今回発表されたPS5『ファイナルファンタジーVII リメイク インターグレード』、スマホで展開される『ファイナルファンタジーVII エバークライシス』と、『ファイナルファンタジーVII ザ ファースト ソルジャー』について、『ファイナルファンタジーVII リメイク』でディレクターを務めた、スクウェア・エニックスの野村哲也氏にインタビュー。

 それぞれのタイトルがどんな内容になっているのか、詳細をうかがった。

野村哲也(のむら てつや)

『FF』シリーズのキャラクターデザインのほか、『FFVII リメイク』や『キングダム ハーツ』シリーズではディレクターを担当。

クラウド VS ヴァイス、ユフィと新キャラが登場する新規エピソードなど、見どころいっぱいの『FINAL FANTASY VII REMAKE INTERGRADE』について、FINAL FANTASY VIIシリーズ クリエイティブ・ディレクター野村哲也氏にインタビュー

Interview by 週刊ファミ通

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――PlayStation 5用ソフトとなる『FFVII REMAKE INTERGRADE』は、ライティングや質感、背景などがさらにリアルになったという印象を受けます。それ以外に表現力が向上しているところを教えて下さい。

野村グラフィックとしてはライティング、テクスチャーが主な調整になりますが、フォグのような環境エフェクトも加わり、更に臨場感と世界観への没入感が向上しています。また、4Kに適したモードや60fpsに対応したモード等も用意しています。

――ハプティック技術やアダプティブトリガー、3DオーディオなどPlayStation 5で使用可能な機能への対応・調整はいかがでしょうか。

野村アダプティブトリガーに関しては部分的に対応しています。上記含め、その他、PlayStation 5の機能を存分に使用することについては、一から仕込める次回作をお待ち頂ければと思います。

――“フォトモード”はインゲームカメラより自由度の高いアングルで撮影が可能なようですが、『KINGDOM HEARTS III Re Mind』のように、表情やポーズなどの調整はできるのでしょうか? また、フォトモードを使うには何か条件はありますか?

野村『KINGDOM HEARTS III Re Mind』のカメラモードとはコンセプトが違うので表情やポーズの変更は出来ません。あくまでワンシーンを思い出として切り取るモードです。使用条件はなく、すぐに楽しんで頂けます。

――追加要素としてヴァイスとのバトルがありますが、ヴァイスを選んだ理由は?

野村最強であるセフィロスが既に登場しているので、セフィロス以外の強敵でインパクトのあるボスとして選びました。また、クラウド VS ヴァイスは今回が初になる構図ですので、自分自身、どういう戦いになるのか楽しみで、PlayStation 4版のころから隠しボスとしてヴァイスを入れてくれ、と頼んでいました。

――ヴァイスのオリジナルは野村さんがデザインされたと思うのですが、『DIRGE of CERBERUS -FFVII-』(『DC -FFVII-』)登場時の上半身裸のイメージがあります。今回、上半身も服を纏ったヴァイスのデザインについてうかがえれば。

野村隠しボス的な立ち位置ですので、見た目もこれまでとは少し違ったリッチさが欲しいと思い上着を着せました。

――ヴァイスとのバトルは、バトルシミュレーター内でのバトルとなっているようですが、ヴァイスに関してのイベントなども追加されるのでしょうか? また、ヴァイスとのバトルはどんなものになりそうですか?

野村ヴァイスの詳細に関しては、今後の情報公開をお待ち頂ければと思います。

――新規ボスキャラクターも登場するとのことですが、これはヴァイスとは別のキャラクターになるのでしょうか? また、ヴァイスとは別であれば、これまでコンピレーション作品で出てきたキャラクターでしょうか?

野村新規エピソードとなるユフィの物語に登場するボスがヴァイスとは別に存在します。誰が登場するのかは、ヴァイス同様、続報をお待ち頂ければと思います。

――新キャラクターとなるソノンはどんなキャラクターなのでしょう? ユフィとの関係など、現時点で明かせる範囲で教えていただけると。

野村FFVII REMAKE』本編でも度々バレット達のアバランチとは別のアバランチが活動している事に触れられていましたが、今回、ユフィはマテリアに関するある目的の為にミッドガルに潜入し、バレット達とは別のアバランチと協力してミッションを進めます。つまり、クラウドやバレットが活動していた一方、ユフィ達も別の活動をしていた――という物語になっています。

 ソノンはアバランチのメンバーで今回、ユフィのパートナーとして活躍します。ちなみに、ユフィのモーグリフードは隠密活動中を表現していますが、『DC -FFVII-』のオマージュでもあります。

――ユフィとソノンとのペアバトルですが、これはどんなバトルに?

