2002年5月16日にサービスを開始し、今年で19周年を迎えるスクウェア・エニックスのオンラインRPG『ファイナルファンタジーXI』(以下、『FFXI』)。20周年という大きな節目を前に、本作の最新の状況や今後についてプロデューサーの松井聡彦氏、ディレクターの藤戸洋司氏に訊いた。

松井聡彦(まついあきひこ)

『ファイナルファンタジーXI』プロデューサー。開発初期からバトルプランナーとして本作に関わる。2013年に田中弘道氏の後を引き継ぎ、プロデューサーに就任した。

藤戸洋司(ふじとようじ)

『ファイナルファンタジーXI』ディレクター。チャットまわりやアイテム合成、チョコボ育成など、生活系コンテンツを中心に幅広く開発に関わる。2016年、ディレクターに就任した。

整備が進んだ在宅勤務環境。“ふつうに雑談すること”の難しさ

──運営19周年、おめでとうございます。2016年から周年タイミングに合わせてお話をうかがってきましたが、年イチの大事な確認作業と言いますか、もはや儀式のようなものになりつつあります(笑)。今回もよろしくお願いします。

松井こちらこそ、『FFXI』を取り上げていただいてありがとうございます。

運営19周年『FF11』プロデューサー松井氏&ディレクター藤戸氏インタビュー。ストーリー展開に合わせて世界に変化が?
プロデューサーの松井聡彦氏。昨年と同様、リモートでインタビューを実施した。

──まずは、運営や開発体制についてお聞きします。昨年の18周年のインタビューの時点で、すでに新型コロナウイルスの影響が色濃く出ていて、在宅勤務での開発環境作りに試行錯誤されていたかと思いますが、そこから1年経っていかがでしょうか?

松井昨年10月の“蝕世のエンブリオ”に関するインタビューでも少しお話ししましたが、開発環境の一部(エディタ類)をWindowsに移行できたので、多くの作業を自宅で行えるようになりました。ただ、実機確認だけは会社でないとできないので、その必要に応じて出社するという感じです。僕の場合、アンバスケード(2章)の新作を毎月作っているわけですが、組み上げるところまでは自宅でやっておいて、会社ではバランスチェックのみ行っています。ですので、いまは月に2、3日程度しか出社していないです。

──月に2、3日ですか! そこまで出社日数を抑えられているんですね。

松井少し前だと、コミュニティ向けの生放送のために出社するといったこともありましたが、いまはWeb会議システムを使ってやるようになったので、さらに出社の機会は減っています。ただ、会社に行くとチームの仲間とゲームの話ができて楽しいので、定期的に行きたいという気持ちはあるんですけどね……。

──開発の作業自体は在宅勤務でも何も問題ない感じですか?

松井自宅なら好きなだけモニターを置けるので、プログラムを書くという環境としては自宅のほうが快適なくらいです(笑)。ほかのメンバーも、仕事の速度や技術的な面では在宅でも問題ないのですが、家庭持ちの人はどうしても仕事に集中するためのスペースを自宅に確保できなかったり、「家のイスだと腰がヤバイので会社に行きます」と言っている人もいたりして。

──そうした個々の調整はありつつも、開発自体には大きな影響もなく、この1年やってきたと。

松井そうですね。

──藤戸さんはいかがですか?

藤戸自分の開発作業自体はエクセルでデータを作るというところがメインなので、ノートPCでも十分対応できていますし、そのへんは問題なかったですね。当時いちばん問題だったのは、“蝕世のエンブリオ”のカットシーンを作るイベント班や、バトルを組み上げてバランス調整しながら実装を進めていくバトル班でした。最前線で手を動かす人たちの環境が去年の5月の段階では「さて、どうしよう」という状況だったのですが、システムまわりの面倒を見てくれている部署とも連携して、なんとかやっていける状況にはなったという感じです。

運営19周年『FF11』プロデューサー松井氏&ディレクター藤戸氏インタビュー。ストーリー展開に合わせて世界に変化が?
ディレクターの藤戸洋司氏。

──いまでは“蝕世のエンブリオ”のシナリオもバトルの新要素もバンバン入っていますもんね。

藤戸そうですね。でも、先ほど松井も言っていましたが、自宅でもそこそこ作業はできるんですけど、会社で顔を突き合わせてこそ真価を発揮する作業もいくつかあるので、感染対策を十分に取りながら出社してくださいね、という形でいまはやっています。

