FgGが開発・運営するタクティクスRPG『誰ガ為のアルケミスト』(以下、『タガタメ』)。2016年1月28日よりサービスを開始し、今年(2021年)ついに5周年を迎えたロングランタイトルである本作について、ディレクターとして開発・運営に携わっているりょう氏、ラットン田崎氏へのインタビューをお届けする。
5年ものあいだゲーム開発・運営を続けてこられたという『タガタメ』だが、その秘訣や、3月1日よりスタートした『真・女神転生III NOCTURNE HD REMASTER』(以下、『真3HD』)とのコラボへの熱い思い、実現の経緯などを語っていただいた。
りょう 氏
入社以前は人材業界やゲーム業界など幅広い分野にて営業として従事。前職でゼネラルマネージャーを経て2017年より『タガタメ』の運営に参画。現在はディレクターとして運営統括を手掛ける。(文中はりょう)
ラットン田崎 氏
入社以前は主にコンシューマタイトルをプランナー・ディレクターとして担当。2016年より『タガタメ』のレベルデザインにプランナーとして参画し、現在は同タイトルにディレクターとして携わる。(文中は田崎)
“推し”が輝き続けることが継続のカギ
――まずはおふたりがどんな業務を担当されているのかを教えてください。
りょう私は現在、運営側の責任者という立場にいます。仕事は売上などを中心とした数字周りのコントロールや運営方針の意思決定といったプロジェクト全体に関わるものが多いですね。もちろん、開発にも引き続き携わっていて、召喚やショップのラインアップの最終決定や新ユニットのチェック、もっと前の段階のものだと開発項目の仕様決めや今後改修すべき項目を洗い出したりなんてこともしています。公式生放送に出演して、直接ユーザーの皆さんの声を聞くというのも大事な仕事です。
田崎私はいわゆる“レベルデザイン”と呼ばれる領域を担当しています。メインは管理側なのですが、自分でも手を動かしてイベントやユニットの仕様を作ったりしていることが多いです。
――おふたりとも管理職でありつつ、開発・運営の現場にも深く携わっておられるのですね。そんな中、ついに『タガタメ』も5周年を迎えました。その率直なご感想をお聞かせください。
りょうあらためて5年間と聞くと、とても長い年月をかけてここまで来たんだなと思うのですが、実際の体感で言うと“あっという間”でした。本当に毎日『タガタメ』のことばかり考えていたら、いつの間にか5年が過ぎていましたね。
田崎僕も同じです。いかにユーザーさんを飽きさせないようにするか、そればかり考えていたら、ある日「もう5周年だよ」と言われてビックリした記憶があります。
――ファンに愛されているから5年間サービスが続いていると思うのですが、そんな『タガタメ』の魅力とはどんなところにあるのでしょうか?
りょうリリース当時から変わらない魅力としては、シミュレーションRPGとしての戦略を重視したゲーム性が挙げられると思います。パーティーでどのようにユニットを組み合わせるか、また、スキルの使いかたや組み合わせを変えることで、幅広い戦術が生み出せるようになっています。ゲームとしての歯応えも意識しています。
田崎そうですね。ゲームとしては1体のユニットを取ってもジョブやアビリティの付替えから装備や刻印でのカスタマイズなどさまざまな戦い方ができる要素や、多数のユニットがいる中でひとりひとりの活躍の場所や尖った特徴などを意識して個性を出すようにも考えています。
りょうそれから、ドラマチックなストーリーと、それらを読み進めるとともに感情移入していける個性豊かなキャラクターたちの存在が大きいと思っています。たとえば、2020年では“十戒衆アルゾシュプラーハ”のシリーズは非常に反響が大きかったですね。あとはオート周回機能をはじめとした機能面もご評価いただいているようです。
――開発・運営を続ける中で、心掛けてきたことがあれば教えてください。
りょう意識してきたことは、“遊びやすさ”です。かつての家庭用ゲーム機がメインだった時代のように、ひとりがひとつのゲームを集中して遊ぶ、という時代ではなくなり、いまや複数のゲームを同時に遊ぶのが当たり前になっていますから。
田崎レベルデザインの作業では、ずっと同じことばかりやっていたらユーザーさんが飽きて離れていってしまうので、つねに新しい試みを取り入れることを心掛けてきました。過去、リリースから最初の2年ほどまでの時でしょうか。当時はコラボでかなりの数のユーザーさんが入って来た後にかなりの数が離脱してしまう事があり、それ以来危機感を絶やさないようにしています。時間とともにユーザーさんが離脱していくのはソーシャルゲームの宿命ではあるのですが、それを理解した上でいかに工夫をこらしていくかが課題だと思っています。
――具体的に、どのような工夫をされてきたのでしょうか?