野村本編のバトルシステムとは少し異なり、ソノンを操作することはできません。ユフィを操作してバトルを行っていただきます。ただ、タクティカルモードでのソノンのコマンド選択は可能です。新要素として、ユフィはソノンと連携して戦うことができます。本編とはまた一味違った手触りを楽しんでいただけるのではないでしょうか。

ソルジャー不在の時代をバトロワアクションで彩る『FINAL FANTASY VII THE FIRST SOLDIER』

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――『FFVII THE FIRST SOLDIER』の戦いの舞台がミッドガルになっていますが、物語的には『FFVII』の歴史上のどこに位置付けられる作品なのでしょう?

野村これまでの『FFVII』の関連作品の中で一番初期のソルジャー不在の時代で、ソルジャー候補生としてソルジャーの設立に関わる内容になっています。物語性はゲームの特性上、さほど濃くないですが、バックボーンや設定は存在しています。

――ソルジャー候補生がモンスターだけではなく、カッターマシンやガードスコーピンなど神羅側のマシンと戦っている理由は?

野村ソルジャーになるための候補生達の訓練という設定です。実戦を想定した様々な状況が用意される事になります。

――バトルのルールを簡単に教えてください。最後の生き残りになると勝ち? それともチーム戦に?

野村ソロとトリオ戦があり、最後の1人また最後の1チームとなることで勝利となります。

――バトロワ系のバトルに加えてRPG要素があるとなると、プレイヤー間のレベル差が生じて、ライトな層のプレイヤーが入りづらくなるのでは、という心配もしてしまうのですが、そのあたりはどのようなバランスを考えているのでしょうか。

野村バトロワ系ゲームの楽しみの一つであるアイテム収集の一環にモンスター討伐による“レベル上げ”というRPG要素を加えることで、寧ろライトなユーザーこそ準備の成果としてバトルを楽しめるような作りとなっています

章仕立てで『FFVII』のすべての物語が網羅される、もうひとつのリメイクの形『FINAL FANTASY VII EVER CRISIS』

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――『FFVII EVER CRISIS』(『FFVII EC』)は、本作用のバトルシステムをベースに、『BEFORE CRISIS -FFVII-』(『BC -FFVII-』。『FFVII』の物語に至る6年間が舞台)から『DC -FFVII-』(『FFVII』から3年後が舞台)までの物語を体験できる作品、と考えていいのでしょうか? また、映像作品だった『FFVII アドベントチルドレン』(『FFVII AC』)もゲームとして楽しめるものに?

野村本作は、オリジナル『FFVII』のもう一つのリメイクの形として、フィールドは固定視点でキャラクターはデフォルメ、バトルはリアル等身でのコマンドRPGになります。「こういうのでいいんだよ」にお答えした、もう一つのリメイクの形です。

 ゲームプレイとしては気軽に遊んで頂ける様に、章立てに分ける形になり、オリジナルとこれまでのコンピレーション作品、更に今回発表した『FFVII FS』まで含めた『FFVII』シリーズを全網羅した内容になる予定です。つまり、前述の『FFVII FS』の設定を元にした物語部分もこちらで新規作品として楽しんで頂けます。ソルジャー設立前という事で、当然、あの伝説の英雄の若き日も描かれます。その物語が大きな目玉となり、シナリオは野島さんにしっかりと書いて頂いていますのでお楽しみに。

――コンピレーション作品はリマスターなどを望む声も多かったと思いますが、リマスターではなく、あえて新たな作品、しかもひとつの作品として作り変えることにした理由は?

野村本作のコンセプトはあくまでオリジナル『FFVII』ベースの作品として気軽に楽しんで頂く、というものです。オリジナル『FFVII』も『FFVII FS』とは別に『FFVII REMAKE』が存在しているわけで、他コンピレーション作品もこれで集約しておしまいだとは思っていません。

――物語は『FFVII』関連作品のストーリーが時系列で進んでいくのでしょうか? それとも、『BC -FFVII-』から『DC -FFVII-』までの物語を、『FFVII EC』用に再構築して展開するのでしょうか?

野村全てが一連の一作品になっているのではなく、各タイトルが章立てになっていて遊びたい章を選択して遊ぶ様な形式になります。『FFVII』の年表を作っていく様な感じを想像して頂ければ。

――章仕立てということは、配信によって章が追加され、物語が楽しめると。

野村そうですね、毎月新たな章が追加されていきます。

――バトルは『FFVII REMAKE』のバトルをよりコマンドRPG寄りにしたように見えますが、本作のバトルがどんなものになるか簡単に解説いただけますか?