──「これどう思う?」みたいな相談であったり、たわいない雑談などは会社でないとしづらいですよね。

藤戸在宅勤務の運用が始まってから1年くらい経つのですが、“ふつうに雑談する”というのがなかなか難しいんです。そういう場もリモートで作ってはいるんですけど、リアルのように自然と人が集まってくる感じではなく、時間を決めて、「さあ話すぞ」と構えて入ってくるケースがほとんどなので、雑談として花開くまですごく時間がかかるんですよ。そこから広がっていく仕事の話だったり、企画の話というのも本来はあるはずなのですが、そこがちょっと芽吹きにくいなあという印象はあります。

松井『FFXI』チームはベテラン揃いで、やるべきことが分かっている人たちばかりなので、まだ恵まれているほうだと思います。それこそ、新人さんをたくさん抱えた新規プロジェクトなんかは、そうしたコミュニケーションの問題に直面しているでしょうね。いまだったら、某狩猟ゲームの話とか自然発生的にあちこちでされているはずなんです。

──直接は実務と関係なさそうな話でも、何かのヒントになったりしますもんね。

松井けっきょく自分の仕事に戻ってくるんですよ。こういうシステムがよかったとか、ああいうところを上手にやられて悔しいとか、そういう話ができないのは、ちょっともったいないなあと思うんですよね。

ストーリー展開に合わせて世界に何らかの変化が……?

──では“蝕世のエンブリオ”の話題に移ります。バストゥーク編に始まり、ウィンダス編、サンドリア編と来て、初期三国を舞台としたストーリーはまもなく一段落しそうですが、この先の展開に関するヒントや、関連するコンテンツについてお話しいただけることはありますか?

藤戸ストーリー展開については、ヴァナ・ディールのいろいろなところにまだ触れられていない話や設定が転がっているので、それらを順番に拾っては語りつつ、あの3人組(※)って何なの? という部分も深堀りしながら、だんだんと佳境に入っていきます。いま三国に加えて北方の地域も絡み始めていますが、当然そこだけでは終わりません。バージョンアップが行われると“蝕世のエンブリオ”の特設サイトにも更新がかかるのですが、そちらで「えー! こっちにも広がるの?」という情報も出てくると思うので、合わせてチェックしてもらいたいですね。

※3人組……“蝕世のエンブリオ”に登場するグルームファントム(ゴブリン族)、ダッツボグ(ミーブル族)、マッグビフ(マンドラゴラ族)のことで、ディスティニーデストロイヤー団(通称、DD団)と呼ばれている。

運営19周年『FF11』プロデューサー松井氏&ディレクター藤戸氏インタビュー。ストーリー展開に合わせて世界に変化が?

松井今後の展開にも関わってくるのですが、既存のミッションも進めておいてもらえるといいかなと。

──少し脱線してしまうのですが、サンドリア編でまさか○○○○と○○○○の関係について掘ってくるとは予想できず、「世界の雲行きが怪しいというのに、ここを回収するんだ……」と胸が熱くなりました(笑)。

藤戸きっとこの先、運営は続くとしてもシナリオ面でのフォローができないところはたくさんあると思うんです。皆さんが「けっきょく、これってどうだったの?」と思っているようなところはなるべく拾いたいし、「たぶん拾ってくれないだろうな……」と思われているような部分も拾っていきたいなと。

──“その後”が気になるキャラクターはまだまだいますからね。その一方で、本筋のストーリーは徐々にシリアスな展開になっていくのでしょうけど。

藤戸だんだんと個人の事情から世界の事情になっていく感じでしょうか(笑)。

──そろそろそういう段階に入るのですか?

藤戸まだそこまで踏み込んだ話にはなりません。「ヴァナ・ディールのあそこって何だったんだろう?」、「そういうことがあったのか……」といった情報がまたひとつ出てくる感じですね。

──とても楽しみです。さて、コンテンツについてはいかがでしょうか?