田崎急激な“インフレ”は意識して抑えながら運用していくのですが、長期運用になると、どうしてもベースが徐々にあがっていくところがあって。『タガタメ』に限らず僕自身もいろいろゲームをやってきていて、ずっと使っているキャラって愛着があって、ずっと共に戦っているわけですよね。新しいキャラは強いのはわかっているけど、そうじゃない育てた“推しキャラ”で戦いたいわけですよ。「新しいキャラしか使えない!」ってゲームにはしたくないな、と。それが“真理開眼”や“真理念装”の導入に繋がっていきました。もちろんそれによるコスト増で賛否があったのは理解していて、反発も覚悟はしていましたが、それでも我々としては過去のキャラを切り捨てるゲームにしたくなかったんです。いつまでも推しキャラを最前線で使って長く遊んでほしいですよね。
りょうここ1、2年はさまざまな内容のコラボイベントを計画的に実施して、継続的に刺激をもたらすようにしています。また、いつもユーザーさんに近い距離で、その意見をしっかりと運営に取り入れようというスタンスを持ち続けていること。そういった姿勢が、ユーザーさんに応援していただけているひとつの理由なのかもしれません。
――現在、ゲームを新規で始めると5年分のログインボーナスがまとめてもらえるようになっているのには驚きました。
りょうそれも新規で始めてくださる人が少しでも長く続けられるようにと入れてみたサービスなんです。既存ユーザーの皆さんからの反発も覚悟していたのですが、蓋を開けてみたらかなり好意的に見てくださっているようで、むしろ新規ユーザーが増えて盛り上がってくれていました。
田崎5年なので、しばらく課金せずに遊べてしまうんですよね。そのあいだにハマってくれて、長く遊んでくださればありがたいと思っています。
――サービスを長く続けるために大切にしているテーマがあれば教えてください。
りょうタイトルの責任者としては、誤解を恐れずにひと言でまとめると“利益を出すこと”が第一目標です。極端な言い方かもしれませんが、開発や運営、さらには広報の一環として行うファンミーティングなどのリアルイベント開催のための資金も、ゲームが利益を出していなければまかなえません。逆に、利益を出し続ければさらなるサービス向上に繋げられます。これからもユーザーの皆さんに楽しんでいただける『タガタメ』を続けるために責任を持って運営していきます。そして、今後も皆さんへの還元を続けていって、このいい循環を途切れさせないようにしたいですね。
ディレクターとしては、一定のタイミングでワクワクできる新規育成要素を追加していくことを大事にしています。アプリゲーム、ソーシャルゲームの多くは育成に重点を置いており、そのために多くの周回を要求されることがほとんどです。ひとつの目標に毎日同じ作業をさせられていては飽きてしまいますので、バランスを見て要素を増やし、新しい刺激を提供し続けることが大事だと考えています。
田崎“継続こそ最大の恩返し”だとつねづね思っています。楽しみ続けてもらえるように、日々頭を悩ませ、手を動かし、つねに何かできないかと動いています。
“メガテン愛”が溢れるコラボイベントは必見!
――そういった創意工夫の中で、“新しい刺激”としてさまざまなコラボイベントが実施されていますが、3月1日より『真3HD』とのコラボが始まりましたね。これはどんなきっかけで始まった企画なんですか?
りょう企画が動き出したのは2020年の夏ごろです。正直に言うと、私が『真・女神転生』シリーズがすごく好きで「いつかコラボしたい」と思っていたことがきっかけでした。
『タガタメ』ではここ1~2年アニメ関係のコラボが続いていて、どこかで“ゲーム”とのコラボをやらなければならないという気持ちを持ち続けていました。アトラスさんのほうも『真3HD』が2020年10月に発売されたということもあり、タイミングがぴったりな状況が出来上がっていたんです。4周年の時は大型コラボが実現できなかったので、そのぶん今回の『真3HD』とのコラボはかなり気合の入った内容になっています。
――『真3HD』でおなじみの“マガタマ”や、“反射・吸収”といった要素を新たに実装し、さらに今後も恒常で使えるようにするというのは、まさに『タガタメ』ならではですよね。さて、すでにコラボイベントは始まっていますが、シナリオについてはどういったコンセプトで作られているのでしょうか?
