『ファイナルファンタジー』シリーズの生みの親としても知られる坂口博信氏率いるミストウォーカーが手掛ける、Apple Arcade向けの完全新作RPG『FANTASIAN』。
本作最大の特徴とも言えるのが、ゲーム内に登場するフィールドがジオラマで制作されていること。150人以上のジオラマ職人たちが制作に関わっており、その技術を注ぎ込んで作られたジオラマは驚くべき精巧さを持っている。そんなジオラマから生まれた本作のフィールドは、どこか牧歌的な雰囲気やあたたかみを感じさせてくれる独特のものになっている。
そこで今回は、『FANTASIAN』の基礎を築き上げたと言っても過言ではないジオラマ職人たちのコメントを紹介する。その熱意を感じていただけるはずだ。
また、本作の音楽は、『ファイナルファンタジー』シリーズや、坂口博信氏が製作総指揮を務めたRPG『ロストオデッセイ』の音楽も手掛けた作曲者の植松伸夫氏によるものだ。坂口氏とは盟友である植松氏が本作に込めた想いがわかるコメントもお届けしよう。
ジオラマで作られた多重世界
『FANTASIAN』にフィールドとして登場する150を超えるジオラマは、 すべてジオラマ職人たちがこだわり抜いて制作したもの。今回はシャルルの部屋のジオラマに焦点を当てて、実際のジオラマ写真をお届けする。家具や小物にいたるまで細部にわたって作り込まれたジオラマの世界と不思議な空気感は、ぜひ本編でも体験してほしい。
ジオラマ職人たちのコメント
ここからは、本作の制作に携わったジオラマ職人たちがファミ通に寄せてくれたコメントを紹介する。
ウォルナッツ・クレイワークスタジオ 矢壼智洋氏
このプロジェクトは挑戦の連続でした。坂口さんの世界観に近づけるために、キャラクターが動くフィールドを粘土でミリ単位まで造形し、必要があれば吹きガラスを焼いて、美しさを演出しました。情熱と努力によって誕生した背景ジオラマも楽しんでいただければ幸いです。
マーブリングファインアーツ 寺井雄二氏
ゲームの仕事は、いままでとはまるで違いましたね。静止画で取り込んで動画にするようなことは、ふだんはしないですし、特撮のいつもの手法が使えず、ミニチュアのサイズもとても小さかったので、作り手の方たちはたいへんだったと思います。それだけに今回、どのように仕上がっているのか、とても楽しみです。できれば映画化しないかなぁーと。
マーブリングファインアーツ 伊原 弘氏
最初にお話をいただいたとき、あの! 『ファイナルファンタジー』を製作された坂口さんの新作だと知り、とても緊張して挑みました。いただいたイメージ図の“ウズラ号”は、曲線の美しさが際立った舟でしたので、このラインをどう出すかの試行錯誤があり、たいへん勉強になりました。
スタジオビンゴ 土田ひろゆき氏
『FANTASIAN』の世界をジオラマで構築し、それをそのままゲームに使用すると初めて聞いたときは、前例のないプロジェクトに幾度も取り組んできた坂口さんらしいぶっ飛んだアイデアだな、と思いました。制作チームにはスタッフみんなでアイデアを出しながら作った印象があり、『FANTASIAN』がどんな世界に仕上がったのか、早く冒険に出たいです。
COMPRESSION Modelling 小山義記氏
ゲーム内で使われるジオラマのお仕事は初めてで、勝手がわからずに試行錯誤のくり返しでしたが、イメージをもとに立体的な造形に仕上がっていき、さらにそのジオラマがカメラカット映えしたときは、ホッとしたのと同時に飛び上がるほど喜びました。これは仕事を始めたばかりのときの感情みたいで、新鮮な気持ちで楽しく作業できたのはとても光栄でした。『FANTASIAN』、スタッフの皆様も最高です。ゲーム本編が楽しみです!
【COMPRESSION Modelling公式サイトはこちら】
ポポプロ 宮下洋一氏
最初はゲーム会社からの問い合わせということに驚きました。どのようなモデルを作っていけばよいのか、毎回試行錯誤しましたが、毎回新鮮な驚きがありました。ゲーム中に組み込まれたテストショットを拝見して、自分が製作したジオラマがこのように見えるということに驚きました。リリースを楽しみにしております。
植松伸夫氏の『FANTASIAN』への想い
植松伸夫氏は本作に収録される全60曲以上もの楽曲を、すべて制作している。その楽曲を聞いた坂口氏が、聴いただけで思わず涙したというほど、植松氏の魂がたっぷりと込められた楽曲が本作で堪能できるのだ。そして今回、植松氏から『FANTASIAN』への想いをつづったコメントが到着した。本作に懸けた植松氏の決意を受け取ってほしい。
作曲家 植松伸夫氏
歳を取ると体力は衰え始め、それとともに若いころには考えもしなかった人生の残り時間を計算し始めたりします。
「自分の人生はこれでよかったのだろうか?」
「人生に悔いはないだろうか?」
「自分の作ってきた音楽には満足しているだろうか?」
「まだまだやり切れていないことはたくさんあるぞ」
「でもしんどいぞ」
「行動に移す決心がつかないぞ」
「いっそのこと、すべてをあきらめて辞めてしまおうか」
「人間あきらめることも大切かもしれないし」
……なんてことを考えていたころに、坂口さんから『FANTASIAN』のお仕事の話をいただきました。
僕の人生の節目節目には坂口さんが絡んでいます。35年ほど前に日吉の道端で「スクウェアに入らないか?」と声をかけてくれたのも坂口さんだったし、『ファイナルファンタジー』の1作目を作っていたころ、「音楽はユーミンかサザンにお願いしよう」と言った当時の社長に対して「植松でいきたい」と言ってくれたのも坂口さんでした。僕の人生はそのたびに大きく変わっていきました。
そして、ゲーム音楽の仕事はもう辞めようと思っていた2019年に再度、創作意欲を奮い立たせてくれたのも坂口さんでした。
今回の『FANTASIAN』の仕事が、また新たな自分の始まりになるのかもしれません。「『FANTASIAN』では本当にいい仕事ができたと思います」……と言いたいところですが「いい仕事」かどうかはユーザーさんたちが判断することですから「よくやった! エライぞ俺!」という言葉に換えさせてください。
植松伸夫
『FANTASIAN』
プラットフォーム:Apple Arcade
対応端末:iPhone/iPad/iPod touch/Apple TV/Mac
コントロール:キーボード+マウス(タッチパッド)/ゲームコントローラー
言語:日本語/英語(全世界150ヵ国以上で配信)
プレイ総時間:前編20~30時間、後編20~30時間(前編のみ配信)