藤戸コンテンツについては、ちょっとずつ世界に影響が出ていることを表現するような“変化”が起こり始めます。大規模なコンテンツが実装されるわけではないのですが、「おや、なんか増えたぞ……」という感じで、その変化と連動したバトルを経ることで、ストーリーとのつながりを感じさせるものになっています。これは一気にドッと入るようなものでもなく、「増えてきた、増えてきた、なんだ? なんだ?」という感じで増えていきます。

──ストーリーの展開に合わせて、“何か”が増えていくと?

藤戸そうですね。大規模ではないにせよ、「雰囲気が変わってきたな」というところを味わっていただけたらいいかなと。

──確認ですが、いずれは大規模なものも入るんですよね?(笑)

藤戸いま具体的にお話しできることはないのですが、計画はしています。

“シェオル ジェール”で目指したバトルとは?

──新コンテンツ“オデシー”は、シェオルC、シェオル ジェールと実装され、現在のメインコンテンツになっています。とくにシェオル ジェールは、制限時間内にボスを倒し切れなくても残りHPを引き継いだうえで連戦が可能なことを始め、パーティメンバーのジョブの重複不可、サポートジョブ無効、攻略状況と装備品の強化上限が連動といった新しい仕組みがたくさん導入され、変化を感じさせるものでした。改めて、実装意図などをお聞かせください。

松井“シェオル ジェール”はいわゆるエンドコンテンツですが、最初に企画内容を聞いたときに「ちょっとやりすぎかな」という話はしました。

──それはプレイヤーにかかる制限の面でしょうか?

松井そうですね。でも、パーティ内でのジョブの重複が不可という縛りはあるものの、連戦をしなければほぼいつも通りのパーティ編成でやれますし、大きなところはサポートジョブが使えないだけだなと。また、戦う環境自体を変えないと、どうしても戦術やジョブの選択は最大効率のものに固定化されがちです。そうした中で、「プレイヤーの知識や技能が活かされるような、もう1段階上のバトルに挑戦したい」という強い意思が担当者にあったので、「そこになるべく達成感やカタルシスがあるといいね」と付け加えて、ゴーサインを出しました。

藤戸これまでは、プレイヤーのあいだで鉄板構成が決まってしまうとそれ以外の選択がなかなか取られない状況があって、それをどうにか打破できないかということに主眼を置いたシステム設計になっています。

──固定化されがちな戦術やパーティ編成に変化をもたらせたいという狙いがあったわけですね。確かに、ボスによってガラッと編成が変わったりもしますが、現状は連戦を前提にしているパーティはほとんどないと思います。このことについてはどう捉えていますか?

藤戸いまはそこまで連戦する必要がない作りになっているのですが、“いずれは完全なエンドコンテンツとして連戦が必要となる”ということを完成形として計画しています。現時点で実装されている部分はいままでのやりかたも許容しつつ、なんなら少人数でもある程度のところまでならやれますよ、という感じで、入り口は広く許容する形で最終形まで実装していく、でいいんじゃないかなと。エンドコンテンツとしての最上位をきっちり攻略するのであれば、連戦を始めとした制限の中で、どう戦術を組み立てるかという部分をしっかり考えてほしいというのが、今回のテーマになっています。

運営19周年『FF11』プロデューサー松井氏&ディレクター藤戸氏インタビュー。ストーリー展開に合わせて世界に変化が?
2021年3月のバージョンアップで実装された“Bumba(バンバ)”。このボスを倒すことで、超高性能なニャメ装束が購入可能になる。

──シェオル ジェールでは思わぬアビリティが攻略の役に立ったり、ジョブそれぞれが持つ能力が見直されるなど、単純な強さ以外の部分が再評価されていて、おもしろい状況だなと思いました。

藤戸プレイヤー視点では、コンテンツが供給する問題に対して最有効な挙動、ジョブはどれか、という考えかたになっていると思うので、再評価はその流れの一環でしかないかなとは思っています。攻略に関して言うと、こうすればいいという想定はあるのですが、それだけが正解というわけではなく、「別の方法でも倒せるのならオーケーです」という感じで、許容範囲はけっこう広く取っていると担当は話しています。

松井我々としては、“ひとつだけの正解”を作ることはあまりないんですよ。とはいえ、攻略の答えの幅が広すぎて、けっきょくどれも同じ方法で倒されてしまうのもまた違う。そのへんは敵の行動にメリハリをつけたりすることで工夫しています。今回のように、サポートジョブに制限がかかったことでいろいろと見直してみたら、意外に強くなっていたジョブもあったと思うんですけど、こちらもがんばって調整してきたので、発見してもらえてうれしかったですね。

