『ファイナルファンタジーXIV』(以下、『FFXIV』)の次期大型アップデートのパッチ5.4が、2020年12月上旬にリリースされる。いわゆるメジャーアップデートが年の瀬近くに公開されるのは、2013年のパッチ2.1以来じつに7年ぶりということもあり、年末年始の休みを利用してじっくりと新要素を楽しむ予定のプレイヤーも多いはずだ。
そんな本パッチの公開に先立ち、吉田直樹プロデューサー兼ディレクターにインタビューを実施。希望の園エデン:再生編やエメラルドウェポン破壊作戦といった注目の最新コンテンツの中身をうかがってきたので、その模様をたっぷりとお伝えする。吉田氏が「過去最大級のコンテンツ量」と語る一連の大型アップデートシリーズの魅力を、じっくりと感じ取ってほしい。
吉田直樹(よしだなおき)
スクウェア・エニックス 取締役執行役員 第三開発事業本部長。『ドラゴンクエスト』シリーズ初のアーケードタイトルである『ドラゴンクエスト モンスターバトルロード』シリーズのゲームデザインとディレクションを担当。2010年12月に『ファイナルファンタジーXIV』のプロデューサー兼ディレクターに就任。現在、『ファイナルファンタジーXVI』のプロデューサーも兼任している。
過去最大級のボリュームで贈る最新パッチ
――そろそろ、パッチを目いっぱい遊ぶため、有給休暇を申請しようか考え始めるプレイヤーが増えてくる時期かと思いますが、パッチ5.4のリリース日は確定しましたか?
吉田 現時点で日付はまだ申し上げられませんが、スクウェア・エニックス的な物差しではなく、世間の一般的な基準で言うところの12月上旬にリリースできると思います……。
――なるほど。だいたいの目安はつきますね(笑)。
吉田 何も言っていません!(笑) 皆さんの考える“上旬”あたりでいいのかなとは思います。ただ、「予防線を張っている」と言われてしまうかもしれませんが、今回のパッチ5.4はコンテンツのボリュームが尋常ではないほど膨大なので、そこだけが気がかりです。実際に僕も、開発チームのさまざまなところから「物量、わかっていますか? 自身でチェックする覚悟はあるんですよね?」みたいな勢いで言われていて(苦笑)。そのうえパッチ5.4の公開後も、パッチ5.41や5.45のリリースが控えており……僕のスケジュールは、いまメチャクチャな状態です。
――そのぶんシリーズ全体として、充実したアップデートになりそうです。
吉田 パッチ5.4公開のタイミングで、その後のいわゆる追加パッチも作り切った状態になります。それを順次公開日に合わせて開放していく流れなので、開発チームは12月上旬までにすべてを仕上げておかなければなりません。おそらく、一連のパッチ全体をひとつのメジャーアップデートの塊として考えると、過去最大級のコンテンツ量になると思います。
――気持ちが盛り上がるばかりですが、作っている方々はたいへんですね。
吉田 先日、祖堅(祖堅正慶氏。サウンドディレクター)とZoomで会議を開いたのですが、「直樹さん、パッチ5.4のボリュームはおかしくないですか?」とめずらしく半笑いでしたね……。
――祖堅さんが半笑いするほどのボリュームですか……(笑)。
吉田 参考までに、ひとつの拡張パッケージにつき、バトルギミックなどに用いられるVFX(ビジュアルエフェクツの略語。視覚効果)に音を当てる作業の総数は、だいたい1000種類です。これはあくまでもバトルギミックなどの音のみで約1000種類という意味です。
ところが今回は拡張ではなく、いつものメジャーアップデートにも関わらず、サウンドチームはバトルギミック関連だけで600種類もの音作りをしています。そのため、祖堅は「どうなってるんすか(笑)」と言っていましたね。
――祖堅さんはどうやって苦境を乗り越えられたのですか?
