傑作・名作揃いな『ウマ娘 プリティーダービー』のメディアミックス作品。

 その中でも、いま筆者がもっとも夢中になっているのが、『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて連載中、コミックスは2021年6月現在、第3巻までが刊行されている『ウマ娘 シンデレラグレイ』(漫画:久住太陽、脚本:杉浦理史、漫画企画構成:伊藤隼之介、原作:Cygames)。累計発行部数が100万部を突破している話題作だ(紙&電子版累計)。

 今回は、『ウマ娘』関連作品の中でもかなり毛色の異なる(※本作の主人公が“芦毛”のオグリキャップであることに掛かっています)、このマンガならではの魅力をご紹介。あなたも、オグリキャップの虜になること間違いなし!

地方で育った“灰かぶり少女”が、“怪物”と呼ばれるまでの物語

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 主人公は、オグリキャップ。彼女は地方で育ち、地元にある“カサマツトレセン学園”に入学します。そこではウマ娘たちの地方レース“ローカルシリーズ”が行われているものの、観客席は基本的にガラガラ。

 ゲームやアニメで描かれる“中央”のトレセン学園とは似て非なる環境となっており、所属するウマ娘たちも、国内最高峰である“中央”の猛者たちと自分とでは「レベルが違う」ものと理解しています。

 そんな寂れたカサマツへとやってきたオグリキャップですが、まずはあまりの天然マイペースっぷりが周囲の注目を集めます。学園に指定の制服があることを知らずに泥まみれのジャージで登校。自分が不良ウマ娘たちに因縁を付けられていることすら気付きません。

 しかしいざレースに出ると、その圧倒的な走りに人々は驚愕。最初は馬鹿にしていたクラスメイトたちが、段々とオグリキャップの走りに魅了されていく様子はじつに痛快です。

 彼女の才能を見出したトレーナー・北原や、初めてできたウマ娘の友だち・ベルノライトと絆を深めながら学園生活を送るオグリキャップは、カサマツの次期エースと目されるウマ娘”フジマサマーチ”ともライバルとして競い合います。

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 そうした日々を通して、北原も、フジマサマーチも、そしてほかのクラスメイトたちも、薄々気づきはじめるのです。オグリキャップの才能、そしてスター性は、カサマツだけで収まるものではないということに……。

 “序章 カサマツ篇”はコミックス第2巻で完結。最新刊の第3巻からは“第一章 中央編入篇”が幕を開ける『シンデレラグレイ』。やがて誰もを魅了する圧巻の走りから“怪物”と呼ばれるようになるオグリキャップの物語は、まだ始まったばかりです。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』1巻(Kindle)

実在の競走馬の“シンデレラストーリー”がモチーフ

「ウマ娘 シンデレラグレイ」第一弾CM

 もちろん彼女の物語もほかのウマ娘と同様、実在した競走馬である“オグリキャップ”が歩んだ生涯をモチーフにしています。

 作品タイトルである『シンデレラグレイ』には、実在のオグリキャップが芦毛(灰色っぽい毛色)の馬であったこと、そしてこの馬の物語自体が生まれのハンデを乗り越えてスターダムを駆け上がった“シンデレラストーリー”だったこと、ほかにもいくつもの意味が込められています。

 「芦毛の馬は走らない」というそれまで囁かれていたジンクスを打ち破り、誰もを魅了するスターとして、人々からたくさんの夢を託された名馬・オグリキャップ。

 その強さによって数々の常識を覆し、不可能を可能に変えていく本作の展開は、現実に1匹の競走馬によって成し遂げられたものでもあったのです。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』2巻(Kindle)

手に汗握る、鬼気迫るレース描写

 本作でオグリキャップが“怪物”と呼ばれる所以は、鬼気迫るレース描写の数々でも見事に表現されています。

 虎視眈々と背後から先頭を狙う視線は、まるで獲物を前にした狩人。常識はずれの脚力によって大地を踏みしめ、蹴り出す足音は、先をゆくウマ娘たちを恐れ、おののかせます。そして先行していたライバルたちを抜き去るときの、風を切り裂くようなスピード感!