りょう『真3HD』と『タガタメ』、両作品のキャラクターを活かせる話にしたいということを主軸として制作をしています。どのコラボイベントでもそうですが、せっかくの作品の枠を越えたコラボなので、両作品のキャラクターが関わったことで、それぞれが新たに何を考えるのか、またどんな会話をさせるとおもしろくなるかを中心に考えました。
異なる世界観を背景にしている両作品ですが、それぞれの過酷な環境を生き抜いた者どうしだからこそ交わせた会話が魅力になればと思っています。“キャラクターらしさ”と“展開”とのバランスで難しかったところもありましたが、皆さまに楽しんでいただけるシナリオになったかと思いますので、ぜひプレイいただけますと幸いです。
――どんな物語になるのでしょうか?
りょうある理由から『タガタメ』の世界に『真3HD』の悪魔たちが流れ着いてしまい、暴れ回ることに……という、おなじみの流れでスタートします(笑)。そしてジャアクフロストがこちらでも帝王として君臨すべく悪さをしているところを、『タガタメ』の世界の住人たちと人修羅が協力して解決していくことになります。
――大枠についてはいつも通りなんですね(笑)。その中でいつもと違うポイントはあったりするのでしょうか?
りょう『メガテン』シリーズの代名詞のひとつといえる“悪魔交渉”を、システムではなくシナリオに盛り込んだことですね。“反射・吸収”と違って、悪魔交渉はアプリゲームの性質上、ゲームシステムとしての導入が困難なんですよ。それをやったら全キャラクターを配布することになってしまうので(笑)。ですから、その代わりにシナリオの中で感じられるような内容にしています。
――今回『真3HD』から登場するのは、主人公の人修羅、ジャアクフロスト、ティターニア、クー・フーリン、ケルベロスの計5体。5体のキャラクター実装は、コラボユニットの数としてはいつもより多いようですね?
田崎コラボ開始までに制作できるキャラクター数は、これまでのコラボイベントを見ていただくとわかるようにそれほど多くないんですよ。5体はすごくがんばったほうだと思います。
りょう人修羅は主人公だからとうぜん登場するとして、残りは悪魔の中からチョイスしようということになったんですが、選ぶのは困難を極めました。
――どのように選出されたのでしょうか?
りょうアトラスさんが『真3HD』の発売前に実施されていた“真3HDベストオブ悪魔”という人気投票企画がありまして、その結果は参考にさせていただきました。上位をそのまま使わなかったのは、『メガテン』ユーザーに『タガタメ』を遊んでほしいという思いはもちろんのこと、『メガテン』シリーズを知らない『タガタメ』の既存ユーザーの皆さんにも魅力を感じてもらえるような悪魔を入れなければならないと思っていたからです。そこで、以下のような悪魔を選出することにしました。
- 成人女性タイプの悪魔
- 『メガテン』を象徴するような有名な悪魔
- 人型以外の悪魔
- 高位で強そうなイメージの悪魔
これに加えて“属性がそれぞれ異なる”、“ベストオブ悪魔である程度上位”といった縛りを入れています。
1については、ティターニアのほかにもスカアハやパールヴァティ、サラスヴァティ、ラクシュミといった候補がいました。かなり迷いましたが、ベストオブ悪魔の順位が高い(10位)のティターニアになりました。
2については、当初知名度の高いジャックフロストを考えていたのですが、シナリオの構成や強さも加味してジャアクフロストに登場してもらうことにしました。
3はデカラビア、ベルゼブブ、ケルベロスなどの候補の中から、アトラスさんとも話したうえでケルベロスに決定いたしました。ベルゼブブを変身スキルで変化させるというのもやってみたかったですね。
4も候補が非常に多くて困りましたね。シヴァ、ヴィシュヌ、トランペッターなどの“魔人”もいるし、クー・フーリンやトールもカッコよくて強い。最終的にはプロデューサーの今泉から「クー・フーリンは自分も知っているし、シリーズを通してメジャーな悪魔だからいいんじゃないか」と言ってもらって、彼を選びました。
※編注:各ユニットの特徴や強みについては、記事の最後で別途コメントを掲載しています。
――ありがとうございます。りょうさんのこだわりがユーザーの皆さんにも伝わったのではないかと思います。ちなみに、この5体以外のキャラクターはシナリオ上だけでも登場しないのでしょうか?
