ロンバックス族の青年ラチェットと、相棒のロボット・クランクが冒険をくり広げるアクションアドベンチャー『ラチェット&クランク』は、プレイステーション(以下、PS)を代表するタイトルのひとつ。2002年に発売された初代『ラチェット&クランク』を皮切りに、PSの歴代ハードで数多くの作品が展開されてきた。
そんな世界中に多くのファンを持つ人気シリーズの最新作『ラチェット&クランク パラレル・トラブル』が、ソニー・インタラクティブエンタテインメントより、2021年6月11日にPS5でリリースされる。
名コンビの銀河をまたにかけた新たな冒険は、メガロポリスの式典から始まる。これまでの功績が称えられ、式典に招待されたラチェットとクランクだったが、仇敵のドクター・ネファリウスが式典を襲撃。一連の騒動で、クランクが修理した次元操作が可能なデバイス“ディメンジョネイター”が暴走し、ラチェットとクランクは離れ離れになってしまう……。
シリーズおなじみの登場人物のほかに、女性のロンバックス族でもうひとりの主人公・リベットなど、多数の新キャラクターが大活躍。既存の人物が別次元の姿で登場するといった、ファンがニヤリとする展開も本作の見どころだ。
また、本作には美麗なグラフィックや超高速SSDによる読み込みのほか、DualSenseワイヤレスコントローラーに搭載されたアダプティブトリガーとハプティックフィードバックが生み出す爽快感や没入感など、PS5の機能を活かした要素が満載。さらに進化した新次元のアクションが堪能できる。
今回は、本作をひと足早くプレイした記事担当ライター・ジャイアント黒田によるプレイレビューをお届け。ストーリーのネタバレには配慮しているので、安心して読み進めてほしい。
初心者から上級者まで満足できるアクションゲーム
最近プライベートでアクションゲームをあまり遊ばなくなった。敬遠していたのには理由がある。8歳の息子に、とあるアクションゲームのヘルプを頼まれたときのこと。父のメンツを保つ重要なイベントだったが、奮闘むなしく、いたずらに時間が過ぎていった。
息子の声援が聞こえていたのは最初だけ。静かになった我が子を横目で見ると、マンガに夢中になっていた。筆者はコントローラーをそっと机に置き、リビングをあとにした。
この出来事からなんとなく、アクションゲームに苦手意識を持っていたのだ。そんなときに出会ったのが、この『パラレル・トラブル』だった。PS5でリリースされる『ラチェット&クランク』シリーズの最新作だけに、もちろん興味はあったが不安も感じた。果たして、自分がうまくプレイできるのかと……。
結論から言うと、筆者の不安はまったくの杞憂だった。アクションは全体的にスピーディーだが、咄嗟の判断が求められる場面では周囲の動きがスローになるうえ、入力しないといけないボタンを画面に表示してくれる。この親切設計によってミスを減らせるし、何より“うまく操作できている感覚”を存分に味わえて気分爽快だった。
たとえミスをしても、すぐに復帰できるので、ストレスは一切感じない。アクションゲームが苦手な人や初心者でも遊びやすく作られているが、難易度選択で自分好みに調整できるのもうれしい。
ちなみに、確認できた難易度は、ひよっこ新兵、反乱勢力のエージェント、レジスタンスのリーダー、反骨のレジェンドの4つ。いわゆる、イージー、ノーマル、ハード、ベリーハードの4段階の難易度が用意されていた。
超高速SSDの恩恵は、ステージがつぎつぎと切り替わるストーリー上の演出にもうまく活かされている。本作では、緻密に表現されたステージのデータをほぼ瞬時に読み込み、超速で銀河を移動できるのだ。次元の裂け目を通って一瞬で別の惑星や次元に移動したり、クリスタルをハンマーで叩くだけで別の次元に変わったりするダイナミックな場面転換も、本作ならではの見どころ。
次元を移動しながらくり広げるユニークなボス戦なども用意されており、戦い慣れてきたステージが急に変わることで、通常よりも緊張感のあるバトルが堪能できた。
戦術を広げるバラエティー豊かな武器“ガラメカ”
