ファミ通.comの編集者&ライターがゴールデンウィークのおすすめゲームを語る連載企画。今回紹介する作品は、『ゆるキャン△ VIRTUAL CAMP ~本栖湖編~』です。
【こういう人におすすめ】
- まったり富士五湖でのキャンプ気分を味わいたい『ゆるキャン△』ファン
- キャラクターとのやり取りを楽しみたい『ゆるキャン△』ファン
- とにかく『ゆるキャン△』ファン
古屋陽一のおすすめゲーム
『ゆるキャン△ VIRTUAL CAMP ~本栖湖編~』
- プラットフォーム:Nintendo Switch、プレイステーション4、PC、iOS、Android、Oculus Quest
- 配信日:2021年3月4日配信
- 発売元:ジェムドロップ
- 価格:Nintendo Switch版、プレイステーション4版、Steam版は2420円[税込] Oculus Quest版は2100円[税込] スマートフォン版は1960円[税込]
『ゆるキャン△』に心惹かれて……
“気分が乗る”とか“乗らない”ということは人間誰しもあるかとは思いますが、記者もその例外ではなく、原稿の締め切りが過ぎているのになかなか気持ちが乗らずに、パソコンの前でしばしボーッとしているということもよくあります。
仕事の場合はさすがに無理にでも気分を乗せようとしますが、趣味の世界だとそのまま気分に委ねて縁遠くなる……ということがしばしあります。たとえば、テレビアニメの第1話を見て、「おもしろそうだなあ。続きを観たいなあ」とは思いながらも、ついつい観ずにいてしまうというのが、それにあたるのかもしれません。時間の兼ね合いとか、ほかに観たいものがあったりして手が届かないとか、いろいろとあったりするので、“観続けられる”というのも、ひとつの“縁”と言っていいのかもしれません。記者の場合、年を重ねるにつれ体力もなくなってきており、全話観続けることも減ってきてしまいました。そんな感じなので、1クール最後まで観終えることができたりすると、「これは“縁”があったんだなあ」とちょっぴり感動したりもします。
最近だと、『ゆるキャン△』は、そんな“良縁”に恵まれたタイトルでありました。などと、回りくどく説明してしまったわけですが、端的に言うと、“最近ハマったアニメ”であります。
『ゆるキャン△』と言えば、2018年1月にTVアニメ第1期が放送されるや大人気を博し、2021年1月からは第2期が放送。実写ドラマ化もされており、昨今のキャンプブームの立役者とも言われているタイトルです。記者もその存在は知っていたのですが、忙しさにかまけて手がつかなかったものが、昨年(2020年)の冬に何の気なしに観始めて、すっかり気に入ってしまったのでした。
もともと“青春時代の交流を描く”タイトルは好きなクチなので、なでしことリンを中心としたキャラクターたちの友情模様は記者の琴線に触れたりもするのですが、『ゆるキャン△』のどんな点が魅力かということに関しては、ちょうどファミ通.comの“ゴールデンウィークおすすめアニメ”で、小林白菜さんが魅力を紹介しているので、詳しくはそちらをご覧いただくとして、記者の個人的な思いで語らせていただくとすると、舞台が山梨県であるということも大きかったのです。
誠に個人的なお話で恐縮ですが、記者は山梨県出身でして、テレビアニメを観始めて『ゆるキャン△』の舞台が山梨県であることを知り、「おおおっ!」と感動してしまったのでした。故郷を離れて数十年経つ記者ではありますが、『ゆるキャン△』に身延とかの地名が出てきたりすると、「アニメに、あの身延が出てくる……」と、妙な感動を禁じ得ませんでした。ちなみに記者は甲府出身で、身延には一度も行ったことがないのですが、幼少のころに聞き慣れていた地名がいきなりアニメで出てくると、なぜかグッと来てしまいます。さらに記者は学生時代に本屋さんでバイトをしており、リンが「山梨県出身で、本屋さんでバイトをしている」というだけで、親近感が200%くらいになってしまったのでした。
