに、本日のインタビューには参加されていませんが、キャラクターデザインはso-binさん、主題歌と挿入歌はKAMITSUBAKI STUDIOさんにお願いしています。

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――so-binさんとKAMITSUBAKI STUDIOさんを起用した理由を教えてください。

so-binさんには企画の方向性が見えてきた段階で相談したんですが、「ちょうど学園モノ、現代モノの作品をやりたいなと思っていたところだったので是非!」とご快諾いただけました。イラストレーターさんが決まるまでは、作品をどこまで明るくするか暗くするか、イメージが固まらずにふわっとしていたのですが、so-binさんにご参加いただけることになり、よりダークな方向へ舵を切ることができました。

――確かに、so-binさんは『オーバーロード』(丸山くがね氏によるダークファンタジーのライトノベル)のイメージが強いですからね。KAMITSUBAKI STUDIOさんを起用した理由は?

KAMITSUBAKI STUDIOさんはアーティストさんやコンポーサーさんのクリエイティブがどれも神秘的かつ、哲学的なんです。主題歌を歌ってくださるアーティストの花譜さんはコンサートなどで毎回「絶対生きて、また会いましょう」と締めくくってくれるのですが、そういう温かく寄り添ってくれる空気感が全体にあるんですよね。本作はダークな世界観ではあるのですが、突き放して終わるような作品ではなく、最終的には自分の持つエゴを好きになって欲しいという自己肯定のメッセージもあります。そういう意味でもピッタリだなと思い、KAMITSUBAKI STUDIOにお願いすることにしました。

緻密な設定と豊富なセリフがリアリティーを生み出す

――伊藤さんが、本作のメインストーリーを書いているのですか?

伊藤僕は学園の生徒たちの設定やセリフなどを担当していています。メインとなるシナリオは林さんにお願いしました。もちろん、チェックとアドバイスはしていますが。

――そうなんですね。シナリオの項目に林さんの名前がありましたが、メインで担当されているのは伊藤さんだと思っていました。

もともと本作は伊藤さんにメインシナリオをお願いする予定でした。自分はいっさい書くつもりなんてなく。ただ、打ち合わせや会食の中で、私自身が当時のおふたりのように、仕様を切りつつシナリオも書くようなゲームクリエイターになりたいという展望を話していて、あるとき、シナリオ会議のブレストで私からもおふたりにプロット案の資料をお見せしたところ気に入っていただきまして。「書けると思うしチェックや監修はするから、林さん自身が書いてみたらどう?」と背中を押していただき、書くことになりました。

鈴木メインシナリオは、シナリオ会議の中でコンセプトは固まっていきましたし、登場人物も林さんのほうがうまく動かせると思ったので、ディレクターでもある林さんが挑戦されたほうがいいと思いました。それに伊藤ちゃんは、生徒だけで手一杯だろうから。

伊藤シナリオ会議の中で学園を生きた舞台にするために、生徒100人の物語が必要だという話が出てきて、自分が担当することになりました。最初は楽観視していましたが、集中してやらないとたいへんでしたね(苦笑)。

――100人! ひとりひとりの設定を考えるだけでも、相当な時間がかかりそうです。

伊藤はい。林さんから生徒たち全員にリアリティーを出したいとお願いされたので、設定を細かく決めてセリフにも気を使いました。

鈴木同じキャラクターでも、物語の進行に合わせてセリフが頻繁に変わるからね。

――100人という数は、林さんの中でそれぐらい必要だと最初から決めていたんですか?

舞台となる学園はもともと面積が広いうえに、物語の進行に応じて探索可能な校舎や場所が増えていくので、100人は最低でも必要になりましたね。最初は「固有の名前を持った生徒を登場させたいな」くらいの考えだったのですが、伊藤さんは自分を追い込みながらこった設定で魅力的なキャラクターを生み出してくれました。とても感謝しています。

『モナーク/Monark』開発者インタビュー。豪華クリエイター陣がエゴと狂気の学園RPGの誕生秘話を語り尽くす

伊藤そう言っていただけるとうれしいですが、調子に乗って変な設定のキャラクターをたくさん作ってしまったので、自縄自縛で苦労しちゃいましたね。監修の鈴木さんに、こんないい設定があるのに、ぜんぜん活かせていないと何度もダメ出しを受けました(苦笑)。

――生徒たちは数が多いうえに、設定がこっていたからこその苦労があったんですね。

鈴木私は監修という立場で参加していますが、立場的には全体を見守る監督で、シナリオを書いた林さんと伊藤ちゃんがキャラクターを動かす役者なんですね。ちょっと上から目線に感じるかもしれませんが、第三者的な引いた視点で見ると、ふたりに的確なツッコミを入れることができますし、ふたりからもどんどんいいものが出てくるんですよ。

――とくに注目してほしい登場人物は?