吉田 いまはちょうど、スクウェア・エニックス社内で抱えていたほかの大型タイトルがリリースを迎えた直後なので、「手の空いたスタッフがけっこう手伝ってくれている」と言っていました。「『FFXIV』のサウンドに携わってみたかった」という人がもともと多かったこともあり、今回のパッチ5.4はスクウェア・エニックスのいろいろなサウンドスタッフが開発に携わってくれています。
そのうえでお約束通り12月上旬にお届けしたいとは思っていますが、これまでお話ししてきたように、パッチ5.4は本当にすごいボリュームなので、まだギリギリで予断を許さない状況です。有給休暇を申請するのは、もう少しお待ちいただいたほうがいいかもしれません(苦笑)。
“星を巡る命の物語”がついに最終章へ
――パッチ5.3のメインシナリオは、物語だけでなくバトルコンテンツの面で見ても、かなり濃密な内容でした。暁の血盟の面々が第一世界に別れを告げるシーンもすばらしかったです。そうした過程を経て、ついに一行が原初世界に戻ってきましたが、今後、少なくともしばらくのあいだはアシエン・ファダニエルやゼノス・イェー・ガルヴァスを中心に物語が進むのでしょうか?
吉田 ご質問に回答する前に、なのですが。海外のメディアさんとのメールを介したインタビューでもたびたび感じたことで、皆さんは『漆黒のヴィランズ』の舞台が、第一世界であり、いろいろ綺麗に「終わった」という印象が強いのかもしれません。さらに、『旧FFXIV』の時代から続いてきたアシエンと呼ばれる存在とそれにまつわる物語が、前回までのシナリオで一応の決着を見たというイメージも併せてお持ちなのではと思います。
――前回のストーリーが衝撃的だったので、そういう意識はありましたね。
吉田 でも僕たちとしては、「区切りがついた」とか「終わった」という印象はなく、パッチ5.3はあくまで『漆黒のヴィランズ』という物語が着地しただけなのです。これまでの『FFXIV』全編を通じたシナリオで、ゾディアークやハイデリンが生まれた理由や、それらを作り出した人たち……とりわけゾディアークの側にまつわるエピソードは明かされましたが、そのほかの要素に関していまだ語り尽くされてはいません。たとえばハイデリンとは何者なのか。あるいは、アシエン・エリディブスが自身を核としたことで生まれたゾディアークはいまどうなっているのか。さらに“終末”とはそもそも何だったのか……そうした未解明の部分が、まだ山ほど積み残されています。「誰を中心に物語が進むのか」というよりも、「星を巡る命の物語が、いよいよ本当の意味で最終章に入ります」といったイメージのほうが適切なのかなと。
――確かに前回のメインクエストのラストシーンで、「英雄が足を踏み入れるのは、星と命を巡る物語の最終章だ」というナレーションが入りましたね。
吉田 『漆黒のヴィランズ』の発売前に行われたインタビューでもお話しさせていただきましたが、もともと『漆黒のヴィランズ』は、『FFXIV』がこれまでに紡いできた伏線の数々のうち、8割くらいをすべてさらけ出すことを意識して作りました。逆に言えば、回収されていない伏線がまだ2割ほど残されているので、むしろここから先が“ハイデリン・ゾディアーク編”のクライマックスになります。……これ以上は言えませんが、実際にどのような展開になるのかは、ぜひご自身の目でお確かめください。
――ガレマール帝国もやはり物語に絡んでくるのでしょうか?
吉田 どうしてもメインシナリオというくくりでお話しされがちになってしまいますが、ガレマール帝国という存在は、南方ボズヤ戦線もまさしく帝国の一部のお話ですし、ウェルリト戦役でも帝国の別の側面が垣間見えます。もちろん、ゼノス・イェー・ガルヴァスが居を構える帝都ガレマルドの動きも然り。このためガレマール帝国が今後どうなっていくのかという部分に関して、物語から置いてけぼりにされることは基本的にありません。しかし、それらすべてがストーリーの主軸になってくるのかと言われれば、そこはまだ言えないところです。ご容赦ください。
エメラルドウェポンは「色が変わる」!
――極エメラルドウェポン破壊作戦はどれくらいの難易度になりそうですか?
吉田 いままさにバトルチェックに入る前の、開発チーム内の確認とその調整が行われているところです。彼らの様子をチラリと見ましたが、難易度という意味ではまだ煮詰まっていないなと。ものすごい勢いで戦闘不能になっていましたので(笑)。
――何と(笑)。
吉田 エメラルドウェポンの色が、なにやらコンテンツ中に変わっていましたね。いまお話しできるのはそれくらいです(苦笑)。
――ルビーウェポンやサファイアウェポンと同様に、エメラルドウェポンにもおそらく疑似聖石システムが埋め込まれていると思います。オーバーソウルモードで別人格が現れることを考えると、今回も前半戦と後半戦が明確に分かれているのではないかと予想するのですが、このあたりについてヒントをいただけますか?
