オンラインRPGはふたつのPCゲームが始祖だと言われている。一方の『ディアブロ』が誕生したのは1996年12月、もう一方の『ウルティマオンライン』は1997年7月。
僕らおじさんゲーマーがオンライン(MMO)RPGを遊び始めて、ざっくり20年ほどが経つ計算だ。その間に、内容は進化と変化を続けている。
ユーザーフレンドリーなシステムが取り入れられ、スマホ対応タイトルも増え、年齢層はどんどん若く。ということは……、
という疑問を抱いたのはこのふたり。
ミス・ユースケ:ファミ通.com編集者。およそ17年前に『リネージュ2』でMMORPGデビュー。若作りしているが、混じり気なし純度100%のおじさん。最近、ひざが痛い。
カイゼルちくわ:フリーライター。初めて遊んだMMORPGは『ラグナロクオンライン』β版。混じり気なし純度100%のおじさん。最近、肩が痛い。
プレイヤーの年齢層が広がっているから、僕らの遊びかたはもうメインストリームじゃない気がするんですよ。
私たちが想像するオンラインRPGの遊びかたというと、
- ゲーム世界の住人として物語やセカンドライフを体験する
- ギルドメンバーやフレンドとだらだらチャットする
- 下調べなしで新ボスに突撃して全滅する
- 偏ったステータス振りでキャラを育ててドヤ顔する
- 黙々とレアアイテムを掘り続け、露店で売れるとすごくうれしい
- オフ会やろうと誘われて焦る(ネカマ)
- キャラ名の前後に“†”(ダガー)を付ける
もはやあるあるネタ。あらゆるオンラインRPGの紹介記事にコピペできるやつ。
職業柄、トレンドは追っておきたいじゃないですか。そこで、最新の遊びかたを教えてもらうために若者をお呼びしております。ちょうど『リネージュ2M』(スマホMMORPG)がリリースされたばかりなので、それを題材にして。
「自分はトレンドに詳しくない」と白状するのはファミ通.comにとって大きなマイナスだと思いますが、教えてもらえるのはいいですね。
21歳! ふだん接しない世代だからちょっと緊張するような。
僕もです。念のため、別タイプの人にもお願いしてあります。
ちなみに、ひとり目のホスト・きんこ君はとあるPC用オンラインFPSの元上位プレイヤー。ゲーム好きなホストはけっこう多いと聞く。何となく一般的なゲーマーとはゲームに対する姿勢が違いそうなので、職場の同僚であるカヲル君とゲン君とともに来てもらった。
いまどきのホストはアフターもゲーム内で
『リネージュ2M』、けっこうずーっとやっちゃいますね。いまレベル30くらい。お話を始める前に、ひとつ謝っておきたいことがあります。
どれくらい遊んだかお見せしたかったんですけど、酔ったときにパスワードを変えたら忘れちゃって……。まじですみません!
きんこはけっこうやってますね。僕たち、時間だけはありますから。ゲームするかお酒飲むかなので。
そういえば、緊急事態宣言等の影響を受けて、ホストクラブは短縮営業を行っている。営業時間を前倒ししていることもあって、ゲームをする時間も増えているそうだ。
こういう場に呼んでおいて何なんですけど、ホストってゲームやるの(※)?
※編注:ミス・ユースケときんこ君は旧知の仲なので全体的に馴れ馴れしい。
やりますよ! ゲームに興味なさそうなお客さん(女性)もふつうにゲームやってますね。
そういうお客さんと話をするためにも、ゲームやアニメを知らないと仕事に支障が出るんですよ。流行ってるものはチェックしてます。
もうすでにジェネレーションギャップ? カルチャーショック?
ホストって陽キャの象徴でしょ? 僕らゲーマーを見下してるんじゃないの?
“ゲームとかアニメ好きをばかにする人”って、いまは少ないと思いますけどね。
そうそう。『鬼滅の刃』とか『呪術廻戦』とかはもう、押さえておかないとまずいです。会話にならない。
キャバ嬢の皆さんとかもね。けっこうみんなゲームやってますよ。
みんなお金を使わずに持ってるんで、ここぞとばかりにフル課金で。
うちのお店によく来てくれるお客さんが、ゲーム内でつながってチームのエースになってくれたこともあります。
漫画みたいな話だけど、ホストとお客さんの関係だと思うと理解が追いつかない。ちなみに、お客さんとフレンド登録したりはしないの?