立場的には、全員注目してほしいのですが、強いて挙げるなら4人のバディでしょうか。4人とも個性が際立っていて、開発スタッフの中でも望派、凌太郎派というように、派閥がきれいに分かれて盛り上がりました。

鈴木バディの中だったら、林さんのお気に入りはこころちゃんじゃないですか?

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全キャラクターが好きなので特別視はしてないですが、こころちゃんが刺さってほしいと思っているターゲット層に属してますね。

鈴木私はこころちゃんが好きなのですが、彼女は私が林さんにほとんど注文をつけなかったキャラクターなんです。最初から完成されていたし、セリフなども自然な感じに仕上がっていました(笑)。

――伊藤さんが好きなのは?

伊藤 僕は凌太郎推しです。

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鈴木おお、なるほど。

伊藤凌太郎は名前が二転三転して、僕(龍太郎)に似ている名前になったので、親近感が湧いてしまって。それに、同性から見てもかっこよくて憧れますね。凌太郎のような人間には信奉者もいるだろうということで、追っかけの生徒も作っています。生徒の数が多かったのはたいへんでしたが、おもしろい設定の生徒を作れたのは楽しかったですね。

――やりがいも多かったのですね。西谷さんの仕事内容を詳しくお聞きしたいです。

西谷私は診断パートの原本を考えました。原本は、心理テストの本の1冊分くらいは書いたと思います。それを林さんに適切な長さに削ってもらい、本作の世界に合うように修正してもらいました。5つの診断の中には、テキストアドベンチャーとして作ったものもありますし、グラフィックスを読み解くものもあります。色彩心理、脳科学、そして風水理論の中で科学的といえるものも取り入れています。一時はそれが本業でしたので(笑)。

ゲームとして遊んだときのテンポを考えて、ものによっては泣く泣く半分ほど削り、その診断をするキャラクターに合わせて口調を調整させていただきました。私はいただいた完全版の原本で遊んでいるのですが、完全版ではその診断の意図や判断理由について、西谷さんの補足解説が記載されていて、いっそう楽しめました。皆様にも、完全版をご紹介できる機会があるとうれしいですね。

――ゲームをプレイした後、完全版をプレイすると、違いなどがわかって楽しめそうですね。診断パートの作成に協力する中で、とくに苦労されたことはありましたか?

西谷原本を作るうえで、ふたつの点に時間をかけました。ひとつは、診断をどのように
プレイヤーのパラメータの変化に結びつけるか。もうひとつは、診断そのもののおもしろさと、緻密な設定と豊富なセリフがリアリティーを生み出すゲームの診断パートとしてのおもしろさは異なるので、そのバランスをとることです。前者は経験があるのですが、後者は初めてのことでバランスが難しかったですね。

――診断パートの見どころも教えてください。

西谷本作では7つの欲望を肯定的にとらえて、プレイヤーはどの欲望が強いかを知るために5種類の診断を受けます。たとえば、テキストアドベンチャータイプの診断を受けたら、僕たちがどういう意図で質問しているかはわかるでしょう。でも、グラフィックスを読み解く診断には、みなさんが初めて経験するものもあると思います。その両方にトライして、自分が本当はどんな欲望と能力を持っているのかを感じて楽しんでほしいですね。

補足すると、グラフィックを読み解く診断というのは、2枚のイラストから一方を選んでいく、というものです。選んだそのイラストの“色”や“形状”などが表す象徴に由来して、欲求の診断がなされていくのですが……。これまた、遊んだあとに西谷さんからいただいた解説資料を拝見すると「なるほど~」となって、たまらなくおもしろいんですよ。すみません、ただの役得自慢になってしまいました(苦笑)。

