『モンスターハンター』シリーズは、モンスターの狩猟が醍醐味だが、フィールドの美しさや、生態系が構築された自然の豊かさを感じられるのも魅力のひとつ。

  そんな世界観を、モンハンフィギュアを用いたジオラマで表現しているクリエイターがしばいぬ おいもさんだ。本記事では、その作品の魅力について同氏にインタビュー取材を実施。

 大自然に生きるモンスターの姿をジオラマにして、まるで画面から出てきたかのようなクオリティーで細部まで再現する方法とは? その秘訣をご覧あれ!

しばいぬ おいも

『モンスターハンター』をテーマにしたジオラマやイラストで活躍。ジオラマの制作過程はYouTubeチャンネルで公開中。
『モンハン』歴 10年 好きな武器種 太刀・弓・チャージアックス
好きなモンスター アマツマガツチ、ジンオウガ、タマミツネ
好きなフィールド 渓流

フィギュアに命を吹き込むジオラマ造り

『モンハン』の世界を現実に⁉ 再現度が高すぎるジオラマの作者を直撃

── いつごろから『モンスターハンター』のジオラマを造り始めたのですか?

しばいぬ2018年から始めて今年で3年目になります。

── 造り始めたきっかけは?

しばいぬ初めて購入したフィギュアが『モンスターハンター』のモンスターで、机にそのまま置いて飾っていましたが、ほかに飾りかたがないかなと考えまして。モンスターが生息するフィールドをジオラマで再現して、フィギュアといっしょにオシャレに飾りたいと思ったのがきっかけです。

── これまでに何作品造られたのですか?

しばいぬすべて『モンスターハンター』のジオラマで、17作品作りました。

──その中でお気に入りの作品は?

しばいぬフィールドの原生林を再現したタマミツネのジオラマです。巨大なモンスターの骨を中心に広がる大自然、白滝や、花で赤く染まる水辺のエリアを再現しました。鉱石の採取ポイントやエリア移動の際に登るツルなどもこだわって作りました。水と植物の組み合わせが好きなので、本物の植物や木を使用してリアルな景色作りと、レジン液を使用した水の再現など水辺作りはとくに楽しく作ることができて、お気に入りの作品です!

『モンハン』の世界を現実に⁉ 再現度が高すぎるジオラマの作者を直撃
『モンハン』の世界を現実に⁉ 再現度が高すぎるジオラマの作者を直撃

――どれもかなり細かく造りこまれていますが、表現、再現が難しかったモンスターやフィールドは何でしたか?

しばいぬブラキディオスが生息する溶岩地帯を再現するのが難しかったです。本物の溶岩石で再現を試みようとしていましたが、なかなかしっくりくるものがなく、発泡スチロールでイチから土台や溶岩石のオブジェを作り上げるのに苦労しました。発泡スチロールで火山地帯のデコボコした地面を再現するために、木炭の欠片や、ザラザラとした質感になる漆喰などを混ぜたものを塗ってみたりと、工夫して質感を再現するのがたいへんでしたね。ブラキディオスの攻撃に、粘着質の粘菌を撒いた後に爆発するものがありますが、粘菌の質感の再現と爆発するエフェクト作りは何度も試作品を作り、試行錯誤しました。

『モンハン』の世界を現実に⁉ 再現度が高すぎるジオラマの作者を直撃

――ゲームならではの演出や動植物も多いかと思いますが、その場合はどのように再現しているのでしょうか。

しばいぬモンスターの攻撃エフェクトなどの演出はおもに粘土を使用しています。乾くと透明になる粘土や、カットして加工できるプラスチック粘土などで雷や飛び散る氷などを再現してきました。ゲーム内の植物の表現は、プリザーブドフラワーという本物の植物を枯れないように加工したものを使用し、葉や実の一部を切り取って組み合わせたりして再現しています。

『モンハン』の世界を現実に⁉ 再現度が高すぎるジオラマの作者を直撃
『モンハン』の世界を現実に⁉ 再現度が高すぎるジオラマの作者を直撃
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――材料にジオラマ、アクアリウム素材のほか、木炭やラップといった意外なものを使われていますが、“これの再現にはあれを使おう”といったアイデアはどのように生まれるのですか?

しばいぬふだんから、見るものすべてを「ジオラマの材料に使えないかな」と意識しています。ラップは光を反射してキラキラ光る様子が水面に見えますし、シワを作れば水が流れているようにも見えます。木炭は黒くて硬い材質で溶岩石の質感に似ていて、触ると手につく黒い炭はモンスターの吐く炎の焦げ跡にも見えます。ラップは食品を包むもの、木炭は燃やして使うものなど、固定概念にとらわれずに柔軟に想像してアイデアを生み出しています。

――制作するうえでのこだわりは?

しばいぬただ綺麗な景色を作るのではなく、実際にモンスターが通るエリア、フィールドにあるギミック、採取ポイントなど、『モンスターハンター』の世界を表すようなジオラマ作りを意識しています。ひと目見て、「この採取ポイントあるよね!」とか、「このエリアの場所わかる!」など、知っている方こそ気づくポイントも作るようにしています。実際に気づいた方にコメントいただけると、すごくうれしいです。また、ジオラマ材料はリアルな質感を表現するために、できるだけ本物の石や木、植物などを使うようにしています。あとは、ジオラマを作る容器はフィールドの雰囲気に合わせて用意しています。和風だと盆栽鉢などの陶器、寒い地帯はガラス、緑豊かな地帯だと木製など、オシャレに飾れるようにもこだわっています。

『モンハン』の世界を現実に⁉ 再現度が高すぎるジオラマの作者を直撃
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――これをジオラマにしようという決め手は何ですか?

しばいぬ実際にゲームをプレイする中で、景色とモンスターがいっしょに映る光景が幻想的、カッコイイなどで決めています。『モンスターハンター:ワールド』からは、よりモンスターの生態行動も観察できるようになりましたので、モンスターの後を追ってジオラマ作りのヒントを見つけに行くことも多いです。

――今後ジオラマにしてみたいものはありますか?

しばいぬ大自然の広がる『モンスターハンター』の世界ですが、遺跡や朽ちた建物もあります。自然の再現を得意としていますが、人工物の再現にも挑戦していきたいと思います。ほかには『モンスターハンター』以外のフィギュアを使ったジオラマ制作にも挑戦してみたいです!

――『モンスターハンターライズ』が発表されましたがいかがでしたか?

しばいぬ私は名前に“しばいぬ”という文字を入れるほど犬が大好きなので、オトモガルクが登場したことがすごくうれしいです! オトモガルクに乗ってのんびりとフィールド観光をしたいですね! ジオラマ制作としてはライズのアクションの中に縦横無尽に高い山や崖を登ったり、高低差のあるフィールドを駆け巡っている様子が見られるので、自由度を表現した高さのある景色を取り入れた『モンスターハンターライズ』の雰囲気のあるジオラマ作りに挑戦してみたいです。

――最後に、しばいぬ おいもさんにとってのジオラマ造りとは?

しばいぬ作るたびに新しい発見を見つけられる無限の可能性です! 「この材料は別の表現にも使えそう!」とか、「もっと工夫してみたいな」など、つぎつぎとやりたいことができて、無限に楽しませてくれます。表現の仕方や作りかたに正解はないと思いますので、自由な発想と自分の個性を最大限に生かしてこれからもみなさんに喜んでいただけるジオラマを制作していきます!

『モンハン』の世界を現実に⁉ 再現度が高すぎるジオラマの作者を直撃