家庭での利用を考えて小柄ですっきりした筐体デザインを持つLenovoのIdeacentreシリーズに、“Gaming”と銘打たれた機種が登場する。コロナ禍で自宅でのPCを利用する局面が増えるなか、ビジネスもゲームもマルチにこなす万能選手、“Lenovo IdeaCentre Gaming 550i”に触れてみた。

IdeaCentre Gaming 550i | パワフルでコンパクトなゲーミングデスクトップ(レノボジャパン公式サイト)

基本モデルはi5-10400+メモリ8GB。i7-10700+32GBまでカスタマイズ可能。ハンドル付き本体が地味に便利

 LenovoはノートPC、デスクトップPC、一体型、ミニPCと、さまざまな形態のPCを出している。同時に複数のブランドも展開していて、ユーザーはビジネスからホームユース、ゲーミングと、その用途に応じて豊富なバリエーションから自分にあった1台を選ぶことが可能。なお、ブルームバーグ報道によると、Lenovoは2019年、世界のPC市場でシェアトップを獲得しているメーカーだ。

 IdeaCentreは、同社の売れ筋ノートPCSeries“Ideapad”に相当するデスクトップPCブランド。もともと家庭での利用を想定した比較的安価なミドルクラスに位置するものなのだが、しばらく前の世代からグラフィック性能を向上させた“ゲーミングエディション”が加わっていた。

 今回紹介する“IdeaCentre Gaming 550i”は、そのゲーミングエディションの最新機種。CPUに第10世代のインテルCoreプロセッサーを搭載し、PCゲーミングを意識した1台だ。

 基本モデルでは、6コアを持つCore i5-10400を搭載し、これを2.90GHz(ターボブースト時4.30GHz)で駆動。購入時のカスタマイズで2.90GHz駆動のCore i7-10700(ターボブースト時4.8GHz、+25300円)に変更することができる。メインメモリは8GBを標準として、最大32GB。ストレージにはPCIe NVMe/M.2で接続されたSSDを標準で256GB、最大1TBまで搭載することが可能だ。

 チップセットはB460。第10世代のインテルCoreプロセッサーに対応したIntel 400シリーズのチップセットのなかでは比較的、廉価なモデルだ。同シリーズの最上位版であるZ490と比べると、若干の見劣りはするが、基本機能は充実。このIdeaCentre Gaming 550iの立ち位置を考えると最適な選択と言えるだろう。

 そして本機最大のポイントが、標準で搭載しているグラフィックカード。NVIDIA GeForce GTX 1650 SUPERに、VRAMは4GB。さらに物足りなければオプションでNVIDIA GeForce GTX 1660 SUPER(VRAM 6GB、+5500円)や、NVIDIA GeForce RTX 2060(VRAM 6GB、+19800円)も選択できる。これのおかげで3Dグラフィックを用いた最新のゲームもそつなくこなすことができるのだ。

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本記事はLenovoの提供でお送りします。ブラックでまとめられたIdeaCentre Gaming 550i。ゲーミングPCとしてはおとなしめのデザインと言える。
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天板は平面だが、フロントパネルの部分が少し上に伸びている。この部分はグリップとして機能する。軽量コンパクトなボディなので、可搬性を考えてのことなのだろう。モデル名のブルーがなかなかいいアクセントになっている。
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背面パネルは必要十分な端子だけが出ていて、自作PCなどと比べるとかなりすっきりとまとまった印象。上部のほうにサウンド出力、中央部分にUSB 2.0が4つにLANポート、映像出力はすべてビデオカードの端子を使う。標準のNVIDIA GeForce GTX 1650 SUPERならDisplayPortが2にHDMIが1の3出力、本機はGeForce RTX 2060なので、DisplayPortが3、HDMIが1という構成になっている。

シンプルながら精悍さも持つフロントパネル

 このIdeaCentre Gaming 550iを直に見て、最初に感じたのは“ほどよいコンパクトさ”だった。一般的な表現で言うならミニタワークラスということになるのだが、それよりもだいぶスリムなのだ。

 たとえばひとつ前の世代のCPUを搭載した同社のIdeaCentre 720 ゲーミングエディションの本体サイズは、幅×奥行き×高さが、約165×325×376ミリというサイズ。

 一方このIdeaCentre Gaming 550iはといえば、約145×292×365ミリと、小ぶりになっているのがわかると思う。しかも、高さに関して言えば、フロントパネルと一体になった上部のキャリングハンドル部分も含めての話。ここを除くと実測で約340ミリしかない。数字で感じる以上に一般的な呼称でいうミニタワーに比べてコンパクトなのだ。