うーん、それが難しいところなんですよ。ゲームでも仲よくはしたいんですけど、「寝てるって言ったのに起きてるじゃーん!」とか。
すごいゲーマーな従業員がうちの店にもいまして。お客さんとのアフター(※)がゲーム内ということもあるみたいです。
※アフター:お店に来てくれたお客さんと、勤務時間外で親しく過ごすこと(この解説にはおっさんの偏見と不要な心遣いがふんだんに盛り込まれています)。
ゲームでアフター!? でもまあ、よく考えたらお客さんはそれで楽しんでるわけで、ある意味すごく健全なのかもしれない。
ということは、今後はホストクラブで楽しい時間を過ごしたらアフターで『リネージュ2M』の攻城戦ということもありえるわけか。
『リネージュ2M』で、お客さんがトップでメンバーが全員ホストみたいな血盟(いわゆるギルド)があったら最高ですね。
若者のほうがよっぽど“オンラインRPG”を“RPG”として遊んでいる
ホストのゲーム事情で盛り上がったところで本題へ。若者たちがどのように『リネージュ2M』を遊んでいるか聞いてみたい。
ちなみに、ミス・ユースケはMMORPGをふつうのRPGと同じように楽しむタイプ。クエストのメッセージを隅まで読み、ムービーをじっくり観賞し、とことん物語を吸収したいと思っている。
一方のカイゼルちくわは、自分のキャラをひたすら愛でるタイプ。自分のキャラを輝かせたいので、活躍を実感できるダンジョンやボス戦のほか、自分のキャラが英雄的に見えるストーリーにどっぷりハマる。
『リネージュ2M』って放置ゲーといえば放置ゲーですよね。腰を据えて遊ぶというよりは、ながらプレイって感じなのかな。
放置ゲーとは、スタンダードになりつつあるゲームのスタイルだ。デッキや部隊を編成し、セットしたら戦闘はオートでお任せというソーシャルゲームが好評を博している。忙しい現代人でもこれなら楽しめる。
PCのMMORPGに導入された頃は驚いたものだが、いまやスマホMMORPGでは当たり前の機能に。昔のMMORPGでは、ターゲット選択からスキル選択、キャラの移動など、すべて手動で数時間に渡ってやっていたのになあ。
PCのMMORPGは昔ハマってたんですけど、スマホでは『リネージュ2M』が初めてなんですよ。その立場からすると「えっ、こんなに楽でいいの?」って感じです。疲れないのはいまの時代に合ってるのかな。
フリーランスです。フリーターじゃなくてフリーランス。ただ自由なだけ。
「こんなに楽でいいの?」は僕もよく思ってる。るぅ君はどうですか? スマホのこの辺のタイトルをよくプレイしていると思うのだけど。
スマホのMMORPGは(戦闘や移動は)オートが基本なので、僕としては馴染みのある遊びかたですね。ゲームを放置状態にして、動画やアニメ見つつ遊ぶのがいいんですよ。
いまはそういう感じなんですなぁ。時間の節約になるのはたしかにいいですよね。
あとはギルドイベントがあったら友だちと通話しながら遊んだり。手動で(事細かに)やったり、何十人かで連携してボスを攻略したり、そういう感覚はあんまりないですね。
最近のソーシャルゲームはキャラを集めて編成してバトルはオートみたいなもんだし、それがそのままMMORPGになったようなイメージなのかなぁ。おもしろいとは思うんだけど、古いゲーマーだからか、もやもやするんですよ。
これは本当に“RPG”なのか、と疑問を感じたりしますよね。
「僕はオンラインRPGに、そのゲームのストーリーを求めていないと思うんです」
たとえば友だちがゲーム内でできたとして、その人とボイスチャットしてボスを倒したっていう思い出がゲームのストーリーになるような気がするんです。それが価値があるものとして、スマホMMORPGを遊んでいるのかなと。
えっ? ちょっと待って。そのセリフ、用意してきた? 今回ってそんないいこと言う場だったっけ?
