2021年3月4日配信予定の『咲う アルスノトリア』は、グッドスマイルカンパニー、ニトロプラス、NextNinjaの3社が共同開発するスマートフォン向けゲームの最新作。
“ペンタグラム”と名乗る少女たちの教師となって、彼女たちを“真の淑女”へと成長させていくという物語が描かれるリアルタイムバトルRPGだ。
本稿では、開発のキーマンへのインタビューを掲載。リリースを目前に控えつつも、まだまだ謎の多い本作のこだわりなど、ここでしか見られない情報が満載となっているので、ファンならお見逃しなく!
小坂崇氣(こさかたかき)
ニトロプラス 代表取締役社長
安藝貴範(あきたかのり)
グッドスマイルカンパニー 代表取締役社長
山岸聖幸(やまぎしまさゆき)
NextNinja 代表取締役CEO
一肇(にのまえはじめ)
ニトロプラス
親交の深い3社だからできた一大プロジェクト
――この3社のタッグは意外な組み合わせだと思うのですが、どんな出会いから生まれたプロジェクトなのでしょうか。
安藝 もともと、僕と小坂さんは、似たような時期に近い場所で創業していて、クルマ好きという共通点もありました。そんなふたりなので、仕事でもプライベートでもかなり仲よくさせていただいていたんです。
小坂 安藝さんとはプライベートが多いのですが、現場でもいっしょにフィギュアを作ったりと、企業としても個人としても長いあいだお付き合いさせていただいています。あと、『翠星のガルガンティア』や『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀』といった映像作品をいっしょに作ったこともありました。
――そんな2社がNextNinjaさんを迎えて本作を作ろうと思われたのにはどんな理由が?
安藝 2016年に弊社から『グランドサマナーズ』というゲームをリリースしたのですが、それを開発してくれたのがNextNinjaさんでした。本作を開発しようと思ったのは、この『グランドサマナーズ』があったからなんです。ゲーム性もユーザーの評価も非常に高く、やればやるほどおもしろくなるゲームなのでこのゲームエンジンを活かして、さらにキャラクター性や世界観を盛り込んだゲームを作ったらすごくおもしろいんじゃないかと。
――その世界観の構築を、ニトロプラスさんが担当されることになったわけですね。
小坂 ニトロプラスのゲームと言えばPCが主戦場でスマホゲームを作る経験があまりなかったので、どこかと組んで作ってみたいという想いがありました。安藝さんから本作のお話をいただいた後は、一肇がメインに立って、すぐに企画をまとめ上げました。
安藝 そうなんですよ。すごく早くて、1ヵ月くらいで企画書を上げてきてくれました。
小坂 すぐにこの企画書を安藝さん、山岸さんにお見せしたところ、本当に即決でゴーサインを出していただきましたよね。“アルスノトリア”というタイトルも、このタイミングですでに決まっていました。
安藝 NextNinjaさんは、ニトロプラスさんのような原作開発チームといっしょにゲームを作りたいと切望されていましたよね。
山岸 じつはこの企画の前から、ニトロプラスさんには足しげく通って企画をプレゼンさせていただいてはいたのですが、いろいろな事情もあり実現に至らなかったんです。そういった経緯もありまして、今回のお話をいただいたときは、「本当にできるんだ」と、とてもうれしかったです。
――『咲う アルスノトリア』のプロジェクトが立ち上がったのは、具体的にいつごろになるのでしょうか。
小坂 2017年末くらいだったと思います。2017年11月くらいに企画の話が出て、正式にキックオフしたのが1ヵ月後の12月だったかと。当時は開発期間1年でリリースしようと計画していました。
山岸 リリースするゲームに実装されている要素は、当時の企画書から根本的なところは変わっていないと思います。企画書の段階からかなりイメージが固まっていたので、最速で作りましょうと。ただ、最初にその話を聞いたときは「マジか」と思いましたね。
小坂 まあ、理想は1年という感じで(笑)。
山岸 これは相当たいへんだぞと思ってスケジュールを引いたんですけど、かなり過密な開発スケジュールになっていました。
安藝 つまり2年延期したってことだよね。
小坂 理想は1年だったということで。
――それは、開発が意外と難航して時間がかかったということでしょうか?