──それにしても、最前線のプレイヤーのトライ&エラーはすさまじいものでした。有効な攻撃属性、特殊技への対策、支援の方法など、戦闘不能をくり返しながら突き止めていった感じですね。

松井特定のジョブやアビリティを活かすために、それが必要な敵を考える、という順番で作ることはあまりないのですが、こんな敵にしたら戦いかたも変わるだろうね、みたいな作りかたをすることはあります。たとえば、“すごいダメージをどう防ぐか”というテーマで敵を作ったりとか。こういったテーマがピーキーすぎて、やりすぎになっていたものは緩和していますし、プレイヤーが工夫する余地がなくなってしまうようなことがあれば調整しています。

──それはまさにMboze(ムボゼ)の特殊技“ティーンバー”のことだと思うのですが、現在主流になっていると思われる、ナイトの“ランパート”をコルセアの“ランダムディール”や“ワイルドカード”でリキャストを戻して連続使用するという戦術は、いわゆる正攻法なのでしょうか?

松井そのふたつのアビリティが必須とは考えていなかったです。詳細はあえて言いませんが、もっと別な方法で攻略されると想定していました。基本的に、特定のジョブの特定のアビリティがないとクリアーできないというのは考えていません。逆に言えば、攻略法が限定されているほうが作るのは楽なんですけどね(苦笑)。

藤戸誤解のないように補足すると、敵の攻撃をほぼ完封して“確実、安定的に倒す”ことと、“クリアーできる”というのは意味合いがぜんぜん違うんですね。プレイヤーの皆さんは前者を目指して攻略すると思うのですが、開発・運営側は後者の考えかたで、効率具合は関係なく、クリアーできるかどうかで調整しています。

松井最終的には、3連戦のどこでどのジョブを使うかであったり、その組み合わせがパーティによって違うといいよねと話しながら作っています。そのバリエーションのために、いろいろな敵を用意している感じです。

藤戸たぶんですが、“ランパート”を連続使用する戦術というのはパーティにとって負担が少なくて、先ほどの話で言うなら、どちらかというと“確実、安定的に倒す”攻略方法にあたるのかなと。それに対して、“クリアーできる”方法をこちらから教えても、「そんなたいへんなやりかたではやらないよ!」となるでしょうね。

ジョブの要素追加の前に狩人にテコ入れ

──ジョブの調整については、全ジョブを対象とした要素の追加がアナウンスされていましたが、つい先日、狩人の調整が発表(※)されましたね。こちらの意図についてお聞かせください。

※2021年5月のバージョンアップにて、狩人のほか、ナイトにもジョブ調整が行われた。

松井まず、ジョブ全体の成長要素の計画をしていたのですが、遠隔アタッカーという枠の中で、狩人はもう少し調整が必要だと感じていました。この状態のまま全ジョブに要素を追加しても、全体的に引き上がってしまって、その差は縮まらないだろうと。そのため、狩人を個別に調整することに決めました

──具体的にはどのような調整を行うのでしょうか?

松井新アビリティとして“ホバーショット”を追加します。これは、一射ごとに移動することで火力などを得ていくアビリティで、これをうまく使えば、遠隔攻撃に関しての火力は遠隔アタッカーの中ではトップになり、「中・長期戦ではやっぱり狩人が強いよね」という感じになってくれるといいなと思っています。

運営19周年『FF11』プロデューサー松井氏&ディレクター藤戸氏インタビュー。ストーリー展開に合わせて世界に変化が?
ホバーショットの判定が入ると、手もとが赤く光る。なかなかクセのあるアビリティだが、その効果は目覚ましい。膨大なHPを持つNM戦で真価を発揮しそうだが、果たして。

──こういった個別の調整は引き続き行われるのでしょうか?

松井これで極端に凹んでいた部分はある程度修正できたと思っています。狩人については、新しい成長要素やエンピリアン装束だけでは調整しきれないだろうという話になったので、手を入れた形ですね。いまは個別の調整というよりも、新しい成長要素やエンピリアン装束の準備のほうに注力しています。

ノマドモグボナンザの1等当選者は想定よりも2割増

──ヴァナ・ディールの富くじ“モグボナンザ”も、“ノマドモグボナンザ”として大きな変化がありました。こちらの反響、手応えなどはいかがでしょうか?