吉田 “搭乗者が意図したものではない”など、そもそもオーバーソウルモード自体がいろいろな要素を含む存在になります。あまり詳しくはお話しできませんが、今回も何かしらのシステムが起動するのは確かです。その先に何があるのか、あるいはそれが誰に起こるのかといったところは、ぜひプレイしてお確かめいただければと。もしかしたら、悲痛なお話になってくるのでは……という気がしています。
――すでに、ふたりのパイロットが失われていますしね。ところで、もともとエメラルドウェポンは『ファイナルファンタジーVII インターナショナル』(以下、『FFVII インターナショナル』)で初登場したボスですが、そのあたりも含めて注目ポイントはどのあたりでしょうか?
吉田 もちろんいくつかの技については、『FFVII インターナショナル』に登場したものがモチーフになっています。とは言え、『FFXIV』のウェルリト戦役の設定に合わせた技も当然ながら使ってくるので、前回までと同様にロボットアニメのような展開をイメージしていただいたほうがいいかもしれません。たとえば戦闘時のシチュエーション的には、「またこういうことをしてくるのか!」みたいなことも仕掛けてきます。あるいは特定のモードのような状態になると、ボスバトル系のコンテンツでありながら「こんなことも!?」という新しい試みも盛り込まれています。
――ルビーウェポン破壊作戦とは毛色の違う展開が楽しめそうです。
吉田 ルビーウェポン破壊作戦は単体のボスバトルとしてきれいに完結していたので、それとはまた少し違います。今回はさまざまなフェーズが用意されていたりするので、派手な動きをしてくるはずです。
――毎度の質問になってしまいますが、極エメラルドウェポン破壊作戦の報酬は武器ですか?
吉田 武器をご用意させていただいています。
――ちなみにアイテムレベルに関しては、パッチ5.4で追加されるいわゆる新式武器を5レベル分上回る値でしょうか?
吉田 新式武器のプラス5レベルかどうかは明言しませんが、いつものイメージで大丈夫かと思います。
ガイアの謎やエデンの正体がいよいよ明らかに
――希望の園エデン:再生編のストーリーは、光の戦士や暁の血盟らが原初世界へ帰った“その後”が語られるという意味で、第一世界におけるメインシナリオ的な位置づけになるのではと期待しています。物語の濃さやボリュームは、前回よりも大きなものになるのでしょうか?
吉田 今回の希望の園エデン:再生編は、これまで続いてきたシリーズの最終章であることは間違いありません。前回までと同様、コストに配慮しながらストーリーをいつもと同じくらいのボリュームに収めようとはしているのですが、スタッフたちが気合いを入れて作っているので、どうしても膨らみがちになります。そのため結果として、中身も濃くはなっているかなと。担当者たちががんばった結果、『紅蓮のリベレーター』での“次元の狭間オメガ”シリーズはすばらしい物語に仕上がったので、今回も気合いを入れて作ってくれています。
――暁の面々が帰還したいま、リーンとガイアが物語の中心を担うと思うのですが、リーンと比較して、ガイアにはまだ多くの謎が残されています。最初の罪喰いとされるエデンの正体も含めて、これらの謎がすべて明かされるのでしょうか?
吉田 すべて解き明かされます。そういう意味で「メインシナリオの一部みたいな作りですか?」と問われれば、確かにそれに近い面はあります。リーンはともかく、ガイアがなぜ闇の巫女と呼ばれているのかもまだ明確になっていませんし……。いずれにしても、驚愕の畳みかける展開になるので、ぜひストーリーにご注目いただきたいです。
――それではバトルの中身についておうかがいします。パッチ5.4でアイテムレベルの上限が引き上げられますが、いわゆる新式装備の位置づけや、希望の園エデン零式:再生編(以下、零式:再生編)のドロップルールなどの基本システムは従来と同じですか?