 小型化を実現した理由は明白で、IdeaCentre Gaming 550iのフロントパネルには一般的なミニタワーに見られる5インチサイズの拡張ベイがない。このために内部的な空間もより狭くできる。この割り切りが小型化の秘訣というわけだ。

 ゲーミングを名乗ってはいるが、デザイン的にはかなり大人しい。本体パネルは“レイヴンブラック”と名付けられたマットブラック、電源スイッチとLenovoのエンブレム、端子類のアイコンはガンメタやグレーでまとめられている。

 先代のIdeaCentre 720やT540のゲーミングエディションは外見的にはビジネスマシンそのままのイメージだったが、今回のIdeaCentre Gaming 550iのデザインはホビーユースを意識しつつもスパルタンになりすぎていない、なかなかうまいところを突いていると思う。

 電源を入れたときも、電源スイッチ中央が白く、フロントパネル下部が青く灯るだけ。レインボーカラーにギラギラと光ったりはせず、これならオフィスにあっても違和感はないし、自宅においてもインテリアの和を大きく乱すことはないはずだ。

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フロントパネル下部には青いLEDが灯る。後述するが、標準でインストールされている“LENOVO VANTAGE”というアプリで点灯パターンを変更できる。
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前面にある2種類計3個のUSBはすべて3.0。ほかにヘッドフォン+マイクのコンボジャック、それにと3-in-1メディアカードリーダーが縦にすっきりと並んでいる。

日本語AccuTypeキーボードと光学式ホイール・マウスが付属

 フロントパネルには、ヘッドフォン+マイクのコンボジャック、USB 3.0 Type-Cがひとつ、USB 3.0 Type-Aがふたつ、それにSD、SDHC、SDXCに対応した3-in-1メディアカードリーダーが縦に行儀良く並んでいる。

 背面もまたシンプルで、USB 2.0 Type-Aが4つにLANコネクタ、それにオーディオポートがあるだけ。画面出力はビデオカードからDisplayportが2つとHDMIがひとつあり、3画面への出力が可能だ。ただ、今回お借りした1台にはビデオカードにNVIDIA GeForce RTX 2060 6GBが搭載されていたため、DisplayPortが3つにHDMIがひとつという仕様になっていた。

マウス・キーボードが標準付属で便利

 このIdeaCentre Gaming 550iには標準でキーボードとマウスが付属する。

 キーボードは“日本語AccuTypeキーボード”と呼ばれるもの。キーとキーのあいだに隙間のあるいわゆるアイソレーションタイプと呼ばれるもので、ノートPCのキーボード同様、ストロークは短め、3ミリ弱といったところだろうか。キーの表面はわずかに湾曲して凹んでいて、指の収まりは悪くない。

 一般的なゲーミング用途のキーボードというとメカニカルキーを採用したものが人気だが、これはノートPCなどに近い作り。キートップにはわずかなくぼみが作ってあり指の据わりはよく、打腱感はLenovoの一般的なノートPCに近く、わりとしっかりとした感触。ノートPCに慣れたユーザーには違和感なく使えることだろう。

 マウスは2ボタン1ホイールのシンプルな光学式のものが付属している。重量は非常に軽く、コードまで含めても実測で約92.5gしかない。コードのテンションで移動してしまうことがあるので、軽すぎる、と言ったほうがいいだろうか。

 キーボードとマウスを見ると、IdeaCentre Gaming 550iはあくまでもホームユース、ビジネスユースのモデルをゲーミング用途に寄せた位置づけであることがよくわかる。ビジネスやホームユースといった実用的な面では必要十分な使い勝手ではあるが、もしゲーミング用途で本格的に使いこなそうと思ったら、ここは好みのものを買い足したほうがいい。

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サイドパネルを開けたところ。コンパクトなケースながら、意外と空間に余裕はある。中央に見えているのがビデオカードのNVIDIA GeForce RTX 2060。メモリスロットは2本。購入時のカスタマイズで最大32GBまで増設できる。
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上側にスリムタイプの光学ドライブ、下側に2インチのHDD+SSDを増設するシャドウベイがあるが、上はフロントパネルに取り出し口がないために、下側はビデオカードと干渉してしまうために実質的に使用できない状態。
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標準で付属する日本語AccuTypeキーボード。フルキーながら非常に軽く、タイピング感覚はノートPCライク。表面にくぼみがつけられていて、指のなじみはなかなかいい。
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標準の2ボタン1ホイールの光学マウス。プロゲーマーも使用する本格的なマウスが付属する。ふつうに使うぶんにはこれでまったく問題なし。ただし、ボタン配置は通常と変わらないため、ボタン数が多いマウスで遊びたいという方は、キーボードより先にマウスの購入を考えたほうがいいだろう。

