3gooからNintendo Switchとプレイステーション4向けに発売中の『Dead by Daylight サイレントヒルエディション 公式日本版』。日本限定で発売されたパッケージに収録された特典『サイレントヒルエディション:スペシャルサウンドトラック』(全8曲)に関して、インタビュー形式による制作秘話が3gooより公開された。
インタビューに応えているのは、本編でもコラボに次いで、ふたたびサウンドトラック集の制作を共同で行った『サイレントヒル』のコンポーザー山岡晃氏と『Dead by Daylight』のヘッド・オブ・パートナーシップを務めるBehaviour社のマシュー・コート氏、そしてこのプロジェクトの仕掛け人となった、同じくBehaviour社の『Dead by Daylight』のブランド・ディレクター、オリビエ・ラタニキ氏となる。『Dead by Daylight』で初めての歌唱曲“月のように”やリミックス曲の誕生の舞台裏など、ファミ通.comだけに応えてくれた質問なども交えお届けする。
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ふたりのコンポーザーによる新たなコラボレーション企画の制作秘話を語るインタビュー(2020年12月)
インタビュー回答者:
- 山岡晃氏:『サイレントヒル』コンポーザー
- マシュー・コート氏:『Dead by Daylight』ヘッド・オブ・パートナーシップ
- オリビエ・ラタニキ氏:『Dead by Daylight』ブランド・ディレクター
――Behaviourのプロジェクトとして、『サイレントヒルエディション:スペシャルサウンドトラック』を作ることになった経緯を教えてください。
オリビエ日本の『Dead by Daylight』コミュニティは非常に協力的で、熱心なプレイヤーによって支えられていることをいつも感じています。日本のファンのために何か特別なものを作りたいという思いから企画がスタートしました。音楽は『Dead by Daylight』の重要な要素として、恐怖やぞっとする感覚をもたらし、各ゲームの独特の雰囲気でその世界に没入させてくれるものです。
――このプロジェクトで山岡さんと再びコラボすることになった経緯を教えてください。ゲーム内に登場する“山岡家”の一族の物語もありますが何か特別な理由があるのでしょうか?それとも偶然でしょうか?
オリビエ2018年にリリースした“断絶した血脈”チャプターで『Dead by Daylight』の殺人鬼“スピリット”として知られる“山岡凜”を登場させました。それを祝うために、初めてBehaviourは東京ゲームショウに参加し、初めて日本のファンに会う素晴らしい機会をもつことができました。凜の姓(そして後に彼女の先祖である殺人鬼キャラクター“鬼”もですが)に気づいて、山岡さんと何か関係があるのでは?と考えてくださったホラーファンのプレイヤーもいましたが、実際にこれはおもいがけない偶然です。そしてこの偶然は2年後の特別なプロジェクトが動き始めるまで、私たちがずっと心に留めていたことも事実です。
マシューそして我々は2020年の6月にリリースした『サイレントヒル』チャプターのサウンドトラック作曲にあたり山岡さんとコラボレーションを行いました。このコラボはBehaviourのチーム全体にとって、非常に楽しい仕事となり、作品も非常に満足のいくものとなりました。そこで、さらに何かできないか?と考えたのです。
――『Dead by Daylight』のオリジナル・サウンドトラックをリミックスした5曲の選曲はどのように行われましたか? また、どんなテーマやイメージで制作をされたのでしょうか?完成してみての感想をお聞かせください。
山岡一番は、実際に自分がゲームをプレイしていて好きな楽曲で、またリミックスをしてみたいと思った楽曲をわたしから選ばせていただきました。
マシュー山岡さんが選曲された5曲を彼のインスピレーションで自由に編曲を行ってもらいました。彼には独自の響きがあり、最終的な作品に、私たちはあまり干渉したくありませんでした。結果、彼のビジョンであるエレクトロニック・サウンドに驚き、そのオリジナリティは素晴らしいものでした。
山岡原曲の雰囲気を良い意味で崩すみたいなことを心がけました。良い意味で崩すというのは、原曲の持っている雰囲気をより強調したり、または原曲とは全く違う方向感に持っていくなどです。そもそもは、やはり原曲にそれなりに力がないとできないことなので、その原曲のエネルギーを使いながらイメージを変更していったという感じです。
――2曲収録された『サイレントヒル』チャプターのテーマ(ショートバージョンとフルバージョン)については満足のいく仕上がりになりましたか?