藤戸買える数が1個になったのは、かばんにとてもやさしいですし、1個になったことで本気度が上がった作りになったのかなと思っています。購入金額は大きいですが、新しい装備品も賞品としてラインアップされているので、ノマドモグボナンザにしてよかったかなと。あと、1回目は理論上の確率よりも2割ほど多い方が1等に当選していて、それもよかったですね。

松井長く続けてきたものなので、変更は恐る恐るではありました。何かを変えると、「前のほうがよかった」という声はつきものです。ですので、名称を“ノマドモグボナンザ”にしていて、何かあれば戻せるようにはしてありますけど、このままいけたらいいなとは思っています。

──やはり、個性的な装備品が目を引きますよね。

松井これはこれで開発コストがかかっているので、魅力的な装備品になっているならよかったです。以前のモグボナンザより、確率的にも手が届きそうな感じがありますしね。

藤戸確率が絡む“くじ”の賞品なので、これがあればほかに何もいらないという性能にはできないなと。以前、クポシールド(合成スキル+3)という景品を用意したときも、それに対抗するものとしてエスカッション(合成職人向けの盾装備)を実装したという経緯があります。

──魅力的であってほしいけど、オンリーワンでもいけないと。

藤戸ノマドモグボナンザの景品の装備品も、「尖った性能は持っているけど、“これが最強”という性能にはならないようにする」という部分が非常に難しくて、慎重に性能をつけてもらいました。片手刀の“柳生の漆黒”は明らかに便利な武器なのですが、それがないとやっていけないかというと、そんなことはなくて。ちょうどいい感じのものに落ち着いたかなと思います。

松井『FFXI』の装備品は縦に順番がある程度決まっている部分もあるのですが、あるときから横に広げていくという方針に変えて以来、みんな苦しみながらもいろいろなバリエーションを作ってくれて、今回もなかなか考えたなと、唸らされましたね。

──ノマドモグボナンザ以外の入手手段もほしいという声もありますが……。

藤戸それをクエストなりで入手できるようにするとなると、それ前提の作りにしなければならなくなるんですよ。あの性能のままならばクエストは相当歯応えのあるものにせざるを得ないですし、クエストがそれほどでもないならそれなりの性能しかつけられなくなります。あれはモグボナンザだから作れる装備品だなと思っています。

周年だから聞いておきたいアレコレ

──“蝕世のエンブリオ”の新規BGMを始め、2020年10月のハロウィンイベントで聴くことができた『Devils' Delight』、シェオル ジェールの“Bumba”バトル曲など、このごろ新曲が増えています。iTunesなどでの配信予定はありますか?

藤戸まだあるんですよ、実装していない曲が(笑)。いつでも聴きたいという声はこちらにも届いていますので、なるべく前向きに考えたいですね。

──『Devils' Delight』は、ハロウィンイベントの報酬としてオーケストリオン譜が得られたのはいい仕掛けでした。

藤戸『Devils' Delight』はハロウィンイベント以外では聴けないので、それはさすがにもったいないなと。せっかくの新曲ですし、いつでも聴いてもらえるようにした形です。

──あとは、ここのところ毎回お聞きしていますが、ストレージ拡張の進捗についてお聞かせください。

松井もちろん進めています。現状でも各ストレージにアイテムが表示されるまでの時間が長く、単に拡張するだけではきびしいだろうということもあり、エンジニアと仕様的に詰めないといけないところがたくさんあるという状況です。

藤戸ストレージが増えることによって副次的に発生することについても、どこまで対応するか相談を続けています。たとえば、通信時間の短縮もそうですし、マクロや装備セットの追加はどうするのか、あとはアイテムをいちいちマイバッグを経由せずにストレージ間で移動できたほうが便利だろうとか、仕様が変わったことで間違ってアイテムを捨ててしまった場合のルールをどうするか……とか。

──確かに重要な決めごとですね。すべて実現してもらうのが理想ですが、それでは実装まで時間もかかってしまう。プレイヤーとしては1日も早く拡張してほしいでしょうし。

藤戸そういった想定される要求についてエンジニアに相談していて、どこまでやるのか詰めきれていない状況です。実装して終わりというわけではないですし、その後のメンテナンスのことも考えると、最初の舵取りを適当にやってしまうとかなり危険なんです。公開してからではもとに戻せませんから……。あと、そもそもの話になってしまうのですが、「ストレージの拡張はもうできない」と一度は皆さんにお伝えしています。そこを無理に広げようとしているので、どうしても慎重になってしまう点をご理解いただければと思います。

──話は変わりまして、初心者・復帰者向けの新機能“アシストチャンネル”ですが、現状ではあまり活用されていないという認識です。今後、何か手を入れる予定はありますか?