『ウマ娘 シンデレラグレイ』の魅力を語りたい。地方の“灰かぶり少女”が、国内最高峰のレースへと殴り込み! 熱いシンデレラストーリー

 一瞬、一瞬のウマ娘たちの躍動を克明に描き込んでいくような絵のタッチは、ゲームやアニメとは異なった臨場感を生み出しており、読んでいて手に汗握るほど。

 オグリキャップたちの描かれ方に恐怖すら感じることもあるレース描写ですが、それは彼女たちにとって走ることが、どこまでも真剣で、そして大切な行為だからこその描写でもあります。

 このレース描写の素晴らしさがあるからこそ、オグリキャップをはじめとしたウマ娘たち、そして彼女たちを取り巻く人々のドラマは、私たち読者の心を鷲掴みにするのです。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』3巻(Kindle)

ゲーム・アニメファンに注目してほしい『シンデレラグレイ』の魅力はここ!

 ゲーム『ウマ娘 プリティーダービー』でオグリキャップを育成したことがある方ならば、彼女の“強さ”は身に沁みていることと思います。

 芝だけでなくダート(砂)のレース場の適性も高く、作戦は“差し”が得意。固有スキル“勝利の鼓動”の性能も高く、終盤の追い上げで並み居る強敵を抜き去っていく。ふつうに育成していても“とても強い”上に“勝ち方がカッコいい”ウマ娘という印象を持つはずです。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』の魅力を語りたい。地方の“灰かぶり少女”が、国内最高峰のレースへと殴り込み! 熱いシンデレラストーリー

 また、アニメ版『ウマ娘 プリティーダービー』ではストーリーに直接関わることはほとんどないものの、第1期主人公のスペシャルウィークと並ぶ大食漢として、異常な量の食事をしている姿が背景に描かれ、こちらもまた別の意味で印象に残っている人は多いことでしょう。

 ほかのメディアとはひと味違った作風も魅力である『シンデレラグレイ』ですが、こういったゲーム、アニメにおけるオグリキャップを象徴する個性は、本作でも変わらず描かれています。

 カサマツのレース場がダートコースであるという描写から、ダートコースが得意というのも納得ができますし、凄まじい末脚でレース終盤、驚異的な追い上げを見せて勝利する、という展開も、ゲームで作戦“差し”を選択したときのレース運びを思わせます。

 また、その異常な食欲はさらに笑いを誘うものになっており、本来ウマ娘の健全な育成のため“おかわり自由”となっているカサマツのトレーニングセンターで、おかわりを拒否されてしまうといった展開も。

『ウマ娘 シンデレラグレイ』の魅力を語りたい。地方の“灰かぶり少女”が、国内最高峰のレースへと殴り込み! 熱いシンデレラストーリー

 シリアスで熱いドラマに心を奪われる『シンデレラグレイ』ですが、こういった『ウマ娘』ファンなら“ニヤリ”とできる描写の豊富さも魅力となっています。

終生のライバル、タマモクロスとのドラマもヒートアップ!

 コミックス未収録のエピソードではついにオグリキャップが、終生のライバルとなっていくであろう“タマモクロス”と激突!

 ほかの作品では幼稚園児のコスプレをすることになったりと、格好のつかないポジションになりがちなタマモクロスですが、本作では現役最強クラスのウマ娘として、圧倒的な速さを見せ付けます。

 そんな彼女にも、オグリキャップとはまた違った“負けられない理由”があるようで……。これから明らかになるであろうタマモクロスをめぐるドラマ。そしてそれがオグリキャップにどのような変化を与えるのか? 今後の展開からも、目が離せません。

 コミックスの続きが気になった方は、毎週木曜日発売の『週刊ヤングジャンプ』(紙版のほかにデジタル版もありますよ)や、公式アプリ『ヤンジャン!』で、ぜひチェックしてみてください!