アニメーション映画『空の青さを知る人よ』が、アマゾンプライムビデオにて2021年4月現在、見放題配信中となっています。

 テレビアニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』(『あの花』)、アニメ映画『心が叫びたがってるんだ。』(『ここさけ』)に続く、監督・長井龍雪氏、脚本・岡田麿里氏、キャラクターデザイン及び総作画監督・田中将賀氏の座組による“超平和バスターズ”が手掛ける“秩父三部作”の第3作目となる本作。

 俳優の吉沢亮さんや吉岡里帆さんの出演や、2曲のテーマソングをシンガーソングライターのあいみょんさんが手掛けたことでも話題になりました。

 また、主人公の相生あおいを演じる若山詩音さんは現在放送中の『SSSS.DYNAZENON』の南夢芽役や、『さよなら私のクラマー』の越前佐和役などで、活躍の幅を広げています。

 前2作とは異なりストレートな青春物語ではないこの作品では、“20代後半以上の大人”にこそ観ていただきたいテーマが描かれています。

 もちろん青春真っ只中の方や、「もうそろそろ大人にならなきゃ」と感じている若い方にも、それぞれに感じ入る部分があるはず。今回はそんな本作の魅力を、ご紹介させていただきます。

『空の青さを知る人よ』(Amazon Prime Video)

『空の青さを知る人よ』あらすじ

 17歳の高校二年生・相生あおい(声:若山詩音)は、31歳の姉・あかね(声:吉岡里帆)は、13年前に事故で両親を失っており、姉妹でふたり暮らしをしています。

 また、姉のあかねは、あおいを育てるために恋人との東京行きを断念して生まれ故郷に残ったという過去があります。

 あおいの趣味はベースを演奏することなのですが、彼女がベースを弾くことになったそもそもの切っ掛けは、姉の高校時代の恋人だった“しんの”こと金室慎之介(声:吉沢亮)のバンド活動に憧れを抱いたから。

『空の青さを知る人よ』アマゾンプライムで配信中。大人にも観てほしい、超平和バスターズの集大成【アマプラおすすめ作品】
相生あおい(画像は公式サイトより)
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相生あかね(画像は公式サイトより)

 親同然の存在として自分を育ててくれたあかねにこれ以上の迷惑は掛けたくないと、「高校を卒業したらミュージシャンになるために上京したい」と考えているあおい。それは奇しくも、しんのがかつて選んだのと同じ道です。

 そんな中、ひとりで東京に行った切り音信不通になっていた慎之介が、とある理由であおいたちのもとに帰って来ます。そして時を同じくして、高校生だったころのままの姿の“しんの”が過去からやってきてしまったことで、姉妹の関係は、少しずつ変わりはじめるのです……。

慎之介としんの。ふたりをまえにあおいの心は揺れる

 と、“高校生時代のしんのが過去からやって来る”というファンタジーな要素が含まれている本作。ミュージシャンを目指して上京したものの、思い描いていた夢とは少々違った日々を送っている、大人になった現在の“慎之介”と、無邪気で真っ直ぐな、過去の高校生だったころの“しんの”。

 ふたりの慎之介(しんの)が登場することで、13年間という年月が彼をどれほど変えてしまったのかを浮き彫りにします。

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金室慎之介・しんの(画像は公式サイトより)

 音楽は続けているものの、“演歌歌手のバックバンド”という望んではいなかった役割を日々こなしている慎之介(31)は、思うようにいかない人生に卑屈になり、かつての真っ直ぐさを失っています。

 市役所企画のライブイベントであおいたちとともに演奏することになると、「ガキの遊びといっしょにされたくない」などと吐き捨てる慎之介。自分がベースに興味を持ったことを喜んでくれた思い出の中の彼とはほとんど真逆の物言いに、あおいは傷付き幻滅します。

 一方で、“生き霊”のような存在として現代に現れたしんの(17)は、かつてと変わらない屈託のなさ。あかねに上京を断られた直後の状態で未来にやってきた彼ですが、「東京でビッグになってあかねを迎えに行く!」と、これからの人生に前向き。

 幼いころにしんのに抱いていた感情は“憧れ”のようなものだったあおいですが、同年代として目の前に現れた彼に、今度は少しずつ好意を寄せるようになっていくのでした。

初恋、夢と挫折、姉妹愛といったテーマが、老若男女の胸を打つ

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画像は公式サイトより。

 しんの(17)への好意と、変わってしまった慎之介(31)への憤りに引き裂かれそうになったあおいは、姉のあかねへとキツく当たってしまいます。

 それは「自分さえいなければ、あかねはしんのといっしょに東京に行って、みんな幸せになれたかもしれない」という、どうしようもない気持ちもあってのこと。

 では、あかねのほうの気持ちはどうなのでしょう? 作中、あかねの本心が彼女自身の口から説明されることはほとんどありません。しかし、ひとつひとつの決断や、そこで描写される表情と仕草、声色といったあらゆる情報が、彼女の想いを雄弁に視聴者へと伝えます。

 初恋、夢と挫折。そんなほろ苦いテーマを描くと同時に、本作は“姉妹愛”の物語でもあるのです。

 また、あかねや慎之介の描きかたは、これからやれることはもう限られてきていると思ってしまっている大人の視聴者も、最終的には勇気をもらえるようなものになっています。

 あおいとあかね、そして慎之介としんの。立場や世代の異なる4人の、それぞれの想いが丁寧に描かれることで、学生の方にも、社会に出てしばらく経つような大人にも、それぞれに訴えかけるであろう奥行きのあるメッセージが胸を打ちます。

 無邪気に夢を見られる時代を過ぎても、そのころの想いはきっと胸のどこかで息づいていて……。結末を見届ければ、誰もが「明日からもがんばっていこう」と清々しい気持ちになれるはず。年齢を問わず、もっともっと多くの人に愛されてほしい作品です。

『空の青さを知る人よ』(Amazon Prime Video) 『空の青さを知る人よ』完全生産限定版Blu-ray(Amazon.co.jp)

※Amazon Prime Videoの配信情報は記事制作時のものです。