シリーズの特徴であるガラメカは、本作でもいい意味でクレイジー。デコイとして使えるミスター・ファンガイや極太のビームを放つネガトロンコライダーなどバラエティー豊か。なかでも筆者が愛用しているのは、敵の動きを一定時間止められるグリーンスプリンクラー。効果はもちろん、植物が敵を覆って動きを止めるユニークな設定が好みだ。
ガラメカは頼りになるが、ストーリーが進むと敵がわらわらと出てくる場面も。力押しで切り抜けようとすると、多勢に無勢でやられてしまいやすいが、こんなときこそデコイになるミスター・ファンガイや、敵の動きを止めるグリーンスプリンクラーの出番。これらのガラメカを駆使して、難所を切り抜けられたときの達成感はひとしおだった。
ガラメカは、抵抗力を変化させるアダプティブトリガーによって、挙動が変化するのも本作ならではの要素。武器ごとに調整された感触フィードバックで、敵を倒すたびに爽快感が味わえた。また、ハプティックフィードバックはゲーム内での振動や爆発の衝撃などに影響し、コントローラーを通して触覚に訴えかけることで没入感を高めてくれた。
装備できるガラメカは、ショップで購入すると増えていく仕組み。ガラメカのラインアップは、ストーリーの進行に応じて充実していき、ショップではガラメカのアップグレードも行える。購入やアップグレードに必要なアイテムは限りがあるので、どのガラメカを優先して選ぶかは悩みどころ。
筆者は新商品を登場した順に購入しつつ、アップグレードは汎用性の高いブラストピストルを優先した。最大まで強化したブラストピストルは、威力はもちろん、弾数も増えていて使い勝手がますます良好に。
ステージを探索しながら、アイテムを集めて新しいガラメカを購入したり、好みの武器をアップグレードしたりしていくのは、ゲームプレイの原動力に。あとちょっとで買える、あとちょっとで強化できるをくり返すうちに、ついプレイ時間が伸びてしまった。
基本アクションでは、新たにリフトテザーとファントムダッシュが追加された。前者は次元の裂け目にロープを引っ掛けるようにしてぐいっと引っ張ることで発動する瞬間移動、後者はあらゆる方向にダッシュを行う移動系のアクション。これらを駆使することで、戦闘中にスピーディーな攻撃や回避が可能となる。
とくに成功したとき気持ちがいいのはファントムダッシュ。発動中は無敵時間が発生し、敵の攻撃を回避できる。タイミングよく発動させれば、敵の猛攻をしのぎながら反撃するといった華麗なアクションをくり出すことも。使いこなすことで、プレイスキルが上達したと実感できるうれしい要素だった。
圧倒的なグラフィックで生き生きとしたキャラクターを表現
本作は、ライティングの向上とレイトレーシングによってグラフィック表現も向上している。ラチェットたちの3Dモデルなども、より豊かな感情表現ができるように、PS4版のものから一新されている。
名コンビのラチェット&クランクはもちろん、物語を彩るサブキャラクターから悪役まで、本シリーズに登場するキャラクターはクセモノ揃いなのだが、完成度の高い3Dモデルは、耳に残る台詞回しも相まって記憶に残りやすい。ちょっぴりドジな悪役たちも、どこか憎めなくてだんだん愛しい存在に。とくに仇敵のドクター・ネファリウスは、いい意味でクレイジー。よくここまで狂った翻訳(※褒め言葉です)ができるなと感心させされた。
また、新キャラクターではリベットの虜に。彼女は、カッコいいとカワイイのバランスが秀逸。最初はツンツンしているのだが、偶然パートナーを組むことになったクランクとの冒険の中で、いろいろな表情を見せてくれるのがたまらない。
ヒーローや友情をテーマにした心温まる展開に、コメディタッチのエッセンスやブラックユーモアを加えたストーリーは、大人はもちろん、子どもでも楽しめる内容になっているので、発売後は息子とじっくり堪能したい。そして、華麗なアクションを披露して、父の威厳を取り戻したい。
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