大分県南部にある佐伯市蒲江の地域振興プロジェクト“かまえにたちよる”が、2021年2月20日から同年3月31日までオンラインで開催中。スパイク・チュンソフトの協力のもと、スーパーファミコンの名作サウンドノベル『かまいたちの夜』をオマージュした動画企画だ。本稿では、この企画が成立した経緯や制作の過程について、企画・制作を担当した大分合同新聞社の平子弘泰氏&青柳謙一郎氏と、企画を主催する大分県南部振興局の衛藤淳之介氏に聞いた。
二宮鯛介氏、平子弘泰氏、青柳謙一郎氏、簀戸裕一郎
(簀戸氏はデジタルバンク株式会社所属)。
企画メンバーの『かまいたち』愛が凝縮
平子弘泰(ひらこひろやす)
大分合同新聞社
マーケティング統括局 営業部 所属
青柳謙一郎(あおやぎけんいちろう)
大分合同新聞社
マーケティング統括局 ビジネスサポート部 クリエイト班 所属
衛藤淳之介(えとうじゅんのすけ)
大分県南部振興局所属
――まず、今回のプロジェクトが立ち上がった経緯について教えていただけますか?
平子大分県南部振興局が、コロナ収束後に蒲江への誘客促進を図る事業のひとつとして、オンラインを活用し、蒲江の魅力を発信する企画を公募していました。私たち大分合同新聞社は、社是が“大分県を豊かに”、また企業理念も“とことん地域密着”を掲げており、地域に寄り添う取り組みをつねに模索しています。そういった社風に合う内容だったということと、新しい取り組みを通じた地域活性化が狙えるということで、公募に参加しました。
――その公募で、貴社が採用されたと。では、サウンドノベル風の動画にした理由は?
平子当初はクエストを解いていくような内容で検討したのですが、サウンドノベルのほうが蒲江の魅力をダイレクトに表現できるのではないかと考えました。また、物語を読むだけで複雑な操作が不要なことから、幅広い方に楽しんでいただけるというメリットもありました。
――『かまいたちの夜』ありきではなく、サウンドノベルの採用が先に決まったのですね。
平子はい。私たちが皆ゲーム好きということもありまして、サウンドノベルにするなら、名作の『かまいたちの夜』をテーマにしたいと。
青柳最初は、“かまえたちの夜”というタイトルで考えていました。でも、夜に観光というのは違うなという話になり、“かまえたちの昼”に変えたんです。そこからさらにブラッシュアップを続けて、最終的に“かまえにたちよる”になりました。“~~よる”という語呂は残しておきたくて。
――この企画を持っていったときの、スパイク・チュンソフトの反応はいかがでしたか?
平子つながりもまったくなかったので、ダメ元でしたが……。幸いなことに、許諾をいただけました。本当に感謝しています。コンテンツの制作は当社とメンバーの簀戸が在籍するグループ会社で行い、制作物をスパイク・チュンソフトさんに確認していただく形で進めています。
――サウンドノベルはストーリーが大事になりますが、シナリオはライターさんなどにお願いをしたのでしょうか?
青柳いえ、チームの皆で意見を出し合いながら、最終的には私がまとめました。
――ご自身で書かれたんですね。それはすごい。
青柳『弟切草』や『かまいたちの夜』、『街』などスパイク・チュンソフトさんのサウンドノベルはずっとプレイしていて好きだったので、それらを思い出しながら書きました。『かまいたちの夜』はミステリーやサスペンス色が強い作品ではあるものの、展開によってはコメディーのようになることもありますから、この企画はコメディー部分を参考に作っています。物語は分岐もしますが、トゥルーエンドはひとつなので、シナリオの構造は『弟切草』に近いです。
――主人公の名前が透(とおる)→誘(さそう)、真里(まり)→真海(まりん)など、もじった形になっているのもおもしろいです。
平子誘というのは、“誘致”という意味もあり、また真海のほうも、蒲江は海が近く、おいしい海産物もたくさん取れるので、そういった意味が込められています。スパイク・チュンソフトさんの助言をいただきつつ考えました。
――動画の画面構成は、シルエット表示の人物など『かまいたちの夜』を踏襲していますが、撮影はやはり苦労されたのでは?
青柳静止画だけではなく、動画も混ぜたので、そこが苦労しました。主人公役として、当社の二宮に全身タイツを着てもらったのですが、それは動画で『かまいたちの夜』のように表現するための策です。決して笑いを取りに行っているわけではなく、本気で原作をリスペクトした結果である、というのは強調したいポイントです!
――思いが伝わりました! ちなみに、本企画の主催である大分県南部振興局は、動画の制作には関わっているのでしょうか?
衛藤はい。おもに、シナリオの監修などをさせていただいています。
――なるほど。最後になりますが、改めて蒲江地方の魅力を教えていただけますか?
衛藤リアス式海岸の続く蒲江地域は豊後水道の恵みを活かした日本でも有数の漁場です。自慢の絶景ポイントもあり、海産物はとてもおいしいです。また地域の方々も温かい人ばかりです。コロナが収束したら、動画に出ていた食、景色を堪能し、出演している人々に会いに蒲江にお立ち寄りください。