吉田 はい、従来通りのイメージとなります。
――新式装備の製作難易度も、これまで通りと。
吉田 そこも安心、安定でいつも通りです。いまの『FFXIV』の新式装備は、どうしても初動のタイミングに需要がかたよりがちです。それにも関わらず、極端に製作しづらくすると、需要に供給が追い付く前に、プレイヤーの方々が1層や2層を突破するケースが起こりえます。
――そうですね。
吉田 『漆黒のヴィランズ』リリースのタイミングで、各ロールに対して扱いやすさを向上させる目的で大胆なバトルシステムの調整を行ったこともあり、現在は零式に挑戦される方がすごく増えています。実際、パッチ5.3までのあいだに希望の園エデン零式:共鳴編を踏破された方は、それ以前よりもかなり多いです。今回もたくさんの方がプレイしてくださると思うので、それに見合った中身にしたいなと。だからこそ、新式装備を極端に作りづらくはしていません。
――安心しました(笑)。つぎにボスについてですが、パッチ5.2までにすべての属性の励起を終えているので、希望の園エデン:再生編でどんな相手が登場するのか想像がつきません。このあたりについて、お聞かせいただけることはありますか?
吉田 そろそろ、光の戦士がいままでに戦ったことのない相手が出てくるかもしれない……そんなイメージです。その一方で、今回も引き続き、“想像力”がカギを握ってくる展開になります。“希望の園エデン”シリーズは“だんだん予想がつかなくなる”をテーマに作っているので、意図的にそうしている面もあります。皆さんに「予想がつかない!」とおっしゃってもらえているのであれば、その目論見は成功かもしれません。いずれにせよ、ビックリしてもらえるだろうとは思っています。
――零式:再生編を開発するにあたり、吉田さんはスタッフの方々に「これくらいの難易度にしてほしい」だったり、「従来のこのコンテンツに近いイメージにしてほしい」といったオーダーを出されたりしましたか?
吉田 コンテンツ制作に関しては、いまの『FFXIV』開発チームと事前に難易度のイメージを話し合うことはしていません。と言いますか、ボスのイメージや難易度の度合いを僕のほうから指示したことはもともとありません。相談されるときは別ですが、それには明確な理由があります。
――なぜでしょうか。
吉田 まず難易度設定についてですが、いまの主力スタッフたちは、いままで数多くのレイドダンジョンを開発してきており、僕が何かを指示しなくてもすでにチームとして最初からイメージが統一されているからです。今回のシリーズで言えば、希望の園エデン零式:覚醒編(以下、零式:覚醒編)は直前の調整で間口は広がったとは言え、アクションローテーションが定まっていない状態での開幕だったため、いろいろな方々に踏破してもらうことを目標に制作していました。そのつぎの希望の園エデン零式:共鳴編(以下、零式:共鳴編)では、前回を踏まえたうえで、ある程度の歯ごたえが感じられる味付けにしました。
――プレイする側としても、そういうイメージです。
吉田 そして完結編に当たる今回は、層を重ねるごとにだんだん難しくなっていき、それに比例する形で歯ごたえも増していく作りです。「前々回や前回と比較して、各層でちゃんと歯ごたえが感じられる作りにしよう」という零式:再生編のこの方向性は、すでにスタッフたちの共通認識です。一方で、我々がそういう方針で制作を進めてはいるものの、皆さんのプレイヤースキルという目に見えないレベルも同時に上がっています。
仮定の話であるうえに、適切な言いかたかどうかもわかりませんが……たとえば我々が零式:覚醒編よりも零式:共鳴編の難しさを10%上積みしてリリースしたとします。そこからさらに、零式:再生編を総じて20%難しくしたとしても、皆さんのプレイヤースキルが以前よりも上昇しているため、実際に3つのコンテンツの歯ごたえは全体として同じ水準に感じられる……おそらくこれが理想です。
――プレイヤースキルの向上も、考慮に入れなければならないのですね。
吉田 ただ、プレイ中に感じられる刺激は少しずつ強まっていったほうがいいので、そのスキル上昇ぶんをほんの少しだけ上回る味付けにすれば、おそらく皆さんから「すごくいい難易度のレイドダンジョンだった」と評価してもらえるのだと思います。開発スタッフたちはみんなその線を狙って作っているので、だからこそ、わざわざ僕のほうから「今回はこれくらいの味付けにしよう」と言う必要がないのです。
あとは、僕を含めて最終調整で必死にプレイして、手ごたえを確認して微調整すれば、良いところに着地できるかなと思います。いずれにせよ、希望の園エデンシリーズのラストにふさわしい手ごたえと歯ごたえが感じられつつ、くり返しがんばればちゃんと突破できる……このあたりはいつも通りの線に落ち着くと思います。そして、つぎにご質問にあった「これくらいのボスがいいよね」みたいなことを僕のほうから言わない理由は、単純に担当者の思考を止めてしまうのを防ぐためという面もあります。
――なるほど。
吉田 それを言うと、過去に登場したギミックを踏襲する可能性が出てきてしまいます。とりわけ、がんばって成長を続けている若手に対して、僕が具体的に何かを言ってしまうと、「吉田さんが言っているんだからそうしよう!」という話にもなりかねません。その代わり、テストプレイには参加して、僕の中で「これはまずい」や「ここはいいね」と感じたところはなぜそう思ったのかを具体的に説明します。ただし、その段階にいたるのはあくまでも先輩たちといっしょに精一杯コンテンツを作って、「これを吉田にぶつけてやるぞ!」という状態になってからです。
――零式コンテンツが形作られていく流れと、スタッフの皆さんの意識の高さがよく理解できました。あくまでの仮定の話ですが、『FFXIV』がいわゆる6.Xに進むとした場合、零式という要素はいまの状態で続いていくのでしょうか。今後、何か形を変えることは想定されていますか?
