ゲーム『モンスターハンター』シリーズ初の映画化となる、映画『モンスターハンター』。2021年3月26日(金)、Nintendo Switch用のゲーム新作『モンスターハンターライズ』の発売日と同日に全国公開が予定されている。

 本稿では、監督ポール・W・S・アンダーソン×主演ミラ・ジョヴォヴィッチ×トニー・ジャーが結集した本作のあらすじを解説するとともに、ひと足お先に鑑賞した記者によるレビューをお届け。

 物語の根幹に関わる部分には触れず、あらすじの紹介は現在公開されている予告編映像程度に留めますが、記事の性質上、多少のネタバレが入り込む点ご了承ください。気になる人は映画を観た後に読んでね!

女軍人ミラ・ジョヴォヴィッチ、異世界に立つ!

映画『モンスターハンター』レビュー。ミラ・ジョヴォッチ×トニー・ジャーのアクションが超カッコいい! リアルなモンスターが大迫力&恐怖

 ゲーマーとして知られるポール・アンダーソン監督は、かねてより『モンスターハンター』シリーズもプレイしているとのことで、『モンスターハンター』の映画化を10年以上前から熱望していたそう。

 しかし、本作がゲーム『モンスターハンター』の忠実な映画化かと言えばそうではない。すでに予告編などで公開されている通り、主人公のナタリー・アルテミス(ミラ・ジョヴォヴィッチ)は、ゲームの女ハンター(主人公)のような役割ではなく、現実世界の軍人。

 映画は、部隊の訓練中に謎の砂嵐に巻き込まれ、アルテミスが異世界に飛ばされるところから始まる……や、や、や、待ってほしい。読者はここで「なんでいきなり異世界に!?」と、戸惑いを覚えることだろう。わかる。

 本作は日本のみならずアメリカや中国を始め、ワールドワイドで公開されている。“現実世界の人間が巨大なモンスターのいる異世界に飛ばされる”というのは、ゲームの『モンスターハンター』を知らない観客にもわかりやすく見せて、感情移入させるための方策だろうと思う。

 異世界に飛ばされたアルテミスと隊員たち。気がつくとあたりは一面の砂地だった。アルテミスは、この世界の住人“ザ・ハンター”(トニー・ジャー)と出会い、ときに仲違いしながらも関係を深めていき、ディアブロスやそのほかの大型モンスターの狩猟を目指すことになる。 

「ディアブロース……」

映画『モンスターハンター』レビュー。ミラ・ジョヴォッチ×トニー・ジャーのアクションが超カッコいい! リアルなモンスターが大迫力&恐怖

 『モンスターハンター:ワールド』大蟻塚の荒地のような砂漠に足を踏み入れると、巨大モンスターディアブロスが登場。どうやら足音に反応して攻撃を仕掛けてくるらしい。モンスターの設定にゲームを忠実に再現しているところが出てくると、『モンハン』プレイヤーとしてはうれしくなる。

 本作の魅力のひとつは、最新のハリウッドクオリティーで描かれるモンスターたち。ディアブロスの攻撃シーンは大迫力で、思わず息を呑む仕上がり。これまでハンターたちはこんなにデカくて、強くて、恐いモンスターたちと生身で戦っていたのだなあ。

 映画には、このディアブロスを筆頭に、ネルスキュラやリオレウス、アプケロスなど多くのモンスターが登場する。『モンスターハンター』のもういっぽうの主人公と言っていいモンスターたちが登場すると「待ってました!」と声を掛けたくなる(心の中で)。

 とはいえ、映画に出てくるモンスターの種類は限られている(個人的にはイャンクックとかプケプケとか、かわいいモンスターがもっと観たかったなあ)。

 中でも怖さが際立っているのが、“影蜘蛛”ネルスキュラ(ゲームでは『モンスターハンター4』などに登場)。ディアブロスとの邂逅後、アルテミスはネルスキュラに囚われてしまう。その“巣”では、『モンスターハンター』というより『バイオハザード』的なグロテスクなシーンが連続し、パニックホラー映画のように。

 何しろミラ・ジョヴォヴィッチとポール・アンダーソン監督といえば、同じくカプコンのゲームを原作とした映画『バイオハザード』シリーズのタッグでもあり、恐怖のスパイスを効かせるのもお手のものといったところ。ゲームの『モンスターハンター』的な雰囲気を想定して観始めると、正直、このあたりはかなり面食らう。そのくらいネルスキュラが恐ろしく描かれている。

見どころはアクションとCG!

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 何しろ冒頭から、主人公は軍人だし、軍人だからジープも重火器も出てくるし、ネルスキュラは怖いしでハラハラしてしまうけど、ハンターが大きく絡んでくる映画中盤からはぐっと『モンスターハンター』らしくなる。予告編でも公開されているアルテミスが“双剣”を振るう様や、ハンターが“大剣”や“弓”を使うシーンは、まさに『モンハン』そのもの。

映画『モンスターハンター』レビュー。ミラ・ジョヴォッチ×トニー・ジャーのアクションが超カッコいい! リアルなモンスターが大迫力&恐怖

 装備品や武器にもCGは多用されていて、アルテミスが双剣を重ねながら掲げると刀身が炎をまとう表現は、ゲームの鬼人化を思わせる。人間よりはるかに大きなモンスターを討伐するために、アルテミスとハンターが工夫を凝らして戦うくだりはゲーム的でおもしろい(欲を言えば、“討伐”だけじゃなくて“狩猟”や素材を集めて武具を作るなんてシーンも観たかったかな)。

 モンスターとの戦闘シーンではさらに激しいアクションとCGが駆使され、カンフー映画のように手に汗握る激闘が映し出される。このモンスターはCGなわけで、撮影時は誰もいない宙空に向かって演技をしていたはずだけど、それを感じさせない緊迫感のある動きは思わず固唾を呑んで見守ってしまう。

 人間(ハンター)が、カラダひとつで巨大なモンスターと戦う、『モンスターハンター』のコンセプトでもあるこの迫力が、映画にも受け継がれている。モンスターとの戦闘シーンは何よりの見どころだ。

映画『モンスターハンター』レビュー。ミラ・ジョヴォッチ×トニー・ジャーのアクションが超カッコいい! リアルなモンスターが大迫力&恐怖

 映画後半では、『モンスターハンター:ワールド』で見覚えのある面々が続々登場。オアシスでのんきに水を飲むアプケロスや、肉を焼いて食べるシーンなどが映し出され、『モンハン』ファンならテンションの上がるシーンの連続となる。

 とくに“料理長”のシーンはびっくりするほどの再現度。料理長の料理は映画でもとてもおいしそうだ。“相棒”こと受付嬢もかわいい。

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 再現度がすごいだけではない。リオレウスがオスプレイを墜落させる場面は本作でしか観られない映像だし、現実の兵器にぶつけることで、ゲームのリオレウスの強さが間接的に伝わってくるようだ。

 リオレウスはオスプレイより強いのだ(“カプコンのヘリ伝説”がここでも……)。

超リアルな『モンハン』キャラクターがスクリーンでキミを待つ!

 そろそろ本稿をまとめる。

 映画にするうえで、ストーリーや設定など、さまざま点で独自のものが用意されているところがあり、ゲームの『モンハン』ファンであればあるほど違和感を覚えるところがあるかもしれない。“ゲームの設定を下地としつつ、変えるべきところは改変して、『モンハン』を知らない観客にも楽しめる映画として成立させる”という方針は全編にわたって貫かれており、その部分をどう感じるかで本作の評価は別れることになるだろう。

 けれど、ハリウッドクオリティーで描かれるディアブロスを始めとしたモンスターや、ハンター装備などの美術、巨大な生物に立ち向かっていくアクションシーンはすばらしい。とくにCGを駆使して描かれるモンスターたちの描写は目を見張るものがあって、ゲームで見慣れたモンスターたちが大きなスクリーン上で暴れまわる迫力は特筆ものだ。

 緊急事態宣言が行われ、大作映画の公開日が変更されたり、まだまだ予断を許さない状況ではあるものの、2021年3月26日の公開を楽しみに待とう。

ここがよかった!

  • CGで描かれるモンスターたちの迫力
  • ミラ・ジョヴォヴィッチ、トニー・ジャーのアクション
  • 料理長を始めとした『モンスターハンター:ワールド』の人々

ここは人を選ぶかも

  • ゲームの忠実な映画化というわけではないので、シリーズのファンにとっては違和感がある部分も
  • ネルスキュラの群れが怖すぎる
  • ゲームのメインテーマ曲『英雄の証』は映画本編では使われない(予告編では使っているのに!)
映画『モンスターハンター』レビュー。ミラ・ジョヴォッチ×トニー・ジャーのアクションが超カッコいい! リアルなモンスターが大迫力&恐怖