突然いい話が出てきたことに動揺し、推しの尊さを受け止めきれない人みたいになってしまった。ゲーム側が用意したストーリーを登場人物として追体験するのではなく、自分たちでストーリーを作っている感覚なのだと思う。
それはある意味、めちゃくちゃMMORPGだ。MMORPGではストーリーやムービーを飛ばす人も少なくないと聞いたことがある。それはRPGを遊んでいると言えるのかと疑問だったが、るぅ君の話を聞いたら腑に落ちた。
“MMORPGはゲームの世界で生活するジャンル”って言われますもんね。私たちよりよっぽどロール(役割、役)をプレイング(演じる、なりきる)して楽しんでるじゃないですか。
“キャラを集めて戦闘させて”みたいなソシャゲとは、そういう点で差別化されているからこそ、スマホMMORPGを遊んでいて楽しいんだと思います。(一般的なソシャゲは)戦闘でキャラを借りられるくらいで、横の広がりがあまりないので。
ゲームを通したコミュニケーションに対する考えかたが、僕らとは根本的に違うのかもなー。
僕はチャットやギルドのつながりが楽しくてMMORPGを遊んでますね。ゲームを探すときはストーリーとかキャラとか戦闘システムとかよりも、チャット系のシステム周りが気になっちゃうんですよ。
昔のMMORPGでは、ゲーム内で出会ったフレンドに対してはリアルフレンドとはどこか一線を引いた接しかたをしていた人が多かったように思う。
敬語はいまよりずっと重たい不文律だったし、フレンド申請にも勇気が必要だった。そんな環境でゲーム内で出会ってリアル結婚をする人たちが出てきたときには、めちゃくちゃ驚かされたものだ。
一方、いまはボイスチャットが主流。おっさん世代でもゲームを通じて知り合った人たちと腹を割って話せている。ゲームは直接的なコミュニケーションツールとして機能。だからこそ、ストレスなくプレイヤーをつないでくれるタイトルほど人気が出るのだろう。
もちろん、昔からそういう遊びを楽しむ人はたくさんいた。いまはその流れが加速している。ネットネイティブ、SNSネイティブの世代とゲームが出会うことで、ゲームは当時の思いとは違う方向へと進化していく。
もはや、オンラインRPGはRPGのオンライン版ではなく、“オンラインRPG”という完全に別のジャンルに育っているのだろう。
きんこ君たちはゲームに何を求めてる? どういうきっかけでゲームをやろうと思う?
やっぱりTwitterとかで流行っているのを見るとやりたくなりますね。仕事にも役立ちますし。
ミーハーなので楽しそうなゲームに手を出しちゃいます。YouTubeで動画を見て「あ、モンハンがSwitchで出るんだ」とか。
時代ー! “若者は動画で情報を得る”って知識として知ってはいるけど、言葉で聞くと芯に響くな。
同じネットでも、BBSとか見ていた我々世代とは違うんですよ。
「BB……S?」
いわゆる“ネット掲示板”のことです。みんなで書き込んで情報交換をしていたんですよ。
改めて説明すると、世代の違いにぞくぞくしてきますね。
僕は小さい頃にゲームを買ってもらえなくて、全然ゲームを遊ぶ環境がなかったんですよ。『リネージュ2M』はきんこが教えてくれて、やってみたらふつうに楽しめました。
あまりゲームやってない人でも楽しく遊べる。それをどんどんアピールしましょう。これ広告の一種なので。
ちなみに、るぅ君はストーリーは飛ばさず読んでますか?
ざっくり読む感じです。そうすると認識の抜けが出てくるじゃないですか。そういうのをYouTubeの解説動画で「こういうイベントあったなー」と補填する感じ。あと、続編タイトルだと前作をやっていないとわからない裏設定があったりするので、それも解説動画で知ることはありますね。
YouTubeなどで、物語が重要なゲームの内容を全部説明するものはいただけない。しかし設定の考察なら話は別だ。「ほかの人はそう考えるのか」と感心でき、物語自体がコミュニケーションツールとして成立している。
ちなみに、『リネージュ2M』でのプレイヤーの立場は、迫る世界の危機を前に突然目覚めさせられた"継承者"だ。ゲーム中に継承者とは何か、なぜ封印されていたのか、情報が断片的に明かされていく。
世界観の考察動画などがあればおもしろそうなので、公式でやっていただけないでしょうか?
いや、たしかに興味深いんですけど、こじれたおっさんは解説とか観たら負けだと思ってしまうんや……。『エヴァンゲリオン』の解説動画とかな!
今日いちで声が大きいじゃないですか。何か嫌なことでもあったんですか。
何を楽しみに、どのようにゲームを遊ぶ?
効率的な育成や「最強を目指す!」みたいなところに興味はないんですか?
一時期はありました。「強いよ!」って周りにアピールするのって何だかんだで気持ちいいじゃないですか。そのために効率を求めていったのが、ゲームのストーリーを後回しにする一因だったのかもしれないです。
きみはもともとFPSで頂点を目指してたわけだしなあ。RPGでもそういうところあるの?