――(笑)。それだけ西谷さんとの作業が印象的だったのですね。

とくに印象的だったエピソードとしては、7つの欲求の定義でしょうか。本作は欲求を肯定的に捉える作品ですが、「憤怒が強い=キレちらかすひとが正しい!」という定義だと、一歩間違えば犯罪を助長してしまうコンセプトかもしれません。西谷さんと相談するなかで、ここは「憤怒が強い=感情をキチンと発散、表現できる人」といった具合に、各欲求の美点をきちんと定義するようにしました。この過程のやり取りが非常に楽しくて、重要な時間だったなと強く記憶に残っています。

『モナーク/Monark』開発者インタビュー。豪華クリエイター陣がエゴと狂気の学園RPGの誕生秘話を語り尽くす

バランス調整と便利な機能で遊びやすさを徹底的に追求

――学園探索と戦闘の見どころを、星野さんと林さんにお聞きしたいです。

星野学園探索の見どころは、非日常化した学園内で垣間見える生徒たちの心情です。先ほど伊藤さんがお話ししたように、生徒それぞれにセリフが用意されていて、シナリオの進行に応じていろいろな言動や行動を見せてくれますよ。数が多いぶん、チェックを含めて管理するのはたいへんなところもありますが、皆様に満足していただけるように開発を進めています。また、戦闘はたとえ味方が敵より能力的に劣っていたとしても、工夫次第で相手を倒すこともできるゲームバランスに調整しています。

キャラクターのレベルやスキルの調整が、いつでも任意に行えるシステムも実装しています。ゲーム内の通貨兼経験値となるリソースでキャラクターのステータスを上げられるのですが、強化をリセットすることでリソースを回収して、別のキャラクターの育成に再利用するといったことも可能です。

『モナーク/Monark』開発者インタビュー。豪華クリエイター陣がエゴと狂気の学園RPGの誕生秘話を語り尽くす

――仲間の育成がはかどりそうですね。

任意の育成やリセット機能は、救済措置の一環として用意しました。メインシナリオは
途中分岐要素があるので、結末だけではなく、一部のストーリーや誰が仲間になるかの順番がプレイヤーによって変化します。そこで何らかの救済措置が必要だと考えました。

星野もちろん、どのように進行してもつまずかないように、ゲームバランスの調整をいま
まさに行っているところです。

――増子さんに、物語や戦闘を彩るBGMの注目ポイントをお聞きしたいです。

増子林さんからは、全体的なオーダーとして「ぜひ生音を入れてほしい」と言われました。そこでヴァイオリンやピアノ、ドラム、ギターなどを生録しました。生音だとライブ感と言いますか、機械的な音の中に、人の手が加わった音がいくつか紛れ込んでいます。とくにヴァイオリンは数が多いので、生々しい音を楽しんでいただけると思います。

本作は人のエゴがテーマのひとつだったので、楽曲にも人感があるとおもしろいと考えて、生音を入れてほしいとお願いしました。BGMの注目ポイントは、すべての楽曲なのですが、生音と“増子節”の化学反応には、とくに耳を傾けてほしいですね。

――増子さんが手掛けたBGMは、何曲ぐらい収録されているのですか?

増子40曲ぐらいだったと思います。

当初の想定は30曲ほどだったのですが、最終的には40曲ぐらいまで増えてしまいました。増子さんは作曲スピードが早いんです。僕が深夜のテンションで主人公の妹の鼻歌に、「ちょっとメロディをつけてください」とお願いしたんですね。声優さんが収録するとき、メロディに合わせて録ってもらいたくて。そうしたらすぐにボーカロイドの仮歌付きの楽曲が上がってきたので、あのときは震え上がりました(苦笑)。ちなみに、その曲は日曜日の朝に放送されている、女児向けアニメで流れていそうな曲なんです。増子さんは耽美な曲やかっこいいロック調の曲だけではなく、こんな曲も作れるのかと、改めて感心しました。

伊藤増子さんは何でも作ってくれますからね。『if...』のときも、急に校歌を作ろうと盛り上がったんですね。僕が15分ぐらいで歌詞を考えて、それを増子さんのところに持っていったんです。校歌もすぐに作ってくれましたが、歌詞を渡したときにすごくいやそうな顔をされたのを覚えている(笑)。

一同 (笑)。

『モナーク/Monark』開発者インタビュー。豪華クリエイター陣がエゴと狂気の学園RPGの誕生秘話を語り尽くす

――せっかくの機会ですので、林さんがリスペクトしているクリエイターの方たちと実際にお仕事をしてみた感想や、お互いの印象などもお聞きしたいです。まずは、伊藤さんや鈴木さんからお願いします。