吉田 うーん、形ですか……。
――たとえば、4層構造になっていることや、いわゆる偶数パッチで新たなレイドダンジョンが実装されることなどに、手が入る可能性はあるのでしょうか?
吉田 レイドダンジョンのデザインについて、いまの時点で何かを確約しても意味がないのかなと思っています。たとえばこの場で何らかのアイデアを語った後に、それとは異なるアイデアが出た場合、「事前に話していたことと違う!」ということになってしまいかねません。着実に進化を遂げていくのが『FFXIV』のよい点だとは思うのですが、ムリに変えることが必ずしも好結果につながるとは限りませんしね……。
――そうですよね。
吉田 遊びかたと時間の使いかたの双方のバランスを考えながら、プレイヤーの皆さんが8人で挑む高難易度のレイドダンジョンのサイクルとして、いまの形がおそらくベスト……そう判断すれば据え置きに。さらなる好循環が作り出せるのであれば、変えるべきところは変えるだろうとは思います。どちらにしても、これらはいま判断すべき事柄ではないので「決めていません」が正解です。そもそも、6.Xシリーズが存在するのかどうかさえまだ何も発表していないですね(笑)。
――質問そのものが仮定の話でしたね(笑)。
吉田 パッチ5.4のラストで、いきなり『FFXIV』が終わりを迎えてしまうかもしれませんし……それこそ、(2021年2月に開催予定の)新情報発表会で「『FFXIV-2』が始まります!」みたいな展開もあるかもしれませんもの(笑)。
ロールごとの“デコボコ”をならすジョブ調整
――先日実施された第60回FFXIVプロデューサーレターLIVEで、モンクの疾風迅雷が特性になると発表されました。これに伴い、そのほかのアクションに関しても調整が入るとのことですが、たとえばどのような技に手が加えられるのでしょうか?
吉田 想定通りに組み上がったものを実際に触ってみたうえで、足し算や引き算を行うので、現時点ではまだ何とも言えません。ですが“自身に疾風迅雷を付与する”効果を持っていたアクションには、基本的にすべて手が入ると理解していただいていいと思います。ほかにも、踏鳴がスタック可能なバフになるので、事前に溜めておいてここぞという場面で使用できるようにもなります。このあたりは侍を調整したときと同じ感じになるのではないでしょうか。また、構造を改修するという意味では、パッチ5.1の忍者と同じように、内部構造は大きく変わりますが、手触りは極力維持します、という着地を目指しています。パッチ5.4の公開に間に合うよう作業していますので、もうしばらくお待ちください。
――モンク以外のジョブには、どのような調整が行われますか?
吉田 こちらも、このインタビュー時点では、まだ数値を調整し続けているので、お話しするにはちょっと早いのです。今回は新しい高難易度のレイドダンジョン開放とともにアイテムレベルが更新されるので、これに合わせて各ロールの中でデコボコしている部分を均等化するために、おもに数値調整を行う……これが全体の方針であり、我々のポリシーでもあります。
――これまでの偶数パッチで実施されてきた調整と、同じイメージですかね。
吉田 個別のジョブについて言及するのは時期尚早ですが、たとえば……たとえばですが、ヒーラーというロールで見た場合、占星術師が調整されて使い手がすごく増えました。そして白魔道士はヒール性能はもちろん、火力も高いため、人気はいまだに衰えません。一方で学者については、先ほどのお話しで言うところの“凹っとしている部分”があると思うので、もう少しだけ調整が必要なのかなと。
近接DPSに関しては、今回はモンクに手が入るので、数値の面で竜騎士に少し調整を加えたほうがいいのかなとも考えています。このように、ジョブごとの操作難易度を考慮に入れたうえで、それぞれのロールの中で数値的なバランスが取れるよう努力しているところです。ただ、いまの話は例えになりますので、あくまでイメージということでご了承ください。
つぎの幻討滅戦に登場するボスは……?