山岡オリジナル曲のコンポーザーのミシェルとはとても良いパートナーシップを組めました。さすがミシェルですよね、完成した曲も彼らしい作品だと思いました。
マシューショートバージョンは、『Dead by Daylight』の「サイレントヒル」チャプターでゲームに使用したものです。これについては以前に、ミシェルも登場している動画で彼自身が語っているとおり、素晴らしいコラボレーションでとても満足のいく作品に仕上げることができたと喜んでいました。そして今回のアルバムに収録されたフルバージョンは今回の企画のために、新たに素敵なアレンジが加えらたと感じています。
――『Dead by Daylight』の初となる日本語の歌唱曲“月のように”については、ゲーム内唯一の日本人生存者キャラクター“木村結衣”をテーマに制作されていますが、どんなメッセージやイメージを込めて作詞・作曲をされましたか? 完成後の感想もぜひお聞かせください。
山岡結衣の見た目だけのイメージですと、クールで荒い感じだと思うのですが、Behaviourから提供されたキャラクターの設定資料を読みながら、ゲームでは描かれてない内面の心象を解釈してつくりました。心象風景としては闇感ある感じですね。きっとそんな子なのかも、そんな子であってほしいなとゲームをしながら想像しました。あとは、カラオケでリリースされるのならば、多くの人が歌って欲しい思いで勝手に作ったところはあります(笑)。完成して、まるで結衣が歌っている雰囲気になったのではと思っています。
マシュー最初は歌詞の意味が分かりませんでしたが、曲を通してAkira Yamaokaならではの響きをはっきりと認識しました。もちろん『Dead by Daylight』の音楽で日本語の歌詞を聞けることは、特別な喜びでした。アコースティックギターは、生存者のテーマの重要な部分であり、彼の歌でのギターの使い方はとても気に入っています。
――“月のように”の制作のプロセスを教えていただけますでしょうか?
山岡もともと、ヘヴィで、ややもするとEDM、HIPHOPかも……と最初の依頼のときは思っていたのですが、Behaviourチームと会話していたら、意外にもJ-POP、さらには『Dead by Daylight』の世界観とはかけ離れたものをという会話がありました。J-POPアイドル曲なんていうキーワードも出ましたね。J-POPアイドル曲でも良いとは思ったのですが、やはり私自身が『Dead by Daylight』のいちプレイヤーとして、J-POPアイドル曲が収まっているコンテンツに違和感があったので、そこは会話をして回避をした経緯があります。そのJ-POPというキーワードから、この作品性になったのですが、モダンJ-POPではなく、そこは『Dead by Daylight』の世界観に寄せてのJ-POPというイメージで落とし込んだ感じです。
――今回、作詞を担当されるにいたった経緯を教えてください。ちなみに、作詞を手掛けられるのは初めてでしょうか?
山岡もともと、『Dead by Daylight』のファンで、シリーズ作の中に“山岡一族”というシナリオがあるのですが、その同名なところに何か勝手に我ながら意味を抱きまして、そこからBehaviourに、その名前の由来を聞いたところ、どうやら私自身の名前にインスパイアされたとか、されてないとか(笑)。 そこから会話が始まり、今回のリミックス参加に至りました。
――詞でとくにお気に入りのフレーズはありますか?
山岡“月のように”という、結衣が抱いているであろう夢をメタファーさせるあたりが好きです。
――“月のように”は、歌っていらっしゃる方が公開されていませんが、どなたがお歌いになっているのでしょうか。
山岡そうですね、とくに歌っている方は出していません。Behaviour側からの依頼でもあったJ-POPという観点から、一番近い雰囲気の方にお願いいたしました。
――コラボ企画を終えて、日本と欧米のゲーム音楽制作のアプローチに違いを感じた部分はありましたか?
山岡アプローチはさほど違いはないと思いますが、企画の広げかたのようなものは違うのかなと感じます。欧米はやりたいことをまずはテーブルにのせて、そこから箱に(コストやスケジュール、ハードウェアの性質など)納めていく。一方日本は、箱に納まるものを前提に、やりたいことを考えていく。そんなこんな違いは感じます。文化的な違いかもしれませんけどね。
マシューホラーゲームの音楽的なアプローチに規則はなく、文化的アプローチよりも作曲家それぞれの違いのほうが大きいかもしれません。山岡さんは彼の最初の『サイレントヒル』のゲームにおいて西洋テーマでそれを証明していたと思います。そうでなければ、Akiraの『Dead by Daylight』テーマ曲のリミックスのような、ジャジーなロックは日本のゲーム音楽において人気があるように思います。『サイレントヒル』チャプターにおけるコラボレーションでは、インダストリアル・ミュージックの響きは最初から共通していた部分でした。
――このコラボ企画は難しかったでしょうか? 何か問題に局面したことはありましたか?
山岡難しく、難所に到達したコラボではなかったです。超楽しかったです!
マシュー山岡さんといっしょに仕事ができたことは本当に喜ばしいことでした。もちろん時差によって通常よりも時間がかかってしまうことがあったり、オンラインでのミーティングで通訳を要することなどもありました。しかし、山岡さんの精神はコラボレーションにおいてとてもオープンで、『Dead by Daylight』のプロジェクトへの参加にもとても意欲的であったと感じています。
――このプロジェクトにおける、コラボレーション作品の完成には満足していますか?
山岡たいへん満足です。目指したイメージ通りです。たくさんの人に聞いてもらえると嬉しいです!
マシュー素晴らしいコンポーザーから生まれた、この特別な『Dead by Daylight』のサウンドトラックは、ファンの皆さんに新たな『Dead by Daylight』の魅力を感じていただける素晴らしいプロジェクトになったと思います。もちろん完成した作品にはとても満足しています。ファンの皆さんからの反応も楽しみにしています!