伊藤さんや鈴木さんとは年齢差があるのですが、おふたりとも最新の情報に関してもとても明るいんです。つねに知識を吸収してアップデートをされているので、知識量がぜんぜん違うなと刺激になりました。伊藤さんの担当された生徒の設定やセリフは、当たり前ですが僕が当時体験してきた作品と同じ香りがしたので、読んでいてニヤニヤしましたね(笑)。

――確かに、ファン目線で考えるとたまらない環境ですよね(笑)。

『女神転生』や『真・女神転生』シリーズらしい元ネタ要素のある設定があるじゃないですか。人の名前とか。本作でも伊藤さんが考えたそういう設定が散りばめられています。ただ……ちょっとセンシティブだったので、本作ではわかりにくい感じでぼかしていますね……。とても難しいと思いますが、もしも、気づいた方がいればニヤニヤしてもらえるとうれしいです。

伊藤最初に僕が提出したのものは、そのまんまで出せなかったので(苦笑)。

そのまんまでしたね……(笑)。

鈴木伊藤ちゃんは昔からそうだよ。少しは変えようよってネタを平気で出してくる。

伊藤同じ名前の人なんてたくさんいるじゃないですか(笑)。

鈴木まぁ、そうなんだけどさ(苦笑)。

おふたりのいまのようなやり取りが本作の開発中でもありまして、僕の大好きな作品は、こんなふうにできていったんだなって体験できたのもおもしろかったですね。

――鈴木さんとのやり取りで印象に残っていることは?

鈴木さんは講師をされているので、説明や指摘に非常に説得力がありました。鋭い指摘をいただく中で、ときには絶賛コメントもあってうれしかったのを覚えています。

――鈴木さんは、アメとムチの使いわけもお上手だったと(笑)。伊藤さんと鈴木さんにも、林さんの印象やお仕事をしてみた感想をお聞きしたいです。

鈴木では私から。林さんの第一印象は、このイケメンがって感じですよね。

一同 (笑)。

鈴木イケメンで、若いのにもうディレクター? ちょっとイケすぎているじゃないかなって思いましたが、話してみると腰が低くて、ちゃんとしているんですよ。イケメンにはもっとチャラいキャラでいてほしいのに、ぜんぜんチャラくもないし。あ、でも実生活はわかりませんよ。開発の途中で急に金髪になったので、じつはチャラいのかもしれません。

私生活もチャラくないですよ(苦笑)。

鈴木あ、やっぱり? でも、真面目な話をすると、仕事はクレバーで非常にやりやすかったですね。

――伊藤さんもうなずかれていますが……。

伊藤鈴木さんの言う通り、クレバーでやりやすかったです。だからこそ本作のプロジェクトは予定通り順調に進んでいると思うので。

――林さんの第一印象はどうでしたか?

伊藤やっぱり、イケメンですよね。チャラいのかなって思っていたのですが、そんなことはなくて、むしろこちらを立ててくれるんです。僕は根が単純な性格なので、おだてられるとすぐに調子に乗っちゃうんですね。いまにして思うと、最初から林さんの手で転がされていたのかもしれません。

そんな気持ちは微塵もないですよ(苦笑)。

――(笑)。続いては林さんと西谷さんに、お互いの印象や思い出に残っているエピソードをお聞きしたいです。

私が初めて西谷さんにごあいさつと企画の説明をさせていただいたとき、早速その場でいろいろな質問をいただき、気がつけば4~5時間はふたりで話し込んでいたと思います。西谷さんは本当に真摯なクリエイターで、企画のコンセプトやテーマを真に理解納得できるまで、じっくりと私とのお話につき合ってくださいました。こうした西谷さんとのお話の中で、問答法的に私の中の作品のコンセプトや、本作の“エゴ”の考え方といったテーマが整理され、確固たるものになっていったのだと思います。

西谷ゲームクリエイターは、俯瞰的にゲームの全体像を捉えて制作するタイプの人と、一人称的にひとつひとつのイベントを積み上げて制作するタイプの人にわけられます。林さんは両方ができる人ですね。最初、林さんは一人称的にゲームを作っていて、ゲームの細部まで決めているわけではなかったように思います。でも何度かやりとりしているあいだに、ゲームに対する見方が俯瞰的になり、そこからは微塵も動かなかったのが印象的でした。

――林さんと増子さんはいかがでしたか?