りょう今回はシナリオも通じてこの5体だけです。もしまた機会をいただければ、ほかの悪魔たちも登場させたいですね。なお、『真3HD』から来てくれた方は「人修羅ってしゃべらないじゃん」と思われるかもしれませんが、それは『タガタメ』の登場人物たちが全力でフォローし、通訳してくれるので問題なく話は進みます。
――ボイスやBGMについては新録されているのでしょうか?
りょうボイスについては、『真3HD』に収録されているものを流用する形で収録しています。BGMは通常戦闘、アマラ経絡の戦闘、それからボス戦の3曲をお借りして実装しました。
――それでは、『メガテン』シリーズのファンの皆さんに向けて、今回のコラボのアピールをお願いします。
りょう大好きな『真3HD』とのコラボを実現することができて、いちファンとしてもたいへん光栄に感じております。人修羅が異世界に登場するのは、このコラボが初めてとなるようですが、ほかにも完全オリジナルのシナリオ、タワー型クエストとして登場する“アマラ経絡”など、『真3HD』をプレイしたことがある人なら楽しめる要素が盛りだくさんとなっています。3Dモーションやスキルエフェクトもこだわって制作しました。
田崎アトラスさんからも内容についてのお墨付きをいただいたおかげで、われわれも大きな自信を持って世に送り出すことができました。“マガタマ”を始めとしたカスタマイズ要素や、先の“反射・吸収”といった“プレスターンバトル”に欠かせない要素も原作を再現しています。
――最後にユーザーの皆さんへメッセージをお願いします。
田崎最大のサービスは“継続していくこと”だと思っているので、ユーザーの皆さんにも継続して愛していただけるようにわれわれ開発・運営側もがんばっていきたいと思っています。これからもぜひ応援をよろしくお願いします。
りょう既存ユーザーの皆さんには、いつも『タガタメ』をプレイしていただいて本当にありがとうございます、と感謝するばかりです。これからも長く楽しんでいただくため、新機能の実装や過去ユニットの救済、ユーザビリティーの改修といったところをしっかりと続けていくつもりです。そして新規ユーザーの皆さんには、5年分のログインボーナスを受け取っていただいて、それを元手に好きなユニットを獲得して楽しく遊んでほしいですね。おもしろいゲームと言っていただけるように6年目も努力し続けたいと思います。
『真3HD』コラボユニットの特徴をチェック
最後に、『真3HD』コラボユニット5体の特徴や長所について、りょう氏による解説をお届けする。
りょう人修羅は、非常にカスタマイズ性の高いユニットで、あらゆるシーンで活躍できるという点が大きな特徴となっています。今回のコラボでは『真3HD』でおなじみの“マガタマ”を専用武具として10種類実装させていただきました。このマガタマが種類によって独自のスキルを持っており、任意に組み合わせることで、物理型のユニット、魔法型のユニット、サポート型のユニットなど、自分の求める形にアレンジできるようになっています。
りょうジャアクフロストは魔法攻撃に特化したユニットです。“マハブフダイン”で相手を凍らせたり、“マハムドオン”で相手を1ターンで倒したりと、原作を踏襲した性能となっています。“ドルミナー”からの“永眠の誘い”という、『メガテン』シリーズでもおなじみのコンボも使うことができますよ。
りょうティターニアは、強力なサポート能力を有しながら一定の攻撃性能も備える唯一無二性の高いユニットです。範囲全回復かつ状態異常も解除できる“常世の祈り”や、敵の性能を一気に引き下げる“ランダマイザ”、範囲の敵を魅了する“肉体の解放”などが使用できます。
りょうクー・フーリンは継戦能力が高く、火力に特化したユニットです。攻撃でクリティカルが発生するとHPが回復し、また、HP100%が保たれていると攻撃性能が非常に強くなります。“ベノンザッパー”や“ギロチンカット”を使用することができ、特定のスキルで敵を倒すと“勝利の息吹”が発生してHPを回復するなど、こちらもおなじみのスキルを楽しむことができます。
りょうケルベロスは、多様な状態異常攻撃を持ち敵を妨害することにすぐれています。戦闘開始時の素早さが非常に高く、ターンが経過するごとに移動力が上がっていくので、その機動力を活かして縦横無尽に駆け回ることができます。“フォッグブレス”、“アイアンクロウ”、“地獄の業火”など、他のユニットと同様におなじみのスキルをたくさん持っています。