藤戸まったく使われていないわけではなさそう、というところまでは把握していますが、「手助けツールとして大活躍!」というふうになっていないのはおっしゃる通りだと思います。ただ、アシストチャンネルは運営側が手を出してどうこうというコンセプトではなく、プレイヤーどうしの助け合いの場を用意することが先決でした。ここから先は、運営側としてどんなフォローができるかという段階に入っていくんだと思っています。すぐにできることとしては、いまはチャットが見られるエリアを制限しているので、その範囲を拡張するというのがあります。しかし、それが効果的かと問われると、違うような気もしますね。取りうるひとつの手段にすぎません。

──運営側が介入せず、プレイヤーに互助を委ねている場所を、運営側が「積極的に使ってください」と言うのもちょっと変な話になりますか。

藤戸アシストチャンネルで助けを求める、もしくは手助けしてあげてくださいねという呼びかけ自体は継続的にしていきますけど、それ以上に踏み込んでいくのはなかなかにセンシティブだなとつねづね思っています。サービスを提供している側としては、プレイヤーに投げっぱなしの部分もあるわけですし。

──継続的に周知を続けていくのが重要かもしれませんね。

藤戸アシストチャンネルで話すことは悪いことではないというか、気軽に質問やお手伝いをお願いしてもいい場所だよというのを広められたらいいですね。あと、アシストチャンネルは連続で発言ができないので、うまく会話にならないという意見も聞いています。ですが、そこはアシストチャンネルをきっかけとして、tellでもいいですし、パーティに誘ってパーティチャットでもいいのかなと。

20周年に向けて復帰するならいま!

──最後に、2021年の『FFXI』の方針や、どこに注目してほしいかお聞かせください。

松井“蝕世のエンブリオ”のアップデートが主体ではありますが、全ジョブの成長要素は今年度中に入れられればと思って動いています。バトルに関しても、変化があるようにしていきたいです。“蝕世のエンブリオ”に関連したコンテンツもちょこちょこっと入ってくるので、そちらも楽しみにしていただければと思います。

藤戸今年は19周年なので、つぎの20周年という超区切りのいい周年に向けて、大盛り上がりする準備をしていきたいと考えています。“蝕世のエンブリオ”の話も盛り上がっていきますし、それに付随して世界の雰囲気が変化する要素も入り、ジョブ全体の強化も検討しつつ、システム面ではストレージのほうも具体的な形になるように……と。そういう、本当に実現できるのか、できないのか……いや、やるんだよ! みたいな感じで走っているものもたくさんあって。最初は小さい火がパンパンパンと出てくる感じかもしれませんが、20周年が近づくにつれ大きな花火になって、お祭り騒ぎみたいな感じで盛り上がっていくみたいな、そこへ向けての助走期間になるのかなと思っています。18周年はまだまだ温める段階というところもあったのですが、今年度からいよいよカタチになり始めるかな? ということで、できる限り力を出していこうというのがいまの心境です。

松井20周年に向けての準備期間ではあるので、休止中の皆さんにもぼちぼち戻ってきてもらって、20周年にはいっしょに「ウェーイ!」と盛り上がれるようにいまから準備しておいてもらえるとうれしいですね。“蝕世のエンブリオ”もこの先、すごくおもしろくなっていくと思うんですけど、その結末を見届けるには既存のミッションを進めておかないといけないので、いまくらいから戻っておくのがちょうどいいかもしれませんよ。いまも遊んでくださっている方は、アシストチャンネルなどを通じて、復帰者や初心者をやさしく手伝ってくれるといいなと思います。

運営19周年『FF11』プロデューサー松井氏&ディレクター藤戸氏インタビュー。ストーリー展開に合わせて世界に変化が?