――つぎの幻討滅戦で登場する蛮神について、吉田さんは以前「ウヒョー来た! と皆さんが叫ぶヤツ」と話しておられました。その正体について、何かヒントをいただけますか……?
吉田 明日、最終調整に参加しますが、久しぶりに黒魔道士のメテオが活躍するといいなと思っています。ただ、レベル80でバランスを取り直した場合、火力によっては以前と同じ戦術が必要とされなくなる可能性もあるので……いまはここまでしか言えません。
――メテオ、ですか。なるほどです。
吉田 僕もこの年齢になったとは言え、当時のボスと戦っていたころより、いまのほうがプレイヤースキルは絶対に向上しているので、自分自身すごく楽しみです。三連魔や黒魔紋など、当時は存在しなかったアクションも使えるので、そうした技を「どのタイミングで使うべきか」と考える部分が、幻討滅戦ならではの魅力だと思います。従来のコンテンツとは違い、幻討滅戦はギミックを足したり引いたりしないので……おっと、ここまでにしておきます。あまりお話ししすぎると「メテオを使うってことは?」みたいな話になってしまうので(苦笑)。
――コンテンツに思い当たりがあります……(笑)。
吉田 いまはウォールが存在しないので、リミットブレイクを撃たずに逃げるかもしれません(笑)。
――以前、吉田さんは幻討滅戦に関して「報酬が弱いところがある」と述べられておられましたが、どういった方向でリワードの強化を考えておられますか?
吉田 パッチ5.4は本当にたくさんのコンテンツがあるため、報酬向けのアイテムをあらかじめ多く用意しているのですが、リワードを設定しなければならないコンテンツがそれ以上にたくさんあって……。そこまで「毎週クリアーしなきゃ!」と思うものではないにせよ、これまで入手が難しかった既存の品を、今回の幻討滅戦の報酬に少しだけ加えてあります。少なくとも、従来のラインアップよりもモチベーションにはつながるのではないのかなと。なお募集機能に“幻討滅戦をクリアー済み”というフラグを今回ご用意しましたので、以前よりも募集しやすくなるはずです。
――パッチ5.4で魔術工房 マトーヤのアトリエが公開されますが、今回のコンテンツルーレット:エキスパートのラインアップはどのような感じですか?
吉田 奇をてらわず、いつも通りです。漆黒決戦 ノルヴラントと魔術工房 マトーヤのアトリエのふたつになります。
――黒風海底 アニドラス・アナムネーシスが、コンテンツルーレット:レベル80ダンジョンのほうに移動すると。
吉田 はい。そうですね。
パッチ5.45以降も、セイブ・ザ・クイーンは続いていく
――セイブ・ザ・クイーンはパッチ5.45でアップデートされるとのことですが、具体的にいつごろになりそうですか?
吉田 まだ確定ではありませんが、パッチ5.4のリリースからだいたい2ヵ月後をイメージしていただければと思います。メジャーアップデートとメジャーアップデートの中間地点を、少し過ぎたくらいのタイミングで公開になるかなと。
――レジスタンスウェポンのさらなる強化が可能になりますが、パラメータがランダムで決定される要素は入ってくるのでしょうか?
吉田 シリーズ中のどこかにその要素が入る予定があるのは事実ですが、つぎになるのかどうかは……。禁断の地 エウレカのときは、物語が完結を迎えるタイミングでバルデシオンアーセナルが追加されましたよね。この流れに引っ張られて、グンヒルド・ディルーブラムが公開されるパッチ5.45でセイブ・ザ・クイーンが完結するのでは……と、お思いの方がいるかもしれませんが、もちろん違います。
――先がまだ存在すると。
吉田 はい。変則的と言いますか、そのあたりも禁断の地エウレカとは異なる部分です。僕たちとしても、クリティカルエンゲージメントのシステムを1回で使い切るつもりはないので、その先にまだ大きなものを用意しています。このため、レジスタンスウェポンの強化も必然的に続いていくものと思っていただければと。
――クリティカルエンゲージメントのシステムをまだ使い切っていないという部分も関係してきそうです。確かに、グンヒルド・ディルーブラムのようなコンテンツはもっと後に公開されると予想していたので、そのつぎはどうなるのだろうと思っていました。
吉田 つぎのアップデートで終わりと思ってらっしゃる方が意外と多くおられるようですが、決してそうではありません。
――ではそのグンヒルド・ディルーブラムについておうかがいしますが、難易度やギミックはどのような感じになりそうですか?