増子 う~ん、やっぱりイケメンですよね。

一同 (笑)。

増子林さんは、言いたいことをちゃんと言ってくれるので、僕としては非常にやりやすかったですよ。こちらが納得できる理由づけもしてくれましたし、スムーズに作業ができたいい環境だったと思います。印象に残っていることは、緊急事態宣言が出ていない時に、ご飯を食べたことかな。仕事の話半分、プライベートの話半分で。

増子さんは気を使って半分と言ってくれていますが、8割型プライベートの話でした(苦笑)。増子さんとも楽しくお仕事をさせていただきましたし、こんなことを言うと怒られるかもしれませんが、とても楽でした。増子さんはレパートリーが広いうえに、こだわって作曲をしてくれます。最初の楽曲とかは言葉のニュアンスの違いで、お互いのイメージがズレることもありましたが、イメージをうまくすり合わせたあとは、何のすれ違いもありませんでした。待っていれば、あとは増子さんがどんどんステキな曲をあげてくださるので、うれしく幸せに聞いてニコニコしていましたね。

――林さんと星野さんは長い付き合いだと思いますが……。

星野そうですね。以前、いっしょにゲームを作ったことがあるんです。そして、ひさしぶりに再びいっしょにやりましょうと手を組みました

初めてお会いしたのは、確か2016年頃だったと思います。星野さんとは、それから5年ぐらいのお付き合いになりますかね。

――お互いの印象はどうですか?

星野作品に対して強いこだわりを持っていて、自分が納得いくまで作り込む人だと思います。物量が多いのと急な仕様変更に泣かされることもありますが(苦笑)、よりよいものを作りたいという気持ちの現れなのが理解できるので、こちらも納得できます。データの監修などもしっかり行ってくれるので、こちらとしては安心感がありますね。本作はリモートでの開発も取り入れているのですが、林さんはレスポンスが速いですし、すぐ隣でいっしょに開発をしているような感覚になります。

ありがとうございます。星野さんは、イケメンですね。

星野さんざん言われたから、言いたかっただけですよね?(笑)。

一同 (笑)。

でも、外見だけではなくて、心意気もかっこいいクリエイターだと思います。いろいろと刺激を受けていますし、助けられていることも多いですね。先ほど仕様変更の話が出ましたが、本来は僕たちクライアント側からお願いすることがほとんどです。ただ、ランカースさんの場合は、逆の現象が起こりやすくて。会社全体のモチベーションが高いのですが、とくに星野さんが熱くて「こっちのほうがいいです」、「こうすべきです」とハッキリ言ってくれるんですよ。星野さんも負けず劣らず仕様変更が多いと思いますが、妥協のないクリエイターとして非常に信頼しています。

『モナーク/Monark』開発者インタビュー。豪華クリエイター陣がエゴと狂気の学園RPGの誕生秘話を語り尽くす

――皆さんが信頼し合う最高の環境の中で、本作の開発は進んでいるのですね。最後に、読者や作品を期待しているファンに向けて、メッセージをお願いします。

伊藤厄災が降り掛かった学園で、リアリティーを追求した生徒たちと交流しながら、真のロールプレイングをお楽しみください。

鈴木『モナーク』のような閉鎖系の物語は霧と相性がいい。本作の学園も霧で覆われていて、ヤバい世界だと肌で感じると思います。

西谷『モナーク』は、欲望を肯定し、それを力の源泉にするゲームです。欲望は悪ではありません。それは力の源泉となり、善の源になることもあります。いまの時代、いまの世界を象徴するゲームです。トライしていただければ、世界観が変わるかもしれません。

増子ひとつの曲に対するアレンジもたくさん収録しています。自分にあまりない知識を引っ張り出さないといけなかったので、たいへんでしたがやりがいもありました。曲のアレンジに気づいてもらえるとうれしいです。

星野開発はいよいよラストスパートでゲームバランスを調整しているところです。発売までもう少々お待ちください。

手前味噌ですが、みなさんの期待に応えられるような作品になっていると自負しています。発売までにどのバディを選ぶのか、自分のエゴは何かを友だちと話して盛り上がってほしいですね。今後も新情報を発表していきますので、応援よろしくお願いします。

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