あります。僕、ムービーをスキップするタイプなんですけど、それは「これ観る時間があったら敵を2~3体倒して経験値を稼げるな」って思っちゃうから。
と、ここでるぅ君が「そういえば」と手を挙げた。先ほどの話によると、るぅ君はストーリーを流し読みする派。ムービーも飛ばしがちということだったが。
『リネージュ2M』を遊んで驚かされたのが、ムービーがめちゃくちゃ凝っているんですよね。ムービーを見て「すごく作り込まれている世界なんだ」と、わくわくしちゃいまして。今回は珍しくメインストーリーを中心にやってます。
※編注:るぅ君にこういう発言をしてくれと頼んだわけではありません。これは彼の本心です。
『リネージュ2M』をストーリーメインで遊ぶのは正解だと思いますよ。ストーリーはおもしろいし、経験値も効率がよくておいしい。行動範囲が広がると遊べるコンテンツも増えるから、最強への近道だと思います。
今度はライターさんがCMみたいなこと言い出した(※)。
※編注:こっちは広告としてアピールしたいことを言いました。でも、発言内容は本当です。僕らを信じて!
びっくりしたのは本当ですよ。しっかりとボイスも入っていて、世界観に魅力を感じました。
遊んでいると、ルーチンができ上ってきますよね。僕はまず村でアインハザードの像から啓示クエスト(※)を全部受けてからストーリーを進める。わりと一般的かな。
※啓示クエスト:各村にある創造神アインハザードの立像から受けられるクエスト群のこと。ほかのMMORPGでいうところのデイリークエストに近い。
友だちと遊んだりストーリーを楽しんだりとも違って、“ひたすら強くなることが快感”という遊びかたはあるでしょうね。そういうタイプのほうが主流なのかも。
ゲームの遊びかたは日々進化している
『リネージュ2M』って複数アカウントで遊ぶこと前提な部分もあるわけですが、仮にやり込むならキャラをたくさん作ったりしたいですか?
スマホMMORPGは複数アカウントでやってます。ステータスの振り直しができないタイトルもありますので、いろんなタイプのキャラを作りますね。性別で装備できるアイテムが違う場合もあるので、男女で別キャラを作ったり。
その辺は我々と同じですね。スロット数が許すなら全種族のキャラ作りますし。
『リネージュ2M』って、『パープル(PURPLE)』というアプリを使うとPCで起動しながらスマホで操作したり、複数アカウントで同時起動できたりするんです。こういうの使いたいですか?
へぇー。使ってみたい! 僕がガチでゲームやってるときにあったら絶対飛びついてました。
当時のきみはそれがあながち冗談じゃないからすげえと思うわ。
こういう便利なアプリが用意されつつも、『リネージュ2M』にはふしぎな点もあります。ポーションとか消耗品をこまめに買わないといけないんですね。ほかのスマホMMORPGだと、どこでも買いものできたり、とにかく便利にしているタイトルもあるじゃないですか。
そうそう。僕なんかは便利すぎると味気なく感じるので村に帰って買いたい派なのだけど、いまのスマホMMORPGに慣れてる身からしたらどうでしょう。不便に感じることはありました?
若い人は「不便でやってらんない!」と感じるのかと思いましたけど、そういうものでもないんですなぁ。
事前に調べて“そういうもの”と知った状態で遊んでいたからですかね。効率を求めるなら、やらなくてはいけない部分として受け入れられると言いますか。
ああ、それだ! 我々おっさんは昔からの楽しみかたとして、事前に予習しないでとりあえずぶち当たっていくので、何じゃこりゃあとか思ってしまうのかも。
以上、雑談形式でいろいろと語ってもらった。おっさんサイドとは少し感覚が異なるものの、「わかるわー」と納得できることも多かった。今後、また別の機会があれば、プレイスタイルをガチプレゼンしてもらうのもおもしろそうだ。
ゲームを楽しもうとする気持ちはどの世代も変わらないのだろうが、SNSや動画といった、いまあるものの活かしかたが世代ごとに違うだけなのだろう。
昔からの遊びかたにもいいところはあるし、新しいものにも流行るだけのよさがある。我々が勝手に“違うもの”として線を引いていただけなのかもしれない。偏見や曇りのない目で受け入れて楽しむのがベスト。そう胸に刻んで、座談会を締めようと思う。
我々とは感覚が違ってましたけど、若い人の遊びかたもおもしろそうでしたね。『リネージュ2M』はそういうプレイスタイルに対応しつつ、もちろん古参MMORPGプレイヤーなりの遊びかたもできる。古きよきMMORPGと最新のゲーム性を併せ持った最新作だからこそ!
話がまとまらなかったらどうしようと不安だったんですけど、それぞれの意見が適度に出てきてホッとしています。『リネージュ2M』が懐の深いゲームで助かった。
※るぅ君の服に全編を通してモザイクがかかっているのは別ゲームのパーカーだから。たしかに、「NCSOFTさんのことは気にせず、自由に振る舞ってほしい」と言ったけど! とはいえ、忖度した内容ではないという証明にもなっていると思う。