吉田 前提として、グンヒルド・ディルーブラムはノーマルと零式のふたつの難易度が存在し、シナリオを進めるだけならば前者のみをプレイすればオーケーです。ノーマルのほうは24人で挑戦するアライアンスレイドくらいの難易度ですが、さまざまなロストアクションを活用する要素が存在します。禁断の地 エウレカのときのバルデシオンアーセナルのおもしろさは、それぞれのパーティに個別の役割が与えられる点だったと思うので、今回もその部分は踏襲しており、明確な役割分担が必要になってきます。くり返しになりますが、こちらは24人で突入する新しいタイプのレイドダンジョンであると思っていてください。
――一方で零式のほうはいかがですか?
吉田 その役割分担がさらに強烈になり、それぞれのメンバーがいろいろなことをやらないとまったく解けないし、やりかたを少しでも間違えると……これ以上は言えないです(苦笑)。こちらも、全体としての毛色はバルデシオンアーセナルに近いと思っていただいて構いません。ひとまず、ノーマルと零式のふたつのパターンが存在する、24人または48人で遊ぶ新しいタイプのレイドダンジョンがリリースされるとご理解ください。パーティ募集の機能にも48人向けの新たなUIを作りましたので、ぜひこれを使ってメンバーを集めていただければなと。NPCリクエストになりますが、マッチングの仕組みもご用意します。
――強化済みのいわゆるボズヤン装備を事前に準備しておくと、グンヒルド・ディルーブラムの攻略がやりやすくなったりするのでしょうか?
吉田 零式に行く方は、そろえておいた方が有利なのは間違いないですね。ノーマルでは必要ありません。
――ちなみに報酬に関しては、ノーマルと零式でそれぞれ異なるものが用意されているのですか?
吉田 零式限定で取得できる報酬は当然存在します。バルデシオンアーセナルで手に入ったデミオズマのマウントと同様に、コンテンツをクリアーした証になるものは心理的な面でもあったほうが絶対にいいと思うので、もちろん用意されています。
――それでは最後に、パッチ5.4のリリースを心待ちにしている読者へメッセージをお願いします。
吉田 新型コロナウィルス感染症への対策を実施したこともあり、最終的にパッチ5.3の公開スケジュールが2ヵ月ほど延びてしまいました。以前のインタビューでもお伝えしましたが、僕たちはその遅れを取り戻そうとするのではなく、開発環境を進化させるための期間として前向きに活用しました。結果として、パッチ5.4は過去のスケジュールではあまり前例のない、年末に近いタイミングでリリースできることになりました。今回はすごくボリュームが豊富ですし、新しい高難易度のレイドダンジョンも開幕するので、年末年始はゆったりとした時間を過ごしながら、さまざまなコンテンツに挑戦していただきたいと思います。
――充実した年の瀬が迎えられそうです。
吉田 物語の面で言えば、メインシナリオも大きな変革のときを迎えようとしていますし、第一世界に残ったリーンとガイアがどういう運命をたどるのか……そのあたりにも、パッチ5.3とはまた違ったパターンのクライマックスが待ち構えています。ほかにも、本日のインタビューではお話しできませんでしたが、オーシャンフィッシングに新航路が追加されたり、トリプルトライアドに新ルールがお目見えしたりなど、バトルだけではなく『FFXIV』に存在するあらゆる遊びがアップグレードされます。年末に発売予定の新作ソフトと比較しても遜色ないと思えるくらい、ゲームとしての密度が高いパッチに仕上がっているのでぜひご期待ください。
――新たに冒険を始める人も依然として増えているようですし、すべてのコンテンツが楽しみですね。
吉田 パッチ5.3でフリートライアルを大きく拡張したことで、幸いにも多くの新規の方々に引き続きプレイしていただいています。ニューカマーの皆さんとベテランの光の戦士たちが、いっしょに楽しく『FFXIV』のエオルゼアで年末年始を過ごしていただけるとうれしいです。楽しみにお待ちください!