小坂 開発の初期は、我々とNextNinjaさんで、見えているものが違っていたと言いますか、こだわりを共有しきれていない部分があり、それが開発に影響してしまったんです。
――それはどんなところでしょうか。
小坂 たとえば、ひとりキャラクターがいて、このキャラクターはドジっ娘でゆったりとした性格だったとします。NextNinjaさんはそこに対して、かわいくもカッコイイ攻撃モーションを付けてきてくれたんです。それは単体で見るとすばらしいモーションなのですが、狙っていた“戦いが苦手な女の子が健気にがんばる”には見えなかった。そういった“こだわり”をどのくらい表現するのか、どのくらい重要なこだわりなのか。そういうことを共有するのに、けっこう時間がかかりましたね。
山岸 何度かやり取りをして、その感覚が共有できてからは早かったですよね。そうしていくうちに、こちらからも提案するようになって、一度はオーケーをいただいたものを作り直すこともありました。
小坂 パーティー編成画面で、キャラクターの身長差がわかるようにしたいというのも、我々から出した“こだわり”だったりします。お互いに言いたいことがあるけど、忖度して言わないでおこうっていう文化ではないので、いまでも意見のぶつかり合いをしながら開発しています(笑)。
インタビューでもネタバレなし!? お祭りが楽しめるゲームに
――今回は一さんにもご同席いただいているのでお話をお聞きしたいのですが、本作の魅力はどこだとお考えですか?
一 本作ですが、じつはあまり内容について語らないようしているんです。ユーザーさんに感じてもらうとか、想像してもらうことを楽しんでほしいと思っていて。インタビュー的には好ましくないと思うのですが(笑)。
――公式サイトなどでも情報が控えめなのは、そういった理由もあるのでしょうか。
安藝 ニトロプラスさんは、出し惜しみしますからね(笑)。
小坂 出し惜しみをしているわけではないです(笑)。プロモーション戦略ですよ。
――ペンタグラムのメインキャラクターデザインは、大塚真一郎さんが手掛けられていますが、大塚さんを起用された理由は、いったいどんなところにあるのでしょうか。
小坂 我々が思い描いている“かわいい”を表現するとしたら、イラストレーターさんは誰にお願いするべきだろうと、アイデアを並べて考えていた時期がありました。そのなかに大塚さんの名前も挙がっていたのですが、じつはNextNinjaさんとつながりのある方だということがわかりまして。
――そこからオファーされたと。
小坂 最終的に大塚さんにお願いしようと決めたのは一でした。そこで、私と一でいっしょに大塚さんのところにお伺いして、快諾をいただくことができました。
一 本作で名前が挙がる前から、大塚さんはかわいいを高度に記号化できる才能のある方だなと思っていたんです。ですので、引き受けていただいたときは本当にうれしかったです。何回目かの打ち合わせのときに、主役“アルスノトリア”のコンセプトをお伝えするため、あるお話をさせていただいたのですが、すると大塚さんは「あ、わかりました!」と、すぐにあのキャラクターを仕上げてくれたんです。
――すんなりデザインが決まったと?
一 はい、ノーリテイクでした。大塚さんは大事にしているものが自分と近いのかもしれない、と感じられてうれしかったです。この出会いは、本作にとってとても大きなものでした。
安藝 大塚さんが参加されている『Re:ゼロから始める異世界生活』などのフィギュアも弊社で作らせていただいていますが、フィギュアの人気もすごく高いんです。立体映えするキャラクターデザインでもあるんだろうなと。大塚さんに引き受けていただいたことは、グッドスマイルカンパニーにとってもすごく喜ばしいことでした。
――すでにフィギュア化の計画もされているのでしょうか?