野村オリジナル『FFVII』のアクティブタイムバトルをベースとしたものになります。マテリアシステムもオリジナルを踏襲し、武器にセットしたマテリアや召喚獣、リミットブレイクを駆使してバトルを繰り広げます。

――デフォルメの3Dキャラにコミック風な2Dキャラと新鮮なキャラクターデザインとなっていますが、本作のキャラクターイラストはどなたが手掛けているのでしょう?

野村イラストは弊社のアートデザイナー藤瀬梨沙が描き起こしています。最初はすべて3DCGモデルにしようとしていたのですが、オリジナル発売当時の雰囲気を最大限に生かして表現するのには課題が多く、次に自分含め、これまで『FFVII』のデザインに携わっていたメンバーの中で誰かイラストを描けないか検討しましたが、それぞれが既に抱えている作業量的にそれも難しく。そんな時、新規案件で藤瀬のアバターデザインがチェックに回ってきて、そのタッチを見たとき、「この絵柄なら雰囲気に合うんじゃないか」と感じ、まぁ、藤瀬の所属は元々自分が抱えていた別タイトルのチームだったので、すぐ引き抜きまして参加してもらう事にしました。ニューホープです。

――物語性の強い作品になると思いますが、ボイスはどの程度入るのでしょうか?

野村ボイスに関しては現在検討中です。実は現在、自分が抱えているタイトル数が大混雑していまして収録も大渋滞しています。そういう意味でも新規収録はなるべく避けたい面もありつつ、『FFVII EC』は『FFVII』とコンピレーション作品をべースとしたタイトルということもあり、ボイスは「あえて無しの方が良いんじゃないか?」と思ってみたり、バトルには必要だという意見もあり、検討中ですが入れても最低限になる見込みです。

“INTERGRADE”に込めた意味、コンピレーション復活で『FFVII』の世界をより深く楽しむ

――『FFVII REMAKE』の次回作も期待されるなか、『FFVII REMAKE INTERGRADE』は発売日も発表され、『FFVII FS』は2021年、『FFVII EC』は2022年にサービス予定と、一気に3作品が順次リリースされるわけですが、野村さんは3作品ともディレクター&コンセプトデザインを担当されているのでしょうか?

野村今回発表した『FFVII』関連でも3作ありますが、先ほども述べた通り、個人的には過去前例がない程の案件数が立て込んでいます。『FFVII REMAKE』は1作目でベースとなるゲーム性は固まり、今後改修すべき点も見えたので、次回作のディレクターは浜口(『FFVII REMAKE』ではCo.ディレクターを担当)に任せ、自分はリメイクやモバイル作品を含め『FFVII』関連は総合的にクリエイティブ・ディレクターとして関わっていきます。作業の基本的な携わり方は大きく変わらず参加していますので、引き続きよろしくお願いします。

――『FFVII』作品への関わり方はさほど変わらず、別の案件にも注力するということですね? 楽しみにしています。では、今回発表された3作品、そして『FFVII REMAKE』の次回作を楽しみにしているゲームファンにひと言お願いします。

野村PlayStation 5への対応に関して、どういう落としどころにすべきかは右往左往ありましたが、現場スタッフ達の熱い思いにより早い対応になったと思います。このスピード感で次回作も制作中ですが、まずは『FFVII REMAKE INTERGRADE』を楽しんで頂きたいと思います。『INTERGRADE』というタイトルですが、オリジナルにあった『INTERNATIONAL(インターナショナル)』(※『FFVII INTERNATIONAL』。追加要素と改良を加えた海外版を日本で発売したもの)という響きへのオマージュも含んでいます。また、“INTERGRADE”には“中間”という意味があり「『FFVII REMAKE』本編と次回作との間」を意味し、さらに、“移行”という意味もあって「次世代機への移行、次回作への移行」という意味もあります。

 ちょっとした1エピソードの追加の予定だったユフィの物語も遊び応えもある、見逃せない内容に仕上がり、待ち受けるバトルシミュレーターのヴァイスはかなり強敵です。

 そして復活した“コンピレーション オブ FFVII”の『EC』『FS』。まさか2作同時に進めるとは、北瀬から初めて話を聞いた時には自分も驚きました。どちらか1作だろうと思っていたら「両方やるよ」との事で、実は1作に絞るべきじゃないか、と言っていた時期もあったくらいです。それでも両作のプロデューサーである市川の熱意に絆され、「やるならクオリティに妥協せずやろう」と取り組み、かなり無茶なオーダーをしてハードルを上げてきましたが、しっかりクリアしてくれて、発表出来た事を嬉しく思っています。ユーザーテストでもかなり好評なので、是非こちらも楽しみにしていて下さい。
 
 『FFVII REMAKE』の次回作まで、これら3作で『FFVII』の世界に浸りながらお待ち頂ければ幸いです。