リンと会話しているだけでとにかく楽しい
そんな『ゆるキャン△』ファンのために用意されたタイトルと言えるのが、ジェムドロップの『ゆるキャン△ VIRTUAL CAMP』です。登場人物になりきって、まさに“バーチャルキャンプ”を楽しめる本作は、『本栖湖編』と『麓キャンプ場編』がリリースされており、『本栖湖編』ではなでしこの視点で、『麓キャンプ場編』ではリンの視点で、ふたりのまったりキャンプが楽しめるという内容になっています。
Nintendo Switchやプレイステーション4など、幅広いプラットフォームに対応している本作ですが(ゲーム内容は同じとのこと)、今回記者がプレイしたのはOculus Quest版(ハードはOculus Quest 2)。なでしことリンのやり取りを、臨場感溢れるVR空間で体験してみたかったからであります。
『本栖湖編』では、富士五湖のひとつである本栖湖の湖畔にて、なでしことリンとの一泊二日のキャンプ生活が満喫できます。先述の通り、『本栖湖編』ではなでしこの視点でプレイすることになるのですが、ヘッドセットをかぶっていきなり隣にいたリンの存在感は圧倒的。「ああ、これからふたりでキャンプをするんだなあ」と、いやが上にも気分は盛り上がります。
Oculus Quest版での操作は、一定時間対象に視点を合わせているとアクションを起こしてくれるというもの。リンをじっと見ているとリンとの会話が発生し、気になる対象に視線を固定していると、そのことにまつわるアクションが生じるといった具合です。薪に視線を固定していると、焚き火をする流れになったりします。UIをできるだけなくして、コントローラーによる操作を必要最小限に抑えているのは、プレイの没入感を高めるためでもあるかと思われますが、リンと会話しているだけで、とにかく楽しいです。
プレイにアクセントを与えてくれるのが、スマホによる撮影ができること。キャンプなどに行くと、周りの風景などを撮影したくなるのは人情というものですが、本作では気になるスポットを撮影可能。ときに、なでしことリンとのツーショットも押さえられるというシチュエーションも。
さらに、『ゆるキャン△』と言えば、適宜写真を交えての、キャラクターたちによるSNSでのコミュニケーションが楽しみのひとつだったりしますが、本作ではこれもしっかりと再現。プレイヤーがじかにメッセージを入力するというわけではありませんが、なでしこやリン、千明、あおい、恵那らのやり取りを見ているのは、「いつも通りだなあ」という感じで妙に落ち着きます。
記者がとくにググッときたのが、キャンプでの食事。キャンプでの楽しみのひとつと言えば食事だったりするわけですが、『本栖湖編』では夜に野菜がたっぷりの特製ピリ辛スープカレーを食べることに。それが、なんともおいしそう(!)で、実際に手に取ることができないのが、返す返すも残念……。
そして、本作において特筆すべきは、何と言っても富士山の存在感でしょうか。本作では、全編にわたって富士山が目の前に鎮座していて、1日の移ろいにしたがって変わりゆく富士山を眺められるようになっているのですが、その美しいことといったら。本作は、富士山を満喫するためのゲームと言っても過言ではないかもしれません。主役は富士山と言っていいのかも……。
正直に告白しますと、山梨県民あるあるのつねとして、記者は富士五湖近辺で富士山を見たことは一回もなかったりするわけですが(※)、「実際に見る富士山はこんな感じできれいなんだろうなあ」と思いを馳せたりしました。そして、状況が落ち着いたら、富士五湖や身延などを、帰郷に合わせて訪れてみたいと強く思うのでした。
※もちろん、富士五湖近辺で富士山を見ている山梨県民はたくさんいます。
ゲーム性はあまりないものの、キャラクターたちのほのぼのとした交流や、風光明媚な風景を堪能できる点など、『ゆるキャン△ VIRTUAL CAMP』は、TVアニメの延長線上で、まったりと“ゆるキャン”を楽しめる1作です。