安藝 ゲームの人気が出れば! あまり準備しすぎると、たまに悲しいことになりますし(笑)。あと、うちのスタッフって、なぜか自社コンテンツの立体化にはかなり厳しいんですよ(笑)。
――身内には厳しいと(笑)。
安藝 フィギュアって家に飾っていると次第に愛着が沸いてくるから、なかなか手放しづらいんですよね。フィギュアが出たということはゲームの人気があるということですし、フィギュアにはコンテンツやキャラクターの人気を長持ちさせてくれる効果もあるので、実現できればうれしいです。みんなでハッピーになれますしね。
――なるほど。本作のスタッフには天野喜孝氏のお名前もありますよね?
一 はい、ペンタグラムが生活する街“アシュラム”には“精霊”という生き物があちこちにいるのですが、このキャラクターのデザインを天野喜孝先生にお願いしました。
――精霊とは、どういった存在なのでしょうか。
一 ペンタグラムが暮らす街は、本来は精霊の街なんです。女の子の姿をしている精霊もいますし、火だったり水だったり、いろいろな精霊が住んでいて、ペンタグラムと共存しています。
――お話的にもキーになりそうな存在ですが、そのキャラクターを天野喜孝さんにお願いしようと思われたのには、どんな意図があるのでしょうか。
一 天野先生の作品で、『眠れるレタス姫』という絵本があるのですが、自分がこの作品をすごく好きでして。精霊のデザインを誰にお願いしようかと考えたときに天野先生が描いたかわいらしいキャラクターを思い出して、ぜひ先生にお願いしたいと。
――本作のビジュアル面については、一さんの着想どおりに実現できたわけですね。
一 そうですね。ありがたいことに。
――もうひとつの要素として“騎士”があります。本作の“かわいい”要素は当初から出ていましたが、“カッコイイ”騎士の存在は隠されていましたよね。
一 女の子VS男の子という構図は、この企画の始まりの部分でもありました。
――騎士はペンタグラムの敵勢力というイメージでいいのでしょうか。
一 はい、“天敵”という位置付けとなります。現時点では、それ以上語りづらいのですが、ある意味、ペンタグラムたち以上のこだわりをもって制作させていただいております。NextNinjaの皆様にも無理を言って“特別な仕様の開発“をお願いした経緯があります。
――特別な仕様の開発ですか! その内容を具体的にお聞きしたいのですが……。
山岸 詳しくはお答えできないのですが、本作では騎士ひとりでペンタグラム2万体に匹敵する力を持つ存在と伝えられています。
一 騎士については、何をお話ししても初プレイ時の楽しみを奪うことになってしまうので……。キャラクターデザインについては、どのイラストレーターさんにも、「男の子が憧れる男を描いてほしい」とオーダーしました。自分が子どものころに憧れていたカッコイイ大人を表現したいというところから、デザインはスタートしているんです。
――騎士には、メインイラストレーターとなる方はいるのでしょうか。
小坂 メインという方はいないですが、最初にイラストを手掛けてくれたのは三杜シノヴ(ニトロプラス所属のイラストレーター。『Thunderbolt Fantasy 東離劍遊紀3』や『「刀剣乱舞-ONLINE-』でも活躍)でしたよね。
一 三杜がヨハン・ツヴィングリを描いてくれたのですが、あの表情のイラストを見たときに「やった!」と思いました。ツヴィングリは自分にも他人にも厳しい男を描いてくれという発注をしつつ、どこかに狂気がほしいというオーダーをしたのですが、見事にそれを描いてくれたんです。いちばんデザインするのが難しいキャラクターだったんじゃないかと思います。
――なるほど。そのほかの情報については、リリースされてからのお楽しみでということですね。
一 スマートフォン向けゲームには、SNSなどによる同時性という素敵な要素がありますよね。自分がいた小説という環境にはない要素でしたので、そこを利用して、少しでも驚いたり楽しんでいただけたら、と制作させていただいております。よっていまは言えないことが多くて申し訳ないのですが、どうか初めてプレイしたときのお楽しみとさせてください。
安藝 ゲームに限らず、作品が毎月大量に出てくるなかで、長く遊んでいただくのは本当にたいへんです。本作は、まだまだお見せしていない、長く遊んでいただくための仕掛けをたくさん用意しています。そこが一さんを始め、開発チームの意思の表れだと思っていますので、ご期待ください。