IdeaCentre Gaming 550iその実力の程は? 実機プレイ&ベンチマーク

『Apex Legends』を実機プレイ

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 まずは人気FPSの『Apex Legends』。ビデオのオプションをすべて“高”に設定、解像度は1920×1080のフルHDの状態でプレイしてみた。視界がどれだけ開けているかなどによってfpsは大きく変わるが、90~140fps、概ね100fps前後をキープしていた。ビデオカードが標準よりよくなっているだけあって、かなり快適なプレイが可能だ。

『FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク』の結果

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 『FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク』のリザルト画面。フルスクリーンでの計測してみたところ、1920×1080の標準品質で“とても快適”、高品質で“快適”、3840×2160の軽量品質で“やや快適”、標準品質と高品質では“普通”という評価が出た。4Kの高品質でもきちんとゲームが遊べるレベルを実現しているのはさすがと言える。

『CrystalDiskMark 8.0.0』の結果

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 今どきのPCらしく標準でストレージにはPCIe NVMe/M.2で接続された256GBSSDが採用されている。前述のように手元のサンプル機は1TBのものに換装された状態で、プロパティを表示させてみたところ、SAMSUNG製の“SAMSUNG MZVLB1TOHBLR”というモデルのようだ。ベンチマークソフト『CrystalDiskMark 8.0.0』を走らせた結果はこの通り。ランダムのリードとライトが遅いのが気になるが、シーケンシャルなリードとライトはスペックに見合った高い数字が出ている。

『CPU-Z Ver.1.94.0』の測定結果

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『PCMark10』の測定結果

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『3DMark:Time Spy』の測定結果

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 CPUやマザーボードの情報を読み取る『CPU-Z』、PCのトータルなパフォーマンスを測定する『PCMark10』、グラフィック性能を中心に性能を測定する『3DMark:Time Spy』を走らせてみた結果もあわせて紹介しておく。CPUがCore™ i7-10700に、メインメモリは16GB、グラフィックカードはNVIDIA GeForce RTX 2060にそれぞれ換装されているため、かなりいい数字が出ている。

PCゲームを体験してみたい人、仕事面にパワフルに使用したい人、クリエイティブな使用が多い人にも好適な1台

 Lenovoはデビット・ベネット氏が各所のインタビューで言明している通り、同氏が社長に就任して以来、ゲーミングPCに非常に力を入れている。その中心となるのは、LegionというゲーミングPCブランドだ。

 しかし、ここで紹介しているIdeaCentre Gaming 550iのように、本来はホームユースやスモールビジネスへ向けたブランドでもゲーミング用途を意識したモデル構成に変えてきている。

 現在はIntelもAMDもGPUにオンチップでGPUが併合され、その性能も向上してきているので、たとえばビジネス向けのアプリを動かしたり、ネットサーフィンをしたり、たまにゲームでも遊ぶ、といった用途なら、あえてグラフィックカードを別に用意する必要はない。ところがそこに販売価格が上がっても標準状態でビデオカードを載せ、“ゲーミング”を謳ったモデルが増えているところにメーカーとしての意志を感じる。

 いつの時代も一般的なユーザーが手にするもっとも重たいPC用アプリはゲームで、ゲームが快適に動く環境であれば、ビジネス分野でもクリエイティブな分野でもしっかり快適に使えるPCになる。つまりはゲームをプレイしないユーザーでもゲーミングPCを使うメリットはあるのだ。

 Lenovoはゲームを意識したモデルでも、たとえLegionブランドであっても一部の例外を除いてあまりスパルタンなデザインにはしない。ビジネスでもホームユースでもなじめる絶妙なバランスを保ったデザインになっている。

 本機もその例にもれず、派手すぎず、かといってブアイソなビジネスマシンとも違う、なかなかいいところを突いたデザインにまとまっていると思う。とくにサイズがコンパクトなため、たとえばちょっと移動させて大画面テレビへ接続してみたり、といったことが手軽にできるのもいい。

 何度も述べている通り、フレキシブルに仕様を変更することができるのも魅力。サンプルで借りたこの1台のようにパーツを交換せず、標準状態のままでもグラフィックの品質をある程度落とせばたいていのゲームはけっこう快適に遊べるはず。ゲーミングPCの入門機、といった位置付けの1台と言えるだろう。

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標準で“LENOVO VANTAGE”という管理ソフトがインストールされている。このソフトを使うとCPUの動作モードなどを設定することが可能だ。
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“サーマル・モード”を“バランス・モード”に設定しておくと、不必要にCPUパワーを使わないようにすることで、ファンの回転を抑制できる。通常使用ではファンがうるさいと感じることはあまりないが、ゲーム中などは本体が小型でファンが小径なせいもあって、高めの音が混じったかなりの音量となる。
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フロントパネル下部の青いLEDは色は変えられないものの、